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市議団の実績

WTC破たん処理議案 「市民に莫大な損害」

大阪市議会下田議員が反対

下田敏人市会議員

2010年2月26日

 大阪市議会開会本会議が26日に開かれ、日本共産党の下田敏人議員がWTCの更生計画案などWTCの破たん処理にかんする議案に反対の討論をおこないました。

 自民・公明・民主は、更生計画案などに賛成しました。

 下田議員は、大阪市の損害は、銀行に対する損失補償額424億円や出資金、貸付金、敷金等の棄損、市部局の入居賃料や移転費用など1051億5000万円にものぼり、第三セクター破たんでも前代未聞のものとなったと指摘。その一方で、銀行は、137億円の債権放棄にもかかわらず、これまでの返済額や損失補償額など1123億4000万円もの収入を得て、貸付総額977億円や出資金の棄損を差し引いても121億円をもうけているとのベ、「市民に一方的に、しかも莫大(ばくだい)な損害を与えるものだ」と批判しました。

 「なぜこんなことになったのか、その節々の全容を解明し、責任の所在を明らかにする責任が平松邦夫市長や、議会にある」と強調しました。

(2010年2月27日付しんぶん赤旗)


下田議員の反対討論全文

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただいま一括上程された、議案第1号ないし議案第12号の内、議案第11号、更生計画案への同意について、ならびに議案第12号、地方債に係る許可の申請について、いずれもWTCの破綻処理に関してでありますが、これに反対する討論を行いたいと思います。

 反対の理由は言うまでもありません。およそ大阪市が手を出すようなものではない、言わばテナントビル事業を、ワールド・トレードセンター・ビルという、いかにも公共性があるかのようなネーミングを行って、しかも、商社や不動産業者等と一緒に株式会社を設立し、その筆頭株主となって推進した上、経営破綻を繰り返す度に、莫大な公金を投入して支援を行って、その揚げ句、一千億円を優に越える損害を、市民に被らせる事になったからであります。

 本当に度し難いものでありまして、以下、具体に指摘したいと思います。

 第1に、本市の損害額の大きさといい、一人損といい、三セク破綻でも前代未聞のものとなった事であります。

 更生計画案に見られるように、銀行に対する損失補償額424億円に、出資金や貸付金、敷金等のキ損274億5千万円の、698億5千万円に加え、ホール駐車場の売却損等のその他支出、105億2千万円、市部局の入居賃料や移転費用247億8千万円の、都合1051億5千万円もの損害となるのであります。

 一方、株主であり貸し手でもある銀行は、137億円の債権放棄にもかかわらず、これまで、元利合計627億4千万円を回収した上、今回の損失補償額424億円、WTCビル売却による弁済等72億円、合わせて1123億4千万円の収入となり、貸付総額977億円に、出資金のキ損25億円の1002億円を差し引いても、損失どころか121億円の黒字となるのであります。

 同じ三セク破綻で、損害が大きかったとされる、東京臨海副都心の事業の場合、東京都の損害は、出資金のキ損、貸付金の債権放棄の計380億円に対して、銀行は貸付金3463億円の内、2002億円、58%の債権放棄と、お互い痛み分けとなったのでありまして、今回のWTCの破綻処理がいかに例のない、市民に一方的に、しかも莫大な損害を与えるものであるか、明らかだと思います。

 第2に指摘したいのは、そもそもこのWTC事業、本市が筆頭株主となって進めるような事業ではなかったということであります。

 元々、この事業、三井物産の提案で始まったものでありまして、同じ7団体の発起人の一人である、三井不動産が行ったとしても、何ら不思議のないものでありました。磯村元市長が、三セク破綻の教訓として、「行政が進めるのは、土地の開発までで、建物については、民間にやってもらうべきだ」と言っておられますが、まさにその通りであって、行政の担うのは、インフラ整備までで、上物は、学校、保育所等、公共性の高いもの以外は、民間に任せるべきなのであります。

 ところが、関西財界など、と一緒につくった、テクノポート大阪計画の中で、ATCとWTCは三セク事業として進めると位置づけられたのでありまして、これが災いの元となりました。

 大阪市がバックにいるという事で、もたれ合い、馴れ合いの構造となったのであります。ATCの初代社長、井筒邦雄氏が「何かあれば大阪市がついてるからと、事業規模がどんどんふくらんだ」と述懐しておりますが、WTCも同様だったのであります。

 第3は、咲洲コスモスクエア再開発地区計画決定で、容積率を2倍に引き上げ、西日本一のノッポビルの建設を誘導して、会社と一体となって、無謀なランドマークづくりに狂奔したことであります。

 周知のように、WTCビルは、89年1月に策定した事業計画では、高さ150m、地上33階、総床面積11万u、総事業費480億円というものでありました。ところが、その年の12月、都市計画決定で、それまで300%であった容積率が、倍の600%に引き上げられた事を受けて、翌90年3月、高さ252m、地上55階、15万2千u、総事業費980億円と計画変更をおこなったのであります。そして、その後、最終的に総事業費1193億円にふくれあがる事になるのであります。

 これが、まさに需要も採算も度外視した取り返しのつかない大失敗であった事は、論を待たないところでありまして、そうして、一路破綻への道をつき進むことになるのであります。

 第4は、特に98年度以降、次々と市の部局等、入居せしめ、文字通り第2庁舎化させると共に、毎年40億円の貸付を実施するなど、際限のない支援を行ってきたことであります。

