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 「乳幼児医療等医療費助成条例」(案)

寺戸月美議員の提案説明

(2008年1月30日 大阪市議会閉会本会議)

寺戸月美市会議員

2008年1月30日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表いたしまして、ただいま上程されました議員提出議案第1号「大阪市乳幼児等医療費助成条例(案)」について、提案理由とその内容について説明いたします。 

 現行の本市乳幼児医療費助成制度は、通院が小学校就学前、入院は入院時食事療養費を含め小学校3年生までとし、診療科目ごとに入院・通院各1回あたり500円以内で月2回を限度とする一部自己負担金を必要とするものです。しかし、所得制限によって約2割の乳幼児を助成対象から除外するという不平等を生みだしています。わが党の提案は、入院・通院および入院時食事療養費ともに当面小学校卒業までに拡充し、所得制限および一部負担金を撤廃することで、少なくとも小学生においては、すべての子どもたちが公平に医療助成を受けられる制度に改善することであります。

  次に提案理由です。

 第一に、本市や社会にとって、なによりも子どもたちは、かけがえのない「宝物」です。だからこそ、地方自治法は、乳幼児や子どもたちの健康保持と増進を図ることを自治体の責務としているのです。もともと本市制度は、次世代を担う子どもたちを健やかに産み、育てる環境作りの一環を担うものとして、市民の強い要望に押され、1993年に創設、以来14年間7度にわたって拡充されてきました。けれども「少子化」対策を本格的に実効あるものにするためには、今、本制度の抜本的改善が避けられないからです。 全国的に「少子化」の進行は、依然として歯止めがかからない極めて厳しい状況です。本市でも、合計特殊出生率は全国平均を下回ったまま長期にわたり低下の一途、現在では1.16まで落ち込む深刻な事態になっています。 

内閣府の「女性の意識調査」においては、重要な少子化対策について「経済的支援措置」を求める女性が7割に達し、その中で、保育所の新増設や保育料などの軽減に次いで、「乳幼児医療費の無料化」が5割近くにのぼっています。まったく当然のことと言うべきです。「少子化」の問題に対応するためには、健やかに産み、育てる環境をつくることです。子育ての障害になっている精神的負担感や経済的負担を取り除くための実効ある支援措置は急務中の急務であり、その一環として実施されている「乳幼児医療費等助成制度」の改善、拡充は極めて重要な課題と言えるのではないでしょうか。

 第二に、本制度が、福祉医療制度として住民の強い願いに後押しされ、全国の自治体で急速に制度改善・拡充がすすめられました。この10年間を比較すれば、2006年4月時点で通院では、「就学前」以上実施する自治体が1,299、自治体総数の70.3%、10年前の30倍に、入院では1,685自治体で、91.2%、8倍化と激増しています。また、所得制限「なし」とするのは1,245自治体で67.41%になっています。さらに、東京23区すべてで、入院・通院を中学校卒業までに拡充し、所得制限、自己負担金制度は「なし」としています。住民のねばり強い運動と自治体の「少子化」問題解決へのあつい思いが、制度改善・拡充のスピードアップにつながっていることは明らかです。 

本市の合計特殊出生率は、全国ワースト5です。子育て世代が実感する、重い経済的負担感など、産み育てる環境が未だ充足されていない結果と言えます。それだけに全国の平均的施策に合わせるテンポでは、本市の「少子化」対策に実りある前進は、到底期待できません。今こそ、大胆に質・量ともに制度の抜本的な改善・拡充に踏み出すべきではありませんか。

第三には、財政の問題です。本制度の予算額は、19年度52億8千万円で本市一般会計のわずか0.003%に過ぎません。東京の世田谷区では、本市児童数の4分の1にもかかわらず33億7千万円、一般会計の0.01%を占め、本市の3倍もの財政を投入しています。この施策の重要性、緊急性に鑑みて、本市でも思い切った財政投入が求められています。

本市は「財政危機」を理由にして、福祉を切り捨ててきました。しかし、財政危機を引き起こしたおおもとは、債務2000億円を超える阿倍野再開発や夢洲などの臨海部開発での破たん等々で明らかになったムダな大型開発優先の市政運営や同和行政への公金投入などによるものです。市民の福祉増進を任務とする自治体が、深刻な「少子化」の問題を解消して、未来に希望のもてる大阪市にするための本制度に必要な財政を投入することは、あたりまえのことではないでしょうか。

わが党が提案している入院・通院を中学校卒業まで拡充するには、わが党の推計によると20〜30億円を現行予算に上積みすれば制度の改善・拡充は充分に可能です。厚生労働省の「国民医療費動向調査」から試算をすれば、0才〜4才までの医療費総額と5才〜14才までの医療費総額の対比では、概ね1対1です。加えて、従来、健康保険の医療費が3割負担であった3才以上について、2008年4月より「就学前」までは2割負担に軽減される改正がなされ、その結果、本市の負担がその分軽減されることになります。

併せて本制度は、所得制限によって子どもたちに不平等をもたらしています。本来、福祉的措置というのは、その目的からして措置を受ける側の所得や環境で排除することがあってはならないことです。とりわけ、本制度が次世代を担う子どもたちを健やかに産み育てるという特別な位置づけがなされていることからしても、所得制限や一部負担金を撤廃することこそ、本制度の目的にそうのです。

議員のみなさん。子どもたちを心身ともに健やかに育んでゆく上での医療の重要性をふまえて、医療面からの子育てにかかる経済的負担と精神的負担感の軽減をはかることが、喫緊の課題ではないでしょうか。平松市長も「義務教育終了まで引きあげる」ことを選挙公約とし、「財政的な課題など今後研究が必要ですが、前向きに検討したい政策であると思います」と述べておられます。

乳幼児医療費助成制度の改善・拡充は、大阪市の未来を展望する重要な施策です。少子化という深刻な問題を解決し、安心して子どもを産み育てられる豊かな住み良い元気な大阪市をつくるために、会派を超えてご賛同をたまわり、可決・成立させていただきますようお願いし、わが党の19回目の条例提案とさせていただきます。ありがとうございました。                                     

以上