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市議団の実績

瀬戸一正議員の予算案反対討論

瀬戸一正市会議員

2007年3月15日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2007年度大阪市一般会計等予算案に対する組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論をおこないます。

 今、市民の暮らしは、国の構造改革路線による庶民大増税、医療・介護・年金など社会保障分野での負担増、非正規雇用の広がりなどによって、耐え難いものとなっています。

 こうした中で大阪市政に求められるのは、国の悪政に対する防波堤の役割を果たすことであり、自らは税金の無駄遣いを改めて、市民の福祉と暮らしを守ることを第一とする予算を組むことであります。ところが市長が「市政改革2年目としては満点だ」とした予算原案は、国の悪政に輪をかけて市民に負担を押し付け、弱者を切捨てる一方、「官から民へ」とばかりに地方自治体の役割を投げ捨てる民営化や民間委託を推し進めるとともに、大型開発や同和の税金無駄遣いを改めようとしないばかりか、大企業に補助金をばらまく予算となっていることが、委員会質疑を通じて明らかになりました。到底、認めることはできません。以下、具体的に指摘します。

 

 第一は、国の負担増政治に輪をかけて、市民に更なる負担を押し付け、福祉や教育を後退させるものになっているからであります。

まず、国民健康保険料の4.5%引き上げについてであります。

昨年、保険料算定方式を変更し、低所得層、とりわけ高齢者や多人数世帯のみなさんに大幅な負担増を強いたばかりなのに、今年またこれに追い討ちをかけるように値上げするなどということは、決して許されるものではありません。

今回の国保料引き上げの理由は、給付費等が4.5%引き上がったからだとされていますが、わが党議員の質疑を通じて、当局も「老人保健法改定による影響」が大きな比重を占めていることを認めました。つまり、国の悪政の影響をそのまま保険料引き上げに直結させているだけであります。そこには、自治体としての市民を守る独自の役割を果たす姿はまったく見られません。

今回の値上げは加入世帯の圧倒的多数の保険料を引上げるもので、当局の推計でも、65歳以上の年金単身世帯で95.4%、65歳以上の年金夫婦2人世帯で82.9%が値上がりになります。現状でも、低所得層の国保料負担は、3人世帯で所得の17.7%に達する層も生まれており、すでに加入世帯の4軒に1軒が滞納世帯になっているのに、今回の値上げは「払えない保険料」をさらに引上げることになるのであります。

わが党議員団は、「国保料の引き上げは止めて、むしろ引き下げを行ない、誰でもが払える保険料にするべきだ」と一貫して主張し、そのために一般会計からの繰り入れを増やすことを求めてきました。今回の質疑でも、わが党委員は、国保会計への本市の実質上の繰入れ額は、2002年度をピークに毎年減少し、2007年度ではピーク時に比べ、54億2千万円も減らしていることを明らかにして、一般会計繰入金の増額を求めました。ところが、理事者は「限界だ」との答弁に終始したのであります。断じて容認できません。

次に、障害者支援でありますが、障害者の過酷な生活実態に背を向けているのであります。本市は、障害者自立支援法にかかわる利用料負担軽減について、独自の軽減策をまったく取ろうとしていません。政府は「負担があまりにも重い」という世論に押され、施行後わずか1年足らずで利用料負担の見直しを余儀なくされました。まさに、自民党と公明党がゴリ押したのは、自立支援どころか自立破壊の悪法だったのであります。しかし見直しをしたと言っても「応益負担」制度を続けるかぎり、障害者の経済的負担と苦しみはなくなりません。支援費制度では「住民税非課税者」は負担なしだったのであります。こうしたなか、政令市では8市が独自の軽減策を創設しました。さいたま市では、国の軽減策にさらに上乗せした市独自軽減策を今年1月から実施しました。独自軽減策を何もしない市長の責任は重大です。

また、06年度では約4万5千人を対象に4億3千万円の予算をつけていた重度障害者給付金を廃止する点です。同給付金は07年度障害者関連予算案のわずか0.8lに過ぎない額であります。本市は、「障害者の自立生活の推進のための基盤整備がはかられ、その役割は終わった」としていますが、まったく冷たい仕打ちであります。

さて、教育についてでありますが、大阪市の未来を担う子どもたちに、よりよい教育条件を整備することは、行政の第一義的課題です。ところが、本市の教育予算全体が年々右肩下がりで減り続け、校舎整備費は2003年度111億円から2007年度50億円、校舎補修費は67億円から37億円へと、5年間に約半分にもなっているのであります。

こうした予算のために、トイレの改修に関するだけでも、167校園から、なんと403カ所もの要望が提出されるという事態になっています。わが党委員が、修繕せず壊れて使えないトイレを放置していることは、子どもたちに対する人権侵害にも等しく、緊急に対策が必要だとただしたのに対し、教育委員会は「他にも緊急性のあるものがある」などと答弁したのであります。

