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市議団の実績

公営企業及び準公営企業会計決算に対する反対討論

10月18日本会議での小南かおる議員

小南かおる市会議員

2005年10月18日

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2004年度大阪市公営企業及び準公営企業会計決算に対する反対討論を行ないます。

 小泉内閣は今、経済財政諮問会議が発表した2005年「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」に沿って構造改革路線を推し進めようとしています。その主要な狙いは「医療、介護、子育て、環境の分野などあらゆるものを企業の利潤獲得の対象にし、国民生活にかかわる公共部門は縮小し国地方の支出の抑制を行なう」というものです。これと軌を一にするのが9月27日に発表された本市の「市政改革マニフェスト(市政改革本部案)」であります。

 市政改革本部案は、関市長が本部長となり関西財界の支援を受け、外部委員が作成したものですが、今日の大阪市政の行き詰まり、とりわけ財政破綻の原因と責任がどこにあるのかという一番重要な問題の検討をさけて、市政に民間の経営手法を導入することが大切だとし、主要73事業すべてについて見直すとしています。そこでは、交通・水道事業や下水道、市民病院等の公営・準公営企業についても、独立行政法人化、民営化の方向をうちだすなど、住民の福祉を増進に努めるという地方自治体本来の役割を放棄するものにほかなりません。こうした方向は断じて許せるものではありません。

 こうしたなか、今回の決算審議を通じて明らかになったことは、これまで巨大開発に熱中して、財政危機をもたらしてきた大阪市政の姿であり、住民の安全と福祉や、市民サービスを切捨てようとする大阪市の姿勢であり、マニフェストがめざす方向そのものであります。このような2004年度公営・準公営決算は到底、容認できません。

 以下、具体的に指摘いたします。

 反対理由の第1は、巨額の借金と市税を注ぎ込んで行われて来た港湾局の大型開発事業の破綻が明らかになり、市財政に深刻な影響を与えているからであります。

 今年の7月に大阪トランスポートシステムが交通局に移管されましたが、創業当時からその必要性と経営の見通しについて、私たちが警鐘乱打していたことが現実となりました。OTS線は開業以来ずつと赤字で、その累積額は04年度末で65億円余りに達しました。そして今回、交通局が鉄道施設を11億円余りで引き取り年間850万円のトンネル使用料を払い、その上、今後10年間の人件費と維持費等の増加分90億円を交通局会計、一般会計、港営会計が三等分して負担することになったのであります。まさに交通局会計や一般会計への負の遺産の押し付けと言わなければなりません。

 また咲洲におけるプロジェクトについてもWTC・ATCは言うまでも無く、なにわの海の時空館、コスモスクエア駅前及び運河整備計画、をはじめ、各事業はほとんど当初のコンセプト、目的から大きくはずれ破綻状況であるにもかかわらず、大阪市はこれらの事態について検証も総括もせず、当初のコンセプトをなし崩し的に変更し、そのつど新たに公金を投入してきました。

 コスモスクウェア駅前では、土地取得費の30%・10億円を上限として港湾局が助成するという優遇措置までつけて造成地売却がやられ、マンション建設が行われるなど、まったく場当たり的な公金投入になっていると言わなければなりません。

 こうした咲洲の開発の失敗にもかかわらず進められているのが夢洲のスーパー中枢港湾関連の大規模開発です。必要性もない16mもの深さのC12岸壁の建設が今年度から始められていますが、C10岸壁・C11岸壁とあわせて延長1100m・奥行き500mもの「スーパー中枢港湾」にするためには岸壁工事だけでも今後、210億円かかります。それだけではありません。夢洲と咲洲を結ぶ道路トンネルと、これと一体構造の北港テクノポート線建設の残工事費560億円、これに主航路を水深16mまで掘り下る工事費などを入れると合計1000億円もの事業費であります。

港湾局は、これらをなお進めるとしていますが、市財政の危機を省みないものであり、これでは「市政改革マニフェスト案」の「公共事業は新規事業から維持管理へ転換する」「新たなインフラ投資は抑制する」としていることと矛盾することとなります。港湾大規模開発は聖域になっていると言わなければなりません。

 またUSJは、開業の翌年から2004年度まで3年連続で大きな経常赤字を出し、大阪市とグループファイナンスが230億円を貸付けてもなお、今年3月末には、民間銀行に約束していた手元資金を確保できないという事態に陥りました。これを打開するために行われたのが、ゴールドマンサックス等からの250億円増資であり民間銀行の借入残650億円の借換えであります。

