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市議団の実績

2001年3月28日閉会本会議での

稲森豊議員の反対討論
 

私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2001年度大阪市一般会計等予算案に対する組み替え動議に賛成し、原案に反対の討論を行います。
今、市民をとりまく状況は、政府のデフレ宣言にもみられるように、一段と厳しさをましています。
こういう中での大阪市予算編成が、いかにあるべきかは明白であります。これまでの、巨大開発優先を改めて、市民の家計を直接あたためることを主眼とした編成を行って、文字通り市民が主人公の21世紀型市政運営への転換をはかることであります。
しかるに、本予算原案は、市民の願いは冷たくあしらいながら、下水道料金や高校授業料の値上げを押しつける一方、巨大開発に大盤振る舞いしているのであります。断じて容認できません。
以下、具体に指摘したいと思います。

先ず、反対理由の第1は、国民健康保険料などの料金値上げを押しつけると共に、市民の願いには、ことごとく背を向けているからであります。  

今、長期にわたる不況の下で、市民のくらし向きには、大変厳しいものがあることは言うまでもありません。こういう中で、市民のくらしを守るべき大阪市が、こともあろうに、国保料金の連続値上げをはじめ、下水道料金は15%、高校授業料は全国一の高さにまで引き上げるなど、実に、8項目、平年度ベースで80億円もの料金値上げを行って、市民負担をふやし、逆に、くらしを悪化させております。到底、認めることはできません。
 又、同時に、市民の願いには、全く冷たい態度に終始いたしております。
介護保険の問題では、市民が望んでいる保険料減免の改善や利用料減免制度の新設に踏み込むべきでした。特に、利用料の減額は切実なものがあります。利用料の負担に耐えられなくて、必要なサービスを受けられない人が続出しているからで、それは、給付費が7ヶ月間で、当初見込みと比べ、146億円も少ないことからも明らかです。
仮に低所得層の、保険料区分第一、第二段階の利用料を在宅サービスすべてを無料にしても必要な財源は10億円余りですむのです。にもかかわらず、全く実施しようとしなかっったのであります。
学童保育についても、いかに市民の大きな要求があるかは、直接請求の状況をみれば明らかであり、市長も学童保育の必要性を否定することはできなかったではありませんか。ところが大阪市は、一円も補助金を増やさず、広報で市民に学童保育の周知を行うことさえ拒否しました。これでは大阪市は市民の世論に逆らって、学童つぶしをねらっているといわれても仕方がありません。
また、本議会は、あの日本中をゆるがした雪印食中毒事件がおこってから最初の予算議会です。市民は、大阪市がいかにして市民の食の安全を守ってくれるのかと注目したことでしょう。ところが、大阪市は雪印食中毒事件当時174人いた監視員を、なんと、47人に激減させていることが予算審議のなかで明らかになりました。この事件の最大の教訓は、企業まかせでは、決して市民の安全は守れないということではなかったでしょうか。以前の人数でも、国の定めた基準の30%しか監視ができていなかったにもかかわらず、 これでは市民の健康と安全が守れるはずがありません。

又、委員会審議を通じて、大型店舗の出店から商店街を守るべき大阪市が、逆に足を引っぱっていることが明らかになりました。
今、長引く消費不況と大型店の進出によって、どこの行政区でも、商店街はたいへん厳しい状況にさらされています。なかでも阿倍野区では、売り場面積占有率がすでに60%を超えている区内の大型店の影響をもろに受けて、商店数が1985年と97年を比べて4割も減っているのであります。
 したがって、これ以上の大型店の進出は断じて、許されるものではありません。ところがそのような中で、なんと大阪市が、阿倍野再開発A2地区に約2万5千平方メートルに及ぶ大型店舗を誘致しようとしているのであります。言語道断と言わなければなりません。

 又、少人数教育をめぐる問題も指摘しなくてはなりません。今国会では、日本共産党・民主党・社民党の3会派が共同して、学級編制そのものを「30人学級」にする法案を、提出して審議されております。我が党委員が「今日の学力の危機や荒れに対応するためには、部分的な小人数授業ではなく学級編制を縮小することが必要ではないか」と質しましたが、教育委員会は「学級規模の縮小が効果があるかどうかは国の研究を見守りたい」という従来の答弁を繰り返しました。
さらには、「障害児を入れれば、実質41人となっている学級が33もある」こと、又、「学年進級時に生徒が減ったために、20〜21人の2クラスが40人の1クラスに編成替えされるなどの激変学級が40ある」ことや、これらに対する他都市の積極的な是正事例等を示して、「大阪市でも独自に非常勤講師を確保するなどして、40人以下の学級編制にするよう努力するべきだ」と質したのにたいしても、市教委はこれも「あくまで府の判断。動向を見守りたい」との極めて消極的な答弁に終始したのであります。

