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市議団の実績

信託事業の処理についての瀬戸議員の本会議討論

瀬戸一正市会議員

2007年5月29日

私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただいま上程されました議案第132号、第133号、および第157号の、中央区西心斎橋、北区扇町開発、新大阪駅周辺土地区画整理事業用地にかかわる「土地の信託の変更について」に、反対する討論をおこないます。

今回の市長の提案は、これら三つの土地信託事業を賃貸型から処分型に変更した上で売却し、その代金を銀行借金などの固定負債解消に充て、残余財産が生じればこれを市に返還させて、土地信託を終了させるというものであります。しかしそもそもこれらの土地信託事業は、信託銀行が三つ合わせて500億円もの信託配当が得られると説明した上で、30年の信託期間終了後は土地も建物も本市に返還されるとしていたものであり、その信託期間のいまだ途上であります。信託銀行のなすべきは、当初の提案どうりに配当を出す、建物の借金はすべて返済する、そうした上で土地・建物を本市にきちんと返す、そのために最大限の経営努力をすることであり、信託銀行はそうした責めを負っているのであります。ところが今回の提案は、総じて、信託銀行のこれらの責務をすべて免じる一方で、市民の貴重な土地まで失いかねないものであり、断じて認められるものではありません。

 以下、反対理由を具体的に申し上げます。

今回の提案は、昨年の9月に土地信託事業検討会議がまとめた中間報告での取り組み方針やそれに基づく本市の考えが大きく変更されています。中間報告の段階では、これら三つの土地信託事業を処分型に変更して売却し、その売却益を弁天町駅前開発土地信託事業の借金の圧縮に当てるといういわゆる「四点セット」だったものが、市民や議会の批判を受けて変更せざるを得なくなり、弁天町土地信託事業とは一応切り離して、三つの土地信託事業を処分・終了させるというものであります。

市長をはじめ財政当局は、昨年の決算特別委員会や今年の予算議会では「四点セットがベターだ」と繰り返し述べてきました。しかし、三つの土地信託事業の売却益でもって、大失敗した弁天町土地信託事業の借金の穴埋めをするなんてことが許されないことは論を待ちません。性格の違う事業を清算した上、これまた性格の違う事業の赤字穴埋めに使うこと自体、無茶ですが、さらに説明がつかないのは、弁天町土地信託事業で信託銀行が自らの事業の大失敗で膨れ上がらせた借金の圧縮・穴埋めを、なんで大阪市がやらなけれはならないのかということであります。まったくの銀行救済策ではありませんか。わが党は昨年来いち早くこうした点を、厳しく指摘・追及してきましたが、今回、大阪市がこの「四点セット案」を撤回せざるを得なくなったのは当然であります。

それでは今回、処分・売却されようとしている、三つの土地信託事業に供された市有地はそもそもどんな土地だったのでしょうか。扇町のキッズパークは、経済局所管の工業研究所として長年、活用されて来た広さ土地で、広さは7400m2。西心斎橋のビッグステップは、元の南中学校敷地で、元々は市民が大阪市に寄付をした土地で、広さは4279m2。ソーラー新大阪21は、6200軒もの市民が立ち退きや減歩に協力した土地区画整理事業が生み出した土地で、広さは4865m2。三つの合わせて16,544m2もの市民の貴重な財産であります。

大阪市はこれらの土地を信託事業に出すときに市民にどう説明したのか。信託に出すけれども、これは資産の有効活用だ、信託期間終了後はちゃんと戻ってくると説明してきたではありませんか。

いくら見通しが甘かったと言い訳をしても、今回、賃貸型から処分型に変更して土地を売り飛ばすということ自体、市民に対する背信行為であり、到底、市民の理解が得られるものではありません。

今回の提案の大きな特徴の一つは、処分すなわち売却した代金については、まず借入金返済に充て、その後に残余財産を市に引き渡すとされている点であります。

この契約変更で行けば、いくらで売却できるのか、売却する土地に見合う資産が大阪市の手元に残るのか、信託銀行が当初約束していた信託配当が入るのか、これらはいずれも売れてみないと分からない不確かなしろものであります。しかし確かなことが一つあります。それは、これらの土地信託事業に投下された銀行貸付はいの一番に救済する、銀行の腹はまったく痛まないということであります。

