title


市議団の実績

2018年度大阪市一般会計等決算の認定に対する

山中議員の反対討論(2019年11月19日)

山中智子市会議員

2019年11月19日

私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2018年度大阪市一般会計等決算の認定に反対の討論を行います。

 なぜ、認定に反対するのか。

 それは、市民のくらし・福祉の向上や、相次ぐ災害から市民の命と財産を守るという地方自治体にとって一番大事な仕事をなおざりにして、大阪市廃止の制度いじりやカジノの誘致に熱中しているからです。

 まず指摘したいのは、カジノの誘致についてです。

 IR推進局は、この間、何が何でも2025月の万博開催前にIRをオープンさせようと、国に法整備を急ぐよう求めるなど異常なまでの前のめりの姿勢でやってきました。夢洲での万博開催には、鉄道建設や橋梁の拡幅、そして急速埋め立てなど多額の費用がかかることから、私たちは万博も夢洲で行うことには反対ですが、万博そのものには人類の進歩にかかわるそれなりの理念があります。それにひきかえ、IRの核であるカジノは、人を不幸にしてやまない文字通りのギャンブルです。

 この10月に実施された時事通信の世論調査でも、カジノを含むIRの国内誘致には、賛成26.6%に対して、反対が57.9%とダブルスコアであり、4月の世論調査では、自分の住む近くに立地することには賛成20%に対し、反対は実に71%です。多くの市民が反対するカジノを、万博を利用してまで導入しようとするなど、許されることではありません。

IR推進局は、「国際観光拠点」だとか「世界に類を見ないエンターテイメント」を有する「世界最高水準のIR」などと綺麗ごとに終始し、ギャンブル依存症の深刻化などカジノの害悪から市民の目をそらそうとしています。

しかし、「大阪周辺には1500万人もの人が暮らしている」などと、大阪を日本進出の最有力地であるかのように表明していたカジノ事業者の多くが、より抱える人口の多い横浜が手を上げるやいなや、足並みをそろえて大阪から撤退したことで明らかなように、カジノ事業者のターゲットは日本国内の人々です。

「大阪IR基本構想案」では、カジノの粗利益の見込みが年3800億円であり、うち外国人観光客150万人から2200億円、国内客440万人から1600億円とされています。ところが、カジノの本場ラスベガスの状況をみれば、2016年の数字ですが、訪問客数4294万人中、国内客が3723万人で87%、海外からは570万人で13%に過ぎません。

目的別では、国内外を問わず、レジャー52%、MICE10%、その他、親戚や友人の所に来たとか結婚式だとか諸々が34%であり、カジノはたった%で172万人です。それを13%という海外客の比率にあてはめれば、あのラスベガス全体で、海外からのカジノ客はわずか22万人です。しかもアジア諸国におけるカジノの立地はもう飽和状態です。

「大阪IR基本構想案」のように、夢洲のカジノ客の25%を外国人が占めるとともに、利益の約60%も、外国人観光客から得ることができるとはとうてい考えられません。せいぜい1割程度という専門家の見解が妥当だとすれば、海外からのカジノ客は多くて50万人〜60万人、「大阪IR基本構想案」の三分の一程度、得られる利益は700億円余りということで、結局、利益の大半、実に3000憶円を超える莫大なお金が大阪周辺の人たちの懐から巻き上げられるということになるわけです。

人を不幸にし、経済も悪くするカジノを誘致するなど、およそ地方自治体のなすべきことではありません。

あらためて、カジノ誘致はやめるよう申し上げておきます。

一方、こうしたカジノ誘致にともなう夢洲の開発に血道をあげるなかで、肝心の市民の安全・安心や暮らしが後回しになっていることです。

まず、防災・減災対策について指摘いたします。

昨年の台風21号による湾岸部の被害をうけて「高潮対策検討会」がもたれ、堤防外の護岸等のかさ上げや強化対策の検討が始まっていますが、長年の地盤沈下によって、6mからmといった計画高を確保できなくなっている防潮堤のかさ上げが遅々として進んでいません。大正区の鶴町では、計画高から見て27pも沈下しており、台風21号の際、もう少しで防潮堤を超えそうでこわかったという声が聞かれました。

