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市議団の実績

 公営企業会計決算

 「公共の福祉」投げ捨てるな

  大阪・井上市議(反対討論全文)

井上ひろし市会議員

2010年10月13日

 大阪市議会9・10月定例会は13日、意見書や決議など各議案を採決して閉会しました。

 日本共産党大阪市議団を代表して井上ひろし議員が2009年度公営・準公営企業会計決算の認定に反対する討論を行いました。決算は、自民、公明、民主、維新の賛成多数で認定されました。

 井上議員は、大阪市の公営企業・準公営企業の決算に自治体版構造改革路線が色濃く表れていると強調しました。公営会計では、大型開発路線の大失敗で大きな破たんに直面しているのに関西財界言いなりの開発路線の推進、交通会計ではバス路線の縮小、病院会計では住吉市民病院の総合病院としての機能を切り捨てようとしていると指摘。「公営企業の『公共の福祉』の役割を投げ捨てようとするものだ」と強調しました。

 井上議員はまた、「大企業中心の政策でなく、中小企業への支援強化、市民の福祉、暮らしに重きを置く政策への転換を求めましたが、平松邦夫市長はこれを拒否した」と批判しました。

 「B型肝炎問題の早期全面解決を求める意見書」「日本軍『慰安婦』問題の早期解決に関する意見書」などの意見書、決議を可決しました。

(2010年10月14日付しんぶん赤旗)


私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2009年度大阪市公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論をおこないます。

 国民は、昨年の総選挙で「貧困と格差」を広げた自公政権にノーの審判を下したのに続いて、今年の参院選挙では「公約違反」を重ねる民主党政権にも厳しい審判を下しました。ところが菅民主党政権は公約違反には何の反省もなく、今や「古い自民党政治の新しい執行者」と言うべき施策をかかげ、地方政治の分野あっては、「地方分権改革」を「地域主権改革」と言い変えて、自治体版構造改革路線を一層進めようとしています。

 

本市の公営企業・準公営企業の決算にもこの方向が色濃く表れています。港営会計は自民党政治の大型開発路線が大失敗して大きな破綻に直面しているにもかかわらず、平松市長が進めようしている方向は関西財界言いなりの開発路線であります。交通会計では市民の貴重な足となっているバス路線を縮小しようとしています。病院会計では北市民病院を廃止したのに続いて住吉市民病院の総合病院としての機能を切捨てようとしています。公営企業の「公共の福祉」の役割を投げ捨てようとする、このような2009年度決算は、到底、認めることができません。以下、具体的に指摘いたします。

 

 第一は、WTCに関する損失補償が埋立会計を沈没させる大きな打撃となり、一般会計にも悪影響を及ぼしかねなくなっているにもかかわらず、なんらの反省もなく、咲洲・夢洲開発などのベイエリア開発や、国際コンテナ戦略港湾などを進めようとしているからであります。

 

 埋立会計は2009年度決算で539億円もの赤字を計上しました。これは土地が予算で見込んだ金額の1割しか売れなかったこともありますが、なんと言っても、WTCの破綻処理によって424億円もの銀行借金の肩代わりを押付けられたからにほかなりません。その結果、埋立事業における元利償還が今後数年間、毎年100億円程度の支払いが必要であるのに土地の売却がほとんど見込めないことと相まって、埋立会計はこの数年で資金ショートがおきると危惧される事態に陥ったのであります。WTCの経営が破綻したのはテクノポート計画に沿って無茶な過大な施設を作ったためであり、しかも、このような損害を出したのは金融機関言いなりにWTCの借金を引き受ける特定調停に応じたからです。平松市長は、こうしたWTC経営破たんの原因と責任の所在を明らかにすると公約しておきながら、この責任を果たしていないばかりか、WTCを大阪府に85億円という安値で売却して金融機関への損失補償額を大きくし、その上、銀行に債権放棄を求めると言いながら一度打診しただけで断られると、すぐに引き下がるなど、市長自身の責任は極めて重大であると申し上げておきます。

 

 さてさらに、これらに何の反省もなく平松市長が進めようとしているのが、咲洲・夢洲街づくり推進協議会の「中間取りまとめ」と国際コンテナ戦略港湾づくりであります。

 平松市長は橋下知事や関西財界と一体となって昨年10月に、府庁舎のWTC移転をテコとする新たなベイエリア開発計画・「中間とりまとめ」を発表しました。我が党委員は「これはまたも臨海部の活性化を標榜しているが、テクノポート計画で失敗した大型開発と同じ内容だ、2番せんじだ」「しかもその上に橋下知事の意向で淀川左岸線延伸部や地下鉄難波筋線、JR桜島線延伸などムダと浪費の1兆円にのぼる大型インフラ整備が持ち込まれている」と指摘し、市長に計画の撤回を強く求めました。これに対して市長は「積極的に長期的戦略に沿った企業を誘致をしたい。これが臨海部の魅力の向上を図る事になる」と言い、左岸線延伸部の建設にも固執する答弁をしました。とんでもありません。

