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市議団の実績

2012年度予算案に対する小川議員の反対討論

小川陽太市会議員

2012年3月28日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2012年度大阪市一般会計等予算案に反対する討論を行います。

今回の予算は、橋下市長のもとで初めての予算であり、市長がこれから市政をどう運営していくのか、市民への最初のメッセージです。

「大阪市を変えて、くらしをよくしてほしい」と願った市民は、期待をこめて見守っているはずです。

 ところが、暫定予算とは言え、新婚家賃補助、敬老パス、学童保育などへの補助金、学校維持運営費、就学援助、市営住宅建設などなど、市民にとって必要不可欠な予算が、軒並み凍結、または、4ヶ月のみの暫定予算であり、先行きがまったくわからないものとなっています。

「あくまでも暫定予算であり、見直すと決めたわけではない」とどんなに説明されても、これらの施策や制度を頼りに生活しておられる多くの市民に対して、どれだけの不安と困惑をもたらすか図り知れず、実際、現場に様々な混乱と支障をきたしているのであります。

 「将来世代に負担を先送りしないために、収入の範囲内で予算を組む」と言いますが、これまで、市民の声やわが党の警告にまともに耳を貸さず、押しすすめて失敗した無謀でムダな巨大開発のツケを、市民に押しつけて、福祉を削るなど、市長の公約にもなかったことです。

まして、淀川左岸線二期事業や夢洲の土地造成などは継続する一方で、市民向けの施策は切り捨てていくなどというやり方は、「政治を変えてほしい」という市民の願いに真っ向から反するものであり、市民にとって必要だからこそ実施されてきた施策や制度は最優先で通年予算として組むべきです。

 また、公衆浴場やグループホームなどに行っている固定資産税の減免制度の廃止も、大きな不安を呼んでいます。「必要であれば補助金を考える」と言うならまず、対象となっている方々とテーブルにつき、制度の必要性を見極め、補助のあり方を話し合うのが先決です。

 廃止だけを打ち出し、突き放すような冷たいやり方は断じて許せません。

 以下、具体に指摘いたします。

 

第一に、くらしや福祉にかかわる問題です。

まず、保育所の待機児童解消についてであります。

 市長は、「児童福祉施設最低基準条例」を提案し、保育所の面積基準と保育士の配置規準を緩和することで、待機児童の解消をすすめようとしています。

 しかし、パブリックコメントに寄せられた2千件近くもの意見のうち、肯定的な意見はわずか2件だけで、それも「待機児童が解消されるならやむを得ない」という消極的な賛成であります。

他都市に類を見ない現行基準からの大幅な切り下げであり、子どもたちの命さえ危険にさらしかねません。

 認可保育所の増設や既存ストックの活用など、安全確保と子どもの成長をうながす視点から推進することで、待機児童の解消に努めるべきであり、保育士資格を要件としない保育ママ事業の推進や安全基準を引き下げるなどというやり方は断じて認められません。

次に、介護保険事業についてであります。

 介護保険は、新年度から第5期事業にはいりますが、予算案では、65歳以上の第1号被保険者の保険料の引き上げが、あまりにも大きくなりすぎています。今の保険料の基準額は月額4,780円ですが、これが5,897円へと、月額1,117円、23.4%も値上げになってしまいます。

また、年金収入80万円以下の低所得者である、第2段階の保険料の料率が基準額の0.56と設定され、国が示している基準よりも高くなっており、しかも本市では、その被保険者が23%を占め、最も多いという点でも大問題です。

 わが党委員が、これらの問題を指摘し、高すぎる保険料算定のもとになっている今後の給付費の過剰な見込額の見直しや、財政安定化基金の大阪府の取り崩し分も保険料抑制に充てるよう、市長として、府知事にあらためて強く求めるなど、あらゆる努力をすべきだとただしたのに対し、市長はこれを拒否し、保険料引き上げの抑制にむけたいっさいの努力を拒んだのであります。