また、貝塚養護学校の児童・生徒受け入れ停止問題です。 

同校は1948年の開校以来、ぜんそくなど病弱・虚弱児や心身症に苦しむ子どもたちを、寄宿舎生活で受け入れてきたかけがえのない学校です。いじめや不登校が大きな社会問題になるなか、その必要性はますます高まっており、存続を願う署名が10万近くも集まっているのです。ところが、関市長は、「児童・生徒数も減少しており、存続は極めて困難」だと、子どもや父母の切実な願いを切って捨てたのであります。

また、市営住宅家賃福祉減免制度についても、民間家賃との比較、あるいは福祉減免を受けていない市営住宅入居者との負担の公平性などを理由にして、値上げの検討を打ち出しています。しかし福祉減免制度は、そもそも、他との比較から設けられた制度ではなく、減免要綱にあるように、世帯の収入が絶対的に少ないために家賃の支払いに困っている市民のための、家賃補助制度です。実際、福祉減免を受けている階層は、生活保護需給基準と同程度、あるいはそれ以下の収入階層の世帯であります。福祉減免措置の改悪は断じて認められません。

 

 第二は、市政改革の名でコスト削減を優先させて、事業の縮小や民間委託、民営化の方向に突き進み、公共サービスの安全と安心を切捨てようとしているからであります。

まず、職員の削減についてです。今回、市長部局について5年間で6000人の職員削減を進めている「市政改革マニフェスト」の後に、さらに6000人を削減するという「将来の職員数に関する中間取りまとめ」が出されました。1号職員もさらに削減するとともに、2号職員については、現在の1万1200人を4000人にまで大幅に削減するというものでありますが、その手法の多くは民間委託であります。こんなことを強行したら、本市の行っている公共サービスの縮小や質の低下が引き起こされかねません。

 また、わが党委員が、2007年度、353の市の施設が指定管理者制度に移行するが、公の施設であることには変わりがなく、そこでの従業者の労働について本市は責任を持たなければならないと指摘。正規・非正規などの雇用形態や給与水準などを市として把握する必要があり、民間の市場原理にゆだねると、労働条件切捨ての行き過ぎも起こりうるとただしたのに対し、理事者は、「指定管理者の裁量になる」などと答弁しましたが、まったく無責任であります。

さて、交通局は、バス事業を次々と管理団体である運輸振興株式会社に委託して来ました。そして来年度はいよいよ「南海バス」に井高野営業所を委託しようとしていますが、コスト削減の中で、安全性が懸念される事態が、すでに起きているのであります。

 今年1月には、運輸振興の契約運転手による「殺人未遂容疑事件」が起こりました。新聞報道によれば、この運転手は「酒を飲んでいて過密勤務のことを考えていたら腹が立って来た」と職場に引き返して「上司の喉元にナイフを突き付けて『殺すぞ』と脅した」ということであります。歌島バスターミナルでは、運輸振興の運転手が勤務中に倒れ、救急車で搬送されてそのまま入院しましたが、職場では長時間勤務が大問題になっています。酉島営業所では、昨年10月から「火事だというニセの火災通報が2回」されたり、「早朝、発車点検でバスのキーが壊されていた」などの異常な事態が起きているであります。

 わが党議員が、一月に80時間を超える残業をしている実態や基本給が低いために残業をしなければ生活できない実態を示し、待遇改善と労働安全衛生法に基づく措置を取るために運輸振興と協議に入るように求めたのに対し、当局は「労働者は納得して雇用されている」などと答弁し、労働者がひどい待遇に置かれていることを改善する意志がまったくないことを示したのであります。

 続いて、消防音楽隊の廃止についてです。発足以来、火災予防活動に大きな役割を果たし、文化としても市民に親しまれて来た消防音楽隊の存続を求める市民の陳情署名は、3万8千筆を超えています。消防局は、市政改革推進本部の方針にただただ従って、3年間で2億7900万円を削減するために、「危機的財政の健全化のために費用対効果の検討も含めて廃止の判断をした」などとしております。そしてわが党委員の追及に対して、関市長は「(マニフェストの推進は)消防の分野においても例外ではない」とひらきなおったのであります。今、全国で15の政令市が消防音楽隊を保有していますが、これを廃止するなどと言い出しているのは本市だけであります。ほんとうに、恥ずかしいかぎりだと言わなければなりません。

 

第三は、大型開発や3セク支援の税金無駄遣いは見直さず、大企業への誘致補助金をばらまく一方で、中小企業や市民の雇用に冷たい予算となっているからであります。

本予算案には、新人工島整備120億円、夢洲トンネル建設35億円、北港テクノポート線建設23億円、阪神高速道路・淀川左岸線2期事業27億円、ATCなど三セク3社に対する支援64億円など、あいも変わらず莫大な大型開発関連予算が計上されています。なかでも、スーパー中枢港湾づくりは、ムダと浪費の大型開発を象徴するものです。

 現在、夢洲のC0は週2便、C11は週4便のコンテナ船が入っているだけで、コンテナの個数も20万個にすぎません。にもかかわらず、当局は、更に、220億円もの巨費を投じて、不必要なC12の建設を進めようとしているのであります。しかも、スーパー中枢港湾の条件である120万個のコンテナを集めるために、咲洲のR岸壁など5バースのコンテナ機能を廃止して、無理やり、夢洲にもって行こうとしており、そのために、80億円もかけたガントリークレーン等の設備もスクラップ同然となるのであります。