 港湾局は「これで大阪市等の貸付金の返済が確実になった」としていますが、これは今と同じ収益が続くことを前提にしたものに過ぎず、収益が悪化すれば7年後の増資分250億円も返済できないばかりか、大阪市等の貸付金返済も危なくなることが明らかになりました。さらに、今回の増資と借換えに際して、大阪市等の貸付金返済は、民間銀行やゴールドマンサックスヘの返済の後になる11年後とされているのであります。ここにも大規模開発の失敗が現れているではありませんか。

 次に交通局の土地信託事業に対する対応です。

 霞町のフェステバルゲートについては、事業の破綻処理に200億円もの公金をつぎ込んだあと、昨年10月オリックス系企業と新たに再生計画の契約を結びましたが、現に入居しているテナントヘの強引な立退き交渉に失敗して、再生計画そのものが白紙に戻りました。その損害金と管理費等に14億3千万円を支出しながら、未だにお先真暗という状況が統いています。

 住之江区のオスカードリームについても、開始以来の借入金が272億円に達し、テナントの退去が続くなかでいっそう深刻な状況をむかえております。この問交通局は、みづほ信託銀行に対し、交通基金から50億円を預託し事実上の金融支援を行いました。一方、みづほ信託銀行は、貸付金に対する金利を13年間で約30億円、さらに信託報酬として1億7900万円ちゃっかり受け取っています。仮に現在の状態が信託契約の終了まで続くとすれば、みづほ信託は合計56億円余りの収益をあげ、大阪市には約300億円の借金付で古い建物が返ってくることになります。こんな土地信託事業は直ちに改めなければなりませんが、交通局長と関市長は一定の時期が来てからでないと判断できないとして、またも先送りを行ったのであります。到底認めることはできません。

 反対理由の第2は、市民生活に直結した事業のなかで「公共の福祉を増進する」という公営企業の目的に反するいくつかの問題点が明らかになったことであります。

 まず交通局のバス事業についてですが、決算では市バス運営にかかわる補助金が大幅に減らされています。市バスは「市民の足確保」のために赤字でも路線を確保しなければならないという使命を負っているのに、98年度から2001年度まで、年平均50億円であった補助金を26%も削減して37億円にしたことは、到底市民の理解を得られるものではありません。

 今委員会では、「コストを下げるために市バス運行の管理委託を事業の2分の1にまで広げても中・長期の展望は開けない」「残る交通局職員運転手の給与水準も見直すべきだ」とか「赤字路線を維持するのか否かも議論すべきだ」などの実に乱暴な議論がされましたが、これらは「民営化・独立法人化」と軌を一にするものです。

 市政改革本部案に続いて、市バス事業については「改革型公営企業や株式会社化、民間事業者への路線委譲などの経営形態を検討し、来年度前半に方針決定する」という事業分析が出されましたが、我が党は市バス事業の民営化には断じて反対であります。

岡本交通局長も答弁で「民営化の場合はやはり収益第一主義ですから、民営化していった究極の先には事業規棋の縮小というようなこともある」と述べざるを得なかったように、民営化は市民サービスの低下につながることは明らかであります。こんなものは改革でも何でもなく、到底市民の理解を得られるものではありません。バス事業の民営化の検討は直ちに中止すべきであります。

 次は、地下鉄ホームの安全柵や可動式ホーム柵問題についてであります。交通事業者として乗客の安全輸送は第一義的使命であります。しかし、交通局は、ホームからの転落を防止するにはホーム柵が有効な方策と認識していると認めながら、「既設線での可動式ホーム柵の設置はむずかしい」とあいかわらずの答弁を繰り返しました。既設線においてもその気になればできるのであり、実施に向けて具体的に手だてをとるべきであり、早急に全駅で可動ホーム柵を設置するよう強く要望しておきます。

 続いて、分譲マンションの水道戸別メーターの取り換えの問題です。我が党は、繰り返し、マンションの水道戸別メーターの取替えは、一般住宅と同じように公費負担で行うべきと主張してきました。これに対し水道局は「マンションの個別メーターは個人財産だから、取替えは所有者、使用者が負担すべきもの」と拒否し続けながら、一方で「最近では分譲マンションが増加しており、市民サービスの面から私設メーターの公費負担の可能性について調査研究している」と3年前と同じ答弁を繰り返しました。いったい、いつまで研究し、何のための研究会なのか、全く不明です。市民サービスの公平性の確保は重要であり、早期に結論を出し実行に移すべきであります。 

