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大阪市議会 市の公的責任が後退 公営・準公営企業決算認定 小川氏が反対 | |
小川陽太市会議員 2018年10月16日 | |
大阪市議会本会議が16日開かれ、日本共産党の小川陽太議員が2017年度公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行いました。各決算は共産党以外の賛成多数で認定しました。 小川氏は、同決算に表れているのは、市民の公有財産である地下鉄・市バスを民営化し、水道や下水道などその他の事業も民営化にとりつかれ、大阪市の公的責任を大きく後退させようとする姿だと批判しました。 小川氏は、万博やカジノを中核とする統合型リゾート(IR)を口実にした人工島・夢洲(ゆめしま)での大型開発について、開発を行う埋め立て会計は、企業債残高が1243億円にものぼり、今年度予算でも85億円の償還を必要とするなか、IR用地の基盤整備や土地造成の追加、万博のための急速埋め立て、新たな地下鉄建設など、ここ数年で500億円以上を負担することになると指摘。「夢洲開発は『巨大な負の遺産』となるのは明らかで、埋め立て会計から見てもリスクが高い無謀な万博・IRカジノ誘致は認められない」と主張しました。 また、水道事業に関し、市が震度7の地震に耐えうる水道管の耐震化が34年先になるとしていることについて、「必要な技術職員を大幅に増やして、配水管の改築更新など水道施設の耐震化をすすめるべきだ」と強調しました。 (2018年10月17日付しんぶん赤旗) 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2017年度大阪市公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行います。 地方公営企業の本来の目的は「公共の福祉の増進」であり、市民の切実な要望や需要にこたえ、安全で住みよい街づくりに寄与する事業として発展させなければなりません。大阪市の公営企業も、例えば地下鉄・バス事業は、長年にわたって市民の身近な足を守る役割を果たすとともに、住みよい大阪の街づくりにも大きく寄与してきました。水道事業も、政令市の中で最も低廉な水を市民に提供してきました。 ところが、本決算にあらわれているのは、市民の公有財産である地下鉄・バス事業を民営化し、水道や下水道など他の事業についても民営化にとりつかれ、大阪市の公的責任を大きく後退させようという姿であり、到底認めることはできません。 以下、具体に指摘いたします。 港営事業についてであります。 大阪市内、最大瞬間風速47.4mと強烈な暴風を吹き荒らした台風21号、夢洲では、最大瞬間風速60m、観測史上最高のOP4.59mにおよぶ高潮を発生させ、これによりこれまでの常識をはるかに超える被害がもたらされました。公園や道路では何千本もの木々がなぎ倒され、関西空港は冠水し機能不全となり、ベイエリアの咲洲では駐車していた車がコロコロと転がり、夢洲の護岸は倒壊、11mまで盛土した地盤が、てっぺんまであと少しの高さまで、波により削り取られていました。今後、気候変動の影響でより強力な台風が発生する確率が高まっていると指摘されています。台風だけではありません、今後30年間に70〜80%の確率で南海トラフ巨大地震が起きるといわれています。それによって発生する津波の圧力、エネルギーは半端ではなく、引き波もさらに威力が大きいといわれています。 また、液状化についてもこれまで大阪市は「夢洲は液状化しない」と説明してきましたが、大阪府の予想ではIR用地あたりも液状化すると指摘されており、被害想定についても再検討が必要という事が浮き彫りになりました。今回、夢洲などベイエリアにある人工島のリスクが顕在化したにもかかわらず、吉村市長はこの実態を無視して、夢洲へ万博を誘致したいがために、まともな検証もしないで「夢洲は安全」と世界で触れ回っていると報道がありましたが、あまりにも無責任だといわなければなりません。 その夢洲はかつて、2008年大阪オリンピック誘致を当て込み、「常住人口4万5千人、就業人口3万人の街」を計画、さしあたりオリンピック選手村にするとして開発をすすめましたが、誘致に失敗、計画は破綻しました。そこに今再び、「夢洲まちづくり構想」を打ち出し、万博を出汁に、IRカジノを誘致して、さらなる巨大開発へ踏み出そうとしているのです。 しかし、肝心の埋立て会計は「火の車」です。 企業債残高は1243億円にものぼり、2018年度予算では、85億円の起債償還が必要ですが、約22億円の単年度資金不足が見込まれていたのが現状です。そのような中で、今後、2024年にIR開業をめざす1期事業で、用地の基盤整備だけで70億円、それに加えてさらに土地造成費用の追加が見込まれています。