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市議団の実績

市民には冷たく大型開発には手厚い大阪市

江川繁議員が、2003年度大阪市一般決算に反対の討論 

江川繁市会議員

2004年12月1日

私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2003年度大阪市一般会計決算等の認定に反対の討論を行います。

 今、大阪市民のくらしや中小企業の経営は、小泉内閣の構造改革による不況のもとで、一部の大企業が空前の利益をあげているのとは裏腹に、引き続き厳しい困難に直面しています。その上、小泉政治は年金改悪や医療制度改悪を行ったばかりか、定率減税廃止や消費税大増税、社会保障改悪などで一層の国民負担増を押付けようとしているとともに、三位一体改革と称して地方への財政支出を大幅に減らして、市民のくらし・経済・地方自治を破壊しようとしているのであります。

 そういう中で、260万市民の暮らしに直接責任をおう本市の役割は、きわめて大きなものがあります。住民福祉の増進につとめるという地方自治体本来の立場にしっかりと立ち、市民に痛みを押付ける国の悪政の防波堤となるとともに、無駄な大型開発優先をやめ、市民と中小企業の暮らし・経営を支援して大阪経済を立て直すことであります。

 ところが、本決算にあらわれているのは、4年連続となる国民健康保険料3%値上げや介護保険料8.4%値上げなどの市民負担を押し付けるとともに、特養建設など健康福祉事業費は前年比25%・63億円、公園事業費は30%・47億円、学校校舎建設費は22%・31億円も削る一方、無駄な北港テクノポート線・夢洲トンネルなどに巨費を投じ、そのうえ三セク三社の赤字穴埋めを引き受けるなど、市民には冷たく大型開発には手厚い本市の姿であります。とうてい認めることはできません。以下、具体的に指摘いたします。

 反対理由の第一は、三セク会社破たんや90年代の巨大開発失敗に無反省で、しかもそのつけを財政構造改革などと称して市民に負わせようとしているからであります。

 まず、ATC、WTC、MDCの三セク三社特定調停の問題であります。この特定調停によって市民に2289億円もの大きな負担が押し付けられることになりました。ところが市長はこれをどう受け止めるのかという我が党委員の質問にはまったく答えず、「三セク会社は社会資本を整備するもの」と答弁するなど、市民に負担を押し付けた責任も感じなければ経営破たんの真の原因にも目をつぶるという態度をとったのであります。三セク会社は、自治体の少ない出資でいくらでも銀行から金が借りられる、こういう仕組みをもっていたからこそ巨大開発のテコとして使われ、自民党政治が全国的に民活方式だといって広めたものであります。三セク会社がまさに開発会社になって無謀な巨大開発に走り、そのあげく経営破たんを引き起こし、その赤字まで大阪市が引き受けたのが特定調停であります。

 開発会社のようになったのは三セク会社だけではありません。大阪市は90年代の10年間に公共投資額を80年代の二倍の8兆円に膨張させ、そのために、起債を2.7倍の4兆1千億円も発行しました。我が党委員が、ここには政府がアメリカに公約した「10年間で430兆円の公共投資」を背景とする数次にわたる経済対策に躍らされて、オリンピック招致のスポーツ施設建設や、テクノポート大阪計画推進などの巨大開発を進めた大阪市の姿があり、今日、本市の借金返済である公債償還費を年額2000億円にも膨らませて財政危機をつくった真の原因ではないかと質したのに対しても、市長は「あれは道路・公園などの市民に必要な社会資本を整備したもの」と開き直り、「今日の財政危機は高齢化社会によるもの」として、財政危機の根底にある巨大開発優先に目をつぶる無責任な答弁をしたのであります。

さらに阿倍野再開発では、今回の決算で、わずか3年前に説明していた1350億円の収支不足が、「先行地区」で400億円も膨らみ、今後事業化する地区でも350億円、全体で2100億円という超巨額の収支不足になるというとんでもない実態が明かになりました。大阪市は「バブル経済」のせいにしていますが、実際にはバブル経済が弾けて後に赤字を取り戻そうとして、市民や議会に赤字を隠して計画を見直さずに事業を強行したことにこそ、ここまで赤字を拡大した真の原因があるのであります。なぜ巨額の赤字を抱えるに至ったのか、各地区・各事業毎の収支状況を明かにするなど、原因とその責任の所在を明確にするべきであります。