また、第2段階の低所得者の保険料を国基準並に下げるために、一般会計からの繰り入れを検討することについても、市長は冷たく拒否する答弁に終始したのであります。

 高齢者の苦しみ、さらには、年収80万円以下という低所得者の苦悩を顧みないとんでもない態度であり、断じて認めることができません。

 次に、4月1日から新規の受付を凍結しようとしている新婚家賃補助制度についてです。市長は、効果を検証するとしていますが、都市整備局は、毎年、新規申込者の従前居住地や補助期間終了後の居住の状況を調査しており、その結果は、市内居住の促進に充分効果があることを示しています。

若い世代に喜ばれくらしを応援する本制度の凍結など絶対に許されません。

 

第二に、災害対策をはじめ、市民の安心、安全にかかわる問題です。

まず、防潮堤の耐震化問題です。我が党委員の質問で防潮堤の耐震化の整備が特に遅れていることが明らかになりました。1996年度から2022年度に完成が計画されている整備事業が、2012年度においても進捗率はなんと35%にとどまっているのであります。

また、災害時の防潮鉄扉の閉鎖の体制では、港湾局官舎を活用し本市職員による常駐体制を確保することが必要であるのに、現在の体制は、非常時に携帯電話などで連絡し参集させるというもので、これでは迅速な対応はできません。  

市が計画している、港湾局官舎の売却など断じて許せません。

さらに、市長は、行財政改革を口実に職員の削減をすすめようとしています。

本市職員を2015年までに、現在の38,000人から19,000人へと大幅削減する方針を掲げていますが、これは東日本大震災の教訓をまったくふまえておらず、数値目標化して乱暴に職員削減に突き進むことは、市民のいのちを守るという、自治体本来の仕事を投げ捨てるものであります。とうてい認めるわけにはいきません。

消防職員についても同じです。国の「消防力整備指針」3,592人に対して、本市は3,465人にとどまっており、127人がいまだに不足しております。一刻も早く国の整備指針を達成することが必要であります。

また、広域化による一層の合理化で、消防力の低下を招く消防庁構想は許されるものではないことを指摘しておきます。

東日本大震災の教訓は、地域コミュニティーの強化が、大きな減災につながることを示しています。しかし、本予算案では、多くの補助金が暫定、凍結となっています。地域支援活動の現場では、「いったん活動する人や組織がなくなったりしてしまえば、再構築はなかなかできない」という声が寄せられており、一年間の活動が見通せるよう通年で予算を計上すべきです。

 

第三に、地方自治体の役割を投げ捨て、民営化路線をむき出しにしている問題であります。

今回、市営交通事業の民営化を検討するための予算1億2千万円の調査費を計上して、4月には京福電鉄の副社長を新局長として民営化への突破口を開こうとしています。   

そもそも市営地下鉄は、大都市大阪の都市計画事業の一つとして建設計画が策定されると同時に、運営も公共の福祉増進に徹する公営事業との位置づけで1933年梅田―心斎橋間の開業以来、市民の税金と乗客の料金により、営々と築き上げ営業キロ137km、一日の乗客230万人を数えるまでになりました。

そうして、全国に先駆けて累積赤字を解消し、ここ毎年百数十億円を超える利益を計上しているのであります。これからいよいよ、市民に約束した残りの条例路線の建設、可動式ホーム柵やエレベーターの設置などバリアフリー化や料金の値下げなど、利益を市民に還元していかなくてはならないのであります。

公営という経営形態を改める理由などどこにもありません。

ましてや地下鉄の民営化には、企業債6,500億円の一括償還や職員の退職金に登録免許税、それに建設補助金はどうなるのかといった、民営化移行にあたっての膨大な資金手当てなど解明すべき多くの課題がある上に、運営的にも特例債元金補助金などがなくなるばかりか、利益の4割の法人税負担に数十億円の固定資産税などの負担と大変厳しい状況にならざるをえないのであります。

 しかも民営化すれば、経済が活性化する、多角経営が進む、広域交通ネットワークが拡充されるなどと、さかんに吹聴していたことが、全くのまやかしであることもはっきりいたしました。委員会での我が党委員の質疑に対して、交通局はまともに答えることができなかったのであり、地下鉄の民営化はどう考えても道理のカケラもないと申し上げておきます。

また、今回バスに対する地下鉄からの30億円の繰入を凍結した上、赤バスなどへの一般会計の補助金も全額カットするなど都合124億円もの資金不足を生じさせて、何か意識的にバスを倒産させようとしているのではないかと言わざるをえません。

