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市民いじめ決算反対 2016年度大阪市一般会計決算に対する 小川議員の反対討論 |
小川陽太市会議員 2017年11月22日 |
大阪市議会本会議が22日に開かれ、日本共産党の小川陽太議員は2016年度一般会計等の決算認定に反対する討論を行いました。決算は共産党以外の賛成多数で認定しました。 小川議員は、決算は、決着済みの「大阪都」構想をめぐり空疎な議論に明け暮れ、何でも民営化、府市統合を推進し、成長戦略の中身は大型開発への回帰、市民いじめの市政改革プラン押し付けの継続などであり、温かい福祉施策は追いやられていると批判しました。 「副首都」のためとして、大阪市此花区の夢洲(ゆめしま)に府市がカジノ誘致・万博誘致を推進。しかも、松井一郎知事が主導して、大阪市が所管する夢洲で行われており、これこそ「都」構想がめざす、大阪市の権限・財源を奪って「1人の指揮官」のもと好き勝手に無駄な大型開発に突き進む構図だと指摘。「刑法で禁止されているカジノ誘致など自治体が血眼になってやる仕事ではない」と告発しました。 また、来年度実施の国民健康保険「都道府県化」に伴い、負担軽減のための一般会計からの任意繰り入れを認めない大阪府の意向に沿った対応をするとしている吉村洋文市長を「保険者の立場を投げ捨て、大阪府のいいなりになって大阪市民に高い保険料を押し付けようとするものだ」と批判しました。 (2017年11月24日付しんぶん赤旗) 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2016年度大阪市一般会計決算認定に反対の討論を行います。 アベノミクスで株価が上がり、景気はいいと喧伝されていますが、実際は非正規雇用が広がり実質賃金は下がり続け、度重なる社会保障費削減で高齢世帯はじめ社会的弱者から暮らしの安心が奪われ、市民生活は苦しさを増しています。こんな時こそ、自治体の本旨である福祉の増進を図り、市民のくらし守る大阪市の役割が求められているのです。 しかしながら、本決算に現れているのは、決着済みの都構想をめぐり空疎な議論に明け暮れ、なんでも民営化、府市統合の推進、成長戦略の中身は大型開発への回帰、市民いじめの市政改革プラン押し付けの継続などであり、あたたかい福祉施策は追いやられているのです。到底認められません。 以下具体に指摘いたします。 第一は、民意を無視し、大阪市廃止・分割である「都構想」実現のために、総合区を利用し、市民を欺むく政治を行っている点についてです。 2015年5月17日に住民投票でもって否決、都構想に決着がつきました。しかし、吉村市長はW選挙の勝利で民意を得たといなおり、「副首都にふさわしい新たな大都市制度」が必要といって、「総合区」を出汁に法定協議会を設置。昨年は、知事まで参加し、特別区の優位性をアピールして、「都構想」再挑戦の言い訳のような「総合区・特別区説明会」を開きました。市長は今年9月に支持者の集まりで「総合区はカムフラージュ」といって、市民を欺いている事を告白しましたが、両立し得ない方針を天秤にかけ市民を混乱させ、またぞろ「制度いじり」に貴重なエネルギー・時間・税金をかけることは許されません。 第二の理由は、副首都のためといって、失敗を繰り返した大型開発が目白押しとなっている問題です。 副首都としての発展を遂げる為の経済成長戦略として、カジノ誘致・万博誘致を掲げています。大阪府・市・経済界のまとめた「夢洲まちづくり構想」では、2025年までの第一期の開発でカジノを核とした統合型リゾートIRを整備し、年間1500万人を集客するとしています。IR基本構想では「世界中に類を見ない新しいエンターテイメント」を造るといっていますが、収益でも集客でも核となるのはカジノ客である事は明白です。カジノ推進会議の谷岡大阪商業大学学長は、「カジノのターゲットは外国人観光客ではなく、10万円から100万円を自由に使える日本人」と語っており、カジノは国際観光拠点などにはなりえません。何より、カジノ収益が大きくなるほど、ギャンブル依存症など深刻な問題がおきる心配があり、国のIR推進会議は「世界最高水準のカジノ規制」を掲げました。ところが大阪府・市は「入場制限はいらない。