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市議団の実績

公営・準公営決算に反対

大阪市議会 瀬戸議員が討論

せと一正市会議員

2016年10月19日

写真
決算認定反対の討論をする瀬戸議員

大阪市議会本会議が19日開かれ、日本共産党の瀬戸一正議員が2015年度公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行いました。各決算は共産党以外の賛成多数で認定しました。

 瀬戸氏は、同決算に表れているのは、地下鉄、バス、水道、下水道の民営化を進め、中央市場も指定管理者制度にする、何でも民営化、すなわち自治体としての仕事を投げ捨てている姿だと批判しました。

 地下鉄については、今進められている津波浸水対策は地下街が津波によって水没することへの対策になっておらず、民営化後の計画にもないことや、可動式ホーム柵の設置も資金面で困難なことを指摘し、公営企業のままであれば市民にとって安全な地下鉄になると主張しました。
 バス事業では、地下鉄からの支援がなければ市民の願いに応えることはできないと民営化に反対しました。

 また、万博誘致に関連して、府の基本計画案では、会場建設費や運営費以外の関連事業費740億円は会場の夢洲の開発経費であり、ほとんどが大阪市の負担になると指摘。「万博誘致を理由にした夢洲目大開発、IRの誘致のための万博誘致には断固反対だ」と述べ、「市が今やるべきは、無人島への鉄道建設でなく、市民が待望する地下鉄今里筋線の延伸だ」と主張しました。

(2016年10月21日付しんぶん赤旗)


私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2015年度大阪市公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行います。

地方公営企業の目的は言うまでもなく、常に企業として経済性を発揮するとともに、何よりも公共の福祉の増進に努めることにあります。大阪市の各公営企業・準公営企業も、この目的に沿って、市民の切実な要望に応えて、安全で住みよい街づくりに寄与する事業として発展させなければなりません。 

ところが本決算に現れているのは、地下鉄もバスも水道も下水道も民営化を進める、中央市場も指定管理者制度にするという、何でも民営化、すなわち自治体としての仕事を投げ捨てている姿であります。このような決算は到底、容認することはできません。

はじめに地下鉄事業についてです。

平成25年に大阪府が南海トラフ巨大地震による浸水の範囲や深さを公表したことを受けて、交通局は25年秋に地下鉄30駅に対する100億円の津波浸水対策を決定し、30年度までに完成させるとして事業を進めています。しかしこの事業は、鉄の扉を横に6枚、32mもつなぐスライド方式のものなど、津波の濁流に耐えられるのか、防災の専門家や学識経験者など第三者による評価を受けたものではありません。また今進められている計画は地下街が津波によって水没することへの対策にはなっていません。梅田の地下鉄3駅が直結する地下街が水没してしまうことは交通局が津波対策を策定した後の27年3月に公表されております。地下街と東梅田駅や西梅田駅との通路はどうなっているかといえば現在、止水設備はまったくありません。交通局はコスト縮減で100億円の範囲に収まるなどと答弁されましたがずさんだと言わなければなりません。

さらに地下鉄の、淀川、寝屋川、大和川、神崎川などの河川氾濫に対する備えと対策についてです。決算質疑で、これらの河川が氾濫すれば、危機管理室がつくった水害ハザードマップから見て、津波浸水の30駅以外に55の駅が浸水想定エリアに位置することが明らかになりました。ところが交通局はこの55駅について対策が必要かどうかの調査すらしていません。また対策の必要性についても、200年に1回程度の雨であり、いまも河川整備が行われているので、それらを見て今後適切に判断していくなどと先延ばしにする答弁を行いました。しかし、水害ハザードマップが想定している大雨は平成12年に東海地方で実際にふった雨であり、名古屋市の一日雨量は428ミリに達しました。近年の異常気象を考えれば河川氾濫への備えは急がなければならないことは明らかです。現に危機管理室は、大阪市の東部を中心に水害ハザードマップに基づいて水害時避難ビルの指定を急ぎ、市民への周知にも力を入れているのであります。それなのに地下鉄駅の方は調査もしなければ対策も後回しする、これは直ちに是正しなければなりません。

ところが、民営化会社の「安全に対する投資計画」には、津波対策が平成30年度に完了することを前提にして、浸水対策への投資計画は一円もないのであります。これでは、安全・安心の地下鉄にならないことは明らかです。 

次に、可動式ホーム柵についてです。最も急がれる御堂筋線全駅に設置する261億円の事業が、天王寺と心斎橋の2駅に設置しただけでストップしています。交通局は輸送力の低下が確認されたのでこれを解決するために今後とも検討を続けていきたいとしていますが、 視覚障害者のみなさんの切実なる願いを考えれば、これは、車両に列車自動停止装置をつけて技術的困難を解決し、早期に全駅に設置するしかないことは明らかです。これに加えて、決算質疑で、残っている四ツ橋線、堺筋線、谷町線、中央線の4路線の全駅に可動式ホーム柵を設置するには少なくとも430億円が必要だということも明らかになりました。

ところが民営化会社の向こう10年間のキャッシュフローで見れば、銀行から借り入れする4700億円の返済に汲々としていて可動式ホーム柵建設のために新たな借金を起こすことは見込まれていません。また毎年の運転資金はたったの70億円しか残りません。さらに10年間の建設改良費の投資計画に可動式ホーム柵の設置は入っていないことも明らかになりました。これでは、可動式ホーム柵の設置は10年間まったくできないことになります。公営企業のままであれば、手持ち現金1500億円を超えているし、これに毎年400億円近くの黒字が積み上がる、金利の低い企業債も借りることができるなど、可動式ホーム柵の設置にとって資金的には断然、有利ではありませんか。どちらが市民にとって安全な地下鉄になるのか、いよいよ明瞭になりました。 

