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市議団の実績

2014年度大阪市公営・準公営企業会計の決算認定

に対する瀬戸議員の反対討論(要旨)

せと一正市会議員

2015年10月23日

写真 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2014年度大阪市公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行います。

 地方公営企業の目的は、常に経済性を発揮するとともに、何よりも公共の福祉の増進に努めることにあります。大阪市の各公営企業・準公営企業も、この目的に沿って、市民の切なる声を聞き、また時代のニーズにも答えながら、安全で住みよい街づくりに寄与する事業を発展させなければなりません。

 ところが、2014年度の公営・準公営企業決算に現れているのは、橋下市長が掲げる「大阪都構想」、すなわち「大阪市を廃止する構想」に沿って、「民間でできることは民間に」を合言葉に、すべての公営・準公営企業に対する大阪市の公的役割を放棄し、民営化や民間委託などを推進しようとする姿勢であります。到底、認めることはできません。

 以下、具体的に指摘いたします。 

 はじめに、地下鉄・バス事業についてであります。

 地下鉄事業は2003年度に経常損益が46億円黒字になって以来、毎年巨額の黒字になり2014年度決算では348億円になりました。この巨額の利益でもって2002年度末に2932億もあった累積欠損を減らし続け、2010年度には公営地下鉄として全国で初めて累積赤字を解消し、今や累積剰余金が807億円にもなっています。企業債残高も2002年度末は7984億円でしたが2014年度末は5291億円になり、この12年間で2693億円も借金を減らしました。正に、地下鉄事業は超優良企業であります。

これだけの巨額の利益を活用すれば、未着手の8号線延伸など条例路線の建設を始めることができるし、南海トラフ地震と津波対策、可動式ホーム柵の全路線・駅への整備、エレベーター・エスカレーターの必要な個所への設置、そして、地下鉄と一体となって公共交通のネットワークを市民に提供しているバス事業への支援、さらには、公営企業法182項にもとづいて一般会計に納付金を納めることができるではありませんか。

こうしたことをやらずにどうして民営化しなければならないのか。交通局は今、バスと地下鉄は完全分離が原理原則だと主張し、地下鉄の民営化でさらに利益を積み上げた上で、株式市場において株式を売却する、完全民営化すなわち地下鉄の売却を目論んでいますが、地下鉄は誰のための事業なんでしょうか。地下鉄の民営化なんてとんでもありません。 

 一方、バス事業は、橋下市長の号令によって地下鉄からの支援を打ち切られた結果、2014年度に「路線の大きな再編」に追い込まれ、103あった路線が9月には87路線になりました。その中で市民の足に大きな影響を与えているのは、市民の生活区域を細かく走る地域サービス系路線44本の、何と3分の1が廃止され29本になったことです。それによって地域サービス系路線の一日平均走行距離は約20%減りました。これは走行距離にして20%も市民サービスを削ったことになります。一日平均乗車数は約25%も減りました。利用者の内の4分の1の市民がバスを利用できなくなったのであります。

 路線の廃止だけではありません。統合、経路変更という名前でバス路線はズタズタになっています。路線そのものは廃止されなかったが一部または大部分が廃止されて、今まで走っていた区間をまったく走らなくなった路線もあれば、数年前までは昼間1時間に3本走っていたのに1本に減らされてしまった路線もあります。バスの便数については、大正区のように減便によってバス停で積み残しが出るということも起きていますし、昼間の時間帯丸々、1時間に1本しか走らない路線は29本にも及び、地域サービス系路線では3分の220本が昼間1時間に1本しか走っていません。

 私が決算委員会で「近くのバス停がなくなり、これまでは自宅から歩いて5分でバスに乗れたのに、ニュートラムの駅まで15分かかる」「1時間に1本になったので家に帰るのにバス停23つ歩くことがざらになった」など市民の声を紹介して、交通局にはバスの利便性の水準を下げたという認識はないのかと質したところ、交通局は「必要な路線・サービスを将来にわたって提供するために路線の見直しを実施した。現状でも利用状況に見合ったサービスは確保できていると考えている」と市民の声にまったく耳を貸さない答弁に終始しました。まったく市民に冷たい態度だと言わなければなりません。交通局は、廃止・縮小した系統は基本的に元にもどすべきであり、少なくとも市民からの苦情が大きい路線は直ちに元の水準に戻すべきです。 

 バス会計は今日、土地信託オスカードリームの和解金283億を単独で負担することを強いられ、160億円もの短期借入を行ったために経営健全化計画の立案と提出を迫られています。先日、橋下市長は「もしバスを民営化しなければバス路線の大幅見直しが避けられなくなる」と言いましたが、とんでもありません。オスカードリームの土地信託もフェスティバルゲートの土地信託も会計こそ違え、交通局長という同じ公営企業管理者が決断したものであり、事業の失敗についてはオール交通局が責任を負うべきであります。そして地下鉄事業からの財政支援でもってバス会計を立て直すべきです。バス会計が2008年度に経営健全化団体に陥りそうになったときには、バスを地下鉄を支えるフィーダー系路線だと位置づけるなどして、出資、繰入、貸付など212億円の支援をしているではありませんか。府市統合本部で勝手に決めた「地下鉄事業とは完全分離して運営し、かつ民営化する」という方向ではなく、「地下鉄とバスは一つのネットワークになって市民の足を守っている一体のもの」という原理に立って、市民の貴重な足である市バスの経営を立て直すべきです。 

