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市議団の実績

大阪市住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例案

一部を修正する条例案に対する小川議員の賛成討論

小川陽太市会議員

2018年3月27日

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表し、ただいま上程されました議案第19号「大阪市住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例案」について、わが党議員団提案の修正案に賛成、原案に反対の討論をおこないます。

 住宅宿泊事業法は、旅館業法では違法とされている「民泊」を合法化するためのものです。

現在、大阪市には全国で一番多くの民泊が存在し、大阪市では既に国家戦略特区法にもとづく「特区民泊」も導入されていますが、いまなお、およそ1万件を超える違法民泊があるといわれております。昼夜を問わず旅行者が居住空間に出入りすることにより、日々の生活環境の悪化や防災面での心配など市民の民泊に対する不安の声は後を絶ちません。

そんな中、今年223日に東成区と西成区の違法民泊を利用していた旅行者が、日本人女性を殺害、死体遺棄したとされる事件まで発生し、住民に大きな衝撃を与えました。いま、大阪市に求められているのは、自治体として「市民の安全と生活環境を守る」このことを最優先にした条例を作ることです。しかし、本条例案は、なんら、市民が安心できるものとなっておらず、認めることはできません。

 以下、具体に理由を申し上げます。

第一は、管理者不在で運営を認めるなど、安心安全のルールには程遠いものだからであります。

本条例案は修正によって、「周辺住民から苦情または問い合わせがあったときには、速やかに当該届出住宅に赴き」対応する事が盛り込まれました。あくまで施設には管理者不在が前提となっています。たとえば、火災発生の緊急時には、ハウスルールを多言語で掲示しているなど適法民泊であっても、火災発生の通報や避難誘導などを「宿泊客」や近隣住民に頼らざるを得ないことになります。

宿泊者にしても、緊急時に異国で適切な行動を取ることは困難であろう事は、想像に難くなく、大きな混乱を招きます。「病気等の緊急時の対応」「近隣住民からの苦情対応」「犯罪の防止」「パスポートや宿泊人数の確認」など、予想される様々な課題に対応する上でも「宿泊者の滞在中は管理者常駐を義務付ける」ことが適正な民泊運営をおこなわせる担保となるのではないでしょうか。

「適法にするために余り規制はしてはいけない」という姿勢で、安全のルールをほとんど課さない「届出」だけの民泊があちこちにできていけば、市民の不安は増大し、健全な市民生活を送る事ができない町になってしまいます。安全の為のルールがまったく不十分な本条例案は認められません。せめてわが党が提案する、制限を設けるべきであります。 

第二に、平穏な市民生活を確保する為に認められている自治体の裁量、区域と期間の制限を大阪市はまともに使おうとしていない点です。

 兵庫県と神戸市では、「住居専用地域」「学校や児童福祉施設の周辺100m以内の区域」をすべての期間実施できないこととする」としております。その理由として「住居専用地域の良好な住居の環境を維持保全」「子供の静穏な教育環境、登下校時の安全確保」と説明しています。

 当初は区域と期間の制限はしないとしていた吉村市長は、議会各派からの指摘をうけ、区域の制限を設けると修正をしたわけでありますが、「住居専用地域であっても4m道路に接しているところは除く」というものであり、住居専用地域で除外する区域を設けるなど市民の理解は得られません。

 市長は、結局できるだけ狭い範囲の制限にしたいとしているだけで、修正理由の「生活環境の悪化防止や安全安心の確保の為」区域と期間の制限を追加するという説明は、まさに市民を欺くようなやり方だと申し上げたい。

 住宅宿泊事業の実施においては、法第18条で区域と期間を自治体が制限する事が認められているのであり、それを活用して、市民の生活環境を最大限守るのが大阪市の役割であります。わが党修正案にあるように、密集市街地や緊急車両が入れない狭あい道路地域、中学校や保育所等を区域指定するのは当然なのであります。

最後は、市民生活の安心の立場ではなく、事業者目線で新法民泊を進めている点であります。

 吉村市長は「民泊を悪者にしている」「過度な負担をさせてはならない」と答弁をされています。しかし、違法民泊での事件やトラブル、適法となっている特区民泊でも市民からの不安の声は後をたちません。届出だけの住宅宿泊事業については、より厳格な規制を求めることは市民からすれば当然の願いです。

 近隣住民に対して、事前の事業内容の丁寧な説明と合わせて、「近隣住民からの同意を確認することを義務付ける」ことで、少なくとも市民の理解と合意抜きに住宅宿泊事業はできない、と、大阪市での民泊像を示すべきです。 

市民にとっても旅行者にとっても安心できるルールを確立するとともに、まずやるべきは、違法民泊の実態を調査し、違法業者の取り締まりを強化・徹底する事であると申し上げ、討論といたします。