 又、本市の「新行財政改革計画」が、数値目標として「今後5年間で、市長部局で2000人(5%)職員数を削減する」計画を掲げていることも重大問題であります。
 本市の各職場では、社会状況の変化によって業務多忙となり、職員の長時間・過密労働がすすみ、サービス残業や休日出勤が常態化し、ストレスの蓄積など健康破壊がすすんでいます。そうして、実に、在職死亡者は毎年90人から100人もでているのであります。
 にもかかわらず、「財政難だから行革・人べらし」と、一方的に職員の削減を進めることは、行財政運営の誤りのつけを、職員の犠牲と市民サービスの低下により解決しようとするものであり、到底許されません。 

第2は、巨大開発に、莫大な予算を投ずると共に、その失敗の穴埋めに、又、公金を投入しようとしていることです。

磯村市長は、あれ程、市民の批判の強かったWTCへの3局移転を強行したのをはじめ、引き続き、3K赤字の補てんのために、莫大な公的資金を投入しようとしております。なかでも、委員会審議を通じてアジア太平洋トレードセンターにたいする大阪市の支援が、いかに度はずれたものであるかも明らかになりました。
ATCには、毎年33億円、7年間で227億円も貸し付ける他、コンセプトとはまるでちがう大塚家具や安売り店などの大型店舗を誘致していますが、その上に、大阪市は、床を借り上げて経済局などが13もの事業を行っており、その面積がITM棟の床の4分の1、その賃料等も年間28億円にも達しているのであります。大型店舗と大阪市が使用している床面積の合計では3分の2にもなります。
さらに、経済局の予算で見れば、融資事業を除く主要事業予算、123億円のうち、その半分がATC支援に使われているのであります。全く異常という他ありません。

又、今回、3K赤字に続いて、シティドームやクリスタ長堀の経営破綻が明らかとなって、5K赤字となりました。磯村市長の国際集客都市論の破綻でもあります。
シティドームは、元々、民間企業にまかせるべきところ、大阪市が筆頭株主となって推進したことがまちがいで、失敗したからといって、総額193億円もの公的資金をつぎ込むなんてことは許されるものではありません。周知のように、1997年に開業いたしましたが、99年度決算で累積欠損が116億円余りにも達し、債務超過におちいりました。年間利用計画では、プロ野球60日180万人、イベント等232日370万人となっていましたが、昨年は、プロ野球98日156万人、イベント153日167万人という状況で、全くマーケットリサーチが甘かったのであります。

又、クリスタ長堀の経営破綻に対しても、当局は、全く無反省に、総額101億円もの支援を行おうとしています。
長堀通りの地下という、およそ集客が見込めないところに、830億円もの事業費を投じて、駐車場や超豪華な地下街をつくってもうまく行くはずがなかったのであります。明らかに過大投資であり、いざとなれば、大阪市が控えているという依存心がみえみえだと言わなければなりません。
開業以来すでに、3分の2ものテナントが入れ替わって、小売り商店の活性化にはつながらず、ゼネコンだけをうるおわせたような事業に、失敗したからといって、公金で穴埋めする、どだい、許されるものではありません。

さて、USJとその関連する事業について指摘しておきます。
委員会審議を通じて、この事業にのめり込む市長や市当局の言う大義名分というものが、全く成り立たないものであることが明らかになったのであります。
市長などは、関西経済の起爆剤になるとか、大阪の他の集客施設にとってもプラスになると盛んに宣伝してきました。
ところが、関西にある既設のテーマパークなどは、戦々恐々としているのであります。ただでさえ入場者が減少しているのに、更に、競合により、追い打ちをかけられるのは必至といわれています。
大阪の他の集客施設も同様であります。フェスティバルゲートなどは、決定的なダメージを受けると言われているではありませんか。海遊館なども、マイナスの影響は避けられそうにありません。
又、当局は、USJを核とした映像産業の集積をはかり、4000人の住む街をつくるなどと言ってきました。
しかしながら、どれも、全く裏づけがなく、その見通しが立っておりません。そして、何よりも、USJの事業そのものが、大変なリスクを負っているのであります。
公共性という点から考えても、大阪市がこのような事業に、人も金もつぎ込んで行う必然性は全くないのであります。