 また、平松市長は国際コンテナ戦略港湾に指定されたことに対して「これを契機に従来の枠にとらわれず。新たな発想をもって臨海部の魅力向上に取り組む」と答弁しました。しかし釜山港へ流出している、100万teuのコンテナを阪神港や京浜港に取り戻そうという計画そのものに無理があるのであります。大阪港にこのコンテナを持ってこようとすれば、敦賀や金沢などの地方港湾から釜山に船積みされているコンテナを陸路で大阪港に運ばなくてはなりません。それは環境を悪化させるうえ、集荷拠点やアクセスの整備など無駄な投資にならざるを得ないのであります。

 こうした大型開発中心の政策ではなく、中小企業への支援強化、市民の福祉、暮らしに重きをおく政策への転換、すなわち内需をあたためる、こうしてこそ、大阪経済も大阪港も発展するのであります。我が党議員がこうした方向への転換を求めましたが、平松市長はこれを拒否したのであります。

 

 第二は、バス・地下鉄・病院・中央市場などの公営企業が公共の福祉を守るという本来の役割を果たしていないからです。

 

 まずバス事業です。交通局は本年3月に「市営バス事業の改革プラン」アクションプランをまとめました。このプランがすすめようとしている「事業規模・サービス水準の見直し」計画は、市バスが提供している公共交通を大幅に縮小し、市民の足を奪う計画だと言わなければなりません。

 昨年6月に赤バスの28路線をすべて来年3月までに廃止するという乱暴な案が発表されて市民の反対の声が高まり、交通局は今、走行キロあたり乗車人員2.2人という基準を設定し、市民利用者にも呼びかけて、この基準をクリアする方策を模索し、基準を超える利用がある場合には、交通局としてその路線のバスサービスを維持するとしています。しかしその場合でも、赤バスは廃止する、それに代えてどんな車両を走らせるか、料金はいくらにするのか、それもまだ明らかにしていません。

 

 問題は、基準以下の利用となった路線でありますが、アクションプランは「バスサービスの対象外」だとして、小型乗合バス・乗合タクシーなどの手段で、民間事業者や地域が主体となって運営するという方法を示し、「制度設計や初期費用へのサポートをする」とはしているものの運営助成はまったく考えていないことであります。我が党委員が、民間事業者の参入は期待できのるのかと質しても当局はまったく返答できませんでした。また市長に対して、そうした地域の市民の移動権を保障すべきではないかと質しましたが、市長はまともな答弁ができせんでした。とんでもありません。

 来年の10月に「路線を廃止するか否か」の結論を出し、その後半年で、赤バスの運行をすべて停止するというアクションプランは、到底、市民の理解は得られません。強行すべきではなく根本的に見直すべきだということを強く指摘しておきます。

 

 さらに、2009年度決算でも市バスへの一般会計からの補助金が17億円なのに、アクションプランでは2015年度に約12億円に減らしています。他都市では名古屋が一般会計の0.48%を、京都市が0.24%を繰入しています。大阪市は僅かに0.09%にすぎません。名古屋市なみにすれば81億の繰入額となります。こうすれば、地域系・コミュニティ系どころか、2.2人以下の路線の運行も保障できます。一般会計からの支援を増額すべきだということを、強く申し上げておきます。

 次に地下鉄事業です。今決算委員会で地下鉄事業は資金剰余が10年後に1000億円を越える見込みであることが明らかになりましたが、私たち日本共産党は、それは何よりも、赤字の市バスの経営支援に使うべきだと考えます。なぜなら、地下鉄はバスと一体となって市民に公共交通を提供していますし、市バスの赤字の一番の理由が、利用客の多い黒字路線を地下鉄に置き換えてきたからです。

 バス会計へは、2008〜9年度に106億の出資がされ、アクションプランでは、2010年度から2015年度までにフィーダー系欠損補助など192億円の繰入が計上され、向こう10年間ではまだ十分ではありませんが300億円が見込まれています。このように、市バスの経営は地下鉄からの支援なしには成立ちません。橋下知事は「地下鉄を売り飛ばして淀川左岸線延伸部建設の財源に充てる」と言いましたが、とんでもない議論だと言わなければなりません。

 

 また、今里筋線の延伸は市民が待望しており街づくりの観点からももっとも急ぐべき課題であります。その事業費は1314億円であり、地下鉄会計がこれを建設する体力を十二分に持っているのは明らかであります。我が党委員が今里筋線延伸部の建設に向かうべきではないかと質したのに対して、市長は「地下鉄の乗客人員の増は見込めない。市の財政は危機的である」として消極的な答弁をしました。しかし、交通局は乗客動向を見込んだ上で資金剰余になるとしているのであります。そして一般会計の出資・補助金は591億円ですが、それは全額起債で賄えるし、その元利償還にたいして45%の地方交付税措置がされます。実質の一般会計負担は325億円、償還期間の30年に平均すれば年11億円に過ぎません。今里筋線の延伸に前向きに取り組むべきだと強く求めておきます。

 

