私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2001年度大阪市一般会計決算等の認定に、反対の討論を行います。
申しあげるまでもなく、今、小泉自公保内閣による悪政とそれによる長期の不況の下で、市民のくらしや中小企業の営業は、大変深刻な状況に立たされています。こんな中で、地方自治体が、住民の福祉の増進につとめるという、その本来の役割をしっかり果たすことが、今ほど求められている時はありません。
ところが、本決算にあらわれているのは、国保料金の値上げなど、79億円もの負担増を市民に押しつけた上に、市民の切実な願いは冷たく切り捨てる一方で、巨大開発とその失敗の穴埋めには、まことに手厚く予算執行するという逆立ちした姿です。
そうして、市債残高は、一般会計で2兆5000億円と、財政非常事態宣言を出さざるをえないほど、財政を悪化させました。とうてい、認めることはできません。以下、具体的に指摘したいと思います。
まず、磯村市長が、一般決算特別委員会の冒頭、「財政非常事態宣言」を表明したことについて指摘しておきます。これほどまでに財政困難になったのは、政府いいなりに景気対策としての公共事業を推進し、そればかりか巨大開発失敗の赤字穴埋めに公金投入をおこなってきたからです。それは、80年代の10年間の本市公共投資が、3兆9000億円であったものが、90年代は、8兆1000億円にまでふくれあがり、5K赤字の穴埋めにこれまで860億円もの巨費を投じていることからも明らかです。わが党委員が、これらのことを示してただしたのに対して、市長は、税収の低下や国の地方財政の方向が不透明になったことをあげ、「過去にまちがった事をやったために財政不足におちいったわけではない」などと、これまでの借金に借金をかさねた財政運営を正当化し、まったく反省がみられませんでした。
また、来年度は900億円の財源不足におちいるとし、その矛先を、福祉や人件費に向け、市民と職員へのしわよせで打開しようとしていることは、とうてい認めることはできません。生活保護年末一時金2000円カットで約1億円の削減、学校維持運営費5%カットで約4億6000万円の削減、職員給与5%カットの提案など、このような冷たいしうちはただちに中止し、むだな大型開発にこそメスを入れるべきと申し上げておきます。
さて、反対理由の第1は、市民の願いが、冷たく切り捨てられていることです。
まず、介護保険ですが、2000年度に続き、2001年度も実に、177億円もの介護給付費の不用額、つまり、未執行額を出しています。その結果、介護保険会計には、約75億円もの剰余金がためこまれることになりました。これは、利用料が高くて、介護サービスを手控える高齢者が多いことや、特別養護老人ホームの待機者が3654人にみられるように、施設サービスも進んでいないことによるものです。
ところがいま、このように介護にかかる市民負担を軽減することが必要であるにもかかわらず、来年度からの「高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」の素案では、介護保険料について13.5%もの大幅値上げの計画となっています。私が、この値上げはやるべきだとただしたのに対し、理事者は「保険料は上昇幅を少しでも圧縮できるよう検討したい」と答えました。しかし、次期計画での値上げによる市民負担増は、3年間で約73億円ですから、剰余金の取り崩しだけでも、値上げはストップできるではありませんか。値上げストップの方向での検討を強く求めておきます。
また、特養ホームの増設も市民の切実な願いです。1つしかない中央区など市内中心部からは、市民として不公平感を感じると怒りの声が上がっていますが、相も変らぬ「全市的立場で」では到底納得できるものではありません。介護保険が導入され、保険料を払っているわけですから、住み慣れた地で、希望者全員が入れる特養ホームの増設は当然ではないでしょうか。
また、高齢者住宅改修費助成制度30万円を、せめて府下並に100万円に引き上げ、対象事業の拡大を図り、所得制限の緩和で府下市町村との格差を是正するよう、私が迫ったのに対し、理事者は、悪質業者問題に論点をすりかえ、まともな答弁をしなかったのです。
