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全千島の返還を求める本格的な領土交渉に 踏出すことを求める意見書への賛成討論 |
せと一正市会議員 2010年12月21日 |
私は、只今上程されました「全千島の返還を求める本格的な領土交渉に踏出すことを求める意見書」に賛成する討論を行います。 ロシアのメドベージェフ大統領による国後島訪問は、ロシアに不当に併合されている日本固有の領土である千島をこれからも占領し続け、領有固定化しようとする新たな意思表示であり、領土問題の公正な解決に反するもので、これに厳しく抗議するのは当然です。 そもそも千島列島は歴史的事実に照らせばその全島が日本の領土であります。 日ロ間の国境を画定した最初の条約は、1855年(安政元年)の「日露通好条約」であり、それは、国境は択捉島と得撫島との間に置く、樺太は両国民の雑居地にするという内容でした。その後、平和的な外交交渉によって、1875年(明治8年)に「樺太・千島交換条約」が結ばれ、日本は樺太への権利を放棄し、その代わりにロシアは得撫以北の北千島を日本に譲渡し、千島全体が日本に属する合意ができたのであります。これ以降、千島列島の全体が日本の領土あることについて、第二次世界大戦の時期まで、ソ連も一度たりとも異を唱えたことはありません。また国際的に問題になったことも一度もありません。 なぜその千島列島がソ連に併合され、日本に返還されないまま今日に至っているのか。 この日ロ領土問題の根源は、第二世界大戦終結時におけるソ連スターリンの覇権主義的な領土拡張政策にあります。スターリンは、1945年2月のヤルタ会談でソ連の対日参戦の条件として千島列島の「引き渡し」を要求し、アメリカ、イギリスもそれを認め、この秘密の取り決めを根拠に、日本の歴史的領土である、千島列島、すなわち、国後、択捉から占守までの全千島列島を併合しました。これは1943年11月の「カイロ宣言」などに明記され、自らも認めた「領土不拡大」という戦後処理の大原則を蹂躙するものでした。しかもソ連は、千島列島には含まれない北海道の一部であるは歯舞群島、色丹島まで占領しました。この戦後処理の不公正をただすことこそ、日ロ領土問題解決の根本に据えられなければなりません。 ところが、歴代の自民党政権は、戦後処理の不公正をただせと言う主張を、国際社会にもすなわちアメリカ・イギリスにも、またロシア・ソ連に対しても、ただの一度もして来ませんでした。 そして、歴代の自民党政権は二重の根本的な誤りを犯して来ました。 第一の誤りは、1951年のサンフランシスコ講和条約第二条C項で、千島列島にたいする「すべての権利、権原および請求権を放棄」したことです。この条項は、ヤルタ秘密協定の千島条項を追認した、不公正なものであります。その後の歴代政権もこの「千島列島放棄条項」を改めるという態度を取って来ませんでした。 第二の誤りは、ヤルタ協定とサンフランシスコ条約の「枠内」で領土問題の解決をはかろうとして、国際的に到底通用しない議論を領土交渉に持ち込んだことです。 日本政府は1955年に始まった日ソ国交正常化交渉で、「国後、択捉は千島列島ではないから返還せよ」と主張し、歯舞、色丹と合わせて「四島返還」を要求し始めました。しかし、国後、択捉が千島列島に含まれることは、日本政府自身がサンフランシスコ条約を結んだ講和会議において吉田茂・日本政府代表が、続いて同条約を批准した国会で外務相・西村熊雄条約局長が、公に表明していた解釈であり、それを後になって覆すという主張は、到底、通用するものではありません。 1993年の「東京宣言」以来の一連の「合意」はこの誤った方針に基づくものであり、これでは決して領土問題が解決されないばかりか、こうした対応そのものがロシアの強行姿勢を許すものになっていると言わなければなりません。 今、政府に求められているのは、歴代自民党政府の誤った不毛の領土交渉の方針を再検討して、ヤルタ協定の千島引き渡し条項とサンフランシスコ条約の千島放棄条項を動かぬ前提とはせず、条約そのものを根本的に再検討することであり、平和的に確定された国境線は何だったのか歴史的事実に基づいて再検討し、これらを領土交渉の土台に据えることであります。 条約の変更はけっして不可能なことではありません。条約であれ、その一部であれ、国際的正義に反する条件や条項に関しては、その国民の意思でこれを変更する権利があることは、国際法の上でも一般的に認められていることであります。私たちはサンフランシスコ条約の全てを廃棄せよなどとは言っていません。同条約2条C項を見直すべきだと言っているのであります。そのことが可能なことは、沖縄の施政権をアメリカに渡したサンフランシスコ条約3条があったにもかかわらずそれを「立ち枯れ」に追い込み、施政権の返還が実現したことを見ても明らかです。 さらに言えば、スターリンがおこなった不当な領土拡張のうち、東欧のバルト3国の併合や、ポーランドの一部併合などそのほとんどがすでに解決を見ています。スターリンの不当な領土拡大について、当事国自身がこれを批判しないままで今日残されているのは、日本の千島列島だけであります。 以上、日ロ領土問題の歴史的事実と国際的道理に立ち、全千島の返還を求める本格的な交渉に踏み出すことを強く求める意見書に対する賛成討論といたします。 |