 さて、この間、「地下鉄を民営化したらサービスが向上する」とか「民営化すれば新線建設が進む」と言う議論にまったく根拠のないことが明らかになりました。こうした議論を踏まえて我が党委員は、「市バスとの一体経営、大阪市域と周辺地域の計画的な発展への寄与、モータリゼーションから公共交通重視への転換、地球環境問題への貢献、あらゆる角度から見て、地下鉄は公営企業でこそ、市民サービスも大阪市も向上し発展する。この太い議論を堅持することこそ市長の使命ではないか」「市長は『将来的な民営化は否定しない』『民営化も選択肢の一つ』という立場を捨てるべきではないか」と質しましたが、市長はこれに対して明確な答弁が出来ませんでした。

 そもそも地下鉄民営化論は、上山氏にそそのかされた関市長が平成18年に「公設民営化」を言い出し、関西経済同友会が「交通局の完全民営化を実施せよ」との提言を出してから、さわがしくなった議論であります。平松市長の曖昧な答弁は、市民の貴重な財産である地下鉄を売却してしまおうと言う関西財界と橋下知事の狙いに、手を貸すことになり兼ねないものと言わなければなりません。

 

 また、地下鉄駅の可動式ホーム柵設置の問題です。わが党議員団は長年にわたりこの設置を求めてきました。今年度から長堀鶴見緑地線で工事がはじまり、現在、設置完了した駅から順次運用が始まっています。ところが門真南駅は未だに設置の目途がたっていません。大阪府が今年度の補助金の予算化を見送ったためであります、しかも大阪府は8月に策定した財政構造改革プラン素案で大阪市地下鉄整備促進費を廃止する方針を発表しました。大阪府は市民の批判を恐れたのか、その後ホームページのこの部分を削除し「別途検討する」というコメントを載せました。しかし未だに補助金を出そうとはしていないのであります。橋下知事は日頃、府は広域行政をすると言っておきながら、市民の安全を確保する広域行政の責任はこれを果たさないと言うんですから無責任極まりありません。大阪市として強く府に要求すべきだと申し上げておきます。

 

 次に、敬老パスについてであります。ある高齢者は「年金が少なくて毎日が節約。無料の敬老パスをもらっていろんな所に行くようになり、視野が広がった。お金がかかるようになれば外出を控えてしまう」と述べておられます。我が党委員は、平松市長が「有料化は持続可能な制度にするためだ」と説明しているが、有料化された名古屋市、京都市、神戸市で年々利用者が減っていることを示し、「有料化すれば敬老パスの意味がなくなり、廃止に等しくなるといわざるを得ない」と主張し、無料での継続を強く求めました。ところが市長は「市の財政状況が厳しさを増している。今後も引続き検討していきたい」との冷たい答弁を繰返しました。改めて無料化の継続を強く求めておきます。

 

 次に病院事業の問題であります。病院局は今年度、住吉市民病院の建替えにあたっての基本構想策定調査を実施しようとしていますが、その方向性が、住吉市民病の総合病院としての多数の診療科目を切り捨てて、小児・周産期医療にのみ特化しようとしていることであり、大問題と言わなければなりません。

 市内四つの基本医療圏のなかで南部医療圏は全ての診療科目が極端に少ない地域であり、そのうえ2007年以降、住之江区では4つの病院が、住吉区でも一つの病院が撤退しています。

 私は、病院局が公表した基礎調査報告書で、住吉市民病院の現役ドクターのみなさんがそれぞれの立場で「地域の高齢化に対応するために現病院の診療体制は必要だ」「需要はいくらでもある」という声をあげていることを紹介して、正に知恵は現場にありで、現場で働く職員や患者さんの声、地域の声にこそ、よく耳を傾けるべきだ。公的総合病院としてこれまで担ってきた役割を残すべきではないかと質しました。これにたいして病院局長は「近隣の医療機関と連携いたします地域完結型の医療を行うことが大切であろうかと思っております」と述べながら総合病院として残すとは言わずに、小児・周産期医療に特化する方向に従う答弁をしました。到底認められません。

 

 最後に、市場の事業についてであります。中央卸売市場は、流通システムの大きな変化のなかにありながら今なお1日約3400トンの食材を取り扱い、大阪市民に安心・安全で安定的な食材の供給をする、極めて重要な公的な施設であります。しかしこの市場の土台を支えている仲卸業者が今、約半数が赤字経営となっており、この5年間で1割以上業者数も減っているという大変な状況にあります。

 今回の質疑で我が党委員は、支援策の一つとして、仲卸業者の大きな負担となっている水道料金の問題を取上げ、水道料金が中央市場全体でメーター一つで計算されて大口使用者用の割高の計算になっており、これを各戸計算にして引き下げることを求めるとともに、同じく大きな負担となっている水道設備の維持管理経費は一般会計で持つべきではないかと主張しました。ところが当局はこれに背を向ける冷たい答弁をしました。このままでは、大阪のみならず近畿の食生活の安心安全を支える中央卸売市場の役割は失われてしまいます。到底認めるわけにはいきません。

 

 以上、決算認定の反対討論といたします。