 今回の決算委員会では、今年新に設けられた都市経営諮問会議に出された収支概算見込み、すなわち高齢化社会の進行にともない2008年には1200億円もの収支不足が生じる、いつ準用財政再建団体に陥ってもおかしくない、だから市民に痛みのともなう財政構造改革が必要だという議論がさかんに行われましたが、これは、市長の私的諮問機関を市民や議会の上に置く議論であります。また、この収支概算の特徴は、高齢化社会を迎え生活保護や福祉などの扶助費が増えることを収支不足の第一の要因だとしていますが、巨大開発のつけである借金返済額・公債償還が増大していることこそ第一の要因ではありませんか。今後の収支を考えるうえでも、無駄な大型公共事業やさらに引き続く三セク会社の赤字しりぬぐいの実態を明かにして、それを削ることが先決であります。

 湾岸開発では今回の決算を見ても、夢洲トンネルの44億円、北港テクノポート線の51億円など258億円も投じられています。関空への出資貸付も59億円であります。USJ事業では港湾局と大阪市外郭団体から50億円の貸付が行われています。今後を見ても、USJ関連区画整理事業の530億円の保留地の処分が迫られ、阪神道路公団が不採算路線だとして建設を断念した淀川左岸線二期事業を380億円もかけて引き受けようとして、公金投入が確実な梅田北ヤード開発も推進する、新たな特定調停二社、大阪ドームやクリスタ長堀にあっては施設買取りや公金支出も計画されています。依然として毎年100億円をこえる規模の人権・同和事業もあります。いずれも開発や事業を中止するなど見直さなければならないものであります。ところが市長はこうした指摘には目をつぶり、市民に負担と痛みを押し付けようとしているのであります。

 今進められている三位一体改革に対する大阪市の姿勢も重大であります。小泉内閣の三位一体改革の本質は国から地方への財政支出の削減にあり、その眼目は社会保障と教育関係の国負担を減らすことと、地方交付税を大幅に削減することにあります。本市も04年度には交付税等が280億円も削減されております。ところが、本市は、この減額を事実上容認し、地方自治とその財源を守る立場からは本来反対すべき小泉内閣の「三位一体改革」を一貫して評価する態度に終始しているのであります。こんなことでは、必要な財源は確保できないと言わなければなりません。

 反対理由の第二は、福祉や教育など、市民の切実な願いに背を向けているからであります。

 まず、国保の問題では、84年に国庫負担率を45%から38.5%に引下げたことが今日の国保財政赤字の根本原因です。加えて、2003年度決算を見ても27億6千万円の単年度赤字となっていますが、収納率や市独自施策へのペナルティとして減額された国庫支出金が35億円もあり、主要な赤字の原因が、これらの国庫支出金の減額措置にあることは明白であります。

ところが大阪市は、保険料滞納世帯にムチを打って財政赤字の打開を図ろうとし、連続する保険料の引き上げで「払えない保険料」に吊り上げ、普通保険証を取り上げ、短期保険証は4年間で2倍、資格証は2年間で3倍へとその発行を急激に増加させています。これがいっそう受診抑制と病気の重症化を促進しているのです。

わが党委員の指摘に対し、理事者は、短期保険証や資格証の発行を当然視する立場を示し、関市長も、「払える保険料」への改善の取り組みを回避する答弁をしたのであります。こんな姿勢を認めることはできません。

さらに、介護保険の制度見直しの議論で、介護認定「要介護1」「要支援」の人は、予防給付に重点を移し、その分、介護サービスをへらそうとしている問題で、我が党委員は、「これらの人は介護が必要と認定されたもので、日本医師会の資料では、『立ち上がれない』『片足立位ができない』が80〜90%にものぼっている」「必要な介護が削られるようなことがあってはならないのではないか」と質したのに対し、理事者は、「サービスの質を転換するもの」などと、必要な介護を削る改悪に同調するような立場を示しました。

また、ホテルコストの徴収問題について、「国民年金など所得の低い人には耐えられない。所得に応じた負担を原則にすべきだ」と質したのに対し、理事者は「国の動向を注視したい」と第三者的で無責任な立場を表明したのです。

また生活保護行政においても、大阪市の対応には重大な問題があります。

もっとも重視すべき申請保護の原則、即ち、生活に困った市民が区役所で生活保護を申請する。行政はそれをうけて審査するという、このあたり前の原則が守られずに、窓口で色々の理由をつけて申請そのものを押さえ込んでいるのであります。

また、必要即応の原則に反して、市営住宅入居者の浴槽設置や母子家庭のふとん購入を却下するなどの事例が多くなっています。

理事者は必要な人に適切に保護を適用していると、紋切り型の答弁を行いましたが、今日のような深刻な長期不況のもとで、市民の生活と健康を守るために、憲法25条と生活保護法の立場にしっかりたった生活保護行政を行なうべきであります。