なお、昨年度、藤本交通局長が、地下鉄駅でのイベント計画にかかわって、知人の業者との間で随意契約をしたとして800万円を支出したことが発覚しました。これは、民営化に突き進むあまり、公営企業としてのコンプライアンスを失った結果、引き起こしたものであります。加えて、交通局が2013年度と14年度上半期に結んだ、競争入札を行わずに行った随意契約1355件のうち980件、7割以上に内規違反が見つかったことも重大であります。こうした点からも本決算は到底容認できるものではないことも、申し上げておきます。 

次に 水道事業、下水道事業についてであります。

一昨年5月に本市水道事業の大阪広域水道企業団との経営統合は市民にメリットなしと否決され失敗に終わるやいなや、そのかわりにと検討されているのが公共施設等運営権制度の活用、上下分離方式の民営化であります。しかし、本市の水道事業の取り組むべき課題は民営化ではありません。過剰給水設備の縮小など無駄の削減と、老朽カンキョの更新、災害対策、低廉で良質の水の供給であり、これらは公営でこそなし得る課題であります。本市水道事業は、料金、品質ともにすぐれており、昨年度の経常利益は121億円であり、一般会計に対しても、これまで大きな貢献をしてきました。まさに市民の財産であります。民営化など、よこしまな考えはやめて市民のための安全安心の給水に専念すべきです。 

近年多発する、台風による大雨、ゲリラ豪雨などの浸水被害は、本市でも2011年から3年連続で発生しており、そうした災害から市民のくらし・財産を守る本市の下水道事業の公的役割はますます重要です。しかし、一昨年度は西部方面の下水道事業の維持管理を財団法人都市技術センターに包括委託し、昨年度は市内4方面すべての施設の維持管理業務を包括委託しており、さらに今後、上下分離方式の民営化へと一路進もうとしています。その狙いは経営の効率化にあるとされていますが、下水道事業に関わる人員をどんどん削減してゆけば、災害に対応する力は必ず低下することは必定ではありませんか。公としての役割の放棄することは断じて認められません。 

最後に港営事業に関してです。

本市港湾局はこれまで大きな深い港をつくれば、北米向けの航路における超大型船舶の入港が増え、それに伴い貨物が増えるとして、巨費をかけ国際コンテナ戦略港湾政策を進めてきました。ところがこの間の大阪湾の入港船舶の推移を見ても、大型船の入港は増えるどころか、逆に年々減少しています。国際コンテナ戦略港湾の当初の目論見は、大阪と神戸の両港での北米向けコンテナ貨物の2015年目標を70TEU に置いております。ところがその基点である2008年に大阪港108TEU、神戸港359TEU、合計で467TEUの取扱いであったものが、なんと昨年は大阪港29TEU、神戸港305TEU、合計334TEUと大阪港でみれば1/3以下にまで落ち込み、目標とは大きく乖離しているのであります。これからも目標達成のメドなどはありません。現に今、北米向け航路は週1便という惨憺たる有様で、巨費をかけた大水深のC12岸壁には一昨年に続き5万トンを超える大型フルコンテナ船の入港も全くありませんでした。このような状況で、これからも国際コンテナ戦略港湾づくりを進めていくことは、壮大な税金のムダづかいだと言わなければなりません。 

昨年の大阪港における外貿コンテナ貨物の中国、韓国、台湾等、アジア諸国のシェアは、輸入の94.3%、輸出の92.9%であり、アメリカのシェアはわずかに1.2%、1.1でしかありません。1万トン未満の船舶が多いのも大阪港の特徴であります。こうした大阪港の特徴に見合った、身の丈にあった港湾政策に早急に改めなければなりません。港湾の役割は、その後背地で発生しかつ消費する貨物をスムーズに出入りさせることによって都市と後背地の発展に寄与することです。港湾をただただ大きくすることに血道を上げるのではなく、関西経済の活性化を図ることがなにより先決だ、このことを強く指摘しておきます。 

なお、府市港湾の一元化に関しても、まったく役割、特徴の違う本市の大阪港と府営港湾である堺泉北港・阪南港を一元的に管理したとしても、それで国際競争力がつくなどということは絵空事であり、大阪港にとってのメリットはありません。港湾は、市民生活とも密接にかかわりをもっており、それぞれの特徴を生かした運営こそ求められるものであって、府市港湾の一元化はきっぱりやめるべきであります。

以上、反対討論といたします。