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市議団の実績

2013年度大阪市一般会計予算等への反対討論

こはら孝志議員

こはら孝志市会議員

2013年3月29日

私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2013年度大阪市一般会計予算案等に対する組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論を行います。

今、市民のくらしと経済の動向は、極めて厳しい状況にあります。将来に対する不安や失望感も大きく広がりつつあります。

そんな中で、大阪市には、市民の立場から国に求めるべきことはしっかり求め、国が果たすべき役割を発揮させていくとともに、本市自らは、住民の福祉の増進に努め、くらしを守り、地域経済活性化につながる施策を展開し、大阪市をさらに発展させていく展望を示して、市民が安心と希望をもてるよう自治体本来の役割を発揮することが求められているのであります。

ところが、市長が提案した予算案は、市民のくらしや教育に悪影響を与える内容が多々含まれており、また、大阪市発展の展望どころか、「大阪市解体」に向かう「地ならし」「先取り」のための予算が組み込まれているのであります。加えて、本予算案は、これまで失敗を重ねてきた大規模開発・呼び込み型の経済戦略にもとづく「公金の無駄遣い事業」推進の予算も含まれております。

我が党議員団は、こんな予算案を認めるわけにはいかないのであります。以下、具体的に指摘いたします。

第一は、「市政改革プラン」の具体化をはじめ、市民のくらし・教育に悪影響を与える内容が多数組み込まれた予算となっているということであります。

まず、国民健康保険料3%の引き上げについてであります。

我が党の代表質問で、「所得200万、4人世帯で国保料が約38万円と、今でも高すぎる」「引き上げるどころか、むしろ引き下げるべきだ」と迫ったのに対し、市長は「大阪市の国保料はめちゃくちゃ安い」「全国の中で飛びぬけて低い」と答弁しました。その後の常任委員会での質疑で、「所得200万、4人世帯の国保料比較で、全国20の政令指定都市中、本市は上から8番目に高く、平均額より4万円も高い」と指摘され、市長はまともに答弁できなかったのであります。大阪市の国保加入世帯の所得は、全国や大阪府と比べて極めて低く、生活の実態からみれば国保料の引き上げなど到底認められないのであります。

ましてや、大阪市の場合、後期高齢者医療制度が実施され国保と分離して以降、国保への一般会計からの任意繰入金は36億円も削減されており、しかもこの間、ほぼ毎年国保会計は黒字を計上し、直近2年で188億円もの黒字を計上しているのであります。この面からみても、国保料引き上げ予算など断じて認められないのであります。 

次に、高齢者や障害者の福祉の後退についてであります。

敬老パスの有料化や上下水道料福祉減免の廃止は、高齢者などにとっては大きな負担増となります。受給年金の2.5%引き下げ、消費税5%増税、2%を目標に物価上昇政策などという状況の中で、さらに負担を増やすようなことをやってはなりません。そんなことをやれば、高齢者は自宅に閉じこもりがちになり、外に出かけることを控えるようになります。それは、健康レベルの低下と街のにぎわいの低下にもつながるものであり、高齢化が進む中で高齢者の動向のウエイトはますます大きくなるわけで、経済の面からも大阪市全体の活力を低下させる要因にもなります。こんな愚策は認められないのであります。

また、ネットワーク推進員廃止、ふれあい型食事サービスへの補助や老人憩いの家運営補助の削減などは、地域での支えあいや絆づくりが弱まり、福祉の街づくりに逆行します。区ごとに再構築すると言われていますが、新年度に向けたそれぞれの区の計画をみれば、再構築されているなどとはとても言えず、むしろ地域では不安と不満が広がり大混乱しているというのが実態であります。こんな方針は撤回し、地域福祉向上にむけて地域の支えあいを最大限支援する方向に転換することを、強く求めます。