 又、港湾局の咲洲コスモスクエア運河事業についてもとんでもない無駄使いが明らかになりました。この事業は埋め立てた所を又掘り返し運河を開通させると言うもので、まさにゼネコン向けの公共事業以外の何物でもありません。
 案の定、計画後3年で既に予定していた30億円の事業費を使い果たし、資金不足で事業を縮小せざるを得ない状況に追い込まれたのであります。しかもこの変更により既に完成していた橋梁(2億9000万円)と施工中の橋梁(1億4100万円)が不要になり、一瞬にして4億3000万円の公金が文字通りドブに捨てられるがごとく無駄となったのであります。
 加えて、天野一前大阪市会議長が、請負業者の利権のために競争入札妨害を行い、辞任に追い込まれた舞台の一つがこの運河工事であったことも、指摘しておきたいと思います。

 又、交通局は西区新町1丁目にある面積約800平方メートルの旧電気科学館跡地で伊藤忠商事に、「ホワイトドームプラザ」という名のホテル経営をさせようとしています。ところが、この中身を見てみますと、伊藤忠がホテルを建設し、交通局がこれを約26億1300万円で買い取り、さらにそれを同企業に20年間賃貸するという奇妙なものであります。
 その上、その賃料も、建物価格に、財産条例でうたっている年6%をかけるのみで、土地の時価を計算に入れないばかりか、3億7300万円もの公金を投じて、地下鉄駅からホテルに直結する専用通路とエスカレーターまで建設するという出血サービスぶりであります。このような土地と公金を使った特定大企業への特別支援は断じて認められません。

第3は、終結すべき同和事業をなお継続して、部落問題解決に逆行しているからであります。

周知のように、根拠法であった地対財特法は、1997年3月末、既に失効しております。同和行政の目的である格差是正は基本的に達成されており、一刻も早く終結されなければなりません。特別対策を長く続けることは、同和地区を固定化させ、地区内外の社会的交流や連帯を妨げることになり、部落問題の解決に逆行することになるからであります。
ところが、磯村市長はわが党委員の指摘に対し、「差別の事象が存在するので、人権行政のなかで解決していかなければならない。同和行政をどのようにするかは、夏に出される同推協意見をもとに決める」と答え、終結することは明言しなかったのであります。
また、本市の同和行政をゆがめてきた大阪市同和事業促進協議会・地区協議会を解散し、解体することが、緊急に求められております。ところが、新年度予算案には、市同促への委託・補助・助成金として、35億1000万円もの巨費が計上されおり、理事者は、来年度以降、市同促を形を変えて存続させるという答弁すら行ったのであります。

 また、委員会を通じて、芦原病院に対する助成が、極めて異常な実態にあることが判明したのであります。
芦原病院への運営助成と整備費は、毎年6億1500万円もの巨額が計上されてきましたが、実際には、この上に特別貸付金を約4億円上積みし、都合、10億円以上にものぼっていたのであります。
しかもこの特別貸付金は、予算計上もされていないのであります。委員会で、このことを指摘された理事者は、正式に謝罪したものの、なおこれからも助成を続けるというひどさであります。
ちなみに、この浪速医療生協という法人が経営する一民間病院に、1971年以来、29年間の補助金支出が136億円、貸付金は特別もあわせ118億7800万円にのぼるものの、まだ1円も返済されていないのであります。到底、市民の理解はえられません。

最後に、一言、教科書問題で指摘しております。
今回の議会では、いわゆる「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書検定にたいして、アジア諸国から批判の声が起きていることをとらえて、自民党議員の中から内政干渉だとする議論が行われました。
しかしながら、今日の日本とアジア諸国との関係の基本的前提は、98年の日韓共同声明や日中共同声明でも明らかなように、かって武力による植民地化や侵略戦争でアジアの人々を苦しめた日本が、それを反省する姿勢を示したことであります。したがって植民地化や侵略戦争を美化する教科書をつくるなどは、あってはならないことであります。こうした動きに対して、中国や韓国をはじめアジア諸国が、日本政府に有効な措置をもとめ、両国関係に悪影響を与えると警告するのは当然のことであります。それをあたかも内政干渉だと非難することこそ、今日のアジア諸国との友好関係の基本的前提を破壊するものではありませんか。
今年は教科書採択の年であります。わが党は、何よりも、現場教師の意見を反映させるなどの民主的なシステムで、今日のアジア諸国との友好関係の基本的前提を損なうことのないよう、教育委員会にたいして、「教科書採択にあたっては公正、公平な姿勢でのぞむ」ことを求めるものであります。

 以上、予算組み替え動議に賛成、原案反対の討論とします。