此花、大正、住之江の区でかさ上げが必要な防潮堤の延長6.7qのところ、工事が遅れに遅れ、今年度末で3.0qにしか到達しないうえに、残る3.7qの計画すらまだ立てられていません。台風は毎年やってきますし、年々強くなり、大きな被害が想定されると言われています。早急に計画を立て、進捗をはかるべきです。

また、大雨等に備える浸水対策も、時間60mm対応をかかげて長年整備を続けていますが、いまだ80.1%の整備率です。とりわけ、淀川・東淀川・西淀川などの浸水対策としてH3年度に着工した淀の大放水路は、当初はH17年度完成予定だったものが、いったんH22年度まで伸びて、今日では、令和16年までかかると言われています。昨今のように時間90mmとか100mmとかの豪雨が相次ぐ中で、時間60mm対応では間尺にあわない面もありますが、ともかく、計画を立てて長年にわたって工事を進めてきたわけです。一日も早く完了させるよう求めておきます。

そして、こうした、ハード対策の水準を上回る災害に見舞われた時、市民の命を救うためには一人ひとりの防災意識の向上はもちろんですが、支援が必要な方たちを救うためには地域の取り組みの力が不可欠です。東日本震災を受けて整備が義務付けられた「避難行動要支援者名簿」について、本市は作成はしたものの割の地域で、受け取りを拒否しておられ、名簿が渡った地域でも具体的な支援計画にはつながっていない場合が多いなど、看過できない状況があります。その大きな要因が担い手の高齢化など地域の疲弊であることははっきりしています。

いま、全国の多くの市町村が同様の悩みを抱え、さまざまに検討を重ね地域活動への思い切った支援の模索が始まっています。そうしたなかで、本市の、「補助金」と「中間支援組織」のみで対応し、あとは区任せ、検討や模索の姿勢ももたないといったあり方はあまりにも無責任だと言わざるを得ないのです。

市民負担についても一言指摘いたします。2018年度、介護保険料が17.3%も値上げされ、市だけで比べたら本市は、「日本一」高い保険料となり、市民から文字通り悲鳴が上がっています。都道府県化された国民健康保険料も、激変緩和が終わればたいへんな負担増となることが明らかであり、不安が広がっています。早急に対応を検討し、この不安を取り除くことが求められているのに、それどころか、2018年度は一般会計からの繰り入れを大幅に減らしてしまいました。到底、認められません。

最後に、大阪市廃止・分割、いわゆる“都構想”についてです。ラストチャンスだ、二度とやらないと叫んで行ったあの住民投票で決着済みの「大阪市廃止」が蒸し返され、2017月から2018年度末までの年足らずで23回もの法定協議会が重ねられました。

とりわけ、本決算年度である2018年度には、貴重な税金を使って「経済効果の試算」なるものがゴリ押しされたり、密約騒ぎがあったりで、市民不在の極みといった体たらくでした。そのうえ、選挙後は周知のとおり、「コストがかかりすぎる」という批判をかわすために、庁舎は建設せず、現市役所を共同で利用する「合同庁舎」の案まで出される始末で、市民からは「これでそれぞれ独立した地方自治体といえるのか」「結局、特別区などどうでも良いということではないか」といった怒りの声が上がるとともに、総務大臣も務めた片山善博早大教授も「地方自治体の体をなしていない」と指摘するなど、懸念や批判が高まっています。

とにかくまともに議論しない、結論ありき、スケジュールありきで、ただただ「協定書」づくり、住民投票へ突き進もうとする、こういう姿には、市民への思いなどまったくないと言わざるを得ません。最悪の地方自治破壊、百害あって一利もない大阪市廃止・分割はキッパリとやめるべきだと申し上げ、以上、反対討論といたします。