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2003年10月17日、大阪市議会閉会本会議 大型開発と経済効率優先を改め、市民本位の市政に 下田敏人議員が公営決算に反対の討論 |
下田敏人市会議員 2003年10月17日 |
私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2002年度、公営企業会計決算ならびに、準公営企業会計決算に反対の討論を行いたいと思います。 言うまでもなく、地方公営企業の目的は、経済性に配慮しつつ、何よりも、公共の福祉の増進につとめることにあります。 ところが、本決算にあらわれているのは、今の市政の行きづまりそのものであって、港営事業のように採算無視の大型開発を推進し、それがことごとく失敗、破綻した姿であり、交通・水道事業などのように、経済効率を追求する余り、肝心の安全輸送や市民サービスをおろそかにするばかりか、長年の事業によって積みあげられてきた市民の貴重な財産が台無しにされかねないようなズサンな事業運営であります。 到底、認めることはできません。 以下、具体に指摘したいと思います。 まず、今度の決算委員会を通じて、テクノポート大阪計画ならびに国際集客都市づくりの破綻が、一層鮮明になったことであります。 それは、第一に、ワールドトレードセンターの経営破綻と特定調停の申請にあらわれております。 これまで、ワールドトレードセンターに対して、多くの市民の反対にもかかわらず、駐車場やホールなどに80億円、超低金利の貸付200億円、5局などの入居により147億円と都合427億円もの支援を行ってきました。 ところが、それでもどうにもならなくて、特定調停の申請をせざるをえない羽目になったのであります。これによって、貸付金200億円は返らないばかりか、年5000万円の利子も入らなくなる上に、更に、40億円もの新たな支援を強いられるのであります。 そして、何よりひどいことは、少なくとも今後40年間、水道局をはじめとする5局などは、WTCから出ることができないことであります。裁判所に提出された再建計画には、大阪市関係分として、40年間累計925億円もの賃料収入が計上されているからであります。 元より、認めることはできませんが、破産させるよりは、この方が損が少ないなどと、何の痛ようも感じないような港湾局の態度というものは、本当に許しがたいものであります。98年度の時点で、破産させておけば、出資金25億円の損ですんでいたではありませんか。それを延々ムダな支援を続けて、しかも、5局などは、民間の1.5倍もの賃料を払い続けざるをえない、こんなひどい状況に至らしめた、市長はじめ港湾局の責任は重大だと言わなくてはなりません。 第二は、USJとその関連事業の先行き不安と行きづまりであります。 周知のように、USJは、2001年度1102万人だった入場者が、2002年度763万人と30%も減少するという試練に直面いたしました。 そうすると、とたんに大阪市は、新しいアトラクションの費用として、グループファイナンスから50億円、埋立会計から30億円、計80億円の支援を行ったのであります。しかしながら、元々、リピーター確保のために2年に一度、100億円程度の新しい投資を行うのは織り込み済みだったはずで、自前でやるのが当然ではありませんか。もし、資金調達ができなければ、遅らせるしかないのであります。それをすぐ大阪市に依頼する、もたれ、甘えの構図以外の何物でもありません。 そうして、今年度、新アトラクションがオープンし、ハリウッドフレンドパスも導入いたしました。果たせるかな、9月までの入場者数は、対前年度24%増となりましたけれども、ハリウッドパスによる2回目以降の無料入場者数を除外すると、逆に対前年度16.4%減となるのであります。 来年導入のスパイダーマンに期待をかけているようでありますが、いずれにしても、USJの先行きには、予断を許さないものがあると思います。そもそも、毎年毎年、800万人、900万人もの人が入って、一人1万円も使ってくれなければ、回っていかないような巨大な娯楽施設を、民間ならともかく、地方自治体たる大阪市が、筆頭株主となって作り、事業を推進することが、大きなまちがいであったということであります。 しかも、USJの基盤整備を受けもった此花西部臨海区画整理事業が、今だに事業を収束できないではありませんか。1000億円近い事業費のうち、補助金等以外の750億円をみこんだ保留地が売れず、借金が返せないからであります。2001年度は、元利償還ができなくて、都市整備基金から29億円借り入れ、2002年度は元利金債の37億円の発行で、やっとしのいだのでありますが、いよいよ行きづまりであります。 元々、テーマパーク内18.7ヘクタール、560億円もの土地が売れるはずがありません。ドーム球場同様、大阪市が買うつもりのところ、埋立会計がそれどころではなくなっているからであります。まさに、このようなスキームで、USJに土地を提供しようとしたこと自体大きなまちがいで、そうして、ニッチモサッチモ行かないようにして、いったいどう責任をとろうとしているのかと言いたいのであります 第三は、夢洲の大水深埠頭建設などが、過大、過剰投資であったことがはっきりしたのであります。 