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山中議員の「大阪市乳幼児等医療費助成条例案」提案説明

山中智子市会議員

2011年3月16日

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表いたしまして、ただいま上程されました、議員提出議案第13号、「大阪市乳幼児等医療費助成条例案」について、内容と、提案の理由を説明いたします。

 内容は、乳幼児医療費助成制度の対象を、通院・入院ともに中学校卒業までとするとともに、すべての年齢について所得制限をなくし、あわせて、一部負担金を撤廃するなどの改善を行うものです。

提案理由を申し上げます。

いま、貧困と格差の広がりが社会問題となるなかで、子どもをどう貧困から救うのかが社会共通の課題となりました。そして、あらゆる手だてをつくして子どもを守ることが、社会的な合意となり、とりわけ、子どもの命を守るために、せめて子どもは、家庭の経済状況などとは関わりなく、必要な医療を受けられるよう、無保険の子をなくす措置もとられました。

この精神は保険証の交付だけでなく、実際の受診に関しても、貫かれなければならず、乳幼児医療費助成制度に、所得制限や一部負担を設けることは、この精神に著しく反しているといわざるを得ません。

いま、働く人の収入が減りつづけていることは周知の事実です。また、今日ほど、多くの人が、失業、倒産、雇止めなど、不安定な雇用にさらされているときはありません。こうした時に、前年度の収入を杓子定規に運用する所得制限があることで、必要な家庭が医療費助成を受けられないようなことがあってはなりません。そうした配慮から、いまや、全国7割近い自治体が所得制限をなくしていますし、本市でも、今年の11月から、0歳1歳2歳の所得制限を撤廃することになりました。所得制限が理不尽だからこその判断であり、ならば中途半端なことをせず、すべての年齢について、所得制限をなくすことはあまりにも当然ではないでしょうか。

一部負担金についても、1回500円、月2回までであっても、兄弟が同じ病気にかかったり、複数の科や病院を受診したりすることは、よくあることであり、結局、受診抑制につながりかねないことを、わが党は繰り返し主張してきました。

母子家庭で育つ小学校2年生の女の子が、登校してきたら38度の熱があった。その子は、「お母さんに電話せんといて。私、頑張れるから。お母さんは派遣だから休めない」と、ポロリと涙をこぼしたと、養護の先生が話してくれました。たった8歳の子が、自分のしんどさより、子ども心に、お母さんが仕事を休めば収入が減る、クビになるかもしれない、と心配する。これほどまでに、親子がギリギリのところで歯をくいしばって営んでいる暮らしのなかで、一部負担金などどうして捻出できるでしょうか。受診抑制によって、取り返しのつかない事態を招かないよう、一部負担をなくし無料の制度にするべきです。

そもそも、この制度が始まった1993年10月、同時に制度をスタートさせた大阪府が、入院のみの助成だったなかで、本市は独自で、通院についてゼロ歳児を無料とし、その後も2001年まで、実に年間にわたって、通院の助成を行おうとしなかった大阪府を尻目に、1歳、1歳、通院無料の年齢を広げつづけてきたのです。独自の努力で、全国でも、府下でも比較的進んだ助成を行ってきました。ところが、2004年、大阪府が一部負担を導入した際、チャッカリ一緒になって一部負担を取り入れ、また、通院についての対象年齢も2002年に小学校就学前として以来、10年近くピタッと拡充をやめてしまい、いまや、他の自治体と横並びか、むしろ遅れ気味のそしりを免れない水準になってしまいました。しかし、本市はこんな水準に安住していることは、絶対に許されないと申し上げたいのです。

本市では、一昨年と昨年、2年つづけて、ほんとうに痛ましい児童虐待事件が起きました。二度と繰り返すまい、これが行政・議会・そして市民の皆さん、すべての決意です。この決意の表明として、昨年暮れ「大阪市児童を虐待から守り子育てを支援する条例」が制定されました。一日も早く、具体的な施策を前進させて、この条例を実効性あるものにすることが求められています。

何をなすべきか。着目すべき調査があります。2008年の4月から6月、全国の児童相談所に虐待として通告された事例すべてを対象とした悉皆調査の結果が2009年に公表されました。調査結果は、全体の三分の一の家族において「経済的な困難」が、虐待につながる要因と判断され、他の要因と比べて最も比率が高い、というものであり、経済的な不安を取り除くことが、虐待を防止する、具体的で有効な施策であることを、ハッキリと示しています。子どもが病気の時ぐらい、お財布の中身の心配をしないで病院に行ける、これほど大きな経済面での安心はありません。入院だけでなく、より機会の多い通院も中学校卒業まで広げるとともに、所得制限も一部自己負担も撤廃することに踏み切ってこそ、二度と虐待は起こさない本市の決意と姿勢を具体的な施策として明確に示す最も確かな道ではないでしょうか。

私は、1993年5月に長女を出産し、その年の10月にこの制度が始まりました。1歳になるまでの半年間でしたが、大阪市が発行した無料の医療証にどれだけ励まされたかしれません。「私の子育てを、大阪市が応援してくれている」心強さと同時に、「しっかり育てよ」とのメッセージと受け止め、責任を強く感じたことを、今も鮮明に覚えています。「子どもは社会の宝だ、総がかりで育てるのだ」と、幾千の言葉を繰り返すより、より強く確かに、子育て支援につながることを肌で知る者として、この心強さと責任を、一人でも多くのお父さん、お母さんに伝えたいと願ってやみません。

ぜひご賛同いただきますようお願い申し上げまして、提案の説明といたします。