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市議団の実績

旧芦原病院への融資金に関する

損害賠償請求訴訟判決への控訴に

反対する北山議員の討論

北山良三市会議員

2009年6月3日

 6月3日の大阪市議会本会議で、りそな銀行による旧芦原病院への融資金に関する損害賠償請求訴訟での大阪地裁判決を不服とし、大阪市が控訴することを議会に同意を求める議案が出され、日本共産党の北山良三議員がこれに反対する討論をおこないました。

 自民・公明・民主はこの議案に賛成しました。


  私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、りそな銀行による旧芦原病院への融資金に関する損害賠償請求訴訟での大阪地裁判決を不服とする控訴の提起に、反対する討論を行います。

この裁判は、平成17年6月にりそな銀行によって旧芦原病院に融資された2億円が、返済不能となったことから、その損害賠償を大阪市に求め、りそな銀行が平成18年10月に提訴したものであります。そして、去る平成21年5月21日、大阪地裁は、この融資に係る経過において、大阪市の故意による不法行為を認め、また、信義則上の不法行為すなわち正確な情報を提供すべき義務を犯す不法行為を認め、大阪市に1億1000万円余りの損害賠償金等の支払いを命じる判決を下したのであります。

 今回の控訴の提起は、「大阪市による不法行為が裁判所によって認定されたことを不服として再度争いたい」というものでありますが、そんな提案にはとても同意できないということをはっきり申し上げたいと思います。その理由は、裁判所が「不法行為」と認定した根拠は明白であり、大阪市も認める事実経過からも、争う余地はないと考えるからであります。

 たとえば、「故意の不法行為」と認定された「みずほ銀行からの迂回融資の事実をりそな銀行に故意に伝えなかった」という点で、大阪市側は「故意ではない」と主張しています。しかし、そんな主張は全くの詭弁であります。

平成16年5月31日が、りそな銀行への2億2000万円の返済期日でありました。その返済資金はみずほ銀行からの融資金を充てることになっていました。前年もその通りに推移しており、15年5月23日のみずほの2億3000万円の融資金によって、5月30日にりそなへ2億2000万円返済されています。

ところが、16年5月のみずほの融資については簡単に了解が得られず、みずほの側から条件が付けられたのです。大阪市が損失補償を約束するか、すでに連帯保証していた医療事業振興協会(略称:医事振)以外の外郭団体が担保を提供するか、融資先を医事振とし、その融資金を医事振が芦原病院に融資するという迂回融資とするか、この三つの選択肢を提案してきたのです。大阪市は、その3番目、医事振を通じての迂回融資の道を選択し、複雑で違法な資金操作に及んだのであります。この「みずほ銀行からの迂回融資」という資金操作に手間取ったことが原因で、りそな銀行への返済が10日間も遅れ、当時の担当部長まで出向いてりそな銀行にお詫びするという事態に至ったのであります。

にもかかわらず、求められて提出した「返済期日の延長について」のりそな銀行への文書では、「みずほ銀行から今後の長期的な改善計画の提示を求められたこと」が原因であるかのように記され、迂回融資には一切触れられていないのであります。もちろん口頭でも伝えられていません。融資金の返済遅延を招くという重大事の説明とお詫びの文書で、ウソの原因を並べ立てておいて、「迂回融資の秘匿は故意ではない」という方便が、裁判で決して通用するものではないということは、極めて明白じゃありませんか。

また、「実現可能性のない平成17年度の資金計画表を提出した」との不法行為の認定に対して、大阪市側は「17年度もみずほ銀行から融資を受けることができると考えていた」と主張しています。しかし、争う余地のない事実として、平成16年6月の迂回融資を最後に、みずほ銀行からは1円の融資も行われてはいません。しかも、16年11月、17年2月と融資の依頼をしたにもかかわらず、みずほ銀行から断られているのです。

大阪市側は、「みずほ銀行からは条件に合えば協力するとの回答を得ていた」との理由で、「17年度においても融資を受けることができると考えていた」と主張していますが、「条件に合えば協力する」とのみずほ銀行の回答は、問題とされているりそな銀行への融資日、17年6月24日の3日後、6月27日のみずほ銀行との交渉の場でのことであり、しかもその日の話し合いでは「何が条件になるのか」などの具体的なことは一切話し合われていないと、市の担当者が陳述しているのであります。そして、この日以後、「何が条件になるのか」などの話し合いはもちろんのこと、いっさいみずほ銀行との融資交渉は持たれていないのであります。その大阪市側の行動の事実からみて、「17年度もみずほ銀行から融資を受けることができると考えていた」との主張が退けられているのは当然であります。

 また、加えて指摘しなければならないことは、この裁判の経過を通じて、りそな銀行による旧芦原病院への融資の依頼も、その融資金の返済も、すべて大阪市の丸抱えで行われてきたという事実がはっきりと示されており、判決でも随所で認定されているということであります。

今回の判決では、「債務保証契約書が存在しない」という形式上の観点から「債務保証または第3者弁済の合意はない」とされています。しかし、平成17年6月実施の問題となっている融資の直前である、平成17年4月および5月のりそな銀行への返済金原資は、大阪市からの補助金であったと事実認定されているのです。

17年度は、りそなへの返済資金となっていた、みずほからの融資はゼロであります。17年4月を返済期日とする融資の依頼にあたって、大阪市がりそなに提出した「借入金返済確認書」では、次のように記されています。「今回の芦原病院借入金につきましては、平成17年度の芦原病院に対する本市からの補助金のうち、借入金相当額を当初から、芦原病院のりそな銀行口座へ入金のうえ、これを財源として、平成17年4月30日までに大阪市が責任をもって返済させます」。これは、「債務保証・第3者弁済の合意」どころか、大阪市による代理弁済であり、第3者弁済そのものであります。

そんな中で、大阪市が控訴すれば、これに対抗して、りそな銀行側が附帯控訴することは確実であります。そうなれば、銀行による融資を巡る実態がより重視され、控訴審で「債務保証または第3者弁済の合意が存在する」と認定される可能性があり、その判断がまた当然であります。そうなれば、一審判決以上の損害賠償を命じられることは明白であり、控訴するという判断をした平松市長ならびにそれを議会が認めるならば、ともに重大な責任を問われることになるのであります。

 そもそも、芦原病院をめぐる大阪市の対応は、不当、不法行為だらけで推移してきました。補助金・ヤミの貸付金あわせて320億円もの公金を投入し、しかも貸付金等138億円は、元本も利息もすべて請求すら行われておらず、1円も返ってこなかったのであります。そして、大阪市の手によって、デタラメな手続きでデタラメに補助金が湯水のように交付され、医事振や市社協まで巻き込んでの「迂回融資」「迂回返済」までやってのけてきたのであります。

このようにして芦原病院をめぐる資金の管理を一手に仕切ってきた大阪市は、自治体にあるまじき行為を繰り返してきているのであります。そんな中で、りそな銀行との関係だけで「不法行為はない」と主張してみても、まったく説得力を持ちません。

大阪市のとるべき道は、これまでの乱脈・不公正な同和行政を猛省し、今回の判決を潔く受け入れることです。そして、その損害賠償金については、いっさい市民の税金をあてず、当時の市長・担当助役・担当局長、さらに当時の浪速医療生協理事長をはじめとした法人幹部など、この件に関する責任ある者によって負担させるべきであります。

そして、芦原病院問題でのすべてのウミを出しつくす取り組みに、市長も議会も勇気を持って踏み出すべきであります。

以上をもって、控訴の提起への反対討論といたします。