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市議団の実績

 2004年度予算議会

予算組み替え動議に賛成、原案に反対する討論

3月26日大阪市議会本会議で北山良三議員

私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2004年度大阪市一般会計等予算案に対する組み替え動議に賛成し、原案に反対の討論を行います。 

今、小泉内閣は、年金制度の大改悪、年金への課税強化、さらには介護保険制度の改悪などを強行しようとしています。それに加えて売上1日3万円の零細業者をも泣かせる消費税免税点の引き下げを行ない、さらに2007年には消費税を増税するというシナリオをも示し、市民の暮らしと健康、中小業者の営業をいっそう苦しめ、脅かし、不安を増大させています。そして、「三位一体の改革」などと称して、結局は地方自治体の財政をいっそう逼迫させる補助金カットや地方交付税カットを強行しつつあります。

こんな中での大阪市の予算編成のあるべき姿は明白です。国の悪政の大波から市民の暮らし・健康と雇用、中小業者の営業をまもる防波堤となり、市民にとっての税金のムダ使いをキッパリやめ、暮らしと営業を応援する予算を組むことであります。

ところが、関市長が提案した予算原案は、これに逆行するものになっており、到底認めることはできません。以下、具体的に指摘いたします。 

反対理由の第一は、市民の切実な願いにはまともに応えようとしないばかりか、市民に重い負担をいっそう押しつけ、また、大企業には大判振る舞いを行う一方で、中小企業には非常に冷たい予算となっているということであります。 

まず指摘したいのは、国保料2%の値上げと介護保険料の8.4%値上げが盛り込まれているという点です。本市にあっては、実に4分の1もの世帯が国保料を滞納しているという異常な事態の中で、これで国保料は5年連続、合計15%も値上げされることとなります。滞納世帯が増える最大の原因が、この不況下での高すぎる保険料にあることは市長も否定することはできませんでした。「毎月、所得の10%を超す国保料はきつすぎる」との業者の声を、しっかり受け止める必要があります。保険料の引き上げが、「滞納者を増やし、国保財政をさらに厳しくする」という悪循環をうみだしていることは明白です。こんな保険料の値上げを決して認めることはできません。

加えて、高すぎる国保料を滞納した世帯に対して大阪市は、3万3000件の短期保険証、6600件の資格証を発行しています。6000件を超える資格証発行世帯全体で、医者にかかった件数は年間わずかに14件しかないことが明らかになりました。この実態は、まさに大阪市が、市民の医療を受ける権利を冷たく奪っていると言わざるを得ません。

また、市民の命と健康を守るという点で、わが党議員が「大阪府が老人医療助成制度の全廃、障害者医療助成・母子医療助成制度の改悪をやろうとしているなか、市長がこれに反対し府に働きかけるべきだ。それでもなお府が改悪を強行するなら、大阪市として独自にこれらの制度を維持する施策を実施すべきだ」と質したのに対し、市長は、「市民の健康の保持や生活の安定に役割を果たしてきた」と制度の意義を認めながらも、「府の動向を見守りたい」という消極的な態度で、「市独自の施策の実施も困難」と退けてしまったのであります。また、介護という点でも、特養ホーム待機者の解消を公約に掲げながら、国の方針に追随して、特養ホーム建設予算を大幅に減少させているのであります。

市民の命と健康・介護に関わる問題でのこんな立場を、決して認めることはできません。

次に、将来を担う子どもたちに対してはどうか。この点でも、まったく冷たい限りであります。

例えば、学童保育への支援の問題です。裁判でも「小学校の空き教室利用申請の受け取り拒否は違法だ」と断罪されたにも係わらず、市には全く反省がありません。そしてなんらまともな理由も示さないまま、いまだに空き教室の利用を拒否し続けているのであります。そんな態度をとりながら、市は学童保育に対する補助金を、「いきいき事業」と比べても極めて少額のまま、ずっと据え置いた予算しか組んでいないのであります。

