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1月31日午前5時すぎから開会された大阪市議会本会議での 瀬戸一正議員の3セク特定調停反対討論 |
瀬戸一正市会議員 2004年1月31日 |
私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただ今上程されました「ATCなど三セク三社の特定調停にかかる調停条項の受諾と、追加出資や損失補償にかかわる債務負担行為の追加を求める補正予算案」に反対する討論を行います。 反対理由の第一は大阪市や与党の諸君が、三セク三社を経営破綻に追い込んできた上に、その責任者がさらに市民の負担を増やす調停案の受諾を求めているからであります。 私たち日本共産党は最初から、ATC・WTC・MDCは公共性の薄い事業であるうえに、三つのビルのテナント床面積が甲子園球場の14倍にもなる過大な施設で、採算見込がない無謀な巨大開発だと批判し、建設の中止を求めてきました。こうした批判に耳を傾けずに建設を強行した結果、開業当初から各ビルはテナントが埋まらずがらがらで、開業二年目には三社とも債務超過になり、運転資金も枯渇するという経営破綻に陥りました。 こうした中で大阪市が98年から行ったのが、「経営改善計画」と称する公金貸付と大阪市等の入居支援であります。経営支援のための公金貸付は今日までに509億円に達し、入居支援は242億円にも達しました。これらは、「三セク会社にたいする地方自治体の責任は本来、出資の範囲だけ」という原則を踏み越えた、やってはならない公金支援だったのであります。とりわけ公金貸付けは、「20年据置き、30年返済」という約定は付けられたものの、最初から返済のあてなく貸出されたに等しく、商法でいう特別背任にも匹敵する市財政と市民にたいする大罪だと言わなければなりません。 この三セク三社の事業にあっては、金融機関は最初から「大阪市が筆頭株主の三セク会社だから、赤字になっても自治体予算つまり税金での穴埋めが期待できる」ともくろんで、三セク各社に大きな貸付を行ったのであります。これまでに大阪市が三社につぎ込んだ公金が1354億円で、金融機関がこれまでに回収した元金と利息の合計は1246億円であります。貸付金は毎年そっくりそのまま銀行借金返済に回されました。まさに三セク三社の事業は、銀行の食い物にされて来たというのが実態であります。 大阪市は、三セク三社の建設を指揮した西尾市長、公金貸付けなどを指揮した磯村市長、これらを助役として支えてきた現市長、各社へ天下りした市幹部、みんなでこの無責任行政を推し進めてきたのであります。与党のみなさんも、WTCをもっと高くしろだとか、WTCへの入居促進決議をあげるとか、公金貸付けなどの予算を承認するなど、これらを支援し、叱咤激励し、言わば二人三脚で推進してきたのであります。市長・助役などの報酬カットなどで済ませられる問題ではありません。後日に経営責任を明らかにするなどと言うのもまったく保障の限りではありません。特定調停受諾は、三社の経営と大阪市財政を危機に陥れた当の責任者が、さらに市民に負担をかぶせるものであって、それをまことしやかに会社経営再建計画だと称しているのであります。断じて許せません。 反対理由の第二は、調停案が、三セク三社に新たな巨額の公金支援を与えるものになっており、大阪市と市民に大変大きな負担をもたらすからであります。 調停案による大阪市の負担は、大阪市説明によっても追加出資104億円と329億円の貸付金の返済義務の免除、合わせて433億円であります。しかし、これにATCとMDCへの350億円の補助金と、三つのビルでの1835億円の家賃を加えれば、結局大阪市の負担は合計2618億円にもなるのであります。 家賃共益費については大阪市は公金支援には当たらない強弁していますが、WTCにあっては民間オフィスの家賃に比べて1.68倍も高い大阪市等の家賃支払い、ATCにあっては2.71倍も高い家賃は、市民の目線から見てもまぎれもない公金支援であります。この家賃高額分だけでも30年、40年で600億円にもなるのであります。 大阪市が二次破綻のさいに会社残債務の損失補償をすることも、負担をさらにふくらませる重大なものであります。