2期事業は2025年に万博誘致のために急速埋立て50億円、土地造成と基盤整備で110億円、少なくとも160億円必要で、IR誘致に必須であります夢洲―咲洲間の新たな地下鉄建設に202億円、これらを合わすとこれからの数年で、埋立て会計の負担すべき資金は500億円を上回ります。 1期事業のIR用地70haの土地について、民間カジノ事業者がどれだけ負担するのかさえいまだに見通せず、さらに、万博跡地の2期事業用地については、1期カジノで1500万人に加え、2期ではさらに1200万人が来るリゾート施設を誘致すると計画していますが、雲をつかむような話しでしかなく、昨年公表するはずだった大阪港埋立て事業収支シミュレーションが出せない状況に陥っているにもかかわらず、巨額の投資計画を先行させようなど言語道断です。 IRカジノ・万博を口実にした夢洲開発は「巨大な負の遺産」となる事は明らかであります。ギャンブル依存症や犯罪の誘発等の心配も根強く、カジノ反対は一貫した世論の多数です。市民の立場からはもちろん、埋立て会計から見てもリスクが高い無謀な万博・IRカジノ誘致は、断じて認められません。 次に水道事業についてです。 6月18日に起きた大阪北部地震を契機に、大阪市水道の老朽管割合が44.9%と、主要都市平均17.0%と比べてダントツに高いことに、多くの市民が不安を抱いています。理事者は「管路の使用年数が40年以上であることと耐震性の評価は一致するものではない」、「耐震性は管の特性や地盤を踏まえて判断すべきだ」と言います。しかし法律でなぜ水道管の耐用年数を40年に定めているかと言うと、それを超えれば腐食リスクが高まるからです。この意味からも老朽管を放置することは許されません。 水道局は今年度から、東日本大震災の被災事例から震度6程度の地震に耐えうる管路として、国が提唱した「耐震適合管」という新しい考え方に立って、「管路耐震化 緊急10カ年計画」を進めていて、これが終われば「耐震適合管」は管路延長の99%になると説明してきました。しかし質疑を通じて、この管路延長には、私道に布設されている塩化ビニール製の配水管440kmが除かれていることが明らかになりました。 耐震性に劣る塩化ビニール管を440kmも残して、震度6クラスの南海トラフ巨大地震への備えができたとは到底言えません。 また、私たちが備えなければならないのは南海トラフ巨大地震だけではありません。本市の地域防災計画は、震度7クラスの上町断層による直下型地震が起きれば水道の断水率は77%、断水人口は207万人に達すると想定しています。震度7に耐えうる「耐震管」はまだ管路総延長の約29%です。「緊急10カ年計画」を進めても「耐震管」は10年先に48%にしかなりません。いつになったら全てが「耐震管」になるのか。水道局は新しい方式でスピードアップしても今から34年先になるとしています。しかし震度7の地震の被害想定までしておいて、後になって「想定外であった」と言うことは到底許されません。34年もかけるのではなく、抜本的に早める計画を持つべきだと指摘しておきます。 同時に、管路更新のペースを今の2倍にするには民間に頼るしかないとする水道局の立場は、公営企業の意義と役割を軽んじるものにほかなりません。必要な技術職員は大幅に増やして、配水管の改築更新など水道施設の耐震化を進めるべきだと申し上げておきます。 次に下水道事業についてです。 本市の下水道管渠の法定耐用年数50年を経過した老朽化の割合はこれも31.9%に達しており、東京都および人口150万人以上の政令市の平均が11.9%と比べてダントツに高いものです。建設局は今進めている老朽管対策をしても10年後に老朽管率は52%に上昇するとしており、本市の老朽化対策は大変遅れていると言わなければなりません。 建設局は、10年で400kmの老朽化対策を行えば、今110kmある「道路の陥没リスクが非常に高い状態にある管渠」や「劣化が進行し早期対策が必要な管渠」を、10年先にも同じ110kmの距離に抑えることができるとしています。しかし老朽管の割合が1.6倍にもなるのになぜ同じ距離に留まるのか、まったく甘すぎる見通しだと言わなければなりません。 また、避難路や緊急物資輸送路や広域避難広場や学校等から下水処理場にいたる下水管等など約2000kmの「重要な幹線等」のうち、国の基準で見て、南海トラフ巨大地震の震度6レベルの地震に耐えられる耐震化が済んでいるのは720kmにしかすぎず、残り1260kmをいつまでに耐震化するのかの目標と計画を建設局はもっていません。これでは到底、万が一の時の下水道の使命は果たせないと申し上げておきます。 最後に、本決算をもって、長きに渡り営んできた市営交通事業の幕を閉じました。まことに残念でなりません。民営化されたとは言え、市民の足の確保や釣り合いの取れたまちづくりへの貢献など果たすべき公共的役割が変わる訳ではありません。それが大阪メトロの使命であると申し上げておきます。 以上、反対討論といたします。 |