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市議団の実績

WTCに関する和解についての

下田議員の反対討論

下田敏人市会議員

2009年12月17日

  私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただいま上程されました議案第259号、WTCに関する和解について、に対する、反対の討論を行いたいと思います。

 なぜ反対なのか。

 それは、この和解によって市民負担の最小化をはかるなどとは名ばかり、実に438億円もの膨大な損失補償の履行を余儀なくされるからであって、とうてい市民の理解は得られないと考えるからであります。

 以下、具体に指摘したいと思います。

 

 先ず、第一であります。

 そもそも、バブルの巨塔と称されるようなバカデカいビルをつくったことが大きな間違いであった訳でありますが、2004年2月の特定調停は、それに輪をかけた大きな過誤だったと思います。3社合わせて104億円もの新たな公金を投入したことをはじめ、何よりも銀行の残債に対して、損失補償を行ったこと等でありますが、なかでも、WTCに対する銀行の債権放棄額が他の2社に比べて余りにも小さかった事であります。

 MDC湊町開発センターは銀行債権残高183億円から91億円、49.7%のカットでありました。又、ATCアジア太平洋トレードセンターが、同じく1099億円から698億円、63.5%のカットであったのに対して、WTCワールド・トレード・センターの場合は、782億円からわずか137億円、17.5%のカットにどとまったのであります。これによって、銀行の残債高はATCは401億円に減少したのに比べ、WTCは645億円もの多額となったのでありまして、これがWTCの再建にとって大きなつまづきとなった事は否定できません。

 こんなとんでもない特定調停を結んだ当時の市長と港湾局、それにこれを承認した当時のオール与党それぞれの責任は、まことに重大なものがあると申し上げておきますが、しかしながら、なぜWTCの再建のハードルがかくも高く設定されたのか。2002年につくられた第3セクター再建プロジェクトチームによって必要とされた債権放棄額が、ATCはそのまま認められたにもかかわらず、なぜWTCの場合、382億円が137億円にとどめられたのか。

 平松市長が主宰したWTCの特定調停に関する調査においても、何ら解明されておりません。

 平松市長は、2007年の市長選挙の際、11月15日の日経新聞紙上で、「特定調停の是非について、関係者の責任を含めて、厳しく問う。まずその問題を解明し、その結果を情報公開しながら進めることが、問題処理の大前提であり、それを抜きにしていかなる形でも市民へ負担を求めることは許されない」と述べております。

 今回の和解に応ずることは、まさに問題未解明のまま市民に438億円もの負担を求めることに他ならないのであって、到底認めることはできません。

 

 第二であります。

 このかんの府庁の移転問題にからんで、それを優先するあまり、売却額は二の次、三の次で、1200億円ものWTCをわずか81億4千万円で引き渡さざるをえなくなるなど、市民負担の最小化どころか、逆に増加させてきたのであります。

 これまで、幾度となくWTCの鑑定評価が行われてまいりました。2004年の特定調停の際は、191億円でありました。それが今年2月の府の鑑定では、99億1千万円。同時点での市の鑑定評価は150億円と大きく差がついたのであります。

 市の依頼した専門家の評価は、入居している民間テナント以外のフロアーは、府が自ら使用するという前提で、いわゆる積算価格を加味したもので、使用実態に即した、極て妥当な評価だったと思いますが、これに比べ、府の場合は、全フロアーを賃貸しするという収益還元方式のみで、しかも現に入居している民間テナントのオフィス賃料が、坪あたり12000円〜13000円であるにもかかわらず、全て1万円で入居するものとするとの前提で評価しているのでありまして、非常に恣意的なものだったと言わざるをえません。

 ところが、府は、この市の評価をあっさりと退けた上、みずからの鑑定評価に基づく、移転条例案を府議会に提案した訳であります。それが3分の2どころか、半数にも満たない賛同しか得られずに、3月24日の府議会で否決された後、更生管財人や平松市長の要請を受けたという体裁にして、再度9月議会に提案するという事で、9月1日付けで鑑定評価の修正を行いました。今度は、港区と南港の5つのビルをピックアップして、その入居募集賃料が8500円〜10500円だったとして、WTCの評価の基準とする賃料を1万円から9500円に下げたのであります。ちなみにこの5つのビルの内、最も高い10500円の賃料はATCであったのでありまして、わざわざ港区の古いビルを引っぱってこずとも、最も近傍、類似の賃料として、このATCの10500円を採用するか、そうはしないまでも、1万円でとどめておくべきで、下げる合理的な根拠はなかったのであります。

 ともかく、500円下げるだけで、1万7千坪余りで、空室率も考慮した上、7%の利回りをみると、12億円評価が下がるのであります。
 諸々見直して、元々低かった99億1千万円から、81億6千万円に、実に17億5千万円も下げたのであります。そしてその上、この12月1日付けでさらに2千万円下げ、最終的に81億4千万円としたのであります。

 本当にひどいもので、これでどうして港湾局の言うような、公正中立な評価と言えましょうか。ただただ、府議会で賛同を得られやすいようにしただけではありませんか。そうして、市民には負担増を押しつける。断じて認めることはできません。

 

 第三であります。

 市民の負担を最小化する。つまり大阪市の損失補償額を可能な限り減少させるためには、銀行の追加的な債権放棄が欠かせないことは、言うまでもありません。2007年12月、市民目線を標榜してさっそうと登場し、特定調停に何らの責任を負わない平松市長には、市民的利益にそった問題解決への強い期待が寄せられました。

 ところがどうでしょう。

 2008年5月上旬から6月にかけて、5行に追加的債権放棄の要請に出向いて、それぞれから断られて以来、何の手も打たないで1年後の今年5月、代表銀行に特定調停時の資料の有無を確認に行った際、ついでに債権放棄の要請をして、再度断られたことをもって、早々と断念したのであります。全くの期待はずれと言わなくてはなりません。しかも同時に、今回の和解案が出される過程においても、きわめて弱腰、及び腰で終始いたしました。

 元々、損失補償には年14%もの遅延損害金は含めずに、年1.14%の約定金利のみを対象とするとされていたのであります。それを例え、会社の債務の処理だからと言って、60数億円もの遅延損害金を先取りするなんてことは、道義にもとる事、この上ないものであって、これまでの経過に照らしても許されるものでは、ありません。

 だいたい、銀行には貸しこんだ責任があるのであります。その上、遅延損害金など取らずとも、損をするどころか、当初貸付元本976億円を回収し、なおかつ、83億円も儲かる計算になるではありませんか。

 しかも、この遅延損害金は、会社更生法が適用されて以降、1年間に発生するみこみのものであります。2〜3の民間の買い手があったにもかかわらず、府への売却に固執して、いたずらに処理を遅らせた、まさに更生管財人の責任に属することであります。

 したがって、最初に回収予定額を債権の弁済に割り付けた際、更生管財人において、配慮がなされてしかるべきだったのであります。

 いずれにしても、これは交渉事であって、話し合いですむことなのであります。
 市民負担を最小化させる、例え1億円であれ2億円であれカットさせるという、不退転の決意で臨むべきが至当だったのであります。

 まさに、損失補償は、銀行の意のまま、売却は府の言うとおり、譲歩に譲歩を重ねた上、438億円もの市民負担を押しつける、誰が納得しますか。断じて認められないと申し上げて、以上 反対討論と致します。