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市議団の実績

「2012年度補正予算案」に対する

北山議員の反対討論

北山良三市会議員

2012年7月27日

私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、議案第188号2012年度大阪市一般会計補正予算等の組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論をおこないます。 

今、国の政治の体たらくによって、国民の暮らしと安全がいっそう脅かされつつあります。そして、その間違った政治に国民の強い怒りの声が大きく広がっています。

こうした中で、大阪市に求められているのは、国の悪政に市民の立場からきっぱりと意見を上げ、市民への被害を防ぐ防波堤となり、住民の福祉の増進という地方自治体の原点に立ち返って市民の暮らしを守るとともに、地域経済の活性化のためにあらゆる手だてを尽くすことであります。

しかし、橋下市長が進めている市政運営の方向は、これに真っ向から反するものであります。その問題点は、3月に「暫定的予算」を編成し、7月の本臨時議会で「府市統合本部および改革PTにおける検討内容を反映させた補正予算」を組み具体化を進めるという、市長が示した今年度の予算編成方針とその内容にも明確に現れています。 

第一に指摘しなければならないのは、改革PTにおける検討内容をまとめた「市政改革プラン(案)」についてであります。 

まず、「案」にいたる経過において、市民の声を全く無視してまとめられているという点が大問題であります。

5月11日に「素案」として発表し、6月29日に「案」に仕上げ、本臨時議会において報告・説明されたものでありますが、「素案」の段階で実施したパブリックコメントでは、総数2万8399件にものぼる意見が寄せられ、その殆どが反対の意見であったにもかかわらず、市長は、「そんなものは読んでいない」「利害関係者の意見に過ぎない」という態度を表明しているのであります。これではパブリックコメントを実施する意味が失われ、ただアリバイ的に行なったに過ぎないことになります。許し難い態度であります。 

次に、経過もさることながら、そのプランの内容がさらに大問題であります。

市民のあらゆる世代の暮らしと福祉を支える数多くの事業を削減し、あるいは廃止するとともに、全国に誇れる大事な文化や市民に必要な施設などを次々と壊していく、そんな道へとつながる内容になっているのであります。

例えば、敬老パスの有料化、上下水道料金福祉措置の廃止などで、高齢者や障害者をはじめとする多くの市民の生活と健康に大きな悪影響をもたらします。また、老人憩の家運営補助、ふれあい型食事サービス補助などの大幅削減やネットワーク推進員補助の廃止などによって、地域参加型の福祉活動の大幅な後退を余儀なくされます。加えて、保育料の引き上げ、こどもの家事業への補助金の廃止など、「現役世代に重点配分」と言いながら全く逆行しています。さらには、クレオ、住まい情報センターなどを廃止し、市民の相談場所・集う場所を奪っていきます。また、全区にある温水プールを24から9ヶ所へ、スポーツセンターや老人福祉センターは18ヶ所へと削減し、まだなんの提案もない9ヶ所の行政区への再編を先取りしています。そして、市音楽団の廃止や大フィル・文楽協会への運営補助の削減など、大事な文化をつぶしていきます。こんなな内容の「市政改革プラン」は、まさに「改革の名に値しない」とんでもないプランであります。 

さらにひどいことは、「今後10年間にわたって年間500億円の収支不足になる」「収入の範囲で予算を組む」と、もっともらしく市民をごまかしてこの「市政改革プラン」を強行しようとしていることであります。

そもそも、500億円の収支不足の計算には、今年度254億円も見込んでいる土地の売却収入や、昨年度末で1221億円の残高にのぼる都市整備事業基金の活用、公債償還基金剰余分の活用、職員退職手当債の活用などが除外されています。だから、昨年度までの計算方式では「100億円程度の収支不足」となるものを、まるでバブルのように500億円にまで膨張させることになっているのです。しかも、実態に近い「100億円程度の収支不足」の主な原因は、阿倍野再開発事業などの巨大開発事業の失敗のツケが回ってきていることによるものであり、市長が「削減」や「廃止」を叫んでいる市民のための事業のせいではありません。したがって、今後7〜8年を過ぎれば債務負担は大きく軽減するではありませんか。ごまかしの理屈で市民生活を圧迫する「市政改革プラン」の強行を許してはならないのであります。