 また、USJについてでありますが、なんでもかんでも「官から民へ」と言いながら、USJに対しては、その基盤整備も含め、1000億円を超える公金を投入してきました。自治体が手を出すべきでない事業を、大阪市が先頭に立って推進した、そのつけが、土地区画整理事業の破綻にあらわれているのであります。今回、当局は「負の遺産」は5943億円にのぼると、その全体像を示しましたが、その中にこの事業にかかる赤字見込み258億円が入っているのであります。

しかも、この区画整理事業の換地処分にかかわって、地域住民に大きな不便を強いる問題が今回、明らかになりました。JR桜島駅を利用する住民と周辺企業の従業員のために整備された、送迎車両の転回場を廃止しようとしているのであります。こんなことは断じて許されません。

さて、今、43の都道府県が、企業誘致のため、なんらかの補助制度をつくるなど、大企業誘致合戦が全国で展開されております。本市も本予算案では、都市再生産業立地促進助成で7億6400万円を計上し、大型特例の適用は、投資額300億円から100億円に緩和するとしております。助成の上限30億円は上限を設定している政令市の中では横浜市の50億円に次ぐものです。

この大型特例の適用第一号が、住之江区の旭硝子の工場建設であり、本市の助成額は17億円、大阪府も同額の助成をするものであります。大阪市は、この工場の常用雇用は300人だとプレス発表しましたが、わが党が工場の担当者に聞き取りした結果では、正規労働者は40人から50人にすぎず、それも、他の工場からの移動が主であり、しかも工場で使う原材料は同社の尼崎工場で製造したものであります。これでは大阪市にどれだけの経済効果があるのかまったく疑問であります。ところが関市長は、「大阪港の活性化にも波及し、将来の大阪の発展にプラスになる」と、手放しで評価したのであります。

 中央区の「京セラミタ」の場合は、市内の4ヵ所の賃貸ビルに分散していたものを、自社ビルを建てて集約するというだけなのに、2億4000万円を助成します。わが党委員が、これで立地促進と言えるのか、市民に大きな負担を押し付ける中でのバラまき補助金は、市民の理解がとうてい得られないと指摘したのに対し、関市長は、「都市再生をはかるうえで必要な制度であり、間接的な雇用効果も考えられる」などと、実態とかけ離れた答弁をしたのであります。

次に、中小企業対策予算についてでありますが、そのほとんどは金融事業費であり、実質上、中小企業対策と言えるのは約40億円、予算全体のわずか0.25%にすぎないのであります。わが党委員が、これを大きく増やす必要があると指摘したのに対し、理事者は「効率化の観点から効果の期待できる事業、ロボットテクノロジー産業や健康予防医療産業などの新産業創出事業などを支援する」などと答弁し、中小企業対策に背を向けているのであります。

市民のくらしに密着した公共事業では、本市の「緑の基本計画」が21世紀中庸に市民一人当たり7uの都市公園等・緑地面積にすることを掲げているのに、現在4.1uにとどまっている問題を指摘しなければなりません。計算上では毎年14.5ヘクタール増やさなければならないのに、本予算案では、11ヘクタールを整備した2003年度予算111億円の約半分、53億円へと大きく減っているのであります。しかもその上に、ゆとりとみどり振興局が掲げる来年度の経営方針では、昨年まで掲げていた「緑の数値目標」を削除してしまいました。無責任極まりないと言わなければなりません。

 

第四は、市民が同和の特別扱いはきっぱり止めよと求めているのに、なお不公正な同和行政を続けるものとなっているからであります。

すでに役割を終えた同和行政を、一日も早く終結するうえで、本市の不公正・乱脈な同和事業の根源である「解同」・人権協会との関係を断ち切ることが、今、強く求められております。ところが、本市は、肝心かなめのこの問題にメスを入れようとせず、人権文化センターや旧同和住宅附帯駐車場など、人権協会への事業委託をあと3年も続けるというのであります。人権文化センターの管理運営には17億円も計上しております。

また、当局の説明する同和予算金額には、同和対策債元利償還金など、巨額なものが含まれていません。旧同和校への教員の加配もそのままであり、「人権教育」の名による同和教育もやめようとしておりません。さらに、本市は2006年、部落解放人権夏季講座に200万円の費用で71人の職員を参加させておりますが、2007年度もやめようとしていないのであります。

社会福祉施設への補助金問題も同様です。同補助金は、旧社会福祉医療事業団から借金して社会福祉施設を整備した法人に対し、大阪市が元金や金利を補助する制度であり、本予算案では、2億7800万円を計上しています。その対象となっているのは、「解同」関係や市職員が天下っているなど大阪市と関係の深い法人が大半であります。これに加えて今回、わが党委員の指摘で、担保物件がないために、本来は社会福祉医療事業団から借り入れができない法人にまで、本市が融資をして、しかも元金と金利を毎年補助している例が明らかになりました。まったく底無しの特別扱いをなお続けようという予算案になっているのであり、到底、許されるものではありません。

 

以上をもって予算組み替え動議に賛成、予算原案に反対の討論といたします。