三つの土地信託事業で信託銀行等はこれまでに、計17億5千万円もの信託報酬を手に入れ、約52億円もの利息を受け取っている。その上、自らの見通しの甘さ、経営責任で事業を失敗させたにもかかわらず、信託銀行等は貸付金残額の279億円余りを全額回収する。加えて、土地売却にかかわる新たな信託報酬まで手に入れる。これらがいわば保証されているのが今回の契約変更であります。

新大阪土地信託にいたっては、今回目標とする160億円、すなわち借入金とテナント預かり敷金

などの固定負債相当額でしか売れなかった場合には、信託銀行はこれまで取り込んだ信託報酬と貸付金利息に加えて、貸付金残額をちゃっかりとすべて回収する一方で、大阪市には残余財産は一円も残らず、土地まで取り上げられるのであります。こんな理不尽なことはないではありませんか。

大阪市は、処分型にすれば土地・建物の売却代金を優先して借入金にあてることは単なる事務手続きだなどと説明していますが、とんでもありません。今回の三つの土地信託の当初契約には、信託財産の引渡しという条項があり、そこには、信託終了時に借入金残があれば協議のうえこれを処理すると謳われているのであります。当初契約では、借入金残は自動的に市に帰属させるのではなく、大阪市と信託銀行の両者が協議して処理することになっているのであります。

ところが、今回の変更契約では、売却代金でまず借入金を返済する、その後に差額を残余財産として大阪市に引き渡して、信託を終了するとされています。これは、終了時の借入金は協議なしに信託銀行が一方的に売却代金、すなわち信託財産で優先的に借入金の穴埋めすることを可能にする新たな取り決めだと言わなければなりません。当初契約に比べて、大幅に銀行を利するとんでもない契約変更であります。こんなものは、断じて認められません。

改めて申し上げるまでもなく、信託銀行には、経済や経営の専門家でありながら日本経済の景気が30年間もずっと右肩上がりになるといった甘い見通しの上にこの土地信託契約を提案した責任、自ら借り入れ金を起こしてその返済すらできない責任、当初提案した信託配当を実現できない責任、総じて、本市の公共用地を預かり資産を増やすと説明してきた重大な責任があります。企業として利潤追求が第一であって、信託法に基づく契約なんだから、経済環境が激変したら土地を信託に出した側が損失をかぶるのは当たり前だなんてことは、企業の社会的責任に照らしても許されません。

こうした信託銀行の責任は徹底追及されなくてはなりません。大阪市は今、「損害賠償請求権を留保した上で残余財産を受取り信託は終了させる」、そしてその後「損害賠償を請求する」などと言っています。しかし大阪市は先にわざわざ自らに不利な契約変更に同意しているのであります。後になって「損害賠償を請求する」と言っても、それは大阪市の側からの一方的通告であって、もとより信託銀行が損害賠償責任を認めたものではありません。絵にかいた餅になり兼ねないではありませんか。

大阪市がどれだけ損害を回収できるかはまったく不確かだ。こんな理不尽な契約変更も認められないのであります。

さて最後に、大阪市はどう責任を取るのかという問題であります。大阪市は市長を先頭に、今、銀行責任は言い立てる一方で、自らの責任には何の説明もなくしかも誰も責任を取ろうとしていません。

信託銀行の甘言に乗せられ、また市民にたいしては、大阪市が土地を運用するより土地を信託に出して信託銀行に任せたほうが有効活用・資産活用ができるなどと説明した挙句、有効活用どころか市有地まで取られかねない。この責任はきわめて重大であります。民間活力を活用すべきだ、民活だ民活だと言って、それまで法律で禁止されていた公有地土地信託を解禁したのは中曽根内閣、自民党政治でありますが、この自民党政府の言いなりになった大阪市の責任も重大であります。

付け加えて言えば、わが党議員団がこの一連の土地信託事業を終始批判し、手を出せば市民に大きな損害を押し付けることになるのは必至だと警告し反対したにもかかわらず、ろくにチェックもせずに信託事業に賛成してきたオール与党の諸君の責任も、今市民から厳しく問われているのであります。

以上、申し上げて、反対討論といたします。