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市議団の実績

統合本部方式改めよ

大阪・山中市議 橋下市長の所信批判

山中智子市会議員

2012年1月11日

 日本共産党の山中智子大阪市議は11日の市議会一般質問で、橋下徹市長の所信表明に対する質問を行いました。(質問項目質問要旨)

 山中議員は、「府市統合本部」について、「雇用・福祉・子育て支援など市民の多様な願いを、都構想一本に集約、すり替えをし、府市統合本部を舞台に大阪市解体への実績を積み上げようとしている」と指摘し、「『選挙で勝てば何でもやれる』という民主主義否定の姿であり、平松邦夫前市長に投じられた52万票の民意を重く受け止め、『統合本部』で何でも決めるやり方は改めるべきだ」と批判しました。

 山中議員は、「教育基本条例案」について[子どもと保護者、教師をしばり、罰する精神で貫かれている」と問題点や違法性を指摘し、すでに一度市議会で否決された条例案の提案をあきらめるように求めました。

 これにたいし橋下市長は、まともに答えず、「共産党は民主主義が嫌い」などと、戦前から自由と民主主義の擁護に奮闘してきた日本共産党の姿をゆがめる悪罵(あくば)を投げつけました。教育の問題でも、すり替えの答弁に終始しました。

(2012年1月12日付しんぶん赤旗) 


山中智子議員の一般質問

 

私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、昨年1228日に行われた橋下市長の所信表明などについて、質問をさせていただきます。

 

市長は、市民・府民は、「大阪を変える」こと、すなわち「府と市の壁を取り払ってほしい。新たな統治機構をつくってほしい」との選択をしたと言われました。確かに、「大阪を変える」という点については、その通りだと思います。いま、政治への怒りが渦巻いています。国政には失望がつのるばかりですし、大阪でも、住民そっちのけで、無駄な巨大開発や乱脈な同和行政に巨費をつぎ込みそのつけを市民に回す、住民を忘れ去った政治が続きました。「この政治を変え、大阪を変える」このことを願う大きなエネルギーが働いたことは、誰もが一致することだと思います。各世論調査では、景気を良くしてほしい、雇用を増やしてほしい、福祉・医療の充実を、子育て支援を、など、様々な願いがこめられていました。ところが、どの世論調査を見ても、大阪都構想への期待は決して上位ではありませんでした。つまり、市民が市長に託したものは多様であり、中心は暮らしを良くしてほしい、という政治の中身を変えることであって、統治機構を変えること、つまり大阪都構想を選択した、などとはとても言えないのです。さらに、平松前市長に投じられた52万票を重く受け止めるべきであることは、先日、市長も言及された通りです。これらのことを肝に銘じて市政運営に臨むことが求められています。

 

にもかかわらず、市長はこの多様な願いを、都構想一本に集約、すり替えをし、府市統合本部を舞台に大阪市解体への既成事実を積み上げようとしておられます。

これは選挙結果の、あまりにも手前勝手な解釈ではないでしょうか。

ご自身の勝利を、さも白紙委任であるかのようにして、こうした手法をとることはまさに「選挙で勝てばなんでもやれる」という民主主義否定の姿だと言わざるをえません。

市長、そもそも、大多数の市民は大阪都構想について、正確で十分な理解をしていないではありませんか。

それは、何よりも、市長が大阪都構想について、その中身を意識的に明らかにしてこられなかったからです。そればかりか、選挙中のビラなどでは「大阪市をバラバラにはしません」、「大阪市は潰しません」、「2424色の鮮やかな大阪市に変えます!」「大阪市役所から各区役所にお金を移します」などとごまかしに終始していたのです。

市長、あなたの目指す統治機構の改革、大阪都構想のもとでは大阪市はなくなるのではありませんか?

8つか9つの特別自治区に分割する、バラバラにするのではないのですか?

また、市税等のうち、6割程度しか、特別自治区に移らないのではないのですか?