さらに、保育の問題ではどうでしょう。保育所待機児の今年度中の解消は、関市長の公約です。しかし本予算原案に示された施策は、公立・私立の保育所を増設する方法ではなく、入所定員枠の156%もの詰め込みや、遊び回る園庭もない駅前ビルでの分園の増設など、保育士と子どもたちに大きな犠牲を強いるやり方となっており、なおかつ数の上でも待機児解消の保証もないものになっています。しかも、ますます役割が大きく求められている公立保育所を3ヶ所も民間委託にし、子ども達や保護者の不安を大きくしています。待機児解消も保育の多様なニーズに応えることも、公立保育所も含めた新たな保育所建設で対応すべきであります。

学級崩壊や児童虐待など、子どもをめぐる状況が深刻さを深める中で、少人数学級の必要性はますます増大しています。大阪府も、世論に押され、わずかづつではありますが、少人数学級に踏み出そうとしています。しかし大阪市は「効果は定かでない」と全くやる気を見せず、非常に消極的な態度を取っているのであります。そして差別と選別をもたらす危険性があり、その教育効果も大いに疑問視されている「習熟度別授業」を画一的に学校に押し付けようとしているのであります。こんなことは到底認めることはできません。

加えて、学校給食法第4条で「実施に努めなければならない」とされている中学校給食について、わが党議員がその実施を求めたのに対し、教育長の答弁は、「本市では弁当持参を原則としている」「昼食のあり方に関する研究会で議論していく」というもので、子どもをめぐる環境が大きく変わるなかで、生徒と保護者の期待にこたえるものではまったくありません。真剣な検討を行い、早期に実施するよう、強く求めるものであります。

大阪経済の振興策や雇用の創出についてはどうでしょう。これも全く逆さまです。

大阪の再生というのなら、市内98.8%を占める中小企業の振興を第一義に考えるのがあたりまえではありませんか。しかし本予算原案では、市内23万の中小事業所に対する、一事業所当たりの予算は約1万円という一方で、USJには30億円を投入し、咲洲コスモスクエア地区へ進出する大企業に対しては1社で最高10億円まで補助するという、まさに大企業優遇を絵に描いたような内容となっております。これでは大阪経済の振興も雇用の創出もできません。

加えて、市民をいま驚かせている問題は、雇用5万人の創出を公約して当選した市長が、大阪市の社会福祉事業に大きな貢献をしてきた社会福祉協議会の障害者ヘルパー等を70人も大量に解雇しようとしていることであります。解雇の対象となる方には母子家庭の母親も多く、「これからどうして家族を養っていったらいいかと夜も眠れない」と訴えておられます。これらの人を路頭に迷わし、本市の社会福祉事業に大きな損失を与え、市民への福祉サービスの低下を招く、こうした公的ヘルパーの切捨てはきっぱり撤回すべきであります。

雇用の問題について、わが党議員が、「リストラや海外進出に走っている在阪大企業にたいし、身勝手な振る舞いをやめるよう市長として申し入れをおこなうべき」と質したのに対し、市長は「企業のリストラや海外移転を規制することは困難であり、権限もない」と答弁しました。しかし、長野県では、リストラ計画の情報を受けた場合、「最後の一人まで再雇用の面倒を見ること」「生活の保護をきちっとすること」を、自治体としてその企業に求めるとともに、「退職加算金」「再就職のための新たな訓練を受ける教育的資金の支出」まで求めているのであります。市長の態度は、市民の雇用を守ろうとする努力をまったく放棄していると言わざるを得ないのであります。

 さらに、市バスの営業所を民営化しようとしていることも大問題であります。交通局は、経営改善の一環として、自動車事業での採算性の悪いコミュニティ系サービスを中心に、さらにコスト削減を行うとし、今後、長吉、酉島両営業所を民間委託する方向を検討しています。従来の委託先は大阪市交通局の外郭団体である大阪運輸振興に限られていましたが、今回からは一般民間企業も視野に入れての委託であることが質疑の中で明らかとなったのであります。コスト最優先の大阪市交通局の考え方は、止めどもなく民営化路線に直進するものであり、公共交通の使命を投げ捨てるものであります。民営化は断じて認められません。

