19日、大阪市会決算特別委員会が開かれ、日本共産党の
矢達幸議員が阿倍野再開発事業の見直し問題を取り上げました。
大阪市がJR天王寺駅南西部で進めている阿倍野再開発事業は、28ヘクタールを対象に1976年スタートした全国最大規模の再開発事業で、現在までに施設建築物29棟のうち、20棟が完成し、今年さらに1棟が着工されています。あとは、当事業の心臓部ともいうべきA2地区を残すのみとなっています。市民は一日も早い事業の完成でにぎわいのある阿倍野の玄関口として再生される心から待ち望んでいます。
いよいよこの再開発事業が収束に近づく中で、大阪市ははじめて事業収支の試算を発表し、開発済みの5地区(22ヘクタール)だけで1350億円の巨額な赤字が生じていることを明らかにしました。さらに、買い手のつかない商業施設「ルシアス」を分譲方式から賃貸方式に切り替えるため、起債による開発費が回収できなくなり、起債の償還と賃貸収入のバランスがとれず、2200億円もの公金によるつなぎ資金が必要となることも明らかになりました。現状では、バブルが破綻し、キーテナントとして期待していた「そごう」も撤収し、事業が行き詰まっています。
そこで、大阪市は今後事業化する地区の中核としての商業業務ビルには、民間事業者に施設の設計から工事まで任せる特定建築者制度を導入し、建物のほとんどを大阪市が所有し、そして特定建築者制度参入業者に賃貸するというやり方をとりいれようとしています。
今後のスケジュールでは、特定建築者制度にすでにサイモン・プロパティ・グループというアメリカの投資会社が参入の意向を表明しています。今後、2002年度に参入業者がコンペなどの手法で決定されるとしているにもかかわらず、すでに基本設計の段階でサイモン・プロパティ・グループの意向が取り入れられていることが判明しました。質疑に際して、市当局者は「サイモン・プロパティ・グループは、アメリカで最大の売場面積を持つ商業施設デイベロッパーである」と手放しで褒め称えました。
矢達議員は、「結局、業者決定以前に、サイモン・プロパティ・グループが優位に立ち、競争原理が働かず、大阪市の主体性が失せ、傷口を一層広げることになりかねない。これは大阪市がいまだバブルの発想から抜け切れていないからだ」と、大阪市が「藁をもつかむ思い」で、サイモン・プロパティ・グループに全てを託している危険さを厳しく批判しました。