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市議団の実績

2019年度大阪市一般会計予算案に対する

井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2019年3月13日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2019年度大阪市一般会計予算案等に対する組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論を行います。

まず最初に、予算議会の最中に辞職を表明するという吉村市長の無責任な政治姿勢について、これは公権力の私物化、乱用であり、全く市民の理解を得られるものではありません。わが党は到底容認できない旨申し上げておきます。

 さて、大阪市においては、地方自治の本旨に基づき、その財源・権限を市民の立場に立って生かし、住民福祉の向上に努めるとともに、災害に強い安全・安心のまちづくりを推進するなど、市民に寄り添う姿勢こそが求められているのであります。

 ところが、市長が提案した予算案は、市民生活を守るべき自治体の責務をまっとうしているとは到底言えず、その一方で、都構想を巡る市民不在の策動に明け暮れ、カジノ誘致をはじめとする大型開発には前のめりになるとともに、引き続き何でも民営化の路線や、施設の統廃合を強行する中身であり、到底認められません。以下、具体に指摘致します。 

 第一は、市民のくらしや教育についてであります。

 まず、国民健康保険についてです。

 本市の国保会計は、後期高齢者医療制度が実施された2008年度から、ほぼ毎年単年度黒字となっており、10年間の黒字額の合計は、401億9千万円にものぼります。

 ところが、吉村市政においては3%、前市政時代には4%の値上げが強行されており、7年間で、実に7%もの引き上げが行われているのであります。福祉局は、来年度一人あたり平均保険料は据え置くとしていますが、昨年度は135億円であった任意繰り入れを、今年度は半減させ、来年度は激変緩和措置による増額があるとはいえ、94億円にとどめようとしているのであります。

 被保険者の負担軽減を全く行おうとしない吉村市政の冷たさが、この点にも象徴的に現れているのであります。任意繰り入れを増やし、被保険者の負担軽減に努めるとともに、こどもの数が多いほど保険料が高くなる仕組みである均等割保険料については、本市が率先して軽減する制度を導入するべきであります。

 

 次に介護保険についてです。

 本市の第7期介護保険料は、基準月額7927円となり政令指定都市だけでなく府内でも最も高い保険料となっています。高すぎる介護保険料の軽減のために、一般財源85億円を繰り入れ、せめて第6期並みの保険料に戻すべきであります。ところが大阪市は、「一般会計を圧迫するから」との主張を繰りかえし、市民の願いに背を向け続けています。一般会計を圧迫している真の要因には全くメスを入れることなく、最も切実な市民要求の一つである介護保険料の軽減には何らの措置も取らないという姿勢は本末転倒なのであり、市民負担の軽減にこそ努めるべきであります。

 教育についてはまず、生野区で問題になっている「生野区西部地域学校再編整備計画(案)」についてであります。

 4小学校の再編計画案の生野中学校区では、2校のみで学校設置協議会を強行したものの、残りの2校が協議会に参加する見通しは立っておらず、足並みは揃っておりません。また、田島中学校区においては学校設置協議会の設置すら進まない状況であり、いずれの地域も、学校関係者や地域の合意は全く形成されていません。にも関わらず、学校再編関連予算が計上されており、これではますます関係者や住民の不安と混乱を煽るだけであります。文科省も、「学校規模の適正化については、行政が一方的に進めるものではない」との考え方を示しており、結論ありきで進めようとする強引なやり方はすみやかに改めるべきであります。

 続いて、各種学力テストの結果を教員の評価に反映させようとしている点についてであります。学校関係者や保護者だけにとどまらず、多くの市民の声を受け、教育こども委員会ではこの方針の見直しを求める陳情書が採択されました。

 そもそも各種学力テストは、あくまで行政調査の一環であり、教育上・指導上の課題を炙り出すというのが本来の趣旨であります。これを教員の評価に結び付けてしまおうというのは、あまりにも短絡的で無理があり、中立性が担保されるべき教育行政への政治介入と言う他ありません。いま大阪市がやるべきは、教育環境の整備に徹することであります。教員不足や多忙化の解消、35人学級の推進、不登校・いじめへの対応強化など、山積する教育現場の課題に正面から取り組み、教員が一人ひとりのこども達に寄り添える環境をつくることが何よりも必要なのであります。

