高齢者の生活を守るため
介護保険利用料と保険料の軽減を
2001年11月29日 長谷議員が介護保険条例改正案を提案 
 29日の大阪市議会本会議で、日本共産党の長谷正子議員が、介護保険の保険料と利用料の市民負担を軽減することを内容とした条例案を提案しました。
長谷議員は、介護保険がはじまり、また、高齢者医療のあいつぐ改悪のなかで、高齢者の生活は脅かされ、本当に必要な人に十分な介護サービスが提供できていないと指摘。「本来なら毎日1回一時間のヘルパー派遣をたのめるが、利用料が高く、月2回だけ」「介護保険料や医療費に月4〜5万円もかかり、家賃も3万円など支払いも多く、限度額の6割ぐらいしか使っていない」など高齢者の例を示し、この条例案が可決されれば、高齢者の負担は軽減され、市民の暮らしを守る上で大きな貢献となることは確実だと主張しました。
試算では、今回提案している介護保険料金の減額を実施するにあたっての必要額は約88億円で、介護保険の導入で大阪市の負担が減った分にわずか積み増しするだけで実現は可能であると主張しました。
長谷議員は、いまこそ5,000億円から6,000億円の事業費をかける夢洲の街づくりや第3セクターの銀行利子の支払いに543億円もの公金が投入されるなど大型開発の無駄遣いをやめ、市民の貴重な税金は、介護保険の充実など、市民の命と健康、福祉を守ることにこそ使うべきであると主張しました。自民、公明、民主などオール与党は、市民の切実な願いが詰まった条例案を否決しました。



 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表いたしまして、ただ今上程されました議員提出議案第25号、「大阪市介護保険条例の一部を改正する条例案」について、提案理由とその内容について説明いたします。なにとぞ慎重なご審議の上、議員各位の同意をいただけるようお願いいたします。
 条例改正案の趣旨は、介護保険の保険料と利用料の市民負担を軽減し、深刻な経済不況と相次ぐ医療、社会福祉の諸制度の改悪によって、生活の基盤がおびやかされている高齢者の生活を守ることにあります。

 提案内容第1は、第5条、第7条を改正し、国が介護保険法第50条、及び60条において規定する「災害その他の厚生省令で定める特別の事情」がある場合に加えて、低所得者、困窮世帯など「その他市長が特に必要あると認める要介護被保険者」の場合も、「100分の90を超え100分の100以下の範囲内において市町村が定めた割合」の給付を行い、介護保険利用料の軽減をおこなおうというものです。
 第2は、第8条、保険料率を介護保険法施行令第38条第1項第1号及び2号に掲げる者の保険料を0円として、第3号、第4号、第5号に掲げる者の保険料を基本額の4分の1ずつ軽減しようとするものです。
 第3に、その財源は、被保険者の保険料をあてるのではなく、当面一般会計からの繰り入れで措置しつつ、国にその財源を求めようというものであります。

 次に提案理由を申し上げます。

高齢者医療のあいつぐ改悪のなか、介護の負担軽減が急務

 第1は
、本市の高齢者にはとりわけ低所得者が集中し、介護の負担を軽減することが急務であるからであります。
 
所得段階別被保険者構成比率
(日本共産党大阪市会議員団発行・大阪市・介護保険市民のためのハンドブック 2001年版より)
  第1段階 第2段階 第3段階 第4段階 第5段階
老齢福祉年金受給者 住民税世帯非課税 住民税本人非課税 住民税課税
(所得250万円未満)
住民税課税
(所得250万円以上)
大阪市 6.0% 43.0% 25.5% 15.3% 10.2%
名古屋市 2.3% 31.4% 32.4% 19.4% 14.5%
京都市 4.5% 36.9% 29.7% 17.0% 11.9%
神戸市 4.2% 36.2% 28.9% 19.2% 11.5%

