title


市議団の実績

「特別区設置協定書」に対する
井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2020年9月3日

  私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、議案第 134 号「特別区設置協定書の承認について」および議案第 135 号「令和2年度大阪市一般会計補正予算(第5回)」に反対する討論を行います。

  今日のコロナ禍のもとで、言うまでもなく大阪市会として議論すべき課題は、山ほどあります。最前線で奮闘されている、保健所の体制強化や PCR 検査の拡充、医療機関への財政支援、各種保険料や公共料金のさらなる軽減など家計への支援策等々、本来、今臨時議会は「大阪市独自のコロナ対策があまりにも貧弱だ」という市民の声に応え、必要とされる支援策について集中した議論を行い、実効性ある施策を積極的に打つ場となるべきなのであります。

  ところが、今臨時議会の俎上に上っているのは、大阪市廃止・分割の「協定書」なのであり「心、コロナ対策にあらず」の姿勢が露骨に表れています。苦境に立たされる市民に寄り添い、コロナ対策に集中することが最優先されるべき時に、自らの都市を廃止・分割してしまうための議論を優先させている自治体など、日本中いや世界中見渡しても、大阪市だけではないでしょうか。

  くらしの応援が今ほど求められている時はありません。大阪市を壊すことに時間と税金と労力を費やすのではなく、今まさに政令指定都市の財源・権限を最大に生かすべき時なのであり、大阪市廃止には一片の道理もありません。

  「協定書」の中身の不条理さについては論を待ちませんが、加えて、住民参加の担保という民主主義の根幹への配慮を著しく欠く住民投票の強行は、タイミング的にも最悪であり、市民の理解は到底得られません。

  そもそも、財政的根拠である“自治体が必要とする一般財源額”いわゆる基準財政需要額も公表されず、大阪市を廃止して4つの特別区に分割した後、果たして特別区の財政は成り立つのか、住民サービスは維持できるのかという肝心な問題には、明確な裏付けが全く示されないままであります。

  市民の批判に押される中、新たに示された更新版・財政シミュレーションは、コロナ禍による経済状況の悪化と大幅な税収減を反映しない一方で、大阪メトロの配当金・市税見込み額の大幅な上乗せや、プール・スポーツセンター・こども子育てプラザに老人福祉センターまで削減し 17 億円を確保するとしており、それによって 2025 年度から 2039 年度の特別区の収支は黒字になるとしているのであります。

  当の大阪メトロは「将来的な見通しを未定」としているにもかかわらず、大阪メトロからの配当金等の上積みがなければ、特別区は大赤字に陥ることから、大阪メトロの配当金を無理やりカラ計上し黒字に見せかけているのであります。このことからも、新たに示されたシミュレーションは、4特別区が大阪メトロの配当金だのみの、半人前以下の自治体へと成り下がる証左となったのであります。

  いくら市民を欺くシミュレーションを弄してみても、今後長期にわたるコロナ対策に係る支出増、大阪市の分割と特別区設置に要する莫大なコスト、そして、現行住民サービスの水準を維持するための財源確保の困難さを鑑みれば、特別区移行後、住民サービスの大幅なカットと、大阪中の資産・財産の切り売りが最優先の仕事になるという、大阪市廃止・分割構想の本質は何ら変わりようがないのであります。

  大都市において、住民の声をどう行政に反映させるかという課題は、わが国のみならず各国に共通しています。しかし、そのために大都市を廃止・分割しても、都市問題は解決しないばかりか、住民自治の拡充がはかれないことは、これまでの維新市政が、大阪市の廃止を全ての市政運営の前提に置き「成長を止めるな」と声高に叫び続けても、「くらしと命を守ってほしい」「まちの中からの景気回復をはかり、市民が成長を実感できる大阪にしてほしい」という市民の切実な願いは、派手派手しいパフォーマンスの後景に追いやられてきたのであります。

  コロナ禍のもと、立場を越えて市民が結束し、くらしと経済を立て直していかなければならない時に、再び地域に対立と分断、いがみ合いが持ち込まれようとしています。地域活動やコミュニティーを草の根で支え続けている、様々な団体・組織の混乱も免れません。

  いま市民が必要としているのは「上からの統治」ではなく「地に足のついた自治」なのであり、そもそも大阪市廃止・分割構想は、市民を主体に考えた制度でもなければ、市民の内発的な要求でも全くないのであります。

  東京都の特別区長が「特別区制度はもう時代遅れです。大きな権限、財源を持つ大阪市を廃止するのなら、東京の特別区が自治権拡充のためにどんな苦労をしてきたのか、その歴史にも目を向けてほしい」といみじくも語っているように、戦時中「帝都防衛」の名のもと、戦争遂行のため、財源と権限の集権化を図るためにつくられた、今でも安定しない都区制度を真似することで、成長がはかれるなどというのは全くの幻想なのであります。

  大阪市は、二度と元には戻れない茨の道を突き進むのではなく、もっと市民に寄り添って「政治の中身」の改革と「くらしの応援」に全力を傾けるべきなのであります。

  そして、大阪市が長い歴史の中で営々と築き上げてきた都市格を土台に、経済、産業、文化、まちづくりなどあらゆる分野において、政令指定都市としての財源と権限を市民本位に生かしながら、大阪・関西を牽引する役割をこれからも発揮し続けるべきなのであります。

 We say No again.

  いま一度、幅広い市民との共同を広げきり、先人たちが築き上げてきた、自治都市・大阪市の歴史を必ずや継承・発展させる覚悟を述べ、討論とします。