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市議団の実績

井上浩議員の決算反対討論

井上ひろし市会議員

2008年12月25日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2007年度大阪市一般会計決算認定に反対する討論を行います。

 今日本社会はアメリカ発の金融危機に端を発した未曾有の経済危機に直面しています。これは一言で言って、弱者に痛みを押付け、富者をますます富ませようとした新自由主義経済路線の破綻であります。トヨタやキャノンなど日本のリーディングカンパニーと言われる大企業による派遣労働者の雇い止めが毎日のように報道されています。今求められているのは、こうした大企業の横暴勝手を厳しく規制し、国民の暮らしを最優先で守る政治であります。 

こういう中で大阪市は、経済危機によって市民の暮らしが悪化する状況の下、いっそう住民の福祉の増進に務めるという、地方自治体本来の役割を果たさなければなりません。

ところが本決算に現れているのは、重度障害者見舞金の廃止、国民健康保険料の4.5%値上げなどを強行する一方、新人工島・夢咲トンネル・北港テクノポート線・スーパー中枢港・淀川左岸線2期などに223億円も投じた上、経営破たんしたWTC・ATC・MDCには61億円も賃料・補助金を支出するなど、市民には負担ばかり押付け、大型開発は継続するという姿であります。

こんな決算は到底、認めることはできません。以下、具体的に指摘いたします。

 

 第一に指摘したいのは、市民の福祉と暮らし、教育についてであります。

平松市長は、9月に発表した経費削減素案について、これに反対する市民の声や本市会での反対決議をうけて「見直すべきは見直す」と表明せざるを得なくなりました。

実際、この素案についてのパブリックコメントでは、市民サービス切捨てについては7割前後が反対もしくは制度を維持すべきだという明白な結果が出たのであります。ところが市長は、後から実施した市政モニターでの、素案支持6割というアンケート結果を持ち出して、これは中立的な意見だ、市政に関心が深い人たちの意見だと言い出しました。これは広くすべての市民に呼びかけて実施されたパブリックコメントの結果を打ち消そうとするとんでもないものであります。

しかも、素案を発表した9月と今日では経済情勢が激変しています。今や市民の暮らしがますます苦しくなることは明瞭であります。こんな時に市民サービスを切り捨てるなんて、市長はいったい何を考えているんだと言わなければなりません。少しばかりの見直しではなく白紙撤回こそ市民の声であることを強く申し上げておきます。

 

また今回、世界的な金融危機と経済不況のもと、中小企業への融資をいかに確保するかということが大きな論点となりました。11月の全国企業倒産は1010件で、6ヵ月連続して1000件を超え、前年同月比では11.5%も増加しました。まさに未曾有の大不況であります。私が、経済産業省の「緊急保証制度」についての通達を示して「中小企業への資金提供が円滑に行なわれるよう、個別企業の実情に応じて柔軟に対応する」よう求めたところ、理事者は「通達の趣旨を信用保証協会に徹底するとともに、市としてもこの趣旨をふまえて対応する」と評価に値する答弁をしました。保証協会への指導をいっそう強めるよう求めるものであります。

また、銀行業界にはこれまで巨額の税金が投入されてきましたが、「貸し渋り・貸しはがし対策」などどこ吹く風、逆に一層ひどくなっています。しかも今回の緊急保証制度の申し込みに際しては、銀行員が企業の担当者になり代わって“付け替え”を求めて申請の列に並ぶなど、行政の施策を食い物にしようとまでしています。こうした銀行業界の常軌を逸したやり方を是正させ、バクチ経済の破たんのツケを決して市民にまわさないために、大阪市としてありとあらゆる対応を駆使すべきであります。 

 

また今回の決算質疑を通じて、本市の介護保険会計の黒字分である介護給付費準備基金が68億円にものぼることが明らかになりました。私が、市民の暮らしがかつてなく大変な時だからこれを使って保険料の軽減を行うべきだと質問しましたが、理事者は国の動向を見守りたいという無責任な答弁に終始しました。しかし他都市を見れば、名古屋市長が「65億円の基金があるから、平成21年度の保険料は下がると考えるのが普通。お年寄り一人あたり年5千円保険料をとりすぎた計算になる」と定例会見で答えているのをはじめ、京都市でも32億円の基金を活用するとしているのであります。68億円もの黒字は是非とも保険料減額に回すべきだと改めて強く求めておくものであります。