 

 反対理由の第二は、特養ホーム整備予算を前年比で37%削り、また、学校校舎建設予算では13%削った結果5年前の約半分になるなど、市民に必要とされる予算を削る一方で、大型開発事業の相次ぐ破綻処理に、これまで以上の多額の税金を投じ、しかもこれらの失敗へのまともな反省もなく、いっそう大規模な開発事業にのめり込む、このような税金の無駄づかいは断じて認められないということであります。

 2月12日に行われた、ATC・WTC・MDCの三セク三社の特定調停受諾に対し、今市民の怒りが沸騰しています。三セク三社の貸しビル事業に、これまで「経営支援」だといって1354億円もの公金を投入しながら、今度は「会社再建」と称して今後30年、40年にわたって2289億円も税金を投入する。そして三セク会社が、銀行からの残りの借金1138億円に対してその返済ができなくなれば、大阪市が銀行に損失補償する。こんな大阪市と、これを「良し」とした自民・民主民友・公明など与党による税金無駄づかい予算は、市民の理解と納得・合意をうることは到底できないものと考えます。

 ところが大阪市は、この先行の三社に続いて、大阪シティドームとクリスタ長堀にも公金をつぎ込もうとしていることが、いっそう明らかになりました。

 シティドームは、借金残高517億円、債務超過120億円と経営破たん状態に陥っていますが、今予算審議では、この施設を大阪市が買取ることも有り得るという理事者による答弁がなされ、「6月ごろをメドに特定調停に持ち込み、会社の再建スキームを探る」との方向が明らかにされました。また、事実上の債務保証と受け取られても仕方ないと思われる、金融機関への市によるいわゆる『念書』の存在も明らかにされました。特定調停という市民に情報を公開しない密室での交渉というやり方はやめ、情報を市民に公開しながら解決をはかるべきです。ドーム球場は興行収益を中心とした施設であります。そこにこれ以上の税金をつぎ込むことが自治体本来の仕事であるとは到底考えられません。過大な貸付をした銀行にきちんと責任を取らせて、市によるこれ以上の公金投入は行わずに解決をはかる道へと踏み出すべきであります。

 クリスタ長堀の地下街・地下駐車場事業でも、その過大な借金を圧縮するため、何らかの形で大阪市がその負担をする方向での会社再建策が検討をされています。ここでも、銀行への借金返済が滞れば会社は倒産し、地下街のテナントの差入保証金が失われてテナントに被害が及ぶということが一つの大きな問題だとされています。入居テナントには被害を与えない解決手段を講じたうえで、大阪市はこれ以上の公金をいっさい投入するべきではないのであります。

 同じ三セク会社であるUSJへの、大阪市による経営支援貸付も行うべきではありません。

港湾局は来年度予算に貸付金30億円を計上しただけでなく、20億円追加貸付する補正予算を検討するとしていますが、これらはすべてUSJ社の銀行借金返済を担保するためであります。わが党議員の質疑で、USJは開業以来三年連続の赤字なのに、270億円もの借金を返済しており、それは、同じ期間に大阪市が貸付けた200億円がおもな財源となっていることが明かになりました。これではあの特定調停に至ったATCなど三社への公金貸付とまったく同じ構図であり、市による銀行への債務保証をしているかのような貸付であります。このような銀行借金返済のための公金貸付など到底認めることはできません。

 さらに、土地信託事業についても重大な事態となっています。

フェスティバルゲートが大失敗し、200億円も市が負担するなどという調停案には、断じて応じることはできません。それだけではありません。予算審議を通して、弁天町土地信託「オーク200」も深刻な状況にあることがあきらかになりました。3ヘクタールもの市有地が銀行に信託され、一戸数億円もする分譲マンション、分譲オフィス、娯楽施設などが建設され、その開発利益はゼネコンや信託銀行に入りました。しかし大阪市に入るとされた272億円の信託配当は一円も入っていません。それどころか15年を経過した今でも700億円も借金が残されており、年7億円たらずの利益しか出ないまま信託終了時まで推移すれば、600億円もの借金が残ることになり、それが大阪市に負わされることになるのであります。「272億円の配当を生み出す計画が600億円の借金を背負い込むことになる」、いくら土地信託とは言え、こんなにも当初計画とかけはなれた状況を作り出した信託銀行の責任は重大であります。受託者たる銀行団にその責任と負担をきっちり求めた上で、早急に抜本的な解決をはかるべきであります。