また、子育て支援について、保育の分野では、1355名の待機児解消のためという名目で、大阪市は、保育所の民営化や定員枠の増加、駅前分園など、公的責任を放棄し、安上がりとつめこみの対策をすすめてきました。それでもなお、919名の待機児が存在しているのであります。21世紀を担う子どもたちのすこやかな成長へ、公的責任をしっかり果たすべきであります。

児童館、学童保育所について、わが党委員が、大阪市と京都市を比較し、公立児童館数は大阪市10館にたいし京都市72館、学童保育所への予算は、2003年度決算で大阪市4億7千万にたいし京都市22億9千万円など、比較にならないほど大阪市の対策が貧弱であることを指摘しました。若い世代が安心して子育てをすすめるためにも抜本的改善が必要であります。

教育問題では、教育全体の決算額は年々減額され、2002年度1276億円が2003年度1162億円と114億円も減っております。校舎補修等整備事業費も2002年度55億円から2003年度44億円と約20%も減額となっております。学校維持運営費も同様に右肩下がりです。こうした影響が、学校現場では雨漏りの続く屋上、外壁や使用できないトイレや古びた理科室などの放置となってあらわれています。ところが、理事者は「創意工夫をして適切に対応している」などと答弁したのであります。断じて認められません。

大阪市がすすめております習熟度別指導は、差別と劣等感を子供たちに持ち込む危険性があり、21世紀をになう学ぶ力の教育効果が劣る、世界的に時代遅れの指導方法であると問題点も指摘されているものであります。また、授業の指導方法は、学校ごとに最適の方法を工夫してすすめると効果があります。ところが、大阪市は、ひとつの方法を画一的に押し付けており、これは、教育行政は教育内容に介入してはならないという趣旨の教育基本法第10条にも反するものと言わなければなりません。

一方、少人数学級は、42道府県、政令都市では名古屋市、京都市でも実施され、「授業がわかりやすくなった」など絶大な効果をあげています。私が早期実現を強く求めたのに対し、理事者は「大阪府の動向を注視する」などと後ろ向きの答弁に終始したのであります。

反対理由の第三は、2003年3月末の法期限をもって終結すべきだったにもかかわらず、同和対策事業を、人権行政の名で不当にも継続しているからであります。

同和事業の決算額は、市長説明によれば15億700万円となっていますが、わが党の調査で133億円を超えることが明かとなり、なかでも人権文化センター管理運営費24億6千万円、青少年会館職員費21億2千万円、芦原病院補助金・貸付金9億1千万円など、巨額の支出は従前と何ら変わっておりません。

人権文化センターは旧解放会館から表札を変えただけで、実態はほとんど変わらず、会館には部落解放や水平社宣言のレリーフが掲げられ、解同支部事務所が設置されるなど、ものものしい状態で、これでは市の公共施設とはとてもいえません。これも看板が変えられた地区人権協会のもとに社会福祉法人がつくられ、特養ホームやディサービスセンター等が一般対策のなかで最優先に設置され、その法人への財政支援は人権金融公社があたることになっています。

旧同和校に於ける教職員の同和加配も是正されず、未だに142人加配されています。67,000uにもなる同和未利用地についても、人権協会管理で駐車場、広場グランド、菜園等に使われていますが、全く処分の目途もたてられていないのであります。

このように大阪市同和行政は解同大阪府連の2つの要求、@これまでの同和行政の成果を後退させない。A一般施策を活用、改革、創造すること。を忠実に実行させられているものであり、まさに解同利権を保証するものといわなければなりません。

関市長は「法期限後は一般施策として、これまでの事業を行なっている」と事実上、同和対策の継続を認める答弁を行ないましたが、このような不公正は到底、市民の理解を得られるものではありません。直ちに同和行政の完全な終結を強く求めるものであります。

最後に、外郭団体への天下り問題と市長交際費についてふれておきます。

私の質疑で、2003年度末に退職した管理職は435名で、その内、外郭団体に再就職した者は173名、実に40lに及んでいることがあきらかになりました。その中で、役員になっている者は23人おり、報酬は、700万円〜1千万円となっております。こうした癒着が、ずさんな外郭団体の経営につながっているのであります。ただちに是正するべきです。

市長交際費の情報公開は、市政の公開度のバロメーターであります。ところが、大阪市長の交際費の情報公開度は、市長がいつ、いくらの費用で、誰と何をしたか、明確にわかる横浜市等と比べて雲泥の差であることが明らかになりました。情報公開は、市民参加に不可欠であります。すみやかに改善の措置をとり市政の民主的改革を推し進めるべきであります。

以上をもって、反対討論といたします