さらに、福祉施設の上下水道料金減免を新年度は40%から20%に半減し、再来年度から廃止するという方針についても、とても認められません。福祉施設の経営と運営は、今でも大変厳しい状況にあります。これとある程度連動して、職員の賃金や労働条件も劣悪であり、福祉施設の運営は、福祉への熱い情熱と献身的自己犠牲によってなんとか支えられていると言っても過言ではありません。そんな施設への上下水道料金の減免は、経営と運営を援助するとともに本市としての激励とエールを送る意味合いもある、大事な制度であります。これを削減・廃止するなどとは、とんでもない話であります。断じて認められません。

次に、子育て世代への支援や児童福祉施策の後退についてであります。

本予算案では、ほとんどの対象世帯の保育料の引き上げ、1歳児保育での子ども対保育士の配置基準を「5:1」から「6:1」への改悪、市立保育所の民営化などが組み込まれています。

保育は社会保障の一環であり、保育料は負担能力に応じて支払うものであります。税金も掛けられないほどの低所得世帯にも保育料の支払いを求めるなど、生活困窮者に新たな負担を強いるものです。

また、保育士の配置基準の改悪は、子どもの安全をおびやかし、のびのびと豊かな成長を保障する保育に悪影響を及ぼします。

さらに、今回打ち出されている市立保育所の民営化は、これまでの「市立のまま運営だけを民間に委託する」というものから、「施設も民間に移譲し、実施主体を民間に移行する」というものであります。これは公立保育所が担う役割の放棄につながり、民間に移行される時期の子どもへの負担や保護者の不安をいっそう増大させるものであります。

これらの保育行政の後退は許されないのであり、認めるわけにはいきません。

加えて、本予算案では市立幼稚園の廃止・民営化にむけた方針にもとづく予算が組み込まれています。我が党は、代表質問でも、また常任委員会質疑においても「公立でなければ果たせない役割」について詳細に明らかにし、民営化によってこれらの役割がどう継続できるのかと質しました。しかし、「民間にできるものは民間に」の一点張りの答弁で、まともに答えられなかったのであります。

先日の文教経済委員会で、多くの署名とともに提出された「公立幼稚園の存続を願う陳情書」が採択されました。これは、本市の130年にも及ぶ幼児教育の歴史と実践を通じて、「公立幼稚園の役割」を多くの市民が共有していることを示したものであり、大変重い議会の判断であります。公立幼稚園は本市の大切な財産であり、廃止したり民営化することを許してはならないのであります。

また、乳児院に対する「夜勤軽減非常勤雇用補助金」の廃止が打ち出されています。国の職員配置基準が、職員1人に対して子ども1.7人から1.6人へとほんのわずかな改善がなされたことを理由にしていますが、今の実態や今後の見通しからみて、そんなことでこの補助金を打ち切ってはならないのであります。

我が党議員が、常任委員会質疑で「児童人口は1990年に比べ2010年には3割も減っているのに、児童虐待は50倍にも増えている」と指摘しているように、社会的養護を必要とする子どもが激増しているのであります。こんな状況で「乳児院への夜勤軽減補助」を打ち切るなどという冷酷非情な仕打ちを行ってはならないのであります。

さらには、昨年4月から実施されている「新婚家賃補助の新規受付停止」の措置を、新年度も継続するなどということも、到底認められないのであります。若者の雇用の不安定は深刻であります。結婚しても親の援助なしには生活が成り立たないという新婚家庭も少なくありません。自立した新婚生活を支援し、市内居住を促進する効果をもたらしている「新婚家賃補助」の新規受付を直ちに再開すべきであります。

以上のように、市長は「子育て世代への重点投資」と叫んでいますが、「子育て世代への支援や児童福祉施策のこんな大きな後退」を含んでいる予算を決して認めるわけにはいかないのであります。

次に、生活保護受給者への不当な扱いを進める本市の取り組みについてであります。

たとえば、西成区での「通院医療機関等確認制度」について、我が党議員の質疑では、「重複受診・重複服薬などによって生活保護受給者の適正な治療が損なわれないようにする目的で、受診できる医療機関は診療科目ごとに1ヶ所、薬局も1ヶ所という措置をとった」と答弁しておきながら、「重複受診・重複服薬での不適正な実態とはどういう内容で、どう把握しているのか」との質問には、「不適正な実態という規定は定まっておらず、実態は把握していない」と答弁しています。つまり、この制度の本当の目的は、生活保護受給者の受診抑制をはかり、医療扶助を減らすことにあり、そのために医療を受ける権利を制限するという、生活保護受給者に不当な扱いをする制度であります。こんな「医療機関確認制度」は直ちにやめるべきであります。