 介護保険がはじまり、また、高齢者医療のあいつぐ改悪のなかで、高齢者の生活は脅かされ、本当に必要な人に十分な介護サービスが提供できていません。ある1人暮らしの女性は、要介護度1で、限度額は165,000円、全部使えば訪問看護1回、毎日1回1時間のヘルパー派遣を頼めますが、本人負担の16,500円がとても払えず、2,000円ぐらいにしてほしいということで、入浴も月わずか1回、ヘルパー派遣も月2回だけしか利用できないのです。ある方は、デイケアで「食事がもっとたくさんほしい」と言われるので、職員の人が理由を聞くと「家に残りを持ってかえって夕食にしたいから」ということでした。また、61歳の男性は一人ぐらしで痴呆がでてきて要介護度1、年金1,400,000円ですが、特別養護老人ホームが足りないから入れない。デイケアに毎日いくべきですが、180,000万円限度なので、自費で4時間、5,000円払って週1回分を追加しています。国保、介護保険料の負担と糖尿病なので医療費3割負担で月40,000〜50,000円もかかります。家賃も30,000円など支払いも多く、限度額の6割ぐらいしか使っていません。また、月30,000円の年金で、要介護度2の女性の場合は、家族の援助なしでは一人暮らしではとてもやっていけませんし、また、ある方は、お風呂に週2回入るために楽しみにしていた月2回の室内での小運動会を1回削らねばならない、こんな例がたくさんあります。
 
厳しい制約で、減額実施は当初の予測数を大きく割り込む

 本市の実施した所得階層ごとの介護保険利用状況の調査でも、所得階層第2階層から第4階層と第5階層の間には、限度額に対する利用状況は10パーセント以上もの大きな較差があります。
居宅訪問通所系利用率平均
平均利用率 要介護状態区分
賦課段階 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5 要支援 総計
1 38.7% 47.4% 82.1% 97.9% 44.5% 46.7% 46.4%
2 32.3% 43.7% 32.4% 45.9% 31.7% 47.3% 38.0%
3 32.3% 43.6% 42.9% 31.4% 34.4% 50.9% 38.0%
4 22.3% 38.3% 47.4% 62.2% 46.1% 40.1% 37.2%
5 58.4% 35.1% 59.0% 47.5% 82.2% 54.7% 55.5%
総計 34.6% 42.7% 46.8% 42.7% 39.8% 47.6% 40.1%

これは、いかに所得の低い方の介護保険サービス利用が財政的な理由によって妨げられているかを雄弁に物語っています。
 こうしたなかで、本市でも日本共産党の相次ぐ提案と市民の要求で介護保険料の減額制度がスタートしました。しかし、生活保護基準に満たない低い所得制限や資産がなく、扶養も受けていないことなど、厳しい制約のなかで、減額が実施された被保険者は当初の予測した20,000人をも大きく割り込み、約6,000件程度に止まっています。
介護保険料減免状況
(2001年3月31日現在)
減免区分 災害 所得減少 給付制限 生活困窮
件数 14件 783件 12件 6,127件
 
 また、利用料負担の軽減策は災害など特定の場合を除いて全く行われていません。この条例案が可決されれば、高齢者の負担は軽減され、市民の暮らしを守る上で大きな貢献となることは確実です。
 
介護保険料金の減額実施への必要額は約88億円

 提案理由の第2
は、介護保険の導入によって、国と大阪市の負担割合は大きく減少し、逆に、市民の負担が増大していることです。大阪市の公式の答弁でもその額は73億円にものぼります。私どもの試算では、今回提案している介護保険料金の減額を実施するにあたっての必要額は約88億円です。大阪市の負担が減った分にわずか積み増しするだけで、この提案の実
現は可能であります。
 
市民の貴重な税金は、市民の命と健康、福祉を守ることに

 提案理由の第3は、いまこそ大型開発の無駄遣いを止め、こうしたくらしや福祉に温かい対策を行うことこそ、地方自治の本旨であるからであります。緊急の必要性がないことは市長も認めざるをえなかったにもかかわらず、5,000億円から6,000億円の事業費をかける夢洲のまちづくりや第三セクターの銀行利子の支払いに543億円もの公金が投入されるなど、先の決算委員会では、大型開発の無駄遣いがいかにひどいものであり、その規模も度外れたものであるかが、わが党議員の追及のなかで如実に示されました。こうしたところに市民の貴重な税金をつぎ込むのではなく、介護保険の充実など、市民の命と健康、福祉を守ることにこそ使うべきであり、地方自治の本旨でもあります。
 ぜひ、議員のみなさまには、市民、高齢者の願いのこもったこの条例案にご賛同いただきますよう、お願いいたしまして、提案理由の説明とさせていただきます。