 果たせるかな、95年にオープンしたものの、オフィスは皆目埋まらなかったのであります。分譲床も20%、321億円見込んだにもかかわらず、皆無という状況でありました。977億円もの借金を抱え、オープン2年目の96年度から、早や債務超過に陥ったのであります。いかに計画がズサンであったかということでありますが、大阪市は他の株主の協力も全く得られないまま、一人莫大な公金を投入して、支援に次ぐ支援、積み重ねて行ったのであります。

 最高時、市と関係団体でオフィスの74.6%を占めるに至ったのでありますが、経営を本格的に好転させる事にはつながりませんでした。

 毎年の40億円の貸付も銀行の返済に回るだけで、会社の借入総額は全然減らなかったのでありまして、まさに万事休すといった状況となったのであります。

 第5は、こういう中で、法的整理しかなかったにもかかわらず、40億円もの新たな公金を投入した上、極めて低い債権放棄額と引き替えに、残債に対する損失補償までするという、特定調停を結んだ事であります。しかも、裁判所の鑑定書を秘匿したままこれを為したのであります。

 当時の関市長と港湾局等は、法的整理をすれば民間のテナントに多大の迷惑をかけると主張いたしました。しかしながら実際は、敷金の6ヶ月を超える部分がキ損する程度のものだったのであります。又、銀行の信用を失うとも、さかんに言いましたが、借金は会社がしているのであって、大阪市がしたのでもなければ、保証したものでもないのであります。信用を失うとすること自体、論理の矛盾であります。

 ただ、弱みがあるとすれば、局長名で銀行に対して「一切迷惑をかけないから、WTCに格段の高配をたまわりたい」という、債務保証まがいの協力依頼文書を毎年出してきたことであります。

 そして、この延長線上で、2004年の特定調停における損失補償となったのであります。しかも、債権放棄額は、低すぎたではありませんか。2003年3月に出された第三セクター再建検討プロジェクトチームの報告書では、再建のためには、382億円の債権放棄を求める必要があるとされていたにもかかわらず、137億円しかカットされなかったのでありまして、特定調停によっても、元利償還の重い負担は解消されなかったのであります。

 そうして、今1つ指摘したいのは、裁判所の鑑定書には「将来の資金不足に備えた追加的な金融支援策を検討する必要がある」と書かれていたにもかかわらず、議会にも市民にも一切隠して、ただただ「再建計画は不合理とは言えない」と鑑定書は言っていると繰り返すのみだったということであります。

 そうして、後日、市民が起こした鑑定書の公開を求める裁判で敗訴して、大阪市がぐるみで鑑定書の中身をネジ曲げて議会の承認をうることにキュウキュウとしていたことが明るみに出たのであります。

 鑑定書には「再建計画は、…一定の合理性があり、実現可能性がないとは言えないが、計画が40年という長期に及ぶため、将来の損益変動のリスクが避けられないこと。会社の時価純資産が過少で、一定の変動があれば資金がショートする可能性がある事、計画の実現の可能性を高めるためには、市が会社を地域開発の中核拠点として活用する政策の継続及び将来の資金不足に備えた実効性のある追加的な金融支援策を検討する必要があること」等が記述されていたのであります。

 本当にひどいもので、市民に対する重大な背信行為と言わなくてはなりません。かかる特定調停を結んだ、関前市長と港湾局、そして我が党提案の鑑定書の提出を求める動議を否決した上、特定調停を承認した当時のオール与党の責任は極めて重大であります。

 第6は、二度と経営破綻させない為に、新しい経営体制を構築し、経営監視委員会を設けて、不断の監視に努めるとしていたにもかかわらず、再建1年目から計画とのソゴをきたし、以後ずっと収入見込みから実績が落ち込んだことであります。

 再建計画では、各年58億円の収入を見込んでいたものの、2004年度1年目から54億円と、計画より4億円も落ち込んで、5年目の2008年には46億円と、実に12億円ものかい離となったのであります。

 オフィス入居率がこの間、91.4%から77.5%に下落したことによるものであります。入居面積も、市部局は、31,304uから、30,362uへと942uのマイナス。市関係団体は10,611uから、6,213uと、4,398uのマイナス。民間テナントは、9,437uから、6,999uと、2,439uのマイナス。都合、7,779uのマイナスとなったのでありまして、中でも市関係団体の相次ぐ退居は決定的とも言える程だったのであります。これでは、少々費用を減らしても、どうにもならないことは、言うまでもありません。

 鑑定書では、再建計画は「市関連の入居状況が、今後も継続するとの前提であれば、不合理ではない」としていたのでありまして、この事を百も承知の上で、経営監視委員会にしろ、港湾局にしろ退居を止められなかったという事は、あらゆる措置をこうじて、二次破綻させないといって大見得を切った事が、単なる空文句に過ぎなかったということに他なりません。

 特定調停を結び、損失補償まで行っていながら、二次破綻を回避させられなかった。そうして、1千億円を超える損害を市民に被らせた当時の市長と、港湾局の責任は、まさに万死に値にするものであります。

 なお、今回の破綻処理にあたって、橋下知事の尻馬に乗って、府庁への売却一本槍で来て、会社更生法の適用申請を余儀なくされると同時に、鑑定評価を相次いで引き下げて、損害の最小化どころか、損失補償額を増大させて、市民に多大な損害を与える事になった事の責任は、平松市長にあると申し上げておきます。

 いずれにしても、なぜこんなことになったのか、その節々の全容を解明し、責任の所在を明らかにすること、まさに緒に着いたばかりでありまして、これをまっとうする責任が平松市長はもとより、我々議会にもあるという事を強調して、以上、反対討論と致します。