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市議団の実績

環境科学研究所の地方独立行政法人化に向けた

準備予算案に対する井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2016年5月25日

写真 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表しまして、議案第168号、平成28年度大阪市一般会計補正予算案、修正案に賛成、原案に反対する討論を行います。

 今回の補正予算案には、「環境科学研究所の地方独立行政法人化に向けた準備等」として、これまで3度否決されてきた議案が、本質的には何も変わっていないにもかかわらず、4度目に可決されたことを受け、2800万円が計上されています。

 しかし、環境科学研究所の地方独立行政法人化自体、公衆衛生行政への自治体の責任放棄であり、また、その「準備等」としている中身も、付帯決議の検討を後回しにし、平成29年4月からの地方独立行政法人化という無理なスケジュールに合わせようとするものであり、全く道理がなく、わが党は到底認める訳にはいきません。

 以下、具体に3点について反対理由を述べます。

 第一に、統合・独立行政法人化によって、研究所の機能強化を図ると言いながら、その中身が何ら示されておらず、統合・地方独立行政法人化には、そもそも大義がないからであります。

 これまで理事者は、「機能強化のため」と繰り返してきましたが、両研究所の現状にどんな支障や不都合があり、どこがどう二重行政なのか、公営のままでは機能強化・連携強化ははかれないのか、また市民・府民にとってのメリットとは一体何なのか、具体的なものは今に至るまでただの一つも示されていません。

 統合・地方独立行政法人化のための条例だけ、手練手管の限りを尽くして先に通してしまったうえで、「これから機能強化のための研究所施設のあり方を考えます」と補正予算を組むのでは、本末転倒であります。結局、機能強化のためなどではなく、両研究所を「二重行政」と無理やり決めつけ、統合をゴリ押ししたに過ぎないのであります。

 第二に、法人内部システム構築経費として、本市だけで1422万7千円、府市合わせれば2845万4千円もの予算が計上されることになるからであります。

 すでに平成25年度、府市合わせて5270万円ものシステム構築経費が計上されているのであり、システムは基本的に完成していたはずであります。にもかかわらず今回、マイナンバー制度への対応などを理由に、新たに予算計上されており、総額8000万円を超す予算が、なし崩し的に費やされようとしているのであります。

 しかも、本市としての予算計上は「分担金」においてであり、このシステム構築にあたっての業者契約は全て大阪府にお任せするということであります。元来、本市の内部情報システムについては全て、ICT戦略室が各局の予算要求を精査・点検するルールがありますが、「分担金」の名でそのチェックをすり抜けてしまっていることも明らかになりました。

 いつから大阪府と本市の財布は一つになったのでしょうか。大阪市廃止・分割構想は否決され大阪市は存続しているのであり、また、理事者は統合されても「本市の公衆衛生研究所に変わりはない」との答弁を繰り返してきましたが、「分担金」の名目でこんなズサンで不透明な会計処理を行うことは到底認められません。

 第三に、議会には当初「運営主体だけ統合する」として、いわゆる1法人2施設を目指すと説明して条例を可決させながら、条例可決後の4月19日に開かれた「副首都推進本部会議」では突如、公衆衛生研究所の旧健康科学センタービルへの移転作業を中止し、1法人1施設を目指すという方向性が確認されたからであります。

 仮に、1法人1施設という方向で突き進もうとすれば、環境科学研究所に両施設の機能を押し込めることは物理的に不可能であり、新たに施設を建設する以外になく、統合費用のとんでもない大幅増は避けられません。そしてまたここでも、システム構築経費のように、「分担金」という名目で、中身に関与できないまま、法外な負担をさせられることになるのではないでしょうか。

 環境科学研究所は、平成23年度に2億1700万円をかけ耐震工事を済ませていると共に、先般、環境科学研究センターを環境科学研究所の施設内に設置するという条例が3月29日に可決されたばかりであります。これをも白紙にし、本市の施設までつぶしてしまおうというのでしょうか。

 追加提案に加え一部修正と、理事者による、なりふり構わぬ必死の議会対策によって強行した「制度いじりの大改悪」から、わずか2ヶ月。単なる要綱設置にすぎない「副首都推進本部会議」の結論を優先させることなど、議会の良識が許そうはずもありません。

 以上、3つの点で反対理由を申し上げましたが、市民の生命と安全に関わる公衆衛生行政を「二重行政」と乱暴に決めつけ、その場しのぎの対策に明け暮れる硬直化した「一元行政」の重大な害悪が、本補正予算案にも改めてはっきりと現れました。

 地方独立行政法人法第2条には、「地方公共団体自身が直接実施する必要のないものを効率的・効果的に行う」と定義されており、自治体が直接実施しなければならない分野だからこそ、大阪以外の全ての地方公衆衛生研究所が自治体直営で運営されているのであります。

 道理も大義もない、環境科学研究所の地方独立行政法人化はやめ、本市直営に戻すべきなのであり、補正予算修正案に賛成、原案に反対を表明し討論とします。