港湾局は、取扱貨物量が大幅に増え、入港船舶も大型化するなどとして、主として夢洲に水深15メートル、岸壁延長350メートル、奥行500メートルの大水深高規格のコンテナ埠頭C10、11、12の3バースの建設を推進してきました。また、それに伴って主航路や泊地のしゅんせつなど、莫大な費用を投じて行ってきました。 ところが、C12は入いる船がなくて、手がつけられておりません。C11は、埠頭公社が建設しましたが、南港のC3からエバーグリーンが移ってきて、あと玉突きのようなかっこうで、今、C8に空きが生じている始末であります。 また、C10は、一般会計と港営事業で210億円かけて建設しましたが、入ってくる船もないまま、この1年あまりというもの、15ヘクタールものバックヤードは、草はえほうだいという状況でありました。 つい最近になって、この3分の1弱が舗装され、荷役機械も設置されたものの、入ってくる船はといえば、南港のC9から週2便、C4から週1便の計3便が移ってくるだけで、しかも、最も大きい船が1万8千トン余りと、およそC10に入る必然性のないものであります。その上、未舗装のバックヤード11ヘクタール余りは、袋地となって、使いものになりません。まさに、このように、夢洲のコンテナ埠頭によって、船がふえるものでもなければ、入港料や岸壁使用料が増収になるものでもありません。 要するに、大きい港をつくったからといって、貨物が増えるわけではないのであります。後背地の経済が活発になってこそ、港の貨物も増えるのであります。2002年の大阪港勢をみても、現港湾計画の基点である92年と比べ、内貿貨物量、コンテナ以外の外貿貨物量ともふえるどころか大きく減少しております。コンテナ貨物も、ここ3年横ばいで、2005年の目標値にとどきそうもありません。 こんな中で、当局は、今度はスーパー中枢港湾の指定を受けることをテコに、不必要で、しかも、200億円もの費用を要するC12の建設を図ろうとしているのであります。とんでもないことだと言わねばなりません。 これまで、主航路、泊地のしゅんせつに148億円、夢洲の土地造成430億円、夢洲トンネル・テクノポート線170億円と夢洲周辺に莫大な公共投資を行ってきた結果、港湾局所管の一般会計の起債残は、実に2402億円にもなりました。 過去5年間では、858億円の元利償還であったものが、今後、5年間は、1214億円の償還が必要となるのであります。 一方、埋立会計も火の車であります。咲洲、舞洲の102ヘクタールもの分譲地が売れ残っている上に、ワールドトレードセンターやUSJに535億円もの巨額をつぎこんできたからであります。これまでの5年間の起債の元利償還は、272億円でありましたが、今後の5年間は、422億円とふくれあがるのであります。現状では、自力の元利償還は極めて困難と言わなければなりません。 このように、テクノポート大阪計画と国際集客都市づくりは、事業そのものもさることながら、財政的にも破綻しているのであります。 さて、今度の決算議会を通じて、交通・水道両事業においても、看過できない問題のあることが、浮きぼりになりました。 第一に、水道事業でありますが、いうまでもなく、水道事業の目的は、良質な水を安定的に供給することであります。 したがって、最終的に蛇口から出てくる水に責任を負っているのであって、浄水施設や配水管さえよければよいというものではないのであります。ところが水道局は、人体に影響を及ぼしかねない鉛管の取り替えについて、いまだに、その完了計画をたてられないばかりか、宅地内の鉛管については、何らの手もうとうとしていないのであります。 また、マンション等の受水漕の安全管理なども、まったく住民任せなのであります。わが党委員が、具体的に分譲マンションでの受水漕の水質管理費用やメーターの取り替え費用等の援助の必要性を説いた上、大阪市以外全ての政令市で、何らかの援助を行っていることを示したにもかかわらず、水道局は、給水装置は個人所有との10年一日の如くの理屈をふりかざし、研究するの一点張りの答弁に終始したのであります。 ところがその一方で、水道局は驚くほどの浪費をし続けているのであります。 それは、水需要、すなわち給水量と水利権量との乖離に他なりません。 水道局は、1991年度に1日あたり64万トンの水利権を追加取得して、267万トンを有しておりますが、ところが、肝心の給水量は毎年減り続け、2002年度の1日平均給水量は136万トン、実に毎日毎日131万トンもの水利権がムダになっているのであります。 しかも、92年度以来、追加の水利権取得費用として、毎年40数億円を23年間、総額1100億円、払い続けているのであります。 わが党は、91年度以前の203万トンでも、まだ相当余るので追加の64万トンは、大阪府などに売却すべきだと申し上げてきましたが、水道局は、2005年には1日最大給水量240万トンになるなどと、なるはずもない数量をかざして、これを拒否し続けているのであります。全く、頑迷としか言いようがありません。。 第二は、交通事業でありますが、交通事業の使命は今更論を待ちません。市民の足の利便を図り、安全輸送に徹することであります。ところが、交通局はこの使命を忘れ、経済性、効率性の追求に血道をあげているのであります。 これまでに、局全体で2165名の人員を削減し、更に774名減らすと言って自慢しております。