損失補償額は、会社の残債務から土地建物の売却金額を差引いたものだとされていますが、宮崎県の三セク会社・シーガイアは土地建物の帳簿場価格の10分の1の値段でしか売れなかったのであります。大阪市の引っ被る負担は実に膨大なものになることは明らかであります。 こうして調停案は大阪市に巨額の負担を押付けるものになっている一方、調停案は金融機関にとってどんなものになっているのか。金融機関は、法的整理であれば担保の土地建物を競売にかけても多くて530億円しか回収できないのに、調停案では元金1138億円ばかりか利息528億円、計1666億円も回収することになる。法的整理に比べて1000億円以上も多くを回収しようとしているのが調停案であります。 金融機関は926億円も債権放棄するというけれども、これまでの元利回収額1246億円とこれからの元利回収額1666億円を合わせれば2912億円になります。これは金融機関が貸付けた2702億円をすべて回収して210億円もおつりが来るのであり、金融機関はまったく損をしないのであります。 さらに、調停案で金融機関が回収する元金1138億円の原資は、大阪市の追加出資・補助金・高額家賃の1054億円ですから、三社が自律的な経営の中から借金を返済するのではなく、ほとんどすべて大阪市民の税金でもって、三社の返すべき借金を肩代わりしているのが、調停案に外なりません。 1054億円もの公金支援で銀行のもうけを保証する、こんなことが許されるでしょうか。大阪市は財政非常事態宣言を出している、市民は不況にあえいでいる。こんな中、これ以上の三セク三社への公金支援は許されない、これが反対の第二の理由であります。 特待調停案受諾に反対する第三の理由は、市民にも議会にさえも、本当に必要な情報公開がまったく行われていないからであります。 裁判所がおこなった会社の不動産鑑定結果、会社再建計画の鑑定結果がいずれも公表されておりません。裁判所は、調停案には会社再建計画には合理性がある、実現可能性があるとしていますが、何をもってそう判断したのか、その肝心の鑑定結果を公表せずに市民に莫大な負担を求めるなんてとんでもありません。先ほど与党のみなさんは多数決で、この鑑定結果の提出を求める動議を否決しましたが、これは議会としての自殺行為であるばかりか、ここには理事者と一体になって真相をかくして市民に負担を押付けようとする与党の姿があるのであります。こんな議会は、行政のやることには何でも賛成するという意味で翼賛議会そのものであります。 さて大阪市が持ち出している受諾理由でありますが、これらはいずれも事実をあざむくものと言わなければなりません。 受諾理由の第一に、法的整理に比べて調停案の方が経済的合理性がある、調停案の方が負担が小さいということがあげられていますが、調停案で大阪市が説明する負担に、補助金と高額家賃分を加えるだけで、法的整理での負担をはるかに超えます。二次破綻が生じれば負担はさらに増えます。そもそも大阪市は法的整理で負担するもの、失うものとして699億円の貸付金をあげていますが、大阪市の貸付金は、2064億円もの金融機関貸付金の返済の後にしか返済されないもので、返ってくるあてがほとんどありません。返ってくるあてのないものを失う、失うと言って損失に数え上げているのが、大阪市の比較であります。 受諾理由の第二にあげられているのが、会社再建計画の合理性と実現可能性ですが、三社はいずれも現在の90数パーセントの入居率が30年、40年ずっと続くということを前提にしてしますが、そんなに先々のことを予測できるはずがありません。ATCにあっては床面積の73%を民間テナントが占めており、民間テナントの行動を会社がコントロールできる訳がありません。むしろ二次破綻の可能性の方が大きいのであります。 受諾理由の第三は、会社を再建することが将来の大阪市政に資すると考えられる、つまり会社の存続には公共性があるというものです。WTCは国際交易拠点、ATCは輸入卸売基地、MDCは関西新空港への搭乗窓口のコンセプトを持つとされましたが、こうした公共性はことごとく、見事に破綻しました。三セクビルは今では言わば、雑居商業ビル、大阪市第二庁舎となっているのであって、公共性はほとんどありません。それどころか公共性にはまったく反する、市民の税金による金融機関借金肩代わりという反市民的な役割を負わされているのであります。 