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2010年度一般会計決算に対する 尾上議員の反対討論 |
尾上康雄市会議員 2012年1月31日 |
私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2010年度大阪市一般会計決算認定に反対する討論を行います。 今、市民の暮らしと中小業者の経営は、極めて深刻な状況に追いやられています。失業・賃下げ・不安定雇用などの拡大、年金の引き下げと高齢者の各種負担の増加、虐待や子どもの貧困の広がり、歯止めが効かない小売商店の廃業・中小企業の倒産など、看過できない事態であります。 国の政治においては、大きな期待を受けて実現した「民主党政権への交代」から2年半、マニフェストに掲げられた公約はことごとく破りすてられ、国会論戦は目を覆うばかりの体たらくの状況であります。さらには、昨年の東日本大震災や原発事故による未曾有の被害に対する対応もお粗末なものと言わざるを得ず、国民の不信と不安が一層広がっています。 今こそ、大企業優遇と大型開発優先の税金の無駄遣いをやめ、医療や福祉・子育てと教育・雇用対策や中小企業対策にこそ手厚い施策を大胆に実施すべきであります。そして、住民の福祉の増進に努めるべき大阪市は、本来の自治体の役割をしっかりと果たさなければなりません。 ところが、本決算にあらわれているのは、市民が期待する「医療や福祉施策の拡充」には背を向ける一方で、スーパー中枢港湾や淀川左岸線2期事業などの大型開発事業をはじめ、一般施策に紛れ込ませての同和事業など、多くの税金の無駄遣いが継続されているという姿であります。到底認めることはできません。 以下、具体的に指摘いたします。
第一に指摘したいのは、市民の暮らしや教育等についてであります。 まず、国民健康保険について指摘します。 国民健康保険料については、「高すぎて払えない状況」がいっそう広がっています。40歳代の夫婦と子ども2人の4人世帯で所得200万円の場合、保険料は約38万円、所得に対して実に19%もの負担になっているのです。そして、現行の保険料算定方式も保険料減免制度も、所得だけを基準にしており、支出の状況はほとんど反映されず、生活の困窮状況の実態に合わない保険料になっている場合も多く見受けられます。 大阪市として、これらの状況を改善する措置をとることが必要であるにもかかわらず、実態に見合う国保料への改善策がまったくうたれていないのであります。それどころか、特別体制をとって、強権的な収納対策を一気に強めたのであります。 2010年度の財産調査の件数は、2007年度に比べて18.5倍、そして財産差押は6.5倍と激増させました。前年度分で1円でも滞納金が残れば短期保険証に切り替え、区役所に取りにこさせる措置をとり、その結果、保険証更新時期直後の2010年11月末現在で、保険証が区役所に留め置かれるなどで事実上の無保険状態になった世帯は、約3万5千世帯にものぼったのであります。国民皆保険とは到底言えない異常な事態であり、社会保障としての国民健康保険制度を大きく歪めつつあるのであります。とんでもないことだと言わねばなりません。 次に、教育と保育環境について指摘します。 教育にかかわる決算額は、学校維持運営費をはじめ毎年減り続けてきましたが、2010年度も前年比96.2%に減額しております。教育委員会は、少人数学級の拡充に背を向けるとともに、自校炊飯方式での中学校完全給食の実施も否定し続け、今強く求められている「食育の強化」を妨げてしまっているのであります。 また、保育についてでありますが、子どもと保護者に大きな犠牲を強いる「公立保育所の民間委託」が、保護者の強い反対の声にはまったく耳を貸さず、引き続き強行されていることは許すことができません。さらに、待機児解消は実現されていないにもかかわらず、2010年度から担当課を廃止し、対策を大きく後退させてしまいました。その結果、昨年4月1日時点での待機児が、またまた増加するという事態を生み出しているのであります。許し難いことであります。 暮らしにかかわってもう一点、市営住宅について指摘します。 本市では、「住宅は十分に足りている」として、市営住宅の新たな建設や増設は行わないという立場を表明しています。しかし、実態は、低所得者がどんどん広がっており、非正規労働者や母子家庭、高齢者世帯での「ハウジングプア」問題は深刻です。 こういう問題の解決のためにも、市営住宅のあらたな建設、増設がどうしても求められているのです。大阪市が行っているストック計画は、これに逆行する「市営住宅縮小計画」と言えるもので、建て替えのたびに住宅戸数が減っているのです。