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市議団の実績

2011年度公営・準公営決算への

井上議員の反対討論

井上浩市会議員

2012年10月12日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2011年度大阪市公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行います。

 本決算に至る経過で見れば、例えば、小児・周産期医療に特化した、住吉市民病院の現地建て替えやバス事業のアクションプランなどは、いずれも「公共の福祉」という本来の役割に照らせば、不十分なものであることから、わが党は市民の立場に立った改善を強く求めてきました。住吉市民病院の現地建て替えについては、とりわけ南部医療圏に不足している小児・周産期医療の充実・強化は当然ですが、総合的機能をなくしてしまうというものでありました。またバス事業におけるアクションプランは、将来にわたって持続可能なバスサービスを提供するためとして、それまでの水準を後退させるというもので、これらを看過することはできないのであります。

 加えて申し上げれば、市長は、これまでの議論の積み重ねや到達点さえも根本からくつがえし、極端で強引な合理化と民営化路線への急転換をはかろうとしており、よりいっそう大きく間違っているのであります。「公共の福祉を増進するように運営しなければならない」という地方公営企業の原則を投げ捨てることは断じて認められません。

 以下、具体的に指摘致します。

 第一に住吉市民病院の問題です。わが党は、南部医療圏が4つの医療圏の中で最も高齢化が進み、どの診療科目も不足している事を示す当局の資料を元に、小児・周産期医療の充実・強化は当然として、現在の総合的医療機能を残して建て替えるべきと主張してきました。しかし、病院局は、老朽化している住吉市民病院を小児・周産期医療に特化して、現地建て替えをする方針を昨年5月に公表し、本決算はそれを前提としたものとなっているのであり、これは容認できないのであります。

 尚、市長がこれまでの経過を全く無視して住吉市民病院を廃止し、府立急性期総合医療センターへの機能統合を強引に進めようとしていることは、より根源的に間違っているのであります。到底、患者や地域住民・医師会などの理解を得られるものではありません。

 市長が、両病院の統合によって機能が強化すると説明していることについて、私は強化どころか明らかな「後退」であることを具体に指摘しました。

 住吉市民病院を受診されている年間約10万人の外来患者、年間約5万人の入院患者にとっては、言うまでもなく直接的な著しい「機能後退」であります。さらに、市内4医療圏の中で、小児救急患者の受け入れ基盤が最もぜい弱な上、西成区にはすでに分娩取り扱い施設が姿を消し、住之江区も住吉市民病院が唯一の分娩取り扱い施設なのであり、病院局が基礎調査報告書で示していたように、小児・周産期医療が極めて不足している地域なのであります。住吉市民病院がなくなれば、子どもも産めない、安心して子育てもできない地域となってしまい、地域医療の「後退」が地域コミニティーの疲弊と崩壊につながるのは必至であります。

 また、住吉市民病院は「市町村災害医療センター」でもあり、災害医療の「後退」が避けられないこと、府立急性期総合医療センターは外来受診時、基本的に紹介状が必要であることや出産費用も住吉市民病院と比較して高額であることなどを指摘しましたが、住吉市民病院の機能が引き継がれないことからも明らかに機能の「後退」でしかありません。

 さらに市長に対し私は、府立急性期総合医療センターは「飽和状態ではない」とする根拠や住吉市民病院と府立急性期総合医療センターが「二重行政である」とする根拠について尋ねました。

 府立急性期総合医療センターは、患者の需要増加に対応してきたが、いよいよスペースが限界に達したため、中央部門の拡張計画を進めていたことは、私が委員会で配布した「院長通信」に記載されていることからも明らかです。飽和と呼ぶか限界と呼ぶか表現の違いはあるにせよ、現状では府立の公的医療機関としての役割に照らし、需要に対応しきれない状態に達していることは、府立急性期総合医療センターの病院長自らが語っている通りであります。

 府は広域自治体の役割に照らして「拡張」を、市は基礎的自治体の役割に照らして「建て替え」を、それぞれ計画していたのであり、両病院が二重行政ではないことは歴然としています。