カジノ面積制限に反対」という有様です。 夢洲への鉄道建設540億円などカジノIRの為の基盤整備への市民負担も不透明なままであり、今後の開発計画にしても、カジノ誘致以外、どんな施設をつくるのかなど、中身はまったくのブラックボックスとなっています。しかも、松井知事が主導して、大阪市が所管する夢洲でこんな事が繰り広げられているわけで、これこそ「都構想」がめざす、大阪市の権限・財源を奪って、一人の指揮官の下で好き勝手に無駄な大型開発に突き進む構図そのものであります。刑法で禁止された賭博であるカジノ誘致などおよそ地方自治体が血眼になってやる仕事でなく、断じて認められないと申し上げます。 そして、副首都に必要な都市機能の充実として掲げられているのが、淀川左岸線延伸部などの高速道路と新たな地下鉄道なにわ筋線の建設です。 70mの大深度で建設を予定している淀川左岸線延伸部は豊崎・門真間8.7キロで総事業費は4000億円、実に1kmあたり460億円と巨額です。 大阪市は淀川左岸線2期事業とあわせて「大阪都市再生環状道路」といい、市内交通の渋滞緩和等のために必要な道路といいますが、現在、大阪市内の幹線道路の交通状況は、1988年のピーク時と比べ、2015年の交通センサスでは25%も減少しています。人も車も減少するのに、これほどの税金を使って新たな高速道路をつくる必要はありません。 また、新たな地下鉄道なにわ筋線は、関空までのアクセス強化のためとして、梅田からなんばまで7.4キロメートルを3300億円かける巨大事業です。1kmあたりの建設費は446億円で、なにわ筋線は相当高額な路線であります。しかも、このなにわ筋線が出来ても、関空―梅田間の所要時間短縮はわずか5分にしかなりません。海外からの観光客を増やすためといいますが、見込んでいる利用客20万人のうち、関空客は実績以上に多く見積もっても1割程度、国交省の最初の見立ては、わずか1.4万人でしかありません。見込んでいる乗客のほとんどが、地下鉄御堂筋線や四つ橋線からの転換に過ぎない路線であり、既に交通至便な大阪市の中心部にさらに大型投資を行おうとしているのです。まさに不要不急の大型開発の推進であり断じて認められません。 反対理由の第3は、無駄で無謀な大型開発に血道をあげる一方で、一番大事な、安全・安心や潤いのある街づくりなどへの投資を減らして、市民にとって住みにくい街にしているからです。 まずは市営住宅についてです。私の地元平野区には多くの市営住宅が立ち並んでいますが、どこに行っても高齢化のために、「掃除する人が減って大変。植木の手入れが出来ないからすべて抜いてほしい。75才で若いから役員せなあかんで、といわれる、もう限界。」など、自治会活動や自主管理する意欲の低下など深刻なコミュニティの崩壊に直面しています。 2015年度に策定された大阪市営住宅ストック総合活用計画は、今後10年間の住宅施策の方針がしめされ、前回に引き続き今回の計画でも「コミュニティの再生」が掲げられています。しかし、市営住宅における60歳以上の割合は、2007度末45%から2016年度末では52%と7ポイント上昇、大阪市全体の2016年度末の31%、10年間の上昇率2ポイントと比べても、格段に高齢化が進んでいます。 原因はストック活用総合計画で、市営住宅の建て替えの際、従前居住者分しか、建て替えない事とし住宅の管理戸数を削減し、新規募集を行わないからです。しかし、厳しい経済情勢のもと市営住宅の子育て世帯むけの応募は、2014年度2,228件から2016年度2,781件へと大幅に増加しており、市営住宅戸数削減から転換し、現役層の入居を促進する事が求められているのです。 また、低所得者むけの福祉的役割を強調していながら、約11万戸の市営住宅のうち、浴槽が設置されていない住宅が約6万戸もあり、「浴槽をつけるお金がないから。」と、倍率の高い浴槽設備のある住宅に応募せざるを得ない人が多くいます。銭湯がない地域もひろがっており、浴槽設置は急務です。最低居住水準もみたさず、空戸数全体の約7割にもなる、浴槽のない住宅を放置したままなどということは認められません。 また、都市公園の整備もひどいものであります。用地取得と整備を合わせた公園事業費は2002年度予算では160億円あったのに2016度にはわずか31億円と激減しています。