こんなことは直ちにやめるべきであります。 なお、2010年度に(案)が持ち上がった「11回落選者特別措置」と「家賃福祉減免制度」の見直しでありますが、この間、とうとうその改悪が決められてしまいました。市営住宅への応募倍率が極めて高い中で、何年にもわたって申込み続けた市民に対する救済措置が、結局、抽選に当たらなければ未来永劫入居できない仕組みに改悪されたため、市民の希望が損なわれ大きな落胆を生み出しています。「家賃福祉減免制度」でかろうじて生活をつないできた低所得世帯の多くが、今年1月手続きの更新分からその家賃を一気に引き上げられる見通しとなり、今、生活保護の申請にむかう方々が増えています。視野の狭い、短絡的な判断が、いっそう矛盾を広げているのです。こんなやり方は到底認められないということも申し上げておきます。
第二に指摘したいのは、市民生活を支える制度を縮小したり、福祉の拡充には背をむける一方で、本決算では、スーパー中枢港湾、夢洲・咲洲、梅田北ヤードなどの大型開発、JR東海道線支線の地下化、淀川左岸線2期事業、森ノ宮ゴミ焼却工場の建て替えなど、相変わらずムダな開発に巨費を投じているということです。 まず、スーパー中枢港湾についてであります。 大阪港入港船舶の推移からも明らかなように、ここ10年ほどは、5万トン級の大型コンテナ船どころか、1万トン級程度のコンテナ船しか入港、使用せず、貨物量も横ばい状況で推移しているのであります。しかも、需要の将来見通しさえ明確でないにもかかわらず、港湾局は、「増大するコンテナ貨物や大型コンテナ船の入港に備え、国際競争力の一層の強化を目指している」などと強弁しつづけ、既に700億円もの巨費を投じた大水深高規格の夢洲コンテナターミナルを建設、供用開始したのであります。 さらには、神戸港と一体となって「国際コンテナ戦略港湾」指定港に選定されるやいなや、主航路を水深18メートルに整備するというムダな計画を押し進めようとしているのであります。そのため、「大阪をハブとしたアジアの生産・物流拠点」として夢洲、咲洲地区の港湾整備や環境改善等に87億円もの事業費を投入したのであります。言語道断といわなければなりません。 つぎに、淀川左岸線高速道路事業についてです。 本決算では、淀川左岸線2期事業に多額の公金を投入しています。人口減少社会に向かい、しかも高齢化で自動車交通の総量が小さくなると予想され、既に供用している阪神高速第二京阪道の予測交通量も8万台が5万台程度に激減していることでも明らかなように、これ以上の高速道路建設はまったく必要がないのであります。 したがって、当然、莫大な事業費を要する淀川左岸線延伸部の事業は、きっぱりやめるべきだということも申し添えておきたいと思います。 つぎに、森ノ宮ごみ焼却工場の建て替えについてであります。 発生抑制や分別回収を徹底し、ゴミ焼却を減らすことこそ、究極の「資源・エネルギー循環型まちづくり」といえるもので、森ノ宮ごみ焼却工場の建て替えは、本市の「環境先進都市」の理念にも反することであります。 2015年度までに110万トンにするゴミ減量目標の進捗状況を見極め、さらなるゴミ減量への施策等を推進すれば、ゴミ焼却工場建替えはまったく不要であります。その決断こそ巨額な財務リスクを避け、市民の理解も得られる最善の選択であります。森ノ宮ゴミ焼却工場建替えは、きっぱり中止すべきであります。
第三に指摘したいのは、同和行政についてであります。 人権文化センターや青少年会館、老人福祉センターをひとつに統合し、「市民交流センター」に衣替えさせて継続するなど、一般施策に名を借りての同和事業が引き続き行われています。市民交流センターは、旧同和地域にだけ10館存在し、職員90人、1館平均9000万円もの経費が使われ、特別扱いとなっています。こんな事実上の同和行政にはきっぱりとケリをつけ、完全に終結させるべきです。 加えて、土地開発公社解散にともなう債権放棄の問題についても触れておきます。 本決算では、大阪市土地開発公社の解散にともなう負債額178億円を不動産運用基金から充当して処理をおこなったわけであります。市民の税金を投入して、本市が債権放棄をしたのであります。 土地開発公社が破たんに追い込まれたのは、わが党が2010年10月議会で指摘したように、同和事業用地確保のための代行取得という方法を巧妙に使い、土地取得費用は公社に肩代わりさせる一方で、当該事業局は、土地管理権を保有して、部落解放同盟言いなりに長期間土地を提供してきたのであります。断じて認めるわけにはいきません。 以上をもって、本一般会計決算の認定に反対する討論といたします。 |