“命にかかわる事態”各地で
「短期証」発行7年で130倍 大阪市の保険証取り上げ
(2001年12月23日 大阪民主新報より)
 高すぎて全額払えないので分納している人からも“滞納”を理由に国民健康保険証を取り上げ、みせしめの短期証、さらに窓口でいったん全額支払らなければならないし資格証明書を発行する−こんな大阪市の冷たい仕打ちに、命にかかわる事態が各地で起こっています。
東成区のある一家は3回短期証を発行され、あるだけのお金を持って区役所に行きましたが、「1ケ月分全額そろえて出さなければだめ」と11月に資格書を発行されました。その後、9歳の子どもが発熱しましたが、資格書だったため診療所に行くのをやめました。内装業を営む父親も、そのころ尾底骨を骨折。窓口で15,000円余を支払い、不況で仕事がない今、医者にも行かず働かざるを得ない状況。
 診療所職員の佐貫仁さんは、「子どもさんは風邪だったからよかったようなものの、あのまま熱が下がらなければ命にかかわる。現に父親は骨折したまま仕事を続けています。資格書で医者に行けず死亡した事件が北九州市で起こったが、大阪でも起こりうる状況です」といいます。
 ある女性の場合、区役所にいわれたとおり毎月きちんと15,000円ずつ分納していましたが、ある日「累積30万円ほど残っている」と金額支払うよう指導され、「夫が通院している」と訴えても、「10ヵ月分まとめて払ったら従来の保険証を出す」と迫られ、結局短期証に切り替えられました。

まず徴収あり

 大阪市の国保滞納者は120,815世帯で、そのうち17,219世帯に短期証、1,254世帯に資格書が発行されています(6月現在)。短期証発行はこの7年間で130倍にもなっています。当局は、「接触の機会を設ける手段の1つ」とし「負担の公平」を強調しますが、明らかに「まず徴収ありき」の姿勢。

なんの解決にも…皆保険制度崩壊の危機

 大阪市の国保をよくする実行委員会の仲畑誠事務局長は、「長引く不況やリストラなどの社会状況も見ずに短期証を大量発行しても、なんの解決にもならない。このままいくと皆保険制度が崩壊の危機にさらされる。大阪市には社会保障の精神はないのか」と追及します。
 結局、当局は出された実態は早急に調査すると回答しましたが、よくする実行委員会は引き続き交渉することにしています。