はっきりとお答え下さい。

 

ですから、市長はこの2月にも、大阪府・大阪市・堺市が参加する都構想推進協議会を立ち上げるための条例案を提出するとしておられますが、文字通り、都構想を前提とし、これを推進するためのものであり、これでは、順序が逆ではないかと申し上げたい。

まずは、都構想の中身を、市民にも議会にもきちんと示すべきであり、市長には、その責任があると思いますがいかがでしょうか? 答弁を求めます。

また、同じく都構想ありきで、まるで、府と市が一つの自治体であるかのようにし、大阪全体にかかわることだと、市長が勝手に判断したものは、なんでも府市統合本部で決めるというのは、あまりにも民意を無視したものであり、何より市民の利益を損ねることにつながるのではありませんか。このようなやり方は改めるべきです。答弁下さい。

 

第2に、統治機構を変えることが民意ではないにもかかわらず、市長は、所信表明で大阪にふさわしい自治の仕組みづくり、として、「成長は広域行政、安心は基礎行政。広域自治体と基礎自治体の役割分担を徹底する。そして、広域行政は制度上の政令指定都市の権限がどうであれ、政治的な決定権は知事にある。」と、強調されました。とんでもないことだと思います。

そもそも、政令指定都市であり、夜間人口267万人、昼間人口350万人を数える大都市、大阪市において、広域か、基礎か、などと区分けすること自体がおかしいのです。明治22年、市制施行以来、そういうことにはとらわれず、生きた街として発展してきました。

大学にしろ、水道、港湾にしろ、いずれも大阪市が、府に先駆けて整備、設置してきましたし、病院、高校など各種の施設も、何よりも市民のニーズにこたえて、都市生活に必要なものとして整備につとめ、市民はもとより、広く府民的に利用されてきたのです。

その事をとらえて、市長は、やれ二重行政だ、ムダだ、などとさかんに言っているわけで、まったく、ためにする議論だと言わざるを得ません。甲南大学の高寄名誉教授は、「二重行政とは、市の許可を得て、さらに府の許可が必要という二重の手続きなどによる行政の非効率、住民の負担増加をさす」と言っておられますが、市内に、府と市の二つの類似施設があっても、市民、府民に利用され必要とされている限り、二重でもなければ、無駄でもないのです。

市長、大学・病院・信用保証協会・工業研究所等の一体運用という名の統廃合はやめるべきです。

また、市立高校や特別支援学校を府に移管するなどと言われていますが、これもまったく道理がありません。やめるべきです。

合わせてお答えください。

 

港湾事業についてもしかりです。

これまでスーパー中枢港湾づくり、今また、国際コンテナ戦略港湾づくりと、無駄な投資が繰り返されようとしてはいますが、そのことは別としても、大阪港においては、中国はじめアジア諸国を中心とする比較的小型の船舶を担い手とした外貿コンテナ貨物が、特に神戸の震災以後、1320万トンが、2010年には3025万トンと、大幅に伸び、後背地で発生し、かつ消費する貨物をスムーズに出入りさせるという港湾の役割、機能をまがりなりにも発揮してきたと思います。大阪市が政令指定都市でもあり、港湾管理者としての責務を果たしてきたことに他ならないのであり、神戸港同様泉北港とも提携をはかることは大いに進めるべきだと思いますが、一元化する必要性などさらさらないのではありませんか?答弁を求めます。

要するに市長のなさろうとしていることは、都市計画も含む政令指定都市としての権限を、実質的に府に移し、知事に集中させようというもので、地方分権どころか、府への集権に他ならないではありませんか。まさに大阪都への地ならしであって、市民は決して認めるものではない、と申し上げておきます。

 

第3にお聞きしたいのは、経営形態等の見直しをはかる、としていることについてです。

 

まず、水道事業です。

言うまでもなく、今、水道事業は、わが党が一貫して指摘してきたように、浄水能力と給水量とのかい離が日量100万立方メートルを超えるなど、空前の水あまり状態となっています。

したがって、この過大な浄水施設等を、いかにダウンサイジングしていくか、これが目下の最大の課題なのであり、広域水道企業団と一元化しさえすれば良いというものではありません。ましてや、統合して46ヘクタールもの柴島浄水場を売却するなどというのは論外だと思います。水の安定供給が損なわれるばかりか、新たな供給ネットワーク構築のために、膨大な費用を要します。

だいたい、水源から蛇口までのトータル給水を行っている市営水道と違って、広域水道企業団は府下市町村への上水の、いわば製造卸を生業としているのです。この、成り立ちも、事業形態も、もちろん給水ルートも異なる両者が統合して、市民にとってどんなメリットがあるのか、いやむしろコストの上昇につながるのではないか、などというように、メリット、デメリット、なんら解明されていないのです。

