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市議団の実績

2014年度大阪市一般会計決算認定に対する

井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2015年12月17日

私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2014年度大阪市一般会計決算認定に反対する討論を行います。

今、市民生活は一層厳しさを増し、家計消費支出や雇用者報酬など、大阪経済のどの指標をとって見ても深刻な実態が現れているのです。こうした時こそ本市は、自治体本来の役割を発揮し、市民のくらしと中小企業を応援しなければならないのであります。

ところが橋下市長は、「大阪市廃止・分割構想」にあけくれ、施設の統廃合や民営化を強引に進めると共に、市政改革プランによって市民生活に大ナタをふるってきました。

本決算にあらわれているのは、地方自治体の本旨を投げ捨て市民生活にいっそう追い打ちをかけてきた姿であり、到底認められません。

以下、具体に指摘致します。  

まず、市民のくらし・福祉・教育についてです。

この間進められた様々な市民いじめは、目を覆うばかりであります。敬老パスの有料化によって交付率は、2012年10月時点の75%から2015年9月時点で50%へと極端に落ち込み、高齢者の社会参加や健康増進という本来の制度の趣旨から、遠くかけ離れたものになってしまいました。市営住宅については、低廉で良質な住宅を市民に提供する役割に反し、毎年管理戸数を減らすと共に、家賃減免制度の改悪で28億円もの負担を市民に押し付けているのです。

また、新婚家賃補助制度や上下水道料金減免制度の廃止、国保料・介護保険料・保育料などの値上げ、学校維持運営費の削減等々、市政改革プランの強行が結果として、くらしの悪化と景気低迷の大きな要因となっているのであります。

市長は、口を開けば「現役世代への重点投資」と言い、施策・事業の切り捨てを正当化しようとしますが、「重点投資」の名の下につぎ込まれたものの多くは、塾代助成やICTなど市長の肝いり施策であります。長年に渡って市民生活を支えてきた施策・事業を乱暴に切り捨て負担を増やすやり方は、市民生活全般に渡って責任を果たす役割を担う地方自治体として、言語道断であります。

保育施策についても、「現役世代への重点投資」などと声高に叫びながら、1歳児の保育士配置基準5:1から6:1への後退、保育室面積基準緩和によるつめこみ保育、公立保育士の給与大幅カット、上下水道料金の社会福祉施設への減免措置廃止等々一連の改悪によって、公立・民間共に活力を失い、本市の保育基盤全体が脆弱化してしまったのであります。

同時に、待機児童解消を重点課題と位置づけた橋下市政において、2014年度の待機児童数は224名と、大きく減少させる結果には至っていません。公立保育所の保育士が毎年100人規模で退職していく中、民営化を視野に全く新規採用してこなかった結果、直近3年間で約400の入所定員の引き下げを行わざるをえない状況に陥りました。このこと自体、待機児童解消に逆行しているのであります。

さらに、障がい児やアレルギー児をはじめ支援を要する子供たちは増加の一途をたどって

いるのであり、この点からも保育への公的責任が今日的に益々重要なことは、疑う余地がありません。

一連の保育改悪や公立保育所の民営化は、待機児童解消、セーフティネットの拡充、安全で質の高い保育の確保といった喫緊の課題にとって大きな阻害要因となっているのであり、到底認められません。

特別支援学校については、二重行政解消のうたい文句によって、十分な議論なしにわずかな期間で府への移管が決められてしまいました。

教育委員会は、「大阪の特別支援教育のさらなる充実を目指す」と繰り返してきましたが、

充実どころか本市が実践してきた教育水準が、維持できるかどうかさえも危ぶまれることが、質疑を通じて明らかになったのであります。

例えば、特別支援学校において欠かせない存在である実習助手は、児童への医療的ケアをはじめ給食やトイレの介助などを行う専門職であり、その役割の重要性から本市においては標準法を上回る独自措置、すなわち加配を行って対応してきました。移管されて以後、府が万が一加配を行わなければ、光陽11名が2名に、西淀川8名が2名に、平野8名が2名に、東住吉9名が4名へと大幅に減らされてしまうことになります。