背景には、今世紀の中葉までに市民一人当たり6uの公園整備をめざすとしていた「大阪市緑の基本計画」を2013年度に、5uに減らした上、達成時期の目標まで消す新しい基本計画に大改悪したことがあります。1u減らすということは260万平方メートルの公園整備を放棄することです。しかもそれすら今のペースで行けば100年先の22世紀まで延ばしたことになります。 それだけではありません。決算委員会では、2011年東日本大震災での電力不足を契機に止めて来た公園のせせらぎ等の96カ所の水景施設のうち90施設を原則廃止するということが明らかになりました。全国の政令市で東日本大震災を口実に公園の水景施設を廃止するなんて暴挙はどこも行っておらず、このようなことは断じて認められないと申し上げておきます。 住民の命を守る堤防の耐震化整備について申し上げます。 東日本大震災を経験し、近い将来必ず来るといわれている南海トラフ巨大地震に備え、大阪市は2014年度からの堤防の耐震化計画をたてました。その中で、短期目標として2018年度までに延長4.2kmの堤防の耐震化を行う事を定めました。ところが2016年度までに整備された実施延長はわずか1kmにとどまっており、この3年間の予算93.3億円に対して、確保された財源は46億円で49.3%にとどまっており、結果、計画期間5年のうち3年経過しましたが、工事の進捗は4分の1にも届いていません。市民の生命・財産をまもる事業を後回しにしている事は見逃せません。 第4に、市民のくらし・福祉・教育についてです。 まず、住吉市民病院についてであります。市会の付帯決議に基づいて行った3度目の民間病院公募が失敗しました。吉村市長は11月9日、この結果を受けてなお「民間病院の誘致は最後までやりきりたい」と発言しましたが、3度目の公募失敗は「住吉市民病院の産科・小児科の機能を存続させる民間病院の誘致」などは不可能だったということであり、「ないものねだり」だったと言うことではないでしょうか。 そもそも、近くにあっても大きく機能が違う府立急性期総合医療センターと住吉市民病院を二重行政だと決め付けて、無理矢理統合しようとしたことが間違いだったのであります。吉村市長の今なすべきことはこの過ちを認めて、廃止する住吉市民病院の跡地にその機能を引き継ぐ病院を公立で建設するという「現実的で実現可能な」道に踏み出すことであり、それが市民の不安に答える最善の策だと申しあげておきます。 国保法改正によって来年4月から国民健康保険が都道府県単位に一本化されますが、大阪府は「統一保険料」導入を目指しています。10月の時点で、2017年度の本市の標準保険料率は、2016年度より6.74%高い一人当たり124,584円になると示しました。なぜ高くなるのかといえば、大阪府が、各市町村の任意繰り入れは認めないとして、大阪市が2017年度に任意繰り入れをしている136億円を除いて計算しているからです。大阪府はこの任意繰入は6年で解消するべきだとしています。 これに対して決算特別委員会で我が党委員が「負担軽減の為の任意繰入を継続し、大阪府に対してこれを認めるよう要請すべきだ」と質したのに対して吉村市長は「府の考えにそった対応をする事が必要だ」と答弁されましたが、これは、保険料を最終的に決めるのは保険者である大阪市であるという基本の立場を投げ捨てて、大阪府の言いなりになって大阪市民に高い保険料を押し付けようとするものであり、到底、認めることは出来ません。 最後に、教育について申し上げます。 大阪市は、国際教育課程の中高一貫教育校を設置し、その運営を民間に任せる公設民営、「国際バカロレア認定国際学校」の設置を進めていますが、全国的にも極めて異例なものであります。 学校配置の適正化だとして、公立小中学校の統廃合は強行に進める一方で、公設民営学校は公費で設置し、それを民間に運営させようというものであり、公教育のあり方そのものが問われる事態となっています。 公教育は、「公(おおやけ)」が全責任を担うのが当然の姿であり、大阪市が今やるべきは、建設費だけで約60億円もかかる「国際バカロレア認定国際学校」の設置などではなく、学校維持運営費や就学援助費の増額、少人数学級の推進、給食費の無償化など、全ての子供たちの成長・発達を保障するための教育条件の改善であると申し上げ、討論といたします。 |