 しかし市長は、「住之江区と住吉区を1つのエリアと考えれば、完全に住吉市民病院と府立急性期総合医療センターは二重行政になっている」と答弁しました。これが「二重行政である」とする根拠であるならば、統合によって病院機能を強化するなどというのは全くの偽りであって、大阪市解体に突き進むための「病院つぶし」という合理化を行おうとしているにすぎません。

 「病院つぶし」のために後からこじつけた数々の口実は、すでに患者や地域住民・医師会などからも完全に見透かされています。そのことに市長は早く気付き、しっかり関係者と向き合い真摯にその声を聞くとともに、これまでの議論の経過を尊重し、住吉市民病院の現地建て替えを決断されるよう強く求めるものであります。

 第二にバス・地下鉄事業についてです。

 まず、バス事業についてでありますが、2010年3月に策定されたアクションプランでは、2015年度に3億円の経常黒字を生み出しその黒字を継続させるという大きな方向性が示されましたが、プランの中身については、バスサービスの縮小を批判し、利用者・市民に不便をきたさないよう改善を求めてきました。

 バスサービスの縮小をはじめ、プランの問題点を正しながら、利用者・市民目線でバス事業の問題点を洗い出すとともに、収支均衡と黒字化のより高い峰を目指していくべきなのであります。この立場からみて、本決算の認定には同意できないのであります。

 しかしながらプランの目的そのものは「公営企業として、将来にわたって持続可能なバスサービスを提供するため」としていたのであり、公営企業の役割については、明確に位置付けられていましたが、市長は、このアクションプランそのものを破棄し、地下鉄会計からの繰り入れの中止と一般会計からの運営費補助の大幅削減を強引に進めようとしているのであります。バス事業の解体と民営化路線にひたすら突き進もうとするやり方が、利用者・市民にどんな影響を及ぼすのか、冷静に考えたことがあるのでしょうか。公営企業として、何をおいても利用者・市民の足を守ることを第一義にしなければならないのであります。

 市長は、大変な不安と混乱をもたらしている現実を直視し、バス事業中期経営計画にも明確に示されているように、真に「お客さま第一主義」の立場に立つべきであります。

 あまりにも乱暴なバス事業の解体と民営化路線は、きっぱり撤回するよう改めて強く求めるものであります。

 次に地下鉄事業についてです。

 2010年度に全国の公営地下鉄で初めて累積欠損を解消し、これから利用者・市民に利益を還元する。具体的には、安全第一・お客様第一主義の立場で、可動式ホーム柵設置や、8号線をはじめ条例路線の建設による、ネットワーク充実に向かう時でした。

 ところが、せっかくルール化されたバスへの支援を、年度途中で凍結しようとするなど、住民の福祉の向上という、公営企業として最も大事な使命をかなぐり捨てようとしたのであります。

 地下鉄民営化ありきで突っ走ることを前提にしたものであり、とうてい認められません。

 次に水道事業についてです。

 水需要が減少をつづけるなか、昨年度も1日の給水料は平均120万トン、最大でも1日135万トン、本市の水利権267万トンにたいして、100万トンをはるかにこえる水があまる、水余り状態がますます深刻になっています。昨年度は27億円の特別利益があったものの、このままでは収支悪化の一途をたどることは明らかです。日本共産党市会議員団の再三にわたる「一定量の水利権の処分を」という求めを拒否し続けてきたことを真剣に反省し、直ちに施設等のダウンサイジング、活用する施設の耐震化など、安全な水を安定供給できる水道事業を築くことに最大の努力を注ぐべき時です。

 ところが、東日本大震災をへて、いっそう重要性がました配水管の耐震も遅々として進まずという状況であり、市民本位の水道事業にはほど遠いといわざるを得ません。

 市民や本市水道事業にとって、マイナスだらけであることがはっきりした、水道企業団との統合協議は早々に打ち切り、本市水道局として必要なダウンサイジングや耐震化などを速やかに行うよう求めておきます。 

 最後に下水道事業についてですが、今般の局地的豪雨にしっかり対応していくためにも、下水道幹線の建設事業費を大幅に増やすとともに、「淀の大放水路」の早期完成を目指すべきであります。この点からも本決算を容認することはできないのであります。

 以上決算認定の反対討論と致します。