 

 さて、北市民病院の廃止問題が大きな問題になっています。北市民病院利用者や此花区民から、「医療崩壊の危機が叫ばれるなか何で貴重な市民病院をなくすのか」「民間医療機関が来ればいいという話しではない。市民病院としてもっと充実させるべきだ」という怒りの声が上がっています。四つの市民病院全体での390億円の累積赤字や123億円の資金不足が病院廃止の理由とされていますが、その大半は平成5年に総合医療センターを開設した数年間のものであり、市政100周年事業の一つとしてオール大阪市が推進した結果でありますから、この資金不足については、財政健全化法との関係でも、一般会計からの繰入金などで今年度中に何らかの解決をすべきものであります。

しかし今現在の収支で言えば、四市民病院全体で、年8億円ほどの赤字にすぎません。四市民病院が全体として担っている公的医療機関としての役割や、北市民病院が結核・小児・リハビリ・緩和医療などで果たしている役割、さらに此花区や福島区、西区などで地域医療の核として果たしている役割、これらに照らせば、8億円の赤字を理由に北市民病院を廃止することは、到底、認められません。 

 

 次に、教育の問題について指摘しておきます。

 平松市長は任期中に学力日本一を目指すと豪語されました。学力の一部を表すにすぎない学力テストの結果にとらわれて、過度の点取り競争に子どもたちを追い込むつもりですか。全国学力テストには参加すべきではありません。

 そもそも本市は、夏のうだるような暑さにもかかわらずクーラーもない、中学校給食も遅々として進まない、少人数学級も小学校1・2年生のみ、学校図書館に専任の司書がおらず小学校はボランティアさん任せ、中学校にいたっては週に1日しか利用できない学校もあるなど、学力面・生活面の向上をしっかりと支える教育条件がことごとく立ち遅れています。こうした条件整備の遅れを放置したまま学力日本一を目指すなど、どんな顔で子どもたちに説明するのでしょうか。まして、今でさえぎりぎりの学校維持運営費を経費削減の一環としてさらに削るなど、断じて認めるわけにはいきません。

 

また、大阪市立大学の2部の廃止については、多くの在学生やOBが、存続を求める切実な声を上げています。一般質問で、廃止の理由とされている「志願者数の減少」も「有職率の低下」も根拠がないことを示し存続を求めましたが、市長は「法人が決めたこと」と冷たい答弁を繰り返しました。経済的に苦しい学生が、働きながら学ぶ機会を正当な理由もなく奪うものであります。有能な人材を多数輩出し続けている歴史と伝統の学び舎を存続することを強く求めるものであります。

 

 第二は、大型開発への税金無駄使いと環境問題であります。

 最初に第二次の経営破たんに直面しているWTCについてであります。平松市長は大阪府への売却交渉を優先して進めていますが、府庁のWTC移転には府民を納得させる理由は何一つありません。800万大阪府民の利便性を考えれば今の位置が最適であることは言うまでもありません。万が一の大災害時を考えた場合、国の出先機関・府警本部・NHK・大阪管区気象台そして大阪城という広大で安全な広場という防災のための多くの条件がそろっている今の場所をなんで離れなければならないのか。これもまったく理由がありません。橋下知事は府庁をWTCに移転すれば、ベイエリア地域の開発や活性化、淀川左岸線延伸部計画など広域な幹線道路整備などの機運が盛り上がると言っていますが、巨大開発に血道を上げて大阪府も市も大きな財政困難に陥っているのに、再びその道を進もうとするものです。WTCを大阪府に売却することは断じて認められません。

 金融機関は、過大なWTCの建設を会社の最大株主として企画担当役員まで引受けて推進し、そのうえ、三セク会社だからいずれ大阪市が責任を取るだろうと当てこんで過大な貸付を行ったのであります。平松市長は、こうした金融機関の責任を明らかにして大幅な債権放棄を迫ることこそ最優先にしなければなりません。そして市民の負担を最小にするべきであります。さらには特定調停案の議会での審議の際に、資金ショートする可能性があると書いている再建計画鑑定書の提出を拒み続けて、議会と市民をあざむいた当時の大阪市と、それを認めた自民・公明・民主の責任を明らかにしなければなりません。

 

