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大阪市の公営・準公営企業決算 民営化推進の姿鮮明 井上議員 反対討論 | |
井上ひろし市会議員 2017年10月25日 | |
大阪市議会本会議が25日開かれ、日本共産党の井上浩議員が2016年度公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論をしました。各決算は共産党以外の賛成多数で認定されました。 井上氏は、同決算に表れているのは、来年度から地下鉄・市バスを民営化し、その他の事業も民営化を推進するもので、大阪市の公的責任を大きく後退させる姿だと主張しました。 地下鉄については、相次ぐ視覚障害者の転落事故を受けて、国交省も全国の鉄道事業者も、本格的な転落事故防止対策に乗り出すなか、多額の費用を必要とする可動式ホーム柵の設置にブレーキをかけ、民営化の資金計画で河川氾濫浸水対策も見込んでいない、市の安全・災害対策を軽視する姿勢を批判。 万博誘致に関連して、土地造成・鉄道整備に多額の費用負担が計画され、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)についてもカジノ事業者の負担が不透明など、「ハイリスクで無謀な万博・IRの誘致が、『(無駄な大型開発の)いつか来た道』を再び歩むことは必至で、言語道断だ」と強調。「『くらしに役立つ事業』が遅れる一方で、カジノ万博など巨大開発は前のめりで推進するなど、市民の安全・安心を守るべき自治体本来の役割を投げ捨てる姿勢は到底認められない」とのべました。 (2017年10月27日付しんぶん赤旗) 決算認定に対する井上議員の反対討論 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2016年度大阪市公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行います。 地方公営企業は、それぞれの事業を通して「公共の福祉の増進」に努め、市民の切実な要望や需要にこたえ、安全で住みよい街づくりに寄与する事業として発展させなければなりません。 ところが、本決算にあらわれているのは、来年度から市民の公有財産である地下鉄・市バスを民営化すると共に、その他の事業についても民営化を推進し、大阪市の公的責任を大きく後退させようとする姿であり、到底認めることはできません。 以下、具体に指摘いたします。 はじめに地下鉄・バス事業についてです。 地下鉄御堂筋線への可動式ホーム柵の全駅設置方針が公表されたのは、2011年のことでした。ところが現在に至るまで、設置されたのは心斎橋駅と天王寺駅の2駅だけにとどまり、御堂筋線では2014年度から2016年度までの3年間で、93件の転落事故が起きているのであります。「欄干のない橋」の状態が続く限り、転落事故がなくなることはありません。 前市長が地下鉄の民営化を打ち出して以降、民営化に伴い資金繰りが汲々とすることから、交通局が、多額の費用を必要とするホーム柵の設置にブレーキをかけた結果に他ならないのであります。 2016年度は、8月に地下鉄銀座線で、10月に近畿日本鉄道大阪線で、視覚障害のある人が線路内に転落し、亡くなられる事故が相次いで発生したことを受け、国土交通省も全国の鉄道事業者も、本格的な転落事故防止対策へ乗り出したのであります。 しかしながら交通局は、2019年度中の谷町線東梅田駅と堺筋線堺筋本町駅の2駅へのホーム柵設置を公表したものの、最も転落事故が多発していることから、全駅設置を表明していた御堂筋線に対しては、後ろ向きのままなのであります。 ホーム柵設置の際不可欠である「自動列車運転装置」の、御堂筋線への採用に向け、2012年度から交通局は、運転保安システムの見直しに着手していたにも関わらず、御堂筋線にはいまだに採用されていないのであり、無責任極まりないと言わざるをえません。 また、地下鉄の災害対策である、河川氾濫浸水対策についても未着手のままであります。大阪市危機管理室が作成しているハザードマップによれば、河川氾濫浸水想定範囲内にある地下鉄駅は55駅ありますが、交通局は「引き続き、河川改修の取り組みを注視していく。」「最適な施設整備のあり方について、適切に判断していく。」と繰り返し、ハザードマップという科学的根拠に基づいて、河川氾濫浸水対策を進めていくという立場に全く立とうとしておりません。 2013年9月16日の台風18号の際、大阪市で初めて大和川流域の4行政区に避難勧告が発令されましたが、4年後の本年10月22日の台風21号の際にも2度目の避難勧告が発令される事態となりました。大和川では、氾濫に至る約1メートル手前で、幸いにも川の増水がとまりましたが、大和川の支流である西除(にしよけ)川は氾濫し、堺市浅香山には大きな被害が及んだところであります。