 市バスは、民営化に向けて、昼間1時間に1本しかない路線が3割になり、それにほとんど近い路線を加えれば85%にもなりました。地下鉄からの何らかの支援がなければ、市民の皆さんの願いに答えることはできないのは明らかです。

さらに、公営企業を議会の3分の2以上の賛成で廃止してしまえば、たとえ大阪市100%出資の株式会社として発足しても、また吉村市長が自分の任期中はやらないと言っても、その後は議会の2分の1の賛成で株式を売却することができ、従って完全民営化を阻止することはきわめて困難になる、完全民営化ということになれば地下鉄は市民がコントロールできなくなる、公共財とはいえなくなる、このことも明らかであります。

こうした点からも、民営化を指向した本決算は、到底容認できるものではありません。 

次に下水道事業です。浸水対策はまさに市民の命と財産を守る重要な事業です。大阪市は1981年以来、10年に一度の雨、1時間60ミリに対応する抜本的な対策を浸水対策の根幹だと位置づけ、9600億円を投じて、管渠55路線156kmを建設し、ポンプ能力を24ヶ所で毎秒700立法メートル引き上げることを目指してきました。ところがこの事業費が10年間で大きく減っていることが明らかになりました。平成17年度までの5年間の抜本対策は年200億円だったのに27年度までの5年間はたったの年40億円になっています。その結果、21世紀の早い時期に完成させたいと言っていたのに、今のペースなら完成は2085年になってしまいます。下水道部は、抜本対策費が減ったのは、近年、老朽管渠の改築更新の事業費が増えてきたためとしています。けれども、改築更新を含めて浸水対策費そのものもが10年の前に比べれば35%も減っています。異常気象の影響で年々豪雨が増えているなか、市民の皆さんに60ミリ対応は21世紀終わりまで待てとこういうことにはなりません。 

続いて港営事業であります。今回の決算質疑を通じて、万博の誘致を進めるならば、埋立事業会計が破綻の危機に直面する、このことが明らかになりました。

港湾局の埋立事業会計の平成37年度までの収支見通しは、今後毎年平均44億円の土地が売れると見込んでいます。しかしその売却が順調にいったとしても31年度の累積資金はわずか5億円にまで落ち込むという極めて厳しいものであります。参考:10月12日・公営準公営決算特別委員会での小川陽太議員の質疑資料

そんな中、大阪府が発表した万博の基本構想素案で、会場建設費や運営費以外に関連事業費740億円が示されました。その多くが会場の夢洲に係る開発経費であり、ほとんどが大阪市の負担になりかねないものであります。万博会場100㏊にはまだ水面のままの土地30㏊も含まれており、その埋立追加工事費50億円が示されていますが、それに、通常より14年前倒しで行うために必要となる工事費用60億円を加えれば、少なくとも新たに110億円の資金が必要になると見ておかなければなりません。

しかしそれだけではありません。地下鉄中央線の延伸および輸送力増強等として640億円があげられております。これはコスモスクウェア駅から夢洲までの一駅の区間の分であり、この区間の鉄道免許をもっているのは株式会社OTSです。この640億円のうち鉄道整備費用は540億円でありますけれども、OTSの従来の建設資金のフレームに従えば、埋立事業会計が212億円もの負担をする事になります。輸送力増強分100億円もこれまでのフレームでいくとなると埋立事業会計分は31億円になりますから、鉄道事業だけでも埋立事業会計の負担はざっと240億円、土地造成費の追加と合わせれば350億円の支出増になります。これでは埋立事業会計は回らなくなります。このような巨額の費用負担を一体誰がするのか、たずねても「これから協議する」という答弁に終始をしました。それもこれも大阪府が主導して進める夢洲での万博開催計画を、大阪市が無責任に受け入れようとしているからであり、こんなやり方は断じて認められません。 

 さらに夢洲への鉄道整備について、わが党委員が「万博のために一駅だけ延ばしても、万博終了後は採算の見通しがないのではないか」と質問したところ、吉村市長は「万博のためだけではなく、国際観光拠点の来場者の輸送にも対応するものとして整備する」と答弁されました。実はここに吉村市長や松井知事が夢洲に万博を誘致しようと言い出した本当の狙いがあります。

 国際観光拠点とは言うまでもなくカジノを中核とする統合型リゾートIRです。しかしIRを誘致すると言うことになれば、さらに夢洲への北まわりのルート、すなわちJR桜島線と北港テクノポート線をつなげる1700億円もの鉄道アクセスも欲しいということになるでしょう。そうなれば、夢洲での万博開催とIR誘致は、あの破綻し市財政にとって巨大な負の遺産となったWTC・ATCの二の舞になることはまちがいありません。万博誘致を理由にした夢洲巨大開発、IRの誘致を進めるための万博誘致、これには断固反対だと申しておきます。 

今大阪市がやるべきことは、無人島である夢洲への無駄な鉄道建設などではなく、市民の待望する今里筋線8号線の延伸に取り掛かることであります。質疑を通じて、今里筋線の井高野・今里間の乗降客が、開業翌年度の4万4273人から27年度は6万5035人に47%も増えていることが明らかになりました。鉄道が通っているということでマンションが建設され、街の賑わいがでてくるのであります。今里筋線を延伸しても赤字路線が増えるだけだと言いますが、長期的な街づくりの視野に立って地下鉄を整備してきたのが大阪市の歴史であります。今里筋線の整備に踏み出すべきだとの質問に対して、吉村市長は赤字になるからとこれを拒否しましたが、ここに、大阪市の町の発展や市民の地下鉄延伸の強い願いよりも大型開発を優先する、吉村市長の政治姿勢がはっきり現れているのであります。

 以上をもって、反対討論といたします。