次に、調停受諾を合理化しようとする幾つかの議論にも反論をしておきます。 まず、「投入される税金が少なければいいというものではない。銀行の肩をもつわけではないが、大阪市は銀行に社会的責任がある」という論であります。社会的責任を云々するなら、いくら商売とは言え大阪市財政を当て込んで三セク会社に過大貸付を行い、これを取り立てようとする金融機関こそ厳しく非難をされなければなりません。それを、借りた金は返さなければならないという一般論にすりかえて、銀行にたいして社会的責任がある、市民の負担は軽ければいいというものではないなどと論じるのは、文字どうりの銀行の肩をもつ議論と言わなければなりません。 また、調停不成立なら大阪市は信用を失墜し、今後の起債などでの資金調達にも支障をきたすという議論があります。大阪市の起債を引受けるのは主に銀行などの金融機関でありますから、これは結局、特定調停で金融機関のご機嫌を取っておかないと金融機関からいけずをされる、だから金融機関の横暴に黙って従えというに等しいものであります。そんなことが本当におきるのかどうか自体が疑わしい話でありますが、そんなことが起きるのであれば、それこそ金融機関の反市民的な在り方こそ問題にされなければなりません。むしろ逆に、特定調停の方が大阪市の負担をよほど増やし、財政を一層の危機に陥れる点で、それこそ大阪市の信用失墜をますます大きくするのであります。 さらに、調停案は裁判所が案をつくったもので公平性・公正性が確保されたものだとの議論もありますが、裁判所はこの三社の公共性についてはそれぞれの会社の申し立てをなんら吟味することなく鵜呑みにしているだけで、公金投入の是非などについては一言も触れず、単に債権者としてのそれぞれの利害調整を行ったに過ぎません。裁判所は市民の負担が増えることが公正なのかについては一言も判断していないのであります。 今回の特定調停受諾について、関市長は苦渋の決断だと言って見せております。果たして本当にそう考えておられるのでしょうか。特定調停を軌道に乗せた磯村市長は、早くも昨年4月25日には新聞紙上で「銀行は仮に一部を再建放棄しても、残った債権が確保されたらいいじゃないですか」と言っております。ここには、最初から損失補償を視野に入れていた大阪市の本音がでている、端から大阪市は、追加出資も、補助金継続も、高額家賃も金融機関に提供する意思を持ち、損失補償さえも用意していたと言わなければなりません。特定調停の全経過は、金融機関と大阪市の「できレース」ではないかとの見方も広範にあるのであります。 与党のみなさんが特定調停に付した付帯決議は、市民に大きな負担を押付ける特定調停案の内容を何ら変えるものではありません。とくに決議が「今後は、3社に対して一切の経営に関わる財政支援を行わず、自主再建を基本とすること」としている点は、高額家賃支払いや補助金投入など、巨額の財政支援によって成立っている再建計画の真の姿を、まさに偽るものにほかなりません。与党の諸君はこの間、法的整理も辞さずの強気で交渉せよ、大阪市等の家賃が高すぎるから引き下げを求めよ、損失補償は慎重に、説明責任を果たしていない、与党だから同意すると思ったら大間違い、等々、勇ましく発言をしてきました。しかし結局は、金融機関と大阪市の言いなりになっただけではありませんか。 さらに言えば、市長は自らに減給処分を課すといっていますが、二人三脚で今日の破綻と負担をもたらした与党のみなんさんは責任をどうお取りになるんでしょうか。市民は厳しい批判の目で見ているということを申し上げておきます。 今回の大阪市の特定調停受諾の方針には、関西経済連合会の秋山会長が「大阪市が抱えていた大きな負の遺産の一つが解決する方向になった」との歓迎の声をさっそく上げていると報道されました。市民の負担をいくら増やしても金融機関に甘い解決策であれば財界は歓迎だというところでありましょうが、ここにも調停案の本質が現れているのであります。 最後に、大阪市財政を40年の長きにわたって金融機関の利益のために縛りつけ、市民に巨額の負担を押し付ける、この特定調停案を受諾することは、大阪市政の一大汚点であります。市民のために取るべき立場は、きっぱりとこの調停案を拒否することであるということを、申し上げて、私の反対討論といたします。 |