本補正予算(案)は、こういう「市政改革プラン」の具体化に突き進む道に誘い込むものであり、断じて認めることができません。 

第2に指摘したいのは、法的にも条例上も何の位置づけもない「府市統合本部」なる会合で、これまで長年にわたって築き上げてきた貴重な市民の財産を売り飛ばし、あるいは統廃合へと道筋を付ける計画が、次々と打ち出されているということであります。そして、本補正予算(案)は、これらの方向に沿って組み立てられているものであり、この点からも容認することはできないのであります。 

例えば、全国で初めて累積赤字を解消し、大きな累積黒字を積み上げつつある地下鉄事業の民営化であります。公営事業だからこそ課税の負担もなく、その利益がストレートに利用者や市民に様々な形で還元できるのであります。そして一般会計への納付も行えば、敬老パスをはじめ市民生活を支える財源にも活用できるのであります。

また、バス事業も民営化と廃止の方向が打ち出されています。これはまさに市バスの解体であります。

結局、黒字の地下鉄は民営化し、赤字の市バスは解体するというもので、市民の足を守り、移動の権利を保障するという大阪市の役割を放棄するものであります。 

そして、水道事業の統合と柴島浄水場の廃止・土地売却の方向が示され、本補正予算(案)では、柴島浄水場の補修工事予算が全く計上されていません。豊野や庭窪の補修工事予算は計上されているわけですから、柴島浄水場の廃止・売却の具体化に向けてのことだとすれば、許されないことであります。

さらには、住吉市民病院の現地での建て替え事業を中止し、府立急性期・総合医療センターへの統合と、市民病院の独立行政法人化と府市統合の方向が示されています。

住吉市民病院の役割は、住之江区西成区住吉区を中心とする地域医療の確保とミドルリスクまでの患者を受け入れる2次医療機能の発揮であります。一方府立急性期・総合医療センターは、ハイリスクの重症患者を受け入れる3次医療機能が中心の病院であり、ここに住吉市民病院の小児周産期医療機能を統合し住吉市民病院を廃止すれば、その機能はほとんど失われてしまい、小児周産期医療の拡充強化には逆行する結果となります。

実際に示されている統合案と現地での建替案を比較すれば、明瞭であります。分娩数でみれば、現地建替案では府立・市立あわせて1446件へと拡充されるのに、統合案では1250件と、現状の分娩件数とほとんど変わりません。小児救急の強化という点でみても、現地建替案では府立・市立あわせて135のベッド数へと30床拡充されるのに、統合案では71床と、現状より34床も受け入れベッド数が減ってしまうのであります。こんな統合案は撤回し、住吉市民病院の現地での建て替えに立ち返るべきであります。

そして、市民病院の経営形態を地方独立行政法人へと移行し、病院経営の府市統合化をはかるということは、公的病院の役割を大きく後退させ、経営効率優先の医療へと突き進む道へと踏み出していくことになります。

したがって、今回の補正予算(案)では、住吉市民病院の小児周産期医療を府立急性期・総合医療センターへ機能統合するための調査費1000万円と、市民病院の独立行政法人化への移行準備費5200万円が計上されていますが、こんなものを認めるわけにはいきません。 

第3に指摘したいのは、本補正予算(案)に計上されているいくつかの具体的問題点についてであります。

まず最初に、敬老パスについて申し上げます。

本補正予算(案)には、敬老パスの有料化にむけての収納管理システム開発予算等で、約5億2800万円が計上されています。来年度以降さらに大幅なシステム改修予算が組まれることになり、総額35億円以上にも膨らみます。こんな多額のシステム変更経費をつぎ込んで有料化するよりも、なんとか工面して、市長の公約通り「無料の制度として維持する」べきであります。 

