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市工研・産技研の統合案件に反対する 小川議員の討論 |
小川陽太市会議員 2016年10月4日 |
研究所統合は強み損なう/大阪市議会 小川氏が反対討論 大阪市議会本会議が4日に開かれ、水道事業の民営化に向けた検討、準備経費9700万円などを盛り込んだ補正予算案と、市の大阪港、府の堺泉北港・阪南港を一元管理する議案、大阪市立工業研究所(市工研)と府立産業技術研究所(産技研)の統合に関する議案などを賛成多数で可決しました。 日本共産党は、補正予算案と、港湾一元化、市工研・産技研の統合に反対しました。 日本共産党の小川陽太議員が、市工研と産技研の統合関連議案の反対討論を行いました。 小川議員は、「市工研は電子材料や高分子、ナノ材料等の化学分野での素材、要素技術の開発を得意とし、産技研は金属、機械・加工技術分野で製品・製造開発支援を得意としている」と述べ、「それぞれが歴史を重ね、果たす役割や得意分野など違った組織風土を持つ両研究所を無理やり統合すれば、それぞれの強みまで損なってしまう」と指摘しました。 小川議員は、議会での両研究所統合議案の3度にわたる否決や関係者の声を全く聞かずにすすめている点を指摘し、「議論をすればするほど統合の必要はまったくないということは明白。それでも統合に突き進むのは、大阪市解体の『都構想』を実現しようとするためだ」と批判し、反対しました。 (2016年10月5日付しんぶん赤旗) 私は日本共産党大阪市会議員団を代表し、議案第209号「地方独立行政法人大阪市立工業研究所と地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所との新設合併に関する協議について」および議案第210号「大阪府市地方独立行政法人大阪産業技術研究所評価委員会の共同設置に関する協議について」に反対する討論を行います。 この両条例案は、地方独立行政法人大阪市立工業研究所と地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所を統合しようとするものです。市工研は、大阪の中小企業の技術支援を行い産業振興に大きく貢献してきました。特に受託研究は他に類を見ない市工研独自の強みとして、ものづくり大阪になくてはならない存在として歩んでまいりました。同様に産技研も分野役割を分担し合いながら発展してきたのです。にもかかわらず府市統合本部会議で、B項目「類似・重複する事務」とむりやり分類され、二重行政解消の掛け声の下、統合ありきで進められてきたものであり到底賛成できません。 以下、具体に指摘いたします。 第一に、議会として都市経済員会で真摯な議論を重ねた末、3度にわたり否決の明確な意思を示しているからです。議会は市民の負託を受けた行政のチェック機関・意思決定機関であります。この議会が三度否決した重みを市長は真摯かつ厳粛に受け止めるべきです。 第二は、それぞれが歴史を重ね、はたす役割や得意分野など違った組織風土を持つ両研究所をむりやり統合すれば、それぞれの強みまで損なってしまうからです。 市工研は、1916年に創設し100年の歴史を重ねてきました。第一次世界大戦が始まり、不況で原材料などの輸入が途絶える中、大阪の中小工業者たちが自分達で製品をつくろうと、当時の大阪市立工業学校に試験・分析・実験・研究の依頼が殺到し、これを受けて大阪市が市工研を作ることになりました。当時の議会でも大阪府に工業試験所があるのに市にも必要か、と質問があり、「市のやろうとすることと、府がやっていることは目的が多少異なっており、工業研究は範囲が広いので住み分けたらよい」と当時の関一助役が答えられたのです。 現在も市工研は森之宮にあり、電子材料や高分子、ナノ材料等の化学分野におきまして素材や要素技術の開発を得意としており、産技研は和泉市に位置し、金属、機械・加工技術の分野において製品・製造開発支援を得意としています。事業実績も平成27年度、受託研究は市工研が707件に対し、産技研は191件で、依頼試験分析では、市工研が1万1,611件に対し、産技研は1万9,978件となっており、分野や技術支援機能など役割分担がなされているのです。 今回、統合の効果の明確化だといって、相談利用申請のワンストップ化やビッグデータの活用、「スーパー公設試」といったものが統合メリットとして示されました。和泉での相談も森之宮にいて、テレビ電話で相談できるようになるといいますが、実際は実物の観察や専門の知見が必要であり、機能を有するそれぞれの研究所へ出向くことになります。簡易な相談は今でも電話を使って行われているのであり、統合しなければ生まれないメリットなどとはいえません。又、ビッグデータの活用として、今、両研究所に蓄積された情報をマッチングなどに活用するといっていますが、企業情報は高度な秘密が要求される物です。データベース化を心配する声が存在しており、機能強化とはとてもいえません。 統合法人の目標として「スーパー公設試」なるものがうたわれていますが、市工研の強みである受託研究は、大阪の産業にあった分野について、高度な専門性を蓄積し多くの企業から頼られる支援として発展してきました。統合すれば、機械加工や金属などの新たな分野でも受託研究の強化ができるとしています。しかし、どうやってそうするのか、具体案はなく、現状の人員・体制でやっていく、維持できるようにがんばるというばかりで、その分野に精通した、高度な専門性がもとめられる研究員・技術者の育成なしに、今以上の支援強化など成し遂げられようもないことは明白です。経費削減だけが目的という批判をかわすために「スーパー公設試」という絵を書いたに過ぎないわけです。 第三は、市工研の関係者の声を全く聞かずに進めていることです。 市工研創立の10年後に大阪工研協会が設立されました。設立の趣意書には「幸い大阪市には、大阪市立工業研究所があるから、これと密接の連絡を保ちて克く時勢に適応する工業の経営に資することは頗る有意義のことと考へ、大阪工研協会を設立した次第」とあり、工業の進歩発展、科学知識の普及、それらを担う人材育成などの事業を通して、市工研を補完し、大阪産業の発展のために90年の歴史を刻んできました。先日、大阪工研協会を訪ねると、「統合に関して大阪市から、まだ直接お話をお聞きしていない。」と言っていました。一番身近で市工研の研究を支え、その成果を多くの企業へと届ける役割をはたしてきたパートナーにも何の説明や意見聴取も行っておらず、もちろんその他の多くの利用企業の声も聴くことすらせずに進められてきたのがこの統合の実態です。 また、研究者・技術者・職員に対しても労働条件の変更などこれから説明するというのです。高度な研究を担い、市工研の積み上げてきた伝統を継承し、企業との信頼関係の要として働いてきた方達との話し合いも全くされていないのです。現場の声抜きに、企業支援強化になどなりようがありません。 結局、議論すればするほど、「森之宮、和泉どちらも残します。」「人員、財政支援は現状を維持します。」「それぞれのよさを伸ばすように取り組んでいきます。」など、現状を変えないというような答えが返ってくるだけであり、統合の必要などまったくないという事は明々白々です。それでも統合に突き進む意味は、ただただ大阪市解体の「都構想」のためだと申し上げ反対討論と致します。 (2016年10月4日) |