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市議会本会議(2006年5月31日)でのドーム球場の 経営破たん問題にかんする石川かんじ議員の討論 |
石川かんじ市会議員 2006年5月31日 |
私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただいま上程されました議案第276号、大阪シティドームの更生計画案への同意を求める案件に反対の討論をおこないます。 ドームの更生計画案は、大阪市が市関連の債権と出資金、合計108億円を放棄する。オリックスグループの不動産会社「オリックス・リアルエステート」に90億円でドームを売却する。オリックス側は5億円でドーム社の全株式を取得し事業を引き継ぐ。5年後に大阪市へのドームの寄付について市と協議する、などというもので、結局、大阪市の支援の継続するとともに、新たな公金投入をおこなうことが前提になっており、こうした内容の計画案には到底同意できません。以下、反対の理由を説明いたします。 反対の理由の第一は、大阪市が、ATCやWTC、MDCなどの事業のゆきづまりに直面して行ってきた破綻処理と同様、財界・大銀行には責任を求めず、損失を最小限におさえる一方で、市民には事業失敗の巨額のつけを押し付けるものであるからです。 そもそも、このドームについては、自治体が手を出すべき事業でなかったことは、ATCやWTCの無謀な建設計画に、大阪市が公金を投入した実例以上に明々白々です。それは、東京ドームや名古屋、福岡など、各地のドーム球場がいずれも民間の経営であること、東京ドームは稼動率90%、その他の球場も経営は順調といわれており、民間の手で建設・運営される方向で、大阪市が見守ってゆくべきであったことを示しているのであります。福岡ドームの副社長は、「事業というのは自分たちで収支を整えるべきで、いったん外の金をあてにすればどんどん頼ってしまう。それにしても公的資金をもらうなんて」と、大阪ドームについてきびしい指摘をしておられます。大阪市の基本姿勢の異常さ、出発点の誤りは明らかです。 また、借入金が資本金の5倍以上という無謀な計画で始まり、磯村元市長自身が、かつて、「使用料を高くしても人が来ると思い込んで、ものすごい高い建設費で造った」と認めたように、過大な投資であったことは周知のとおりであり、事業が破綻したのは当たり前です。こうした基本姿勢の誤りの付けを市民にまわすなど言語道断と言わなければなりません。 その一方で、大銀行はちゃっかりとその投資分を回収してきました。平成16年11月1日の特定調停申し立て時、市中銀行の借入金残高は426億円でした。ドームが開業した平成9年3月末には、477億6000万円でしたので、元金が51億6000万円返済されていたのであります。また、特定調停の申し立て時までに、ドーム社が市中銀行などに支払った利息は、70億円を超えています。元金とあわせて120億円以上になるのであります。大銀行優遇の措置になっている計画案には同意できません。 反対理由の第二は、今回の計画が、新会社が自立してこの事業を立ち直らせる計画になっていないからであります。 まず、「ドームには新たな公的資金は投入しない」などと表明してきた当局の公約に反して、大阪市が引き続き毎年4億8000万円もの従来からの支援を継続することが更生計画の前提になっています。これでは市民は納得しません。 さらに、この更生計画案では、5年先にオリックス側が大阪市にドームを寄付する申し出を行う権利を認め、大阪市が寄付を承諾した場合、所有者として長期修繕費を含めすべての責任をかぶることになります。つまり、今後20年間で、120億円を要すると言われている長期修繕費の負担問題を先送りし、市民の怒りの声がおさまるのを待っている、ほとぼりがさめるのを待っている大阪市の姿勢が見え見えです。 そもそも、オリックスが90億円を投じてドームを買収するのは、十分に採算がとれる目算があるからです。また、いざという時は球場を大阪市に寄付し、ランニングコスト負担をなくすとともに、賃料は安くしてもらい、フランチャイズ機能は保つことができる、大阪市にとっては屈辱的とも言える条件でオリックスにドームを買収してもらう、これが、今回の「更生計画」の本質であります。 反対理由の第三は、歴代市長をはじめ、市のトップの責任を不問にしたまま幕引きをはかろうとしているからであります。 わが党議員団はこの間、ドーム事業の必要性、採算性について繰り返し問題を指摘してきました。しかし、大阪市は、国際集客都市構想の名の下にバラ色の夢をばらまき、事業の破綻に直面しても、身勝手な「公共性論」を持ち出して公金を投入してきました。 私は、ドームの経営が年々深刻になるなかで、この間、法的処理のチャンスが、少なくとも2回あったと考えます。1回目は、平成11年度の決算で、単年度38億5000万円の赤字が出た時です。この時は、農協から25億円の運転資金を借りることで抜本的な処理策を先送りしました。2回目は平成13年です。この時は、経営改善の支援と称して、0.25%の超低金利・20年据え置き・30年返済という異常な大阪市の貸付金と利息補助金によって、当面をごまかす手法をとりました。こうして、その間に、大阪市の損失は増え、銀行などの回収額を増やす結果になりました。 市長は、更生計画案をうけての記者会見で、「先送りすれば、さらに市民負担が増える」などとのべましたが、ここに至るまで問題を拡大した市のトップの責任についてどう考えているのか、市民にはまったく説明がありません。会社更生法の適用という事態をまねき、社会的信用を失墜させた、この事態に対する市長の責任は重大であり、明確な対処を市民が求めていることは明白です。 最後に申し添えますが、ドーム社の歴代社長は、大阪市の現職理事者やOBであります。責任を誰も取らないなど、到底許されることではありません。 以上、反対討論といたします。 |