ただただ統合ありきで遮二無二ことを進めるのはやめ、議論を尽くすと同時に、何よりも施設等の段階的な縮小による事業の効率化こそはかるべきではないでしょうか?答弁を求めます。

 

また、市長は「地下鉄、バスを行政で抱え込む必要はまったくない」と、民営化に突き進むことを宣言されました。しかし、多額の建設費用を要する地下鉄は、昭和8年の開業以来、市民の税金と利用者の料金とで築きあげ、路線にニュートラムを含め、営業キロ138キロメートルとなり、毎日230万人の乗客をお運びしています。1号線建設の時から、営利目的ではなく、都市計画の一環として、バランスのとれた街づくりに寄与してきました。昨年度末、累積欠損金を解消し、現在、黒字還元のため安全や快適さを向上させる諸施策への取り組みも始まりました。視覚障害者の方々はじめ、利用者の長年の要望だった転落防止のための可動式ホーム柵も、今里筋線、長堀鶴見緑地線に設置されたのに続き、千日前線、そして御堂筋線でも計画されています。まさに公営企業として運営されてきたからこそ、こうした今日の地下鉄があるのではありませんか?答弁を求めます。

にもかかわらず、市長は「民間にまかせる」とおっしゃいますが、可動式ホーム柵など、安全のための投資は保証されますか? 

また、街づくりに欠かせない交通ネットワークの形成、とりわけ、沿線住民が待ち望んでいる8号線の延伸はどうなりますか? 2010年秋の本市会では、全会一致で推進の決議が採択されていますが、この、決議を、市長はどう受け止めておられますか? あわせて、お答え下さい。

 

そして、バス事業は、市民の身近な足を守るとともに、地下鉄駅までお運びするフィーダー系など、地下鉄事業にも貢献し、まさに地下鉄と一体的に交通ネットワークを形成しているのです。したがって地下鉄からのバスへの支援は道理あるものです。儲からないバスを地下鉄から分離する、補助は認めない、バスは倒産してもかまわない、などという乱暴な発言に、バスを頼りに暮らしておられる方たちから、不安とおののきの声があがっています。

市長、市長は、バスはなくなってもかまわないとお考えなのですか? 答弁を求めます。

以上のように、今日なお、地下鉄・バスともに公営交通であることの意義は失われるどころか、ほんとうに大きいものがあると思います。民営化はするべきではありません。そして、道理あるバスへの支援は継続するべきです。お考えをお聞かせください。

 

これら、もろもろ、これは広域行政だと府にゆだね、統廃合し、これは民間でやれることだと手放して、市長は「大阪市をできる限りスリム化する」と言われました。まったく痩せ細った、何にもない、何にもできない大阪市の姿が見えてくるようです。市民は、こんな、大阪市の無力化と解体を望んだのでは決してない、あらためて申し上げておきます。

 

第4に、「大阪の再生」についてお聞きします。

市長は、いつわりの「二重行政」論をふりまき、これをただすことによって、一説には4,000億円浮かす、などと言われていますが、そうして生み出したお金を、いったい何に投じようとしているのか。

投ずるとすれば、本来、当然、市民の暮らしであるべきですが、市長は、「この仕組みづくりそのものは、直接くらしの向上に結びつくものではない」としばしば明言しておられます。ではどうするのか、生み出したお金で儲けるんだと、そうして、儲かれば市民のくらしに回すのだと。これではまるで、ギャンブルではありませんか。

結局、市長が、地下鉄を売ってでも即やりますと言ってこられた、高速道路淀川左岸線延伸部や、地下鉄なにわ筋線、リニアモータカーなどの関西国際空港へのアクセス改善に投じようとしているだけではないのですか? お答え下さい。

そんなことに巨費を投じて、儲かる、つまり、大阪経済が活性化する保障などどこにもありません。まったく、いつか来た道、地方自治の本旨を投げ捨てる姿であり、大阪再生どころか、さらなる沈没への道ではないか、と申し上げたいのです。

 

今なすべきは、市民の願いに応えて、くらし、福祉の向上という地方自治体本来の仕事を、しっかり行うことです。そうやって市民が潤ってこそ、市民の消費意欲が高まり、ひいては大阪経済の活性化、大阪の再生へとつながると思います。

ところが、所信表明にあるのは、最初から最後まで、統治機構の改革のみであり、市民のくらしと安全を守る決意はどこにもなかったのです。

多くの市民の暮らしは、限界にきています。市長は、まったなしの市民のくらしの実態をどう認識しておられるのでしょうか。統治機構の改革=仕組みづくりを最優先にし、没頭し、市民のくらしは置き去りにするおつもりなんでしょうか? 

