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「乳幼児等医療費助成条例(案)」

井上ひろし議員の提案説明

(2009年12月17日 大阪市会閉会本会議)

井上ひろし市会議員

2009年12月17日

 

私は日本共産党大阪市会議員団を代表いたしまして、ただいま上程されました議員提出議案第24号「大阪市乳幼児等医療費助成条例(案)」について、提案理由とその内容について説明いたします。

 現行の本市乳幼児等医療費助成制度は、通院が小学校就学前、入院は入院時食事療養費を含め小学校卒業までとし、診療科目ごとに入院・通院各1日あたり500円以内で月2日を限度に、一部自己負担額を必要とするものです。さらに、所得制限によって助成対象から排除される乳幼児が存在するという不公平を生みだしています。

 わが党の条例改正提案は、当面、入院・通院および入院時食事療養費ともに中学校卒業までに年齢を引き上げ、すべての子どもが安心して医療を受けられるよう、所得制限および一部負担金制度を撤廃し改善をすることであります。

 わが党は、総合的な子育て支援の実施を提案していますが、こども医療費については国による「無料制度」の創設を求め、本市においては、繰り返し条例提案をおこなってきました。今回で20回目であります。

 「子どもの貧困」をなくし安心して子どもを産み育てられる社会にするため、様々な「子育て支援」の施策は、今日的な喫緊の課題であります。

本市でも総合的な子育て支援の「要」をなす重要な施策として実効性ある制度に改善・拡充をおこなうよう提案するものであります。

以下、提案理由です。 

 

第一には、貧困と格差の広がりのなかで医療を受けられないこどもが急速に増加しているからであります。

10月4日にNHKスペシャル「セーフティ・ネット・クライシス」が「病院で治療費が払えないので、学校の保健室で治療をして貰う児童や学用品が買えない小学生」など、こどもの貧困の深刻な実態の一端を放映しました。胸がつぶれる思いでありますが、これこそ格差と貧困を広げた結果ではないでしょうか。

 本市の合計特殊出生率は、1965年の2.04をピークに低下傾向は歯止めがかからず、2007年には1.20に落ち込んでいます。その結果、18政令市の中でも12位となっており、全国平均値も毎年下回るという極めて深刻な事態になっています。

こども未来財団の2009年「子育てに関する意識調査」では、子育て層、未婚者、既婚者を問わず「子育てにたいする社会的支援が不十分」との回答が7〜8割を占め、行政施策、とりわけ経済的支援への期待の強さが示されています。同時に、三菱総研などの調査結果でも「乳幼児医療費無料制度」について「適用年齢の上限が低い」ことや「年収制限が厳しい」などに不満を持つ回答が4割を越えています。        

これらは経済的負担感が子育てをしていく上での高いハードルと重圧になっていることを端的に示しています。まさに、制度改善・拡充の要求が社会的広がりとなっている証ではないでしょうか。

 

第二には、乳幼児等医療費助成制度を拡充することは、本来、政策の優先課題にするべきだからです。

本市は財政難を理由に経費削減に熱心ですが、財政難に陥った原因は、医療、福祉や弱者救済に経費をかけすぎたからではないはずです。いや、むしろ、後回しにされてきたのが、この分野なのです。本市は、経費削減や「事務事業総点検」で歳入不足を補うと言って、福祉、こども、教育などに大鉈を振るおうとしていますが、財政危機の大元は、何と言っても、WTCや阿倍野再開発などの大型開発失敗の負の遺産を引きずりながら、反省もなく失敗した路線を踏襲しているところにあります。

言うまでもなく、子どもは社会の宝です。「子育て支援」を充実させること以上の「未来への投資」があるでしょうか。乳幼児等医療費助成制度の拡充は、地方自治法の精神に則って自治体の当然の仕事をするための財政投入ですから、ムダな大型開発と違って市民の批判を受けることなどまったく心配ありません。

わが党が提案する入院・通院を中学校卒業までに拡充するためには、厚生労働省の患者調査における受療率から試算したわが党の推計では、20億円程度の予算を上積みすれば充分可能です。加えて昨年2008年4月から「就学前」までは保険料自己負担分が2割に変更され、本市の助成額も、2008年度決算見込みで7億円余り減額されたことからも、ごく僅かの財政出動で実現するのであります。

 

第三に、本制度が次世代を担う子ども達をすこやかに産み育てるという特別な位置づけがなされていることからしても、所得で排除することがあってはならないからです。すべからくこどもたちに公平に助成されることが本制度の目的です。所得制限を撤廃することは、最も目的にふさわしいありかたではないでしょうか。

 

第四に、本制度は、福祉医療制度として住民の強い願いを背景に全国で急速に制度改善・拡充がされているからです。現在も引き続き改善・拡充をすすめる自治体が広がり、対象年齢引き上げが多数派になっているのが大きな特徴であります。なお、東京都23区ではすべてで通院・入院とも中学校卒業までを助成対象としています。

「少子化」問題の抜本的解決をめざす自治体の財政出動と住民の願いが一体となって効果をあげていることは明白であります。

また、ドイツ、イギリス、イタリア、カナダ、スウエーデンなどでは、こどもの医療費は無料としています。子育て世代が「子育てしにくい」と失望するような街ではなく、「ずっと住み続け、この街で子どもを育てたい」と思える街にしていくために、本市が子育て世代の切実な願いに真剣に耳を傾け、制度の改善・拡充をおこなうことを子育て世代の一人として私は強く訴えるものであります。

 

以上、四つの提案理由を説明しました。

議員のみなさん。こどもたちを心身共に健やかに育んでいく上での医療の重要性を踏まえて、医療面からの子育てにかかる経済的負担の軽減をはかることは喫緊の課題であります。乳幼児等医療費助成制度の改善・拡充は、本市の未来を展望する重要な施策です。「こどもの貧困」を解決し、安心してこどもを産み育てられる豊かな住み良い元気な大阪市をつくるために、会派をこえてご賛同賜り、可決・成立させていただきますようお願いし、条例提案とさせていただきます。ありがとうございました。