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児童館・トモノス・郊外保育所の「廃止」提案に反対する討論 2006年5月31日の市議会本会議 北山良三議員 |
北山良三市会議員 2006年5月31日 |
私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、議案第199号「大阪市立児童福祉施設条例の一部を改正する条例案」、議案第204号「大阪市立勤労青少年ホーム条例を廃止する条例案」、ならびに議案第205号「大阪市立動労青少年いこいの家条例を廃止する条例案」に反対する討論を行います。 これらの条例案は、10館しかない市立児童館を、「偏在している」としてすべて廃止し、26館ある動労青少年ホームおよび動労青少年いこいの家(通称「トモノス」)を、「勤労青少年への福祉事業の必要性はなくなった」としてこれまた廃止し、そして、貝塚の自然豊な地にある貴重な郊外保育所を、「近隣での公園施設などの整備が進んだ」として、これも廃止してしまうという内容となっています。 しかも、市長が市政改革の一つだとして、児童館・トモノスの廃止提案を市民に明らかにしたのは本年1月12日、郊外保育所の廃止提案を市民に明らかにしたのが3月9日、そして3月末をもって廃止を実行しようという、いずれも極めて唐突、かつ市民無視のやり方で強行しようというものでありました。 こういう大阪市からの提案を受けて、利用してきた市民を始め、各地の振興町会や青少年指導員、また各種サークルや劇団、ボランティア組織やガールスカウトのみなさんなど、幅広い市民から「廃止しないでほしい」との声が、またたく間に大きく広がったのも当然であります。 児童館を利用している小学生が市長に送った手紙や寄せ書きには、「みんなと遊べるし、めっちゃ楽しい」「児童館がなくなったらこまりますからこわさないでください」などの声が綴られています。トモノスの利用者からは、「青春の大事な時期を過ごしてきた場所」「地域に根ざしたぶれあいの施設」「親として、子どもを安心して遊ばせることができる、とても安全な場所」「地域の人と職員がいっしょになって、いろんな企画を創造してきた所」「今回の突然の発表は、市民をないがしろにしている」「今こそ青少年の問題は最重要課題。一人ぼっちの青少年への働きかけができる貴重な施設」などの声が届けられています。そして郊外保育所を利用してきた保育所関係者からは、「親子の愛情を、理屈ではなく肌で感じられ、自然という大きな力を借りての子どもの育成にとってなくてはならない施設」などの声が寄せられています。 これらをふまえ、去る3月議会においては、「なぜ『廃止』なのか、市民の理解が得られていない」「なぜこんな性急なやり方をとるのか」との意向で、実に40年ぶりにこの三つの条例案は可決されず、その「継続審議」が全会一致で確認されたのであります。 しかるに、あれからまだ、たった二ヶ月しか経っていない本5月議会で、その事前調査の民生保健委員会でのわずか3時間足らずの審議で、今、児童館・トモノス・郊外保育所の廃止を決定しようとしているのであります。果たしてこれで、議会として、市民の意見を十分に聞き、市民の信頼と期待に応えることになるのでしょうか。 しかも、3月議会での審議を含め、こんな短時間での市当局との質疑を通じてでも、あらためて、これら児童館・トモノス・郊外保育所の廃止を決定してはならないということが、より一層明らかになっているのであります。 まず、第一にかかげている市当局の主張、すなわち、「いったん児童館・トモノスを廃止するが、それは『在宅の乳幼児とその保護者を対象とした子育て支援事業』を拡充・強化するための措置だ」という点についてであります。 私は、「在宅の乳幼児とその保護者を対象とした、子育て支援事業を拡充強化する」ことには大いに賛成であり、飛躍的に拡充・強化をはかるべきだと考えます。しかしそれは、今ある児童館やトモノスを廃止して実施すべきかといえば、これは誰が考えても、絶対に「良し」とはいえないやり方であります。なぜなら、今ある児童館やトモノスが果たしている重要な役割が破壊され、犠牲にされてしまうからであります。そんなことは、在宅で乳幼児の子育てをしている保護者のみなさんも、決して望んではおりません。 そもそも大阪市に児童館が10館しがないこと自体が大問題なのです。 児童館は、児童福祉法に位置忖けられた児童厚生施設です。乳幼児から小・中・高校生を対象に、これらの児童の健全育成を保障していく大事な施設です。児童厚生員の資格を持つ職員が配置され、自由な遊びの場を提供するとともに、それぞれの年齢に応じた遊びと交流のメニューを組み、地域との架け橋ともなっている施設です。