 次に、市民生活に関わる各種の福祉施設や研究施設への援助を、今回の補正予算を通じて大きく削りこんでいるという点であります。

 例えば、大阪市社会福祉協議会(いわゆる市社協)交付金や各区社会福祉協議会(いわゆる区社協)交付金を補助事業へと転換し、前年比27.1%、5億2000万円もカットしています。また、高齢者福祉・障害者福祉・生活保護に関わる各種の民間社会福祉施設の職員給与改善費補助が全額廃止となっています。さらには、点字図書館運営補助金の本市単独加算の人件費分補助を削減していますし、重症心身障害者通所施設運営助成金を43%もカットしています。これらは、本市における福祉事業の後退につながるものであり、認めることができません。

加えて、本市が世界に誇れる大阪バイオサイエンス研究所への運営助成金が1億5750万円、25%もカットされているのであります。実に恥ずかしい話であり、こんなことをやってはならないのであります。 

つづいて、新婚世帯家賃補助制度についてであります。

この制度は、市内新婚世帯の約4割が利用し、対象期間を過ぎても約6割が市内に定住するという効果を上げています。橋本市長が言う「現役世代重視」の観点から見ても、本年4月から新規受付を止めているという措置は直ちに解除すべきであります。そして、本補正予算で新規受付の復活・継続の経費を計上すべきであります。 

さらに、南港ポートタウンのゴミの空気輸送についてであります。

今回の補正予算(案)では、この空気輸送システムを廃止し、一般ごみ収集方式に切り替えるための設備調査費・設計費として2600万円が計上されています。その最大の問題は、「空気輸送廃止が先にありき」で地元住民に説明され、一方的に結論が押し付けられようとしている点にあります。

もともと、南港ポートタウンは、1970年代に「環境に優しい未来都市」というスローガンを掲げ、「住宅地ノーカーゾーン」「新交通システムニュートラム」「緑化ネットワーク」とともに「ゴミの空気輸送システム」の導入を大きな特徴として売り込み、大阪市が推進した計画住宅団地であります。そしてこの30数年間、このシステムで生活し、慣れ親しんでいるのであります。

昨年8月の「事業仕分け」の際には、高い技術力をもってきっちりとしたメンテナンスを行なってきたため、「まだ5年から10年は十分稼働できる」と当局は説明しているのであります。結論先にありきではなく、十分時間をかけた真摯な話し合いが必要です。そのためには、いったんはこの補正予算を削除し、廃止の計画を白紙に戻すよう強く求めるものであります。 

 最後に、岩手県の災害廃棄物の受け入れについてであります。

本補正予算(案)では、受け入れ処理に要する経費の本年度分として、9468万円を計上しています。わが党議員団は、これに反対し、この予算計上を撤回することを求めるものであります。

橋下市長は、6月20日に正式に受け入れの態度を表明しましたが、今の時点で、市民の安全・安心の確保と納得と合意が得られている状況には、全く程遠いと言わざるを得ません。

この間、此花区において3回の説明会が実施されましたが、説明会開催の決定から実施までわずか7日間しかなく、町会の回覧板と市のホームページで知らせただけで、住民にはほとんど周知されていませんでした。また、開催時刻を1分でも過ぎれば会場に入れてもらえず、入場の際には此花区民であることを証明しなければならず、区民以外の入場も拒否されています。こんな説明会の持ちかたは異常であり、市民のみなさんに真摯に説明し、理解を得ようとする態度とは言えません。

また、市長は、議会での答弁や説明会での回答で、湾岸戦争や沖縄での米軍基地受け入れを持ち出し、「犠牲をおそれ、危険なものを避けるという態度をとってはならない」という立場で災害廃棄物の受け入れを市民に迫っています。これでは市民の納得は到底得られるものではないと考えます。 

以上をもって、本補正予算の組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論といたします。