また学校維持運営費について、府市それぞれの肢体不自由校での予算配当額を比較すると、市に対する府の配当比率は45%と半分にも満たないのであり、府の水準をそのまま適用することになれば学校現場の混乱は避けられません。

これらの問題について理事者は、「府の動向を注視していく。府に働きかけている。」と繰り返すばかりで、ただただ府に要望することしかできない受け身の姿が明らかになりました。こんな無責任な状態のまま、府に先駆けて行ってきた実に100年以上もの歴史ある本市の特別支援教育に幕を閉じることは、断じて容認できません。本市の宝である特別支援学校を廃止する条例は、ただちに撤回すべきであります。

次に、経済対策についてです。

本市の経済状況は依然厳しく、大阪市景気観測調査における景況感を示す指標では、大企業のプラス27.5ポイントに対し、中小企業はマイナス16.6ポイントであり、家計消費支出も直近2年間は好転していないのであります。今こそ大阪経済の主役である中小企業と市民のくらしの応援を強めなければならないことは、この指標からも明らかです。

厳しい経済状況の中、多くの自治体が住宅リフォーム助成制度の実施をはじめ、懸命に様々な経済対策を講じているにも関わらず、本市における中小企業への具体的な支援策は、何ら見当たらないばかりか、逆に後退させているのであります。

例えば、中小企業の金融支援を行ってきた大阪市信用保証協会も、二重行政だとして拙速に統合されてしまいましたが、統合後、保証承諾件数は統合前の93.8%と早くも金融支援に影を落とし、統合までは各区役所で行われていた制度融資の受付も廃止されてしまいました。経済戦略局は、統合目的として「中小企業金融の円滑化」を挙げていますが、金融支援を後退させ身近な区役所の窓口までなくしてしまうことが、どうして「中小企業金融の円滑化」と言えるでしょうか。

これまで、市と府の両自治体で並行して支援を行ってきたとはいえ、まだ本市エリアにおいては他都市並みの支援水準には達しておらず、統合前の本市のように政令市に保証協会をもつ名古屋市と比較しても、市域の中小企業数に占める保証協会利用者の割合は、2012年度で名古屋市19.8%に対し、本市8.4%と10ポイント以上も大きく水をあけられているのが現状です。名古屋市は、市と県の両自治体で並行して金融支援を行うことで相乗効果を上げているのであり、本市の支援水準の低さが中小企業の経営環境を悪化させているのは明白であり、決して認められません。

最後に、不要不急の大型開発と成長戦略についてです。

市長が掲げる「日本の成長を牽引する東西二極の一極として、世界で存在感を発揮する都市」などという華々しい成長戦略の中身は、いずれも不要不急の大型開発や呼び込み型の古いものばかりであります。

まず、淀川左岸線二期事業については、今後自動車交通量が確実に減少し、淀川堤防を開削して道路建設するという全国でも行われたことのない事業に、多くの専門家から地震発生時の安全性に大きな問題があると指摘されており、左岸線延伸部も含めこれ以上の高速道路建設の必要性は全くありません。また、なにわ筋線についても、現在工事が進んでいるJR東海道線支線が地下化され新駅が設置されれば、関空へのアクセスが大幅に改善するのであり、そのあとになにわ筋線を整備してもわずか5分程度しか所要時間が短縮されないのであり、全く必要ありません。

加えて、カジノを含む統合型リゾート施設などとんでもありません。大型開発でインフラ整備さえ行えば、大阪が発展するなどという発想は「いつか来た道」に戻るだけなのであり、これでは大阪の成長にはつながりません。

市民のくらしと中小企業の支援こそが、大阪に真に必要な成長戦略なのであると申し上げ、以上反対討論と致します。