また、国民健康保険について、2001年度も3%の値上げをおこないました。その結果、滞納者は、2000年度の12万815世帯から13万3006世帯へと、また増加し、加入世帯の20%をこえました。これは、もはや高すぎる国保料金が負担の限界に達しているなによりの証明ではないでしょうか。しかし、大阪市は、この連続値上げ路線をやめようとはせず、その上、高すぎる国保料が払えない世帯に対して、短期保険証を大量に発行し、子どもが6人もいて児童扶養手当がうち切られて困っている母子家庭にまで資格証明書を発行し、医療を受ける権利を奪っています。こうしたことは、ただちにやめるべきです。
また、障害者対策では、支援費制度の導入により、来年度から大幅な減収となる施設が4割近くあることが、明らかになりました。こういうときこそ、「市独自の補助の継続」をと、私が求めたのに対して、理事者の答弁は、「残す」とは明言しない冷たい態度に終始しました。
市民福祉を削ることで本当に胸が痛むのは、大阪市の貧しい保育所待機児対策です。
周知のように、大阪市の保育所待機児数は、2002年4月1日で、約1800人と3年連続で全国一です。この対策として大阪市は、公立、私立の保育所の新設、増設により解消するのではなく、保育士の配置基準の引き下げや、定数以上の詰め込み、また、駅前保育所の新設などで、急場をしのいできました。その結果、市交通局の施設を貸与している朝潮橋の分園は、大通りに面したバス停前にあり、「排気ガスが心配」と、なんと空気清浄器を設置して保育がされています。私は、「本来なら、こうしたやり方ではなく、園庭もあり、プールもある設備も整った本来の保有園で子供を保育したい」という施設側の声も紹介しましたが、理事者は、こうした安上がりの待機児解消策を今後も続けると強弁しました。120人定員の公立保育所をあと、17ヶ所増設すれば、公立だけでも待機児を解消できるのです。未来を担う子どもたちにこそ、手厚い施策をおこなうべきではありませんか。
また、教育についていえば、アメリカが前クリントン政権のもと、教育戦略として18人学級に踏み出すなど、少人数学級は、日本だけではなく世界の流れにもなっています。京都市は、来年度35人学級に踏み出します。大阪市で、小学校、中学校で、各1学年、35人学級にするためには、小学校で71学級増、中学校で72学級増にすぎないことを、わが党委員が示したのにたいし、理事者は、「教育効果はまだわからない」と、時代錯誤の見解に固執しました。本当に許しがたいと言わなければなりません。
決算認定に反対する第2の理由は、巨大開発や自治体が手を出すべきでないUSJ事業などに引き続き巨費を投じるばかりか、破綻した第3セクター支援に、市民の税金が湯水のように使われているからです。
まず、USJ事業についてですが、大阪市は、これまで、関西経済の起爆剤になるなどと大見得を切って、公共性のうすい娯楽施設のために、出資金・貸付金200億円、区画整理補助金167億円、港湾局用地375億円、臨港道路負担金52億円、その他45億円、合計839億円をつぎこんで、事業を推進してきました。ところが、かんじんの地元商店街はうるおわず、「映像産業を立地させる」などの公約もことごとく破綻しているうえに、此花臨海土地区画整理事業で事業費確保のための保留地の大半が、USJ事業の底地や駐車場の用地としてすでに使われ、売却が困難になっています。必要な事業費は、大阪市が起債をして立て替え払いしているため、最終的には486億円分の起債の返済が焦げつき、これも大阪市の負担となり、あわせれば、なんと1325億円にもなります。ぼう大な額ではありませんか。
また、ATC、WTCなど5つの第三セクターに2001年度低利の貸付金や実質的な支援事業である市関係の入居など、186億円も支出しています。
今決算議会では、これまで賛成してきた与党の委員からでさえ「こんな状態では三セク支援は市民の理解えられない」という意見がだされました。財政が非常事態というのなら、財政悪化の一つにもなった三セク支援をきっぱりやめるのが当然ではありませんか。ところが市長は「各社の将来見通しについて専門家も含めた客観的検討が必要」などと、支援を継続する態度を示しました。
次に、2001年度決算でも44億円の支出がなされている関空2期工事の問題です。わが党委員が指摘したように、「2期工事は当面不要である」という議論にはほぼ決着がつきつつあり、日本経団連からも、「工事を延期せよと」いう声が出されるなど、2期工事の必要はまったくありません。
