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市民財産を大型開発に投入 大阪地下鉄民営化 山中市議が反対討論 維・公・自の多数で可決 | |
山中智子市会議員 2016年12月13日 | |
大阪市営地下鉄の民営化をすすめる基本方針案を、多くの市民が反対する中、維新、公明、自民は13日の市議会本会議で賛成多数で可決しました。民営化には、市議会で2度否決されている廃止条例案(議会の3分の2以上の賛成が必要)の可決が必要です。吉村洋文市長は、市民の声を無視して2018年4月の民営化をめざしています。 反対討論に立った日本共産党の山中智子市議は、「本基本方針案は、実に80有余年の歴史を誇る大阪市営地下鉄事業を廃止して、18年4月をめどに100%大阪市出資の株式会社化をはかろうとするもので、市民・利用者にとって喫緊の課題である可動式ホーム柵の全駅設置の凍結はじめ、8号線(今里筋線)延伸などの事実上のストップ等々、プラスになるどころかマイナスでしかない」と批判しました。 膨大な黒字を計上している地下鉄を民営にするのは、民営化した後、株式を上場して売却する、ただその一事以外にないと指摘して知事時代の橋下徹前市長が「地下鉄を売ってでも高速道路・淀川左岸線延伸部を建設する」と表明したことを紹介。議会質疑を通じて、吉村市長は、自分の任期中には株式を売却することはしないと表明しているが、「基本方針案は、民営化する以上、当然ながら株式上場をめざして、一気呵成(かせい)に突き進む内容となっている」と指摘しました。 山中議員は「民営化、株式会社化とは、市民の貴重な財産である地下鉄を売却し、無駄な大型開発へ投入する。まさに、そういう道に突き進むことに他ならない」と批判し、「このような元も子もなくなるようなことを、多くの市民は許さない」と反対しました。 (2016年12月14日付しんぶん赤旗) 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、「議案第103号 大阪市高速鉄道事業及び中量軌道事業の引き継ぎに関する基本方針の策定について」に反対の討論を行います。 本基本方針案は、実に80有余年の歴史を誇る大阪市営地下鉄事業を廃止して、2018年4月をめどに100%大阪市出資の株式会社化をはかろうとするものであり、市民・利用者にとって喫緊の課題である可動式ホーム柵の全駅設置の凍結はじめ、8号線延伸などの事実上のストップ等々、プラスになるどころかまったくのマイナスでしかありません。 断じて容認できません。 以下、具体的に指摘いたします。 周知のとおり大阪市営地下鉄事業は、1933年(昭和8年)、梅田−心斎橋間3qの開業以来、都市計画の一環として、市民の足の利便を図ることを目的に、市民の税金と乗客の料金とによって営々と築かれ営まれてまいりました。そして、今や営業キロ137.8q、1日当たり243万人の乗客をお運びし、2015年度決算では374億円もの経常利益をあげると同時に、資金面でも現金・預金1003億円、基金227億円をもつまでに発展しているのです。 いまほど、安全で安心、快適で利便性の高い地下鉄としての一層の発展が求められている時はありません。 御堂筋線はじめ全駅の可動式ホーム柵の設置、南海トラフの震災対策、8号線の延伸などバス・地下鉄の交通ネットワーク構築のさらなる前進、その一環としてのフィーダー系バスへの支援、地方公営企業法第18条2項の納付金による本市財政への貢献、等々、市民・利用者の願いに応えることです。 ところが、こともあろうに、最大45%の割り増しによる1006億円もの退職金を支払うなどして、手持ち資金をスッカラカンにするうえに、企業債4900億円を一括償還せざるを得ないことから、その肩代わりを市中銀行に依頼してまで、民営化するという訳です。とっても正気の沙汰とは思えません。 これが、仮に、赤字続きで、債務超過にまで陥ってどうにもならないというならまだしも、公営地下鉄で唯一累積赤字を解消し、1200億円もの利益剰余金が積み上がっているほどではありませんか。 なぜ膨大な黒字を計上している地下鉄を民営にするのか。 それは民営化した後、株式を上場して売却する、ただその一事以外にないことは明らかです。 2004年に民営化した東京メトロの場合は、5年後に株式上場し53.4%の政府保有株を売却する計画だった訳ですが、残り46.6%の株を保有する東京都が都営地下鉄との一体化の思惑から上場に反対しているため、伸び伸びになっているだけのことです。 ちなみに、東日本大震災の後につくられた復興財源確保法において、日本郵政株式、JT株式などとともに、この東京メトロの株式についても、その売却収入を復興財源に充てることとされているところです。 2011年に当時知事だった橋下氏が「地下鉄を売ってでも高速道路・淀川左岸線延伸部を建設する」と表明したことは余りにも有名な話です。その後、市長になるやただちにこれまでのいわゆる改革型公営企業から、民営化へと舵を切ったという流れになるわけです。 吉村市長は、この間の議論の中で自分の任期中には株式を売却することはしないと表明されていますが、現在のところ、それを保証できるのは今期の残り3年間にすぎないということではないでしょうか。もともとこの間にはとても上場はかなわないと思われますので、大阪市100%保有の株式である以上、売却しようにも実際上、その術がないということだと思います。 ですから吉村市長は、自分の任期中には売らないというのではなくて、売れないと答弁するのが至当だったと申し上げておきます。 いずれにしてもこの民営化基本方針案では、民営化する以上、当然ながら株式上場をめざして、一気呵成に突き進む内容となっているのです。 そしてそのことは、民営化後10年間の収支シミュレーションにはっきりと表れています。 ともかく、経常利益率をあげるために、また有利子負債を減らすために、利益につながらない可動式ホーム柵など一切やらない、8号線延伸など論外、必要最小限の建設改良は補助金と手持ち資金でまかなう。 収益増につながるホテル、賃貸マンション、いずれも余り大きなものではないようですが、それらの建設についても銀行借り入れを起こさずに実施するという、徹底ぶりです。 そうして、民営化5年目にして、経常利益率は関西5私鉄の平均に到達するとともに、営業損益と減価償却費の合計に対する有利子負債の倍率にいたっては、5私鉄のなかで最も小さい阪神よりも、さらに小さい水準にまで達することになっています。 つまり交通局民営化推進室は、東京メトロの当初計画同様、5年で株式上場を果たすことを目論んでいると推測できるわけです。 民営化、株式会社化とは、市民の貴重な財産である地下鉄を売却し、無駄な大型開発へ投入する。まさに、そういう道に突き進むことにほかなりません。 このような元も子もなくなるようなことを、多くの市民が許すはずがないと申し上げ、反対討論といたします。 (2016年12月13日) |