 教育現場への極端な締めつけ、統制はやめるべきであります。 

 第二は、本市財政を圧迫し続ける大型開発についてです。

 まず夢洲開発についてです。

 夢洲における国際観光拠点形成に向けたまちづくりと称して、埋立会計から土地造成に48億円、地下鉄の延伸や高架道路、上下水道の設計に9億円など、インフラ整備の準備予算が計上されています。IR・カジノの誘致はまだ決まった訳ではなく、その誘致を前提にしているがために、事業費が際限無く膨れ上がっているのであり、簡素な万博を求める立場からも、IR・カジノが恒久的に使用するためのインフラ整備はやめるべきであります。

 また、IR推進局は、本年2月に「大阪IR基本構想案」を公表しましたが、シンガポールのカジノ2箇所分の巨大施設を想定しており、軟弱地盤である埋め立て地での巨大な集客施設建設とそれに関連するインフラ整備が、難工事となることは想像に難くなく、公金支出の膨張は必至であり、万博を隠れ蓑にして「いつか来た道」を絶対に辿ってはならないのであります。

 また、ベイエリアでの大型開発は、近い将来予想される南海トラフ巨大地震や昨今の台風など、自然災害への対策にも逆行します。無謀な大型開発は止め、本市の防潮堤や河川護岸の耐震・液状化対策など防災・減災対策にこそ予算を振り向けるべきであります。

 第三は、様々な施設や事業の統廃合や民営化についてです。

 まず、住吉市民病院についてです。

 住吉市民病院跡地への、新病院基本構想案が公表されました。当初、新病院については、小児・周産期の病床を確保するとしていましたが、基本構想案においては外来診療のみで病床を有しないものとなっているのであり、小児・周産期医療の大後退を招く中身と言わざるをえません。医療的ケア児の在宅生活においてレスパイト入院は必要不可欠であり、入院機能を排除した構想案はあまりにも非現実的なものであります。当初の説明の通り病床をしっかり確保し、南部医療圏への公的責任を果たすべきであります。 

 2年前、民営化が廃案となった水道事業も、今度はPFI方式だと言って、15年間で1800kmという膨大な管路の耐震化を、計画から設計、施工管理に至るまで民間事業者に丸投げしようとしています。本市公共事業を巡る不正事案が頻発し、信頼回復が何より大切な時であります。職員をしっかり確保し、水道局が自ら計画、設計、工事発注、施工管理に責任をもち、命の水の安全・安心を確保するべきであります。

 また、セーフティネットとしても、待機児童解消の点からも重要な役割を果たしている公立保育所について、頭ごなしに数値目標を決め、民営化を進めることは保育行政の後退でしかなく、民営化はやめるべきであります。

 さらに、天王寺動物園を独立行政法人化ありきで検討を進め、鶴見緑地公園の再生・魅力向上だと称して民間投資を呼び込もうとしていますが、相も変わらず行政の公的責任を投げ出そうとするものばかりであります。公共の施設や市民の憩いの場所は、本市が責任をもって管理・運営するべきであります。

 最後に、今後の財政運営についてです。

 本市財政において、バブル経済時の負の遺産がようやく収束に向かっている時に、新たな浪費とも言うべき大型開発によって、本市は再び公債費を膨れ上がらせる道を突き進もうとしています。淀川左岸線2期と延伸部の事業、地下鉄なにわ筋線、そしてカジノ万博のための夢洲開発など、これらの大型開発のために公債費が再び右肩上がりになるのは確実であります。かつて大失敗し、市民に大きな負担を押し付ける結果となった大型開発の推進を見直し、切実な市民要求にこそ真剣に向き合うべきであります。

 例えば、小中学校など439校の体育館にエアコンを設置する事業は、緊防債を活用すれば本市の負担は60億円で済みます。勤続7年以上の公・民の保育士の給与を月4万円引き上げるには、年間10億円で実現できます。

 大型開発の浪費を見直すならば、くらしや福祉、防災のための財源は生まれてくるのであります。

 日本共産党大阪市会議員団は、市民本位の市政への転換を多くの市民とともに力を合せて追求していく決意を表明し、予算組み換え動議に賛成、原案に反対する討論と致します。