次に、淀川左岸線延伸部の問題であります。今決算委員会で平松市長が「旗振り役をつとめる気はない」と言いつつ、「必要な路線であることは明瞭。関西財界や大阪府などがつくる建設促進協議会にも参加して行く」と答弁したことは重大であります。国が発表した新たな交通需要推計による2020年予測交通量は、従来予測より14%も下回っています。延伸部の交通量は一日4万台と計算されていますがそれがさらに減るのであります。国際物流のためだと言いますが、第二京阪道路からは、近畿自動車道、大阪港線を通れば大阪港まですぐであります。昨年8月の都市経営会議では「大深度に建設される高速道路であることから市民にとってはメリットが少ない路線だ」とまで指摘されています。3500億円もの事業費を投じなければならない必要性はどこにもありません。平松市長の言う必要性は大阪市民のためではなく、関西財界と建設ゼネコンのための必要性ではないでしょうか。

市長は常々口を開けば本市の財政は厳しいと言い、経済危機の下3年間で1000億円近くも税収不足が予想されるとも言っています。左岸線延伸部につぎ込むお金があるのなら、市民の福祉や教育にこそ回せ、これが市民の声であります。必要もない、無駄な高速道路に、大きな市民の税金をつぎ込む左岸線延伸部計画は、直ちに中止するよう関係機関に求めるべきであります。

 

次に阿倍野再開発事業についてであります。なぜ2100億円もの巨額の収支不足が生まれたのか。大阪市包括外部監査報告は「事業計画の変更にあたって、なぜ事業が遅延したのか、なぜ用地費や補償費を増額しなければならないのか具体的に一切記載されておらず、また併せて、資金計画も大幅に変更されているがその理由や金額の根拠が不明である」と厳しく指摘しています。決算質疑でわが党委員が立退き補償費について、過去に会計検査院の指摘で補助金の返還まで求められた事例など、未解明な疑惑が多々あることを指摘して、責任の所在を明らかにすべきだと質しましたが、理事者はバブル経済の崩壊が理由だなどと従来の答弁を繰り返し、平松市長も疑惑の解明や責任問題の調査を拒否しました。言語道断であります。

また、地元の反対を押切ってD4−1棟を27階建てにする特定建築者の公募が強行された問題について一言指摘しておきます。土地売却価格の折合いがつかずに契約が不調になったわけですが、景気悪化の下では今後もめどは立ちようがありません。平松市長はなお、考え方は間違っていないとして建設にこだわる答弁をしましたが、D4−1に入居する地権者は今ではだれ一人居なくなり、そもそもマンション建設の根拠がなくなっているのであります。高層住宅の建設にこだわることなく、地元の意見を踏まえて、事業内容を見直すよう強く求めておきます。

 

 次にごみ減量と森之宮清掃工場の建替え問題であります。

平松市長の政策推進ビジョンの柱の一つでもあるごみ減量を徹底するには、市民・事業者をまきこんで議論する、という流れに任せた姿勢ではなく、焼却優先から循環型社会への転換をめざす市長の強いリーダーシップが必要です。燃やせばごみ、分ければ資源と言われるように、徹底した分別を行い、できる限り燃やさない具体の施策を進めるべき時です。ごみ減量に本気でとりくめば、焦点となっている森之宮焼却工場建て替えに巨費を投じる必要もありません。多くの都市で古紙をもれなく資源化するために、集団回収・行政回収・拠点回収を組み合わせた古紙回収が取り組まれているのに、現在、行っているささやかな集団回収を拡充するのみで、すぐできる拠点回収の検討さえしない環境局の姿勢は、循環型社会の形成に背を向け、焼却優先にしがみつくものだと言わざるを得ません。何が何でも焼却工場をつくりたいのか、と批判されても仕方ないのではないでしょうか。

 

 第三は、同和行政についてであります。

わが党が、人権博物館・部落解放人権研究所など解同主導施設への補助金・委託料は全廃すること、また人権協会へのいっさいの事業委託をやめ、職員配置をおこなわないなど人権協会との関係をきっぱり断つこと、そうして「同和行政の終結宣言」を行うよう求めたのにたいし、市長は「時代に即応した実効性ある施策を進める」としましたが、これは、人権の名によって同和行政を継続させようとする部落解放同盟に迎合する姿勢だと言わなければならず、時代に逆行するものであります。

 また、人権文化センターなど地区内施設を統合し、各種相談事業などを基本的に引き継ぐ(仮称)市民交流センターへの再編構想はやめるべきです。

 以上をもって、反対討論といたします。