阿倍野再開発事業についてもふれておかなければなりません。いよいよ事業の最終段階を迎え、A1地区の商業施設に着手しようとしていますが、過去の赤字分をとりもどそうとして、規模を巨大なものにし、さらに傷口を広げることが必至となっています。それは、キーテナントを募集しても、アメリカのサイモン・プロパティ・グループ一社しか応募意向がないことからも明らかではないでしょうか。しかも、事業が特定建築者制度という手法を取り入れ、建設はサイモンがおこない、それを大阪市が買い取とった上、サイモンに賃貸するという至れり尽くせりの内容となっている上に、サイモンはいつでも撤退できることになっているからです。これ程、リスクの大きい事業はないと言わなくてはなりませし、近隣商店街等への悪影響も懸念されるところです。全面的な見直しを求めておきます。
土地信託事業にかかわる市長の姿勢についても指摘しておきたいと思います。霞町のフィスティバルゲートは、累積赤字が96億円にものぼり、10月8日の公営決算委員会で、わが党委員が、「銀行の責任で事業委託解除」を行うよう強く求めたのに対し、市長は、「何とか再生を図る」と答弁するにとどまりました。ところが、1年半も前から、銀行から「赤字が累積し事業継続が不可能」とのことで信託契約の辞任の申し入れが行われ、さらに今年7月には、調停の申請まで行われていたことが明らかとなりました。
わが党委員が、議会にこのことをかくして、解決の先延ばしをしていたことを、厳しくただしたのに対し、市長は、「参画業者に影響があるから公表しなかった」などと言い訳する答弁に終始したのです。無責任きわまりないものと言わなければなりません。
さて、反対理由の第3は、市長の政治姿勢が、天下り問題でも、交際費問題でも、とうてい、市民の納得が得られるものではないからであります。
大阪市が、これまで次々と外郭団体をつくりだし、その上、赤字を出せば公金で穴埋めをする、こういうことを繰り返してきたのは、幹部職員の天下り先を確保するためではないかと言われてきました。それが、今回のわが党委員の質問で、2001年度末の課長級以上の退職者378人中、外郭団体への就職者が147人にものぼっていることが明らかになり、このことが裏付けられました。
しかも、局長級で退職した場合は、社長などのポストにつき、年収1320万円で、65歳まで保証され、特別職の場合は、それ以上となっているのです。WTCの社長である元助役は、3つの外郭団体の代表者を兼ね、そのうち2つの団体から、あわせて2000万円もの常勤代表者並の報酬を受け取っていることも明らかになりました。まさに、高級役人天国と言われても当然の状況ではありませんか。
ところが市長は、わが党委員が、到底、市民の納得をえられるものではないと指摘したのに対し、「長年の経験や判断力が求められたもの」などと、改める姿勢を見せなかったのです。言語道断と言わなくてはなりません。
また、大阪市とつながりの深い民間企業への天下りも、毎年少なくありません。これは、行政と企業の癒着を生じ、行政がゆがめられ、汚職の温床にもなる重大な問題です。国でも2年間は関連企業への天下りを禁じており、大阪市もきっぱりと規制するべきです。
つぎに、交際費についても指摘しておきます。委員会質疑を通じて、市幹部の交際費が、年間、1億4521万円、うち、市長の交際費は月90万円、年間1080万円の多額にのぼるとともに、この使途についても、項目と金額しか情報公開されない不十分なものであることが明らかになりました。わが党委員が、この改善を強く求めたのに対して、市長は、「自分はさわったことも、見たこともない」などと無責任な答弁に終始したのであります。断じて認めることはできません。
最後に、同和問題について、指摘しておきます。
最後の立法である地対財特法が、本年3月末をもって終了したにもかかわらず、一民間病院にすぎない芦原病院への年間10億円もの運営助成はじめ、同和住宅の募集方法、教員の同和加配、人権文化センター職員や青少年会館職員などでの過大な職員配置など、いまだに同和特別扱いがまかり通っています。しかも、人権文化センターには「解同」の事務所がいすわり、多くの「解同」支部幹部が、本市職員であるなど、「解同」と行政の癒着もそのままです。
これでは、部落問題解決は遅れるばかりです。人権協会を廃止し、行政の主体性を確立すると共に、一切の同和優先をやめ、自由な社会的交流をすすめるよう強く求めておきます。
以上、反対討論といたします。 |