だからこそ、これまで条例でしっかり位置付けてきたのです。そんな児童館を、「偏在しているから廃止する」などという身勝手な発想が、市民の理解を得られるハズがありません。どの地域の、どの子ども達にも、健全な成長と発達を保障しなければなりません。そのためには、今の10館から、30館・50館・100館と増やし、せめて全中学校区に一ヶ所、さらには、全小学校区に一ヶ所へと広げていくことを目指さなければなりません。それが自治体の果たすべき役割です。 また、トモノスについても、動労青少年福祉法に位置付けられた施設であり、青少年の自主的活動と交流を保障し、行き場を失っている青少年の孤立感を取り除いていく重要な施設であります。同時に、時代の変化と要請に応じて、柔軟に運用されており、乳幼児から小・中・高校生の健全育成、地域のあらゆる年齢層のサークル活動やボランティア活動を保障し、地域でのコミュニティを広げていく大きな役割を果たしています。条例と現実に乖離があると言うのなら、条例をなくすのではなく、現状にふさわしく条例を改正し、いつそう強化すべきであります。 こんな重要な役割をもつ児童館・トモノスを、大阪市の条例から消滅させてしまうなどということは、法にもとづく事業への責任放棄というべきことであり、市民の願いにも反し、到底「市政改革だ」などと言えるものではないのであり、断じて認めるわけにはいかないのであります。 次に、第二にかかげている市当局の主張、すなわち、「児童館・トモノスを条例上廃止しても、その施設を今まで通り利用できるように配慮するので、これまでの児童館・トモノスの利用者にとっては実態は変わらないのだ」という点についてであります。 ならば、児童館もトモノスも、その施設をこれまでどおり利用できると言うのなら、なぜ条例上の位置付けをなくす必要があるのでしょうか。民生保健委員会での私のこの質問に、理事者はまったく答弁できなかったのであります。 しかも、「これまで通り利用できる」という市当局の答弁も、まったくその場しのぎの内容であり、これまでの児童館・トモノスが果たしてきた役割どおりに利用できる保障は、まったくないのであります。 結局、児童館・トモノスの条例上の位置付けをなくすという市当局の目的は、「子育て支援活動の拡充・強化」のためでもなければ、「これまで通りの利用を発展させる」ためでもありません。「児童館やトモノヌが果たしてきた重要な役割を量的にも質的にも縮小し、消滅させてしまう」というところに真のねらいがあるのです。 それは、この間の民生保健委員会での、次の二つの事実で明らかであります。 第一に、市当局は最初から「廃止後もこれまでどおり利用できる」と提案していたわけではなく、市民の声に押されてそう言わざるを得なくなったという経過であります。 当初の市当局の提案では、廃止だけが示され、児童館・トモノス廃止後の姿がほとんど具体的に明らかにされていませんでした。その後、利用者や市民の声に押されて、主にトモノス廃止後の「子育て活動支援事業」でこれまでの利用者にも活用できるようにすると示し、その次に、児童館廃止後は二ヶ月間だけ小学生の利用を認めると表明し、そして継続審議となって後に、小学生だけでなく中・高校生にも自由な遊びの場は提供すると示し、さらに質疑の中で、児童厚生員の資格をもつ補助員を配置し、遊びや交流のメニューも用意すると言わざるを得なくなったのです。 これらは市民の声と運動の大きな成果です。同時に、これらは、児童館・トモノスの本来の役割にふさわしい措置とは到底言えないのであります。この経過からは、児童館・トモノスでのこれまでの事業を縮小・廃止したいとの市当局の思惑がミエミエではありませんか。 第二に、関市長の「臨機応変に対応できる柔軟な組織にしていきたい」との答弁であります。これは、法や条例の根拠をなくし、議会や市民を軽視し、市の都合でいつでも事業を縮小・消滅させることができるようにしたいとの思いを、明け透けに示したものと言えます。 市民を欺くこんなやり方に、「納得できた」として議会が同意するなら、それは、市民を欺く行為に手を貸したことになってしまいます。断じて認めることはできません。 最後に、郊外保育所の廃止についてであります。 年間1万2000人もの利用者があり、しかも存続のための経費は年間わずか650万円にしかすぎません。また、すぐにこの土地を売却することもできない状況でもあり、廃止となれば、この場所は無管理の状態になり、犯罪や非行の温床ともなってしまいかねません。自然に恵まれ、お泊り保育などでも子ども道に大いに喜ばれている、こんな郊外保育所を廃止してしまうことにも、同意できないことを合わせて表明し、反対討論といたします。
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