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市議団の実績


「合意なき学校統廃合計画」の条例案

に対する井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2021年2月25日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、議案第9号「大阪市立学校設置条例の一部を改正する条例案」に反対する討論を行います。

 反対する理由を大きく三点、申し述べます。

 第一に、コロナ禍の今、推し進めてはならない案件だからであります。

 本議案において設置するとしている義務教育学校生野未来学園は、西生野小学校及び生野中学校の校地を活用して設置するとしております。これを強行すれば、林寺小学校、生野小学校、舎利寺小学校を廃止することになり、現在の西生野小学校は100名から600名規模の学校となります。

 教育現場においても、当然のことながら三密を回避し、ソーシャルディスタンスと分散を徹底しなければならないこの時に、学校統廃合を行うことは、児童生徒、教職員などの集約化につながるのであり、パンデミックへの対応策としても時代逆行の暴挙と言う他ありません。

 文部科学省の「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引き」には、「教育の機会均等を確保する観点からまず検討しなければならないのは、小規模校であることのメリットを最大限に生かし、児童生徒への教育を充実させる方策です」と明記しており、小規模校の具体的なメリットとして、「一人ひとりの学習状況や学習内容の定着状況を的確に把握でき、補充指導や個別指導を含めたきめ細かな指導が行いやすい」「教室や運動場、体育館などが余裕をもって使える」などが挙げられております。

 この間政府も、2021年度から小学校全学年を、段階的に35人へと引き下げる決定をし、中学校についても検討することを表明しています。この流れの背景には、長年に渡って保護者や教育関係者が教育環境の改善を求め続けてきたことがあります。少人数学級の推進はまさに時代の趨勢であるとともに、コロナ禍のもと時宜を得た政策なのであります。

 第二に、「合意なき学校統廃合計画」だからであります。

 田島中学校区では、工事着手の説明会が昨年11月15日に開催されましたが、参加者の質問に対して、教育委員会と生野区は不十分な回答に終始したため、参加対象者を広げた再説明会の開催が決まりました。その約束は、12月の議会答弁でも追認されており、動かぬ証拠となっています。ところが、再説明会を開催しないまま、何と12月22日に工事を強行したのであります。

 他方、大阪でもコロナの感染が拡大する最中の本年1月8日、教育委員会と生野区は「田島中学校区学校適正配置検討会議」を開催し、学校名を「田島南小学校」と一方的に決めたのであります。深刻なコロナ禍であろうが何であろうが、この時期を逃せば本日の本会議採決に間に合わないことから、説明会を開かぬままに検討会議を強行するという暴挙に出たのであります。こんな常軌を逸した、関係者を裏切る非常識なやり方が許されて良いはずがありません。

 なお、延期になっていた再説明会は、田島中学校で本日夜開催するということであります。議会での採決前では、関係者や区民に説明できないような代物であることを、自ら語っているということではありませんか。こんな姑息なやり方は、到底理解を得られません。

 そもそも、文部科学省の手引きにも「学校規模の適正化や適正配置の具体的な検討については、行政が一方的に進める性格のものでないことは言うまでもありません。各市町村においては、学校が持つ多様な機能にも留意し、学校教育の直接の受益者である児童生徒の保護者や将来の受益者である就学前の子供の保護者の声を重視しつつ、地域住民の十分な理解と協力を得るなど、『地域とともにある学校づくり』の視点を踏まえた丁寧な議論を行うことが望まれます」とあります。しかし生野区では、今日に至るまで全く相反することが強行されてきているのであります。

 これまでの経緯を振り返ってみても、当初は小学校区ごとに各地域活動協議会および各小学校PTAの代表者と区長との間で確認書による基本合意を交わすことを前提としていましたが、それが無理だと判断するや否や、関係者の了解もないまま、中学校区ごとの合意へとルール変更を強行し、それでも合意が得られないとみるや、学校統廃合を条例化してしまうという、なりふり構わぬ最終手段に打って出たのであります。議会が条例で「適正規模」、すなわち学校統廃合の事項について定めること自体、国内で前例がありません。

 思い通りに進まない統廃合に市側が業を煮やした挙句、前代未聞の決定をしたのであり、条例化は教育行政への「不当な支配」であることを、改めて厳しく指摘するものであります。

 私は、PTAの役員の皆さんとも懇談を繰り返してまいりましたが、「教育内容、教育環境が、どのように変わるのか、全く説明が尽くされていないし納得していない」「義務教育学校、施設一体型小中一貫校、連携型小中一貫校という3種類の学校が、一つの行政区の中に混在する意味に至っては、説明にすらなっていない」という声が、依然として保護者の多数の意思であることを痛感致しました。

 また私は実際、舎利寺小学校区から西生野小学校まで歩いてみましたが、ゆうに30分はかかりました。大人が歩いて30分を要するのですから、特に低学年の子供たちはもっと時間がかかるであろうことは、想像に難くありません。そればかりか、白線が消えたままの横断歩道が多くの箇所で見られ、信号機やガードレールの設置が必要と思われる箇所への対策は後回しにされており、子供たちのためではなく行政の都合の一方的な学校統廃合であることがここにも表れています。

 言うまでもなく、学校は教育活動のみならず、様々な地域活動や防災の拠点であり、「地域の宝」なのです。幾度となく陳情書が議会に提出されているように、PTAや地域の代表の方々、そして多くの区民の合意は全く得られておらず、こんな力づくとも言えるごり押しはやめるべきであります。

 第三に、本案件をいったん立ち止まっても何ら支障は無く、むしろ立ち止まって検証すべき問題が山積しているからであります。

 本市では現在、児童数の増加に対応するために校舎の増築工事を行っている小中学校が8区14校にもおよび、今年度工事が完了した学校も3区3校あります。

 さらに、平成元年から今日までに統廃合し、現在も教育活動が行われている15校のうち、7校は統合時よりも児童生徒が増えています。開平小学校は統廃合時の児童生徒数118名が現在291名に、扇町小学校は統廃合時の児童生徒数305名が現在585名に急増しており、現在校舎増築の工事が行われております。浪速区の塩草立葉小学校に至っては、統廃合時の児童生徒数246名が現在411名へと増え、今年度に校舎増築工事が完了しましたが、平成26年度に統廃合が行われたところですから、わずか4年で校舎の増築に踏み切ったことになります。これらは明らかに、見通しを誤った教育行政の失敗ではないでしょうか。

 こうした失敗の教訓もふまえ、生野区での1中学校、8小学校にも及ぶ前代未聞の大規模な統廃合計画はいったん立ち止まり、こどもたちや地域に寄り添った丁寧な対応に改めるべきであります。

 現在、大阪市の人口は増加傾向にあり、これは大変喜ばしいことであります。しかし、今後の本市のまちづくりにおける留意点の一つとして、それぞれの行政区のポテンシャルを引き出しながら、人口の偏在をどのように解消していくかということが懸案事項であります。

 そうした意味で、生野区のポテンシャルを引き出しながら住みよいまちづくりを進め、まちの活性化をはかることこそ、学校統廃合以前に優先されなければならないのです。

 以上、「合意なき学校統廃合計画」の条例案に反対を表明し討論とします。