 さらに、阪神高速淀川左岸線二期事業についても、途方もない市による税金のムダ使いの方向へと向かおうとしていることが、今回の議論で明らかになりました。

阪神高速道路公団はこの事業を「不採算路線」と判断し、撤退する、そして、国が大阪市と共同し、一般道路建設事業として推進したいと表明しました。これを受けて大阪市も追随する方向を示し、残事業費960億円に対し、大阪市は当初計画では60億円の負担であったものが380億円の負担に膨れ上がるというものです。当初の6.3倍、320億円も市の負担が増えることになります。しかも、その道路の維持管理経費もすべて市の負担になります。さらに、まだその枠組みは示されていませんが、もし、この二期事業と同じやり方で三期事業に継続されれば、三期事業費として見込まれる5000億円に対し、312億円から2000億円へと市の負担が大幅に増やされることになります。維持管理経費もさらに膨れ上がり、途方もない税金のムダ使いになることは明白です。こんな事業は直ちに凍結すべきです。

 税金のムダ使いという点では、水道局の水利権にも一言、言及しておきます。

水道局は琵琶湖総合開発に伴う水利権を、日量268万トン保有しています。ところが実態は、1年を通して最大の給水量を示した日でも、日量153万トンにとどまっているのであり、2倍近い水利権を保有していることになります。このような過大な水利権確保のために、年間64億円もの開発負担金を支払い続けているのであります。わが党議員が「必要性のない水利権は売却するべき」と質したのに対し、水道局は、過大な水利権確保に固執する従来の答弁を繰り返したのであります。こういうムダな支出は直ちにやめるべきであります。

わが党がこれまで再々にわたって指摘してきた、夢洲開発や北港テクノポート線建設、夢洲トンネル工事などの税金のムダ使いに加え、いま縷々述べてきたような、今回の審議で明らかになったこれらの大規模開発による税金のムダ使いは、キッパリ断ち切るべきであります。そうすることによって、市民が真に必要とする施策に思い切って税金を投入し、草の根からの大阪市の再生と活性化を実現し、そして大阪市の財政も健全化の道へと進めることができるのであります。

 反対理由の第三は、終結すべき同和事業・同和行政を一般施策の名で事実上継続させ、同和利権の温存をはかっているということであります。

 一民間病院に過ぎない浪速区の芦原病院への補助金も、人権協会への各種委託事業も、そのまま継続され、旧同和校への教員加配や青少年会館の職員などおびただしい数の人的な配置も、その逆差別的な異常さにはほとんど変化がありません。その上、不必要な浴場を西成区と東住吉区にそれぞれ3億円もの巨費を投じて新たに建設しようとしているのであります。また、旧同和市営住宅の入居募集についても、あいかわらずその校区内に限定したものとなっており、広く一般市民に開かれたものにはなっておりません。まったく許しがたいものであります。

 さらに、今回の委員会質疑を通じて、広さ6万6000u、取得額117億円もの「同和未利用地」がいまだに放置されているばかりか、それ以外にも西成区には広さ7547u、取得額36億円という都市環境局が所管する「公害工場跡地」の土地があり、これも全く利用されていないのであります。また浪速区では、必要性がないのに、芦原病院の駐車場として1年前から暫定利用している1391u、50億円の土地が、大阪市土地開発公社の長期保有地となっており、毎年その利子が上積みされているのであります。このような状況は、到底市民の理解や納得を得られるものではありません。

 委員会での質疑で明らかになった、これらの不公正な事実上の同和行政を、即刻終結させることを強く求めるものであり、このような状況を許している予算案を決して認めることはできないのであります。

以上をもって、予算組み替え動議に賛成、原案反対の討論といたします。