とりわけ、市長は所信表明で「選挙の票になりやすい高齢世代に直接お金をばらまくことではなく、現役世代に重点投資をし、現役世代の活力によって、高齢世代を支える社会全体の仕組みに変える」と、言われましたが、この発想は、活力にならない高齢者や障害者を切り捨てることにつながるのではないか、という不安を抱いたのは私だけではないと思います。

市長、選挙めあてのバラまき、などと言いがかりをつけてまで削ろうとしている高齢者施策とは、いったい何をさしているのか、はっきりとお答えください。

この問題で、具体的に1点、お聞きします。いろいろと取りざたされている敬老パスについてです。

市長は、選挙中、「敬老パスはなくしません」と強調してこられました。「敬老パス制度を維持します」と大きく書かれたビラもありました。維持という言葉を広辞苑で引くと「そのままの状態でもち続けること。つなぎもつこと」となっています。文字通り「そのままの状態でもち続ける」と受け止めて、あなたに票を投じた人もおられるでしょう。選挙直後、バスのなかで、ご高齢の方同士が、「敬老パスはなくしませんと言っていた」「でも新聞では、いろいろ書いてある」「なくなったら今日みたいに会えなくなる」など敬老パスの行く末を心配して、話し合っておられる光景に立て続けに出会いました。

市長、ビラに書かれた通り現状のまま維持なさるのですか? 明確にお答え下さい。

 

もちろん現役世代が、安心でき、夢や希望をもてる施策の創設や充実は、もろ手をあげて賛成いたします。私たちも、子どもの医療費助成制度拡充などを提案してきましたが、現役世代への施策として、具体的にはどんなことをお考えですか? 答弁を求めます。

また、子育て支援、なかでも保育所待機児の解消についてです。昨年4月1日現在の待機児童は当局発表で396人にのぼり、前年と比べ191人の増加となり、引き続き深刻な状況にあることから、市長は認証保育所制度の導入なども検討中とのことです。たしかに待機児解消は一刻の猶予もならない課題であり、当座のしのぎとして、一定の基準を設け無認可園等への助成を行い、無認可園を利用せざるを得ない人たちを支援することは、必要だと思います。しかし、子どもたちの体とこころをしっかり育てていくために、園庭のある、保育所設置基準を満たした認可保育所への入所を保護者の皆さんは願っておられます。公有地の活用を積極的に行うなど、認可保育所の増設を急ぐべきではないでしょうか?

また、市長は公立保育所や公立幼稚園を民営化する方針のようですが、保育などに対する公的責任を投げ捨てるおつもりでしょうか?

あわせてお答え下さい。

 

さて、市民の暮らしを守るうえで緊急を要するのが国民健康保険料の是正です。

今、不況にあえぐ市民の間で言われていることは、税金よりも高くて怖いのが国民健康保険料だ、何とかしてほしい、ということです。

実際、所得300万円、40歳代の夫婦と子ども2人のモデル世帯の保険料は505000円、実に所得の16.8%にもなっているわけです。これでは払いたくても払えないのは当然だと思います。

なぜ、こんなことになったのか。それは、言うまでもなく国民健康保険制度に責任を持つべき国が、逆に国庫負担金を大幅に減らしたうえ、普通調整交付金のペナルティー減額まで強行したからで、本市国保会計に対するこのペナルティー減額の2010年度までの累計額は、実に320億円にものぼります。

市長、このような道理のカケラもないペナルティー減額、一部残されているものの廃止と同時に、過去の分の補てん措置を国に強く求めるべきではありませんか? そうして保険料減額に充当すべきです。答弁を求めます。

 

大阪経済の活性化に関して、今一つお聞きします。

大阪は中小企業の街です。この間、失敗を続けた大企業呼び込み型の開発ではなく、中小企業や小規模な家族経営をしっかりと直接応援してこそ、大阪は再生すると考えます。その点で、住宅リフォーム助成制度を、ぜひ、創設していただきたい。