 また、水道事業の運営についてでありますが、水道局は自ら高コスト体質であって大幅な人員削減と業務委託や経営形態の見直し、即ち民営化を検討するなどとんでもないことを表明していますが、肝心のニつの基本的な問題が抜け落ちているのであります。

 一つは、浄水施設能力と水需要の大きな落差についてであります。給水能力は一日243万トンあるのに、平均給水量は132万トンで施設利用率は54.3%であります。高度経済成長を信じて建設拡張してきた柴島上系、下系、豊野、庭窪の4浄水場の全てを動かす今の態勢を再検討し、現在の水需要にふさわしく整理統合すべきであります。

 もう一つは、過大な水利権についてであります。琵琶湖総合開発事業で得た一日64万6700トンを加えて、合計267万トンに達した水利権は一日平均給水量132万トンの2倍以上もあり、明らかに過大であります。そして現に琵琶湖の水利権にかかわる負担金を、毎年40億円から60億円、10年間もさらに払い続けなければならないのであります。この過大な水利権は、近畿の他の利水団体及び河川管理者と協議して処分すべきであると改めて強く求めておきます。

 次に市民病院事業会計についてですが、累積欠損金が340億円、不良債務は119億円と巨額に達し、準公営企業のなかでは最も厳しい状況にあります。この困難を打開するには、根本にある今日の社会保険診療報酬制度の欠陥、即ち薬価が高く技術料が低すぎるという報酬そのものを改めることが必要ですが、政府・厚労省に対して、日本医師会や大阪府医師会と共に大阪市も政策要求を行って行くべきではないかとの、わが党の指摘に、市長は消極的な答弁に終始しました。

 その一方で、地方公営企業法で定められている病院への一般会計補助金については、年々減額され、改革マニフェスト案では特別会計への繰入金を全体で30%カットを行う等の方針が出されています。こんな乱暴なやり方を市民病院会計に適用するなら、市民医療は益々後退させられることになり、到底認めることはできないのであります。

 最後に、市民が注目している敬老優待パスと水道料金福祉減免の継続についてであります。

 敬老優待乗車証、いわゆる敬老パスは、高齢者の方々の生き甲斐にも役立っており、大阪市において数少ない市民から喜ばれている制度であります。ところが今回の市政改革マニフェスト案では、900億円の経常経費を削減する「市民サービス見直し」の項目にあげられ、しかも市長は「制度や市民サービスのあり方について、総合的に検討していく」と制度の改悪の姿勢を露骨に示しました。

 市民の方々からは所得制限や有料化にするのではなく、いまのままの制度を継続してほしいと、大きな運動にもなり署名もたくさん市議会に届けられています。医療や介護保険の改悪が行われ、年金控除等も縮小され、高齢者の方々のくらしは今、大変なところまで追い込まれています。市民の強い願いである敬老パス制度は、現行どおり継続すべきであります。

 また、水道および下水道料金の福祉減免についても、市民のくらしが益々大変になってきているなかで、是非とも必要な制度であり、継続するよう強くもとめておきます。

  以上をもって決算反対の理由説明といたしますが、今回、関市長が突然、辞職表明をされたことについて、一言、申し上げます。

 関市長は、大阪市のカラ残業やヤミ年金という腐敗したオール与党市政の中枢にいたわけですから、その責任はまぬがれません。しかし、今回の市長の辞職表明は、その責任を取ると見せかけ、再度市長選挙に出馬し、あわよくば当選することによって「みそぎを受けた」とする思惑が見え透いているのであります。

 市長は昨日の記者会見でも「何としても市政改革をやり遂げたい」ということを言っておられますが、市長が本部長となっている市政改革本部のマニフェスト案を見ると、市民に負担を増やし、市民サービスを引下げ、その一方で大型開発や同和行政は聖域にするというもので、とても「改革」と言えるようなものではありません。「改革」というなら、「市民が主人公」の立場で、市民に開かれた市政、税金は市民のために使う、行政は公平・公正におこなうというものでなければなりません。

 私たち日本共産党は、今回の市長の辞職に伴う市長選挙を、市民本位の大阪市政をとりもどす絶好のチャンスとして、全力をあげてたたかう決意をここに表明するものであります。 

 以上、反対討論といたします。