 当局は一旦リセットし、あらゆる経費をゼロベースから精査するなどといっておりますが、 問題は、市民の足であるバスを守るのかどうかということではないでしょうか。これまでも赤字を理由に次々と車両を減らし、路線を削り運行回数をカットしてきました。もうこれ以上削れば、市民の足は守れないというところまで来ていると思います。そういう中でフィダー系バスなどへの地下鉄からの繰入を実施して来た訳であります。

 何よりも、市民の足、バスを守るために地下鉄からの繰り入れ、赤バスなどへの一般会計補助金の支出は当然だということを申し上げておきます。

次に、大阪広域水道企業団への参画の問題であります。

 企業団に加入するという事は、いずれ組織統合に進むという事になりますが、企業団は、製造卸売業、大阪市水道局は、製造小売業という事業形態の異なる水道事業者同士が統合するというのは皆無に等しいといっていい程、例がありません。それは、加入団体間の利害が一致しないからで、大阪の場合、府下市町村は用水供給料金が安ければいいのに対して、大阪市域は安定・良質・低廉のトータルな末端給水が企業団の事業として行なわれることが求められるのであり、これら市民的な利益が、企業団議会の少数派にならざるをえない中で、果たして守られるのかという事なのであります。

 しかも、水道事業の膨大な資産が企業団に移管される事になる訳です。負債もかなりありますが、ずっと利益を出してきたこともあって、簿価で計算しても2,200億円余りの資産超過となるのであり、本来これは市内の安定給水などのために使われるべきものであります。

 結局、企業団への統合を急ぐのは、市民の利益のためではなく、ただただ柴島浄水場を売却したいがためだと言わざるをえません。売却による代替措置を講ずるためには、3,700億円もの巨費を要するのであり、かえって市民の負担を増やすだけなのです。

 したがって、どの角度から考慮しても企業団への加入・統合は道理のないものであって、断じて容認することは出来ません。

以上、指摘した通り、本予算案は、住民福祉の切り捨てと自治体の公共的役割の否定が最大の特徴であり、断じて認められません。

 

最後に「大阪にふさわしい大都市制度の推進に関する条例案」についてです。

「地方分権の理念にのっとり」とか「大阪にふさわしい大都市制度を創り上げていく」などと言いながら、その実、大阪市と堺市を解体し、それぞれの政令指定都市としての権限も財源も、さらには市民の貴重な財産をも、大阪都に吸い上げ、集中させる「大阪都構想」の実現を遮二無二はかろうとすることに狙いがあることは明白です。

これは、大阪市民と堺市民にとれば、まさに地方自治の破壊であり、「地方分権」の理念に逆行し、何より、歴史と伝統をもつ大阪にまったくふさわしくないものをつくることにつながると考えます。

また、本条例案の根幹である、「大阪にふさわしい大都市制度推進協議会」の設置についてですが、行政の長である首長と、議会の代表とが一体となって、特別自治区の区割りや、都と特別自治区の税の配分などの基本計画を策定することは、都構想の具体案づくりにおける、行政と議会の共同責任体制をつくるものです。同時に、国に対して、地方自治法の改定を、行政と議会とが一体となって求めているように装う体制づくりも狙いとしており、地方自治体における二元代表制を否定するものだと言わなければなりません。

そして何よりも、大阪府、大阪市、異なる自治体間を律するきまり、節度をなし崩しにすることにつながります。たとえば、大阪市を解体するのかどうか、特別自治区に分割するのかどうかなど、大阪市と大阪市民の将来にかかわることを、大阪市に直接責任をもたない知事や府議会の代表が入って議論することを、市民が納得するとは思えません。まずは、大阪市会で堂々と、議論を交わすべきだと考えるものです。

 

したがって、このような条例案を提出する前に、大阪都構想の提唱者である橋下市長が、その具体的な姿を示すべきです。特別自治区の区割り、中核市並みにするという特別自治区の財源や権限はどうなるのか、大阪都に移管する事業は何か、その際、資産、負債はどのようにして引き継ぐのかなどを、まず明らかにして、市長と同様に、市民の代表である大阪市会に提示するべきだと申し上げ、反対討論といたします。