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市議団の実績

2019年度大阪市公営・準公営企業会計の
決算認定に反対する井上議員の討論

井上ひろし市会議員

2020年10月8日

 

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2019年度大阪市公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行います。

 地方公営企業は、それぞれの事業を通して「公共の福祉の増進」に努め、市民の切実な需要や要望に応え、安全・安心の住みよいまちづくりに寄与する事業として発展させていかなければなりません。

 ところが、本決算に表れているのは、立ち止まることなく大型開発に前のめりとなり、相も変わらず民営化の路線を推進し、公的責任を大幅に後退させる姿であり、到底認められません。

 以下、具体に指摘致します。

 まず、港営事業についてです。

  先般、決算委員会において私は、夢洲開発が港営事業会計に与える影響について問い質しました。

  夢洲関連のインフラ整備費用は、実に943億円と巨額であり、このうち港営事業会計の負担は542億円と非常に大きなウエイトを占めています。

  もともとTR構想が浮上する以前の夢洲は、先行開発地域のうち産業・物流ゾーンと位置付けた地区において、相応の需要があったため物流施設用地として売却が進められていました。

  夢洲は、3349億円もの巨費を投じ埋め立て事業を進めてきたため、起債の償還は、コンテナ貨物中心の物流基地として物流業者に売却し、起債償還に充てる計画でした。本市としては、夢洲の先行開発地区の土地売却収益を確保することによって、大阪港振興基金を充当することなく資金不足を回避し、港営会計の安定化をはかる見通しをもっていたのであります。

  ところがTR構想が浮上したために、2015年度以降今日に至るまで物流業者への売却は見送られ、こともあろうに143ヘクタールもの広大な土地を、工業地・準工業地から商業地への用途変更を強行し、「TR頼み」へと大転換してしまいました。

  コロナ禍のもと、TRの誘致もますます不透明になる中、「TR誘致が不成立に終わった場合の、大阪港埋立事業の長期収支への影響」について私が問い質したのに対し、理事者は「資金不足に陥る可能性がある」と答弁したのであります。

  廃棄物処分地および物流基地は、そもそも国際観光拠点には適さないのであり、夢洲におけるカジノを中心としたまちづくりが、市民的理解のもとに発展するなどとは到底考えられません。

  夢洲は引き続き、廃棄物処分地および物流基地として活用するべきであり、リスクだらけのTR誘致とそのための巨大開発は決して認められません。

  次に、水道事業についてです。

 水道事業として取り組まなければならないのは、市民への低廉で良質な水の安定供給、管路や施設の耐震化、今後の水需要に見合う施設能力となるよう、過剰給水設備のダウンサイジングを図ることなどであります。

 とりわけ、大規模災害時には断水が長期化することが予想されるため、最も重要な生活インフラである水の確保のためにも、南海トラフ巨大地震等の大地震に備え、管路の耐震化は緊急の課題なのであります。ところが2019年度末現在で、耐震化率は30.8%と極端に遅れているのであり、由々しき事態と言わなければならず、特段のペースアップが必要なのであります。

  PFTによって公的責任をおろそかにするのではなく、必要な技術職員を増やすなど公(おおやけ)の役割を明確にして、市民のための安全・安心の給水に専念すべきなのであります。

 最後に、下水道事業についてです。

 本市の下水道管渠の法定耐用年数50年を経過した、老朽化の割合は40%に達しており、東京都および人口150万人以上の政令市の平均が15%であるのに比ベ、突出して高い状況が依然続いています。老朽管対策は、遅々として進んでいないのであります。

 また、近年の異常気象により多発している、台風や集中豪雨などによる浸水被害は、深刻さを増す一方であり、本市においても市内全ての地域における浸水対策が急がれます。「雨水対策整備率」は、ようやく8割に達したものの、2017年度から2019年度の3年間の進ちょく率は、わずか0.4ポイントなのであり、整備のペースアップは最優先課題であります。

 さらに、2003年度に下水道法施行令が改正されたことを受け、本市においても合流式下水道改善事業が始まりました。合流式下水道で整備された区域では、雨天時に下水の一部が未処理で河川等に放流されるため、放流先の水質保全上の問題や公衆衛生面での影響が懸念されることから、緊急かつ確実な対策が急がれているのであります。

  ところが、2019年度末時点で74%にとどまっており、本市の水質保全や公衆衛生への認識が問われています。 

  浸水対策や合流式下水道改善事業をはじめ、下水道事業の公的役割はますます重要になっているにもかかわらず、上下分離方式の導入によって、維持管理についてはクリアウオーターおおさか株式会社に包括委託し、人員やあらゆるコストの削減がいっそう進められているのであり、決して容認できません。

 以上討論と致します。