大阪市の3セク5社の赤字がさらに拡大
2001年度決算を受けて下田敏人市議に聞く
 ATC(アジア太平洋トレードセンター)、WTC(ワールドトレードセンター)、MDC(OCATを運営する湊町開発センター)、大阪ドームを運営する大阪シティドーム、地下街を運営するクリスタ長堀の2002年3月期決算がこのほどまとまりました。これについて、日本共産党大阪市会議員団の下田敏人政調会長から聞きました。

「今回の決算の特徴をお話ください」
 下田・・・大阪市が巨額の公的支援を続ける第3セクター5社の2001年度決算では、赤字幅は縮小したものの、尚、多額の損失を計上し、累積赤字も合計1148億9300万円にまでふくらみました。金融機関等からの借入金残高も、その合計は3686億4400万円(前年度よりわずか3億円余の減)と依然巨額にのぼり、銀行借入返済を大阪市からの公的支援(借入)で実行しているにすぎず、”自転車操業”に変わりはありません。
 これらの3セクは、「テクノポート大阪」計画(事業規模2兆2000億円)や国際集客都市づくりの中核施設と位置づけられているものであり、大阪市の大規模開発路線の破綻が抜き差しならない状況にあることが明らかになりました。ムダな大型開発から、市民生活に密着した公共事業への転換が急務となっています。
@ 3セク5社の2001年度決算
  当期損失 累積欠損金 借入金
ATC 3,215(3,417) 44,557 (41,341) 126,635(126,512)
WTC 1,530(3,165) 31,721 (30,190) 99,673(100,734)
MDC 1,313(1,518) 16,637 (15,324) 56,202(56,753)
シティドーム 2,321(5,330) 19,324 (17,003) 51,851(50,443)
クリスタ長堀 555(1,320) 2,654 (2,099) 34,283(34,513)
合計 8,934(14,750) 114,893(105,957) 368,644(368,955)
※単位100万円、かっこ内は前年度
「大阪市はこれまで相当な支援をおこなってきたはずですが」

 下田・・・大阪市は、ATC、WTC、MDCの赤字の穴埋めに1997年度から7〜8年にわたり694億円にのぼる貸し付けをおこなっています。この条件は、利率が0.25%、据え置き20年、返済期間30年という破格のものです。その上、WTCには1998年の港湾局に続き、建設局、水道局、下水道局の3局と3つの外郭団体を2000年に一挙に入居させ、「市役所南港庁舎」「第2庁舎」といわれるまでになりました。ATCは、空きフロアをうめるため大塚家具やアウトレットモール(安売り輸入品店舗)を入居させ、エイジレスセンター、消費者センター、大阪環境産業振興センターなど市関連施設を入居させました。OCAT、大阪ドームにも市関連の入居が拡大しています。
 また、シティドーム、クリスタ長堀の2社には、2001年度から17年間にわたる総額293億円の支援を開始しています。
 こうして、これら5つの3セクへの公金投入は、97年度からの支援合計858億8000万円というとほうもない額にのぼっています。ところが、それでも運転資金が不足するとして、外郭団体である大阪市開発公社に200億円もの増資をおこなってグループファイナンスをつくり、ここから、2001年度にはWTCに20億円、シティドームに46億5000万円、クリスタ長堀に23億円を融資しています。まさにいたれりつくせりです。
A 大阪市の5社への財政支援
対象 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 合計
ATC 38.7 51.7 52.2 57.7 58.4 58.5 317.2
WTC   58.7 51 76.2 68.5 71.2 325.6
MDC 0.4 30.4 30.9 32.3 32.8 32.8 159.6
シティドーム 0.4 0.4 0.4 0.5 15.7 16.9 34.3
クリスタ長堀         10.8 11.3 22.1
合計 39.5 141.2 134.5 166.7 186.2 190.7 858.8
それほどの支援にもかかわらず、なぜ経営は好転しないのですか」

 下田・・・たとえばWTCのように、当初計画に対し高さが150メートルから256メートルに1.7倍、事業費で520億円から1193億円に2.3倍と、バブルの時期に事業の過大な変更がおこなわれたため、テナントがうまらない上に、維持管理費と金利負担が拡大するなど、元々、採算をとるのがむつかしくなっているのです。やむをえず市の支援で、民間より高い賃料で市関連部局がオフィスを占めたにもかかわらず、2001年度、営業収益61億円にたいし営業費用60億円、支払い利息17億円という状況です。このように、どの3セクとも、あまりにも事業の見通しが甘かったことに起因する訳ですが、その背景には、事業が失敗しても大阪市がついているというもたれ、甘えの構造、無責任な構造があると言わなくてはなりません。
 現状は、大阪市の支援で何とか運営しているようなもので、”自立”の見通しなどもつことはできません。したがって、WTCやATCなど、あと2〜3年で支援策は終了しますが、このままでは、追加的支援策の”要請”が危惧されます。

「最後に、解決の方向についてお話ください」

 下田・・・湊町開発センター・OCAT(大阪シティエアターミナル)の国際線搭乗手続きは今春から休止しました。当初の利用見込み一日1700人に対し、昨年秋には一日4人というていたらくでした。関西空港の玄関口としてオープン、「手ぶらで関空へ」をPRしてきましたが、このCAT機能が完全に喪失したのです。OCATビルは、100円ショップや家具店を誘致し、雑居ビルと化しています。ATCの「アジア太平洋地域からの製品輸入の基地、中小流通業の拠点」、WTCの「国際交易・国際情報交流の促進に寄与する」という理念もとうに失われています。元々、公金で赤字の穴埋めをする理由はありませんでしたが、極々わずかの大義名分すら完全になくなったということになります。失敗のつけを市民におわせる公金投入はやめ、これらの事業により利益を享受しているゼネコンや大銀行など民間株主等に応分の負担を求めることです。そうして、それでも、見通しが立たなければ、法的な処理に委ねざるをえないでしょう。
※単位億円。支援内容は、貸付金、市関係の入居など