地元の業者に発注することを条件に、個人の住宅の改修や耐震化などに一定の助成を行うこの制度は、現在全国40都道府県の330市区町村で実施されています。いち早く実施した滋賀県長浜市によれば、この4年間の申請件数は865件、市からの助成交付額が8335万円で、実際にリフォーム工事が行われた工事費総額は、497574万円と、市が投じた交付金予算額の、なんと60倍近い経済波及効果をもたらした、と言われています。この制度を活用して街のあちこちで槌音が響くとき、そこで仕事をしているのは、地元の中小業者の皆さんです。家々を強く、快適にし、地域の仕事と雇用を増やす。地域循環型で一石二鳥とも、三鳥ともいわれるこの制度を、本市でもぜひ実施すべきではありませんか? 答弁を求めます。

 

最後に、いくつかの焦点について伺います。

まず、地域のことは地域で決める都市内分権についてです。

いま区長公募が話題となっていますが、いくつかの都市では、地方自治法にもとづいた、地域協議会を条例化し、実践組織である地域活動協議会などと組み合わせた、住民が主役の都市内分権が取り組まれています。本市でも、こうした住民参加の都市内分権に力を注いでいただきたい。たとえば、せっかく始まっている区政会議を、位置づけ・あり方などを抜本的に見直し強化し、市との関係を条例で定め、制度的で公式的なものにする。そうして、施策や予算への拘束力を強めるとともに、区域内の公の施設のあり方や廃止・売却などについては、区民の意見を聞くことを義務付ける、など、地域の声が市政に生かされるシステムづくりを急ぐべきです。さらに、区民の活動の拠点となる場所の確保、サポートする事務局体制の予算化などの条件整備も行って、本腰を入れた都市内分権に進むべきだと考えますが、市長のお考えをお聞かせ下さい。

 

もう一つは、教育基本条例案についてです。

全国注視のなか、先日、堺市議会では大阪維新の会提案の教育基本条例案が否決されました。本市会でも、9月に否決されています。市長は、あらためて提案されるご意向とのことですが、この条例案が姿を現して以来、大阪のみならず、全国から、教育関係者、PTA、多くの著名人、日本ペンクラブ、弁護士会、宗教者など、たくさんの個人・団体から、「これは教育を破壊するものだ」「通してはならない」という声があがり、運動が広がり続けていることは、市長もご承知の通りです。

子どもと保護者と教師をしばり、罰する精神に貫かれていること、さらなる競争で、家庭や学校の格差を広げ、固定化することなどなど、多くの問題点が指摘されています。

とりわけ、首長が教育目標を設定するなど、政治による教育への介入と支配は、政府も、閣議で「一部を除いて教育委員会の職務権限に属するもので、首長にその職務権限はない」と違法性を指摘しています。

戦後、教育が戦争に利用された反省から、教育に対する政治と行政の「不当な支配」を禁止し、個人の尊重を柱とする教育基本法が生まれました。当時、基本法制定のために設置された教育刷新委員会の議事録を見ると、「教育が、軍国主義や極端な国家主義に二度と利用されないという決心を示す言葉を欲しいと思う」という発言など、大戦の惨禍をくぐった人たちの痛切な反省、そして、再出発への熱い決意が伝わってきます。

基本法制定にあたった南原繁元東大総長は、「今後いかなる反動の嵐の時代が訪れようとも、何人も教育基本法の精神を根本的に書き換えることはできないであろう。なぜならば、それは真理であり、これを否定するのは歴史の流れをせきとめることに等しい」と語りました。2006年の教育基本法改訂にあたっても、教育に対する「不当な支配」の禁止の文言は維持されました。教育とは、一人ひとりの子どもの個性を大切にし、無限の可能性を引き出すためにあり、国家や首長が、特定の人間像を押しつけるものであってはならない。これが真理だからです。教育にかんする全権を首長がにぎり、当時のような軍国主義ではないまでも、「国際競争に迅速適格に対応できる人材」などと、首長が求める人間をよし、とし、そうでない子を切り捨てるような教育を行う、こんな危険な条例案に、ストップののろしが上がるのは当然なのです。

市長、真理に逆らい、歴史の教訓に目をつぶり、法さえ踏みにじる。こんな条例案は、絶対に提案するべきではありません。答弁を求めます。

そして、教育への民意の反映というなら、市民の切実な願いである少人数学級の拡充・中学校給食・普通教室へのエアコン設置・学校図書室の充実など、教育条件の整備に全力をあげることこそ、行政の責務である、と申し上げ、私の質問といたします。

なお、答弁によっては再質問することを申し添えておきます。