 さて、第二に指摘したいのは、本予算案は、「大阪都構想」「大阪市解体」にむけて、その地ならしとして、また先取りして、様々な事業や施設を府市統合・廃止・民営化などの方向へ具体化していく内容が多々含まれているということであります。

 まず、大都市局の設置についてであります。

市の事務事業の仕分けなど、市に関わることが主な業務であるのに、府から50人の職員が本市に乗り込んでくるうえに、トップが府の職員であるなど、あまりにも異常な姿であります。「一丸となって大阪のために」といっても、府の立場から、いるものいらないものを値踏みするなど、府の主導で大阪市の解体・廃止を進めるものにほかなりません。決まってもいない「都構想」を前提にしたこうしたやり方は、まったく認められません。

つづいて、住吉市民病院の府立急性期・総合医療センターへの統合、市立大学と府立大学の統合、工業研究所や環境科学研究所の府研究所への統合、信用保証協会の府市統合などについてであります。

住吉市民病院の廃止方針に対する地域住民の圧倒的声は、住吉市民病院の現地建て替え、存続を求める内容であります。それは、長年の蓄積による信頼を寄せる声であり、小児・周産期医療の拡充を求める声であり、災害時の役割への期待の声であります。決して新たな民間病院の誘致で補えるものではなく、住吉市民病院を廃止に向かわせる予算については撤回を求めるものであります。

また、市立大学・府立大学は、ともに長い歴史と伝統・実績を積み上げてきたそれぞれに特色をもつ価値ある大学であります。そのことを主に訴えた「両大学の拙速な統合撤回を求める陳情書」が、先日の財政総務委員会で採択されています。これを重く受け止め、予算の上でも撤回すべきであります。工業研究所や環境科学研究所も、府の類似研究所と二重になってムダや不合理を生み出している実態はほとんどありません。そして府および市の信用保証協会についても、地域の中小事業者にとってはともに貴重な融資窓口であり、その統合は融資枠の削減につながる可能性があり、廃業や倒産の引き金にもなりかねません。

このような様々な府市統合に向けた予算を認めることはできないのであります。

次に、ごみ焼却工場の一部事務組合化や家庭ごみ収集の民営化に向けた予算についてであります。

先日の民生保健委員会での質疑では、ごみ焼却工場の一部事務組合への移行によって懸念される課題として、「工場の維持・運営に関する専門的知識や技術の水準が低下する可能性がある」と答弁しています。ごみ焼却工場の事業は、何よりも安全に安定的に運営され、環境への悪影響を防止し、かつできるだけ長期に工場を稼働させていくということが求められています。この立場から、「コスト削減や効率化優先」によって「工場の維持・運営に関する専門的知識や技術の水準の低下」をきたすようなことは、絶対にあってはならないのであり、こんな懸念課題を内包する一部事務組合化はやめるべきであります。

また、家庭ごみ収集の民営化は、人員削減によるサービスの低下をまねき、また、民間事業者の急な倒産や廃業などの不測の事態の発生や大災害時の対応などで、大混乱を招く恐れがあります。だからこそ、警察や消防と同様に、ごみ収集・処理事業は法的に自治体の事業と位置付けられているのであり、民営化に向けた予算は認められないのであります。

 第三に指摘しなければならないのは、本予算案には、これまで何度も失敗を重ねてきた大規模開発・呼び込み型の間違った経済活性化戦略にもとづく事業計画がいくつも含まれているということであります。