河川氾濫の危機がわずか4年の間に2回もせまっているのであり、自然災害の脅威に対する認識が甘すぎると言わなければなりません。 地下鉄民営化の資金計画の中には、ホーム柵の設置費用も河川氾濫浸水対策も見込まれておらず、鉄道事業者にとって最大の使命である安全対策・災害対策を軽視する姿勢は、決して容認できないのであります。 バス事業については、市バス路線の大幅な廃止・縮小により、昼間1時間に1本しかない路線が3割となり、それに近い路線も加えると85%にものぼります。 このことは、地下鉄や一般会計からの支援がなければ、住民のニーズに応えることが、困難になることを端的に示していますが、地下鉄からの支援は完全に打ち切られるとともに、一般会計からの「バスネットワーク維持改善補助」も毎年減額され続け、2016年度は4億円にも満たない水準にまで引き下げられています。 「地下鉄・市バス一体の交通ネットワーク」を、土台から壊した影響は計り知れないのであり、到底認められません。 次に港営事業についてです。 大阪市はかつて、夢洲への2008年五輪招致を当て込み、「常住人口4万5千人、就業人口3万人の街」を計画し、さしあたりオリンピックの選手村にするためとして開発を進めていきましたが、ことごとく失敗しました。 同時に、WTCビルをはじめとしたベイエリア計画の破たんにより、当時1千億円あった都市整備基金も底をつき、3セク債に頼らざるを得ないなど、埋立会計は一転火の車となってしまいました。 昨年9月の埋立会計の長期収支見込では、2019年度までは企業債と3セク債の償還に年100億円近くも必要であり、2019年度の累積資金の残がわずか5億円にまで減少するため、売却予定に無かったC9の埠頭用地を売却するなど極めて異例な事態となっています。そうした深刻な事態をよそに、今また「夢よもう一度」とばかりに、夢洲を舞台に万博だIRだと、かつてと同じように巨大開発に前のめりになっています。 万博に関しては、土地造成基盤整備や鉄道整備について、埋立会計に多額の費用負担が計画されているとともに、IRに関しては、売却予定地が計画に組み込まれたため、売却自体できなくなりました。それに加え、民間カジノ事業者がどこまで負担するのかも全く不透明であるため、今年公表するはずであった長期収支見込が出せない状況に陥っているのであります。 埋立会計から見ても、ハイリスクで無謀な万博・IRの誘致が、「いつか来た道」を再び歩むことは必至なのであり、言語道断であります。 続いて、水道事業についてです。 市長は、水道事業について民営化を断念していませんが、地方自治体の長として、取り組むべき課題は民営化などではありません。過剰給水設備の縮小によるムダの削減と老朽管渠の更新、災害対策、低廉で良質な水の 提供などにこそ真摯に取り組まなければならないのであり、これらは公営でこそなし得る課題なのであります。 とりわけ、南海トラフ巨大地震等、大地震に備えて、最も重要な生活インフラである水の確保に、重要な役割を果たすのが耐震管であり、管路の耐震化は緊急の課題であることは言うまでもありません。ところが2016年度末現在で、耐震化率は、27.6%と極端に遅れています。 管路の耐震化については、特段のペースアップが必要であり、今こそ「公(おおやけ)」の役割を明確にして、市民のための安全・安心の給水に専念すべきであると申し上げておきます。 最後に、下水道事業についてです。 全国的な異常気象により、近年多発しているゲリラ豪雨や、台風による集中豪雨などによる浸水被害は、深刻さを増す一方です。 大阪市においても、抜本的な浸水対策が必要ですが、「雨水対策整備率」は8割に満たない状況であり、2014年度から2016年度の3年間の進ちょく率は、わずか0.2% と、遅々として進んでおりません。 また、2003年度に下水道法施行令が改正されたことを受け、大阪市においても合流式下水道改善事業が始まりましたが、建設局は2023年度末までの達成を目標としながら、2016年度末時点で約54%にとどまっています。 2010年度の到達が、51%だったことから、6年間でわずか3ポイントしか進捗していないのであり、今後もこのペースで推移したとすれば、目標達成期限である2023年度末で、60%にも届かないということになります。 合流式下水道で整備された区域では、雨天時に下水の一部が未処理で河川等に放流されるため、放流先の水質保全上の問題や公衆衛生面での影響が懸念されることから、緊急かつ確実な対策が求められているのであります。 大阪市は下水道事業についても、上下分離方式の民営化にばかり熱中していますが、その狙いは人員の削減や経営の効率化であり、浸水対策や合流式下水道改善事業をはじめ、下水道事業の公的役割はますます重要になっているのであります。 総じて「くらしに役立つ事業」が遅れる一方で、カジノ万博などの巨大開発は前のめりで推進するなど、市民の安全・安心を守るべき地方自治体本来の役割を投げ捨てる姿勢は、到底認めることができません。 以上、反対討論といたします。 |