職員を減らして事たれりとする経営者ほどおろかなものはいない、日本経団連の奥田会長の弁であります。又、リストラを行うことは、その企業にとって例え正しいことであっても、全体がそれをやれば過ちになる、これを合成の誤びゅうという訳であります。交通局が全体のリストラの一貫として人員を大幅に減らすということは、それが周り回って、乗車人員の減となって跳ね返ってくるのであります。 何よりも交通局のすぐれた技術力をどう引き継がして行くのかということであります。 その点指摘しておきますが、こんな風にドンドン職員を減らして、地下鉄でもラッシユ時以外はホームに職員がいないなんてことが常態化している以上、ハード面での軌道転落防止など講じるのは当然ではありませんか。わが党委員が、都営三田線の例などを引いて、可動柵設置の計画をたてるよう求めたのに対し、交通局は全く消極的な態度をとったのであります。時代遅れも甚しいと言わなければなりません。 さて、これまで交通局は、地下鉄の効率化をすすめる最大の理由に、多額の累積欠損金のあることをあげてきました。ところが、この間の、公営交通事業協会の研究によって、長年のわが党の主張通り、全くのみせかけの赤字であったことがはっきりいたしました。 本来、収益勘定に計上すべき特例債元金補助金を最初の2年間は別として、3年目以降、資本剰余金として、2002年度まで実に1748億円も積み上げてきたからであります。又、同時に、1990年度以前、同じく収益勘定に計上していた分割の建設補助金を91年度以降、資本勘定に計上がえをして、累計840億円、積み上げてきたからであります。 今回、交通局はこれまでの会計処理上の過ちを認めて、特例債元金補助金の積み立て額を取り崩すと共に、2003年度以降、収益勘定に計上替えすることにしたことは、経営実態と会計処理を合わすという意味で、遅きに失したとはいえ、大きな前進だと思います。 が、しかし、もう一つの分割補助金は、資本剰余金に積み上げたままではありませんか。 わが党委員が、分割補助金840億円も取り崩すべきだ、そうすれば、累積赤字は344億円に大きく減るではないかとただしたのに対し、交通局は、理屈は認めながら「総務省の指示がないから」と言って、これを拒否したのであります。 この期に及んでも、なお交通局は、みせかけの多額の累積欠損金を残しておきたいものかといわねばなりません。 一方、これまで、営々と築いてきた交通局の財産、市民の貴重な財産が、台無しになりかねない事態となっているのであります。土地信託事業、フェスティバルゲートとオスカードリームであります。 オスカードリームは、住之江の車庫跡8600uを信託に供して、263億円の信託配当を得ようとしたものでありますが、配当どころか、借金がどんどんふくらんで、2002年度末で269億円にもなっております。かなりのフロアを占めていた和光デンキも倒産、撤退いたしました。当年度黒字の達成は、更に遠のいたのであります。そんな中で、交通局は、焼け石に水ともいえる金利の低減のために、 政策投資銀行分を肩代わりしたみずほ信託銀行に対し、交通事業基金の中から、50億円を金銭信託して、限りなく担保に近い形で供したのであります。したがってこのみずほ信託銀行の借金50億円をオスカードリームが返さない限り、この基金分は塩付けのままで、使うことができません。いずれにしても、このままでは、自動車運送事業が多額の借金と共に、赤字の事業体をも受け継がざるをえなくなります。早期にみきりをつけて、信託銀行の責任による抜本解決をはかるべきであります。 一方、フェスティバルゲートは、更に深刻であります。2002年度、収入4億3500万円に対し、費用は何と18億800万円、とうとう、借入残高は346億円にも膨らんだのであります。 こんな中で、受託者たる信託銀行は、もう一年以上も前にさじを投げて、信託契約解消の調停をおこなうに至りました。ところが、今だ協議が整いません。346億円もの借金をどうするか、綱引きをしているものと思いますが、これだけの失敗をした以上、当然、信託銀行の責任で処理させるべきものと申し上げておきます。いずれにしても、もう既に、2万3000uのうち8600uの土地は、スパワールドに売却して、その代金は、フェスティバルゲートの中で、雲散霧消しております。その上、更に、多額の損害を地下鉄事業、ひいては、市民に与えかねないことになりました。 事業が失敗して、借金が残っても、基本的に交通局が引き継ぐなどというとんでもない契約を結んで、しかも、どうしようもないにもかかわらず、一日伸ばしに事を伸ばして、損害をふくらました交通局の責任は、まことに重大だと言わねばなりません。 以上、具体に指摘してきましたが、本決算にあらわれているのは、まさに、目をおおわんばかりの惨たんたる状況であります。 そして、いくつかの事業では、既に、大きな損害を市民に与えることが、明確であるにもかかわらず、市長以下、誰一人として責任をとるものがいないという無責任体制そのものであります。 しかも、3k赤字や土地信託にみられるように、ギリギリになるまで、事をつまびらかにしないという保身による隠ぺい体質そのものであります。 事業そのものの抜本的な見直しと共に、風通しのよい、開かれた市政への転換が切に求められていることを強調して、討論といたします。 |