 最初に、本予算案で33億1200万円も計上している高速道路淀川左岸線2期事業関連予算についてでありますが、今後の人口減少の見通しは明らかであり、すでに市内流通道路網は十分整備されているのであります。市内中心部においても、周辺部においても、交通渋滞はほとんど解消されており、淀川左岸線2期事業の必要性はほとんど消え失せているのであります。加えて、東日本大震災による津波被害をふまえて、南海トラフでの大規模地震による被害想定の大幅な見直しが行われていますが、淀川を遡上しての津波に対する防災対策の観点からも、堤防の弱体化を招く恐れのある淀川左岸に沿った高速道路建設の見直しの声が上がっているのは当然であり、こんな事業は中止すべきであります。

 また、カジノを中心施設とする統合型リゾート開発関連予算についてでありますが、カジノなどの施設建設は民間資金で行われるとしても、基盤整備やアクセスの整備などは公共事業として実施されることは明白であります。具体的には、関空からのアクセス整備として、なにわ筋線建設などとともにリニア建設まで構想されており、新たな大規模公共事業の無駄遣いにつながるものであります。

さらにカジノは、常習とばく場として、刑法186条によって禁止され重罪を科す対象となっています。それは、「射幸心をあおり」「勤労意欲を失わせ」「正常なる経済活動を阻害し」「犯罪の温床になる」などという理由によるものであり、ギャンブル依存症や家庭崩壊の増加につながり、青少年の健全育成にも悪影響をもたらします。こんなカジノ構想で経済活性化させるなどという方針は、断じて認めるわけにはいかないのであります。

 次に、国際コンテナ戦略港湾促進関連予算についてであります。大阪港では、5万トンを超える大型船の入港は年々減少しているにもかかわらず、本市は、総事業費176億円もかけて、水深16mの高規格岸壁として夢洲C12埠頭を250mも延長する計画を推進しようとしています。今年度の5万トン以上のコンテナ船のC12埠頭への入港は、たった3隻であり、こんな事業はまったくの公金投入の無駄遣いであり、直ちに中止すべきであります。

 第四に指摘したいのは、本予算案は、市民をミスリードする「今後の財政収支概算」と「財源確保対策」にもとづく予算編成となっているということであります。

 まず、本予算案の前提となっている「今後の財政収支概算」についてでありますが、ここでは「今後10年は、毎年約300億円から400億円の収支不足が見込まれる」となっており、市民に「財政難の不安」をあおっています。

しかし、これは2013年度予算案で242億円も見込んでいる不用地等売却代や、今年度末で1283億円もの残高が見込まれている財政調整基金の活用などが、全く含まれておりません。これらを正当に見込めば、収支不足はほとんど解消されます。本市が所有する未利用地は、895件、255ha、甲子園球場の約64倍にもなります。これらの資産を、市民の立場からしっかり精査したうえで、計画的に処分すれば有効な財源にできます。

一方、財政調整基金は限りあるものであり、長期に活用する立場からその繰り出しを出来る限り抑え、よって一定の収支不足が生ずる可能性もありますが、そもそも収支不足の原因は、阿倍野再開発などのかつての大規模開発の失敗で生み出しているものであります。したがって、「市政改革プラン」による市民サービスの削減や、市の事業の廃止や民営化等による市民財産の売り飛ばしなどでの財源確保対策は間違っているのであり、こんな市民犠牲を強いる予算案を認めることはできません。

大阪市には、今後も膨大に積み上がる公債償還基金という積立金があります。今年度末残高見込みで約4200億円、来年度末では4600億円、さらには2022年度末には5600億円とどんどん増え続ける基金であります。市長は、この基金からの一時借り入れは、大阪府の経験から「禁じ手」だと主張しますが、府は、同様の基金から5000億円も取り崩し、基金の本来の目的を大きく逸脱し、財政規律を壊してしまったのであり、こんなことはやってはなりません。しかし、年100億円程度の一時借り入れは、基金の実態や収支不足の見通しからみて、やりくり十分可能な範囲であります。こういうやりくりを意図的に無視し、市民をごまかして負担を求めるやり方を、決して認めるわけにはいかないのであります。

  以上をもって、予算修正動議に賛成し、原案に反対する討論といたします。