私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2021年度大阪市一般会計等予算案に反対する討論を行います。
新型コロナウイルスの感染が拡大し続ける中、苦境に直面する市民のくらしや営業の応援に総力を挙げることが、地方自治体の最大の責務です。
ところが本予算案に見られるのは、相も変わらず大型開発に熱中するとともに、昨年の住民投票での民意を無視し「広域一元化」だ「副首都」だと、制度いじりに明け暮れる姿であり、到底認められません。
以下、具体に指摘をいたします。
第一は、くらしや教育をめぐり、市民の切実な声に応えるものとなっていない点です。
まず国民健康保険についてです。
本市の国保会計は、後期高齢者医療制度が実施された2008年度から、ほぼ毎年単年度黒字を重ね、今日に至るまでの黒字額の合計は、実に424億9千万円にのぼります。
ところが、都道府県単位化前の2017年度の任意繰り入れは135億円だったにもかかわらず、来年度は66億円にとどめようというのです。維新市政の9年間で、11%もの国保料の値上げが行われことに、冷たい市政の姿が表れているのであり、せめて今年度並みの任意繰り入れを行い、国保料の引き下げでコロナ禍にある市民生活を支援すべきです。
次に介護保険についてです。
第7期介護保険料の月額全国平均は5,869円でしたが、本市は7,927円と2,000円以上も高い状態であるにも関わらず、第8期介護保険料の基準月額は、8,094円へとさらに値上げを行おうとしています。
本市の介護保険料は、政令市どころか全国の市の中で一番高いものであり、不名誉のそしりを免れません。
本市は、一人暮らしの高齢者の割合が42%で、全国平均27%より15ポイントも高いとともに、住民税非課税世帯の割合も49%と全国平均の32%を17ポイントも上回っている特徴に鑑み、一般財源の投入で高すぎる保険料の引き下げに踏み切るべきです。
生活保護行政に係る、「総合就職サポート事業」についても申し上げます。
生活保護法では、被保護世帯に対し指導・助言できるのは、ケースワーカーに限られています。
本市が民間企業に委託する「総合就職サポート事業」の特約事項には、「受給者が就職し、生活保護廃止になった場合」「保護申請中の人が就職し、受給に至らなかった場合」に一人当たり6万円が委託料に加算されます。逆に支援を受けた人の就職率が50%未満であれば、基本委託料から割合に応じた減額があります。
民間企業に対し、基本委託料に加えて成功報酬まで設定するなど、そもそも生活保護法の趣旨を逸脱した事業であると言わざるを得ません。
社会福祉法では、ケースワーカー1人当たり80世帯という配置基準を示していますが、本市ではケースワーカー1人当たり114世帯を担当しているのが現状であり、民間委託は止め、専門職であるケースワーカーを増員し、被保護世帯への親身な指導・助言ができる体制を構築することにこそ、行政は責任を果たすべきです。
続いて教育についてです。
まず、少人数学級についてです。
小学校全学年を35人学級とする義務教育標準法が改正されたことを受け、15道県をはじめ全国の自治体が、来年度から独自に施策の拡充を図ろうとしています。その背景には、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、急速に広がった少人数学級を求める世論があったことは間違いありません。
本市においても、来年度から速やかに拡充すべきと申し上げておきます。
次に、生野区の学校統廃合問題について申し上げます。
文部科学省は、学校規模の適正化や適正配置の検討について「行政が一方的に進める性格のものでないことは言うまでもありません」という認識を示しています。
ところが本市では、生野区での1中学校、8小学校に及ぶ前代未聞の大がかりな統廃合計画が思うように進まないとみるや、学校統廃合の基準等の条例化を強行しました。他都市にも類を見ない異常な強権ぶりをあらわにしているのものです。関係者の合意が全く取れていないにも関わらず、学校統廃合を強行するなど断じて許されない事であり、少人数学級推進の流れにも逆行する生野区の学校統廃合計画は、いったん立ち止まるべきです。
第二は、医療、公衆衛生、教育などの分野で、公共の役割の大切さが改めて認識されている中で、さまざまな事業・施設の統廃合や府への移管を引き続き強行している点です。
まず、住吉市民病院跡地への新病院計画についてです。小児・周産期医療の病床を設置しない計画は、市民との約束を反故にするものであり、とんでもありません。いま、新型コロナウイルスの拡大という未曾有の危機を経験するもとで、公的医療の重要性が改めて浮きぼりになっている時です。計画を見直し、コロナ危機の教訓を踏まえた公的病院とならなければならないと強調しておきます。
また、PCR検査や感染者の行動履歴調査、濃厚接触者の特定、健康観察など、新型コロナウイルス対策の最前線で奮闘している大阪健康安全基盤研究所は、府・市の両研究所が果たしてきた役割に鑑み、それぞれ直営に戻し、保健所や医療機関との連携を強化することこそ、いま正に求められていると申し上げておきます。
次に、大学統合についてです。
大阪市立大学、大阪府立大学の両大学もまた、二重行政だと決めつけられ、統合議論に振り回されてきました。
2022年度の開学ありきで、新大学の学部集約やキャンパス整備は後追いで進めるという逆立ちしたスケジュールにも、大学関係者の意向や内発性のかけらもないことが端的に表れています。しかも、メインキャンパスを森之宮に整備するという方針は、大学の将来を真剣に考えての案とは到底考えられないものであり、高等教育機関を大規模な開発に利用することはやめるべきです。
市立高校の府への移管についても申し上げます。
戦前から府は現在の普通高校である旧制中学校、市は実業学校を中心に整備が進められてきたのであり、歴史的経過からも府と市では設置理念が異なります。したがって、高校教育においても二重行政などは存在せず、府への移管は教育上の必要は全くありません。そればかりか、校舎や敷地など市民の財産を丸ごと府へ無償譲渡し、100年を超える伝統と実績を誇る高校教育を本市が放棄することには一片の道理もありません。
第三は、不要不急の大型開発を、立ち止まることなく推し進めている点です。
本予算案には、夢洲を舞台とした大型開発が目白押しですが、夢洲での万博開催の狙いは、半年間で終了する万博のためというよりも、その後、長期に渡って営業させようとするIRのためと言わなければなりません。
先ごろ、IR実施方針が、開業時期もあいまいなら、展示施設や宿泊施設について規模の縮小や段階的な整備も認めるというものに修正されました。唯一、大阪進出を表明しているⅯGⅯリゾーツも厳しい経営状況にあるなど、巨額の初期投資が厳しくなったカジノ事業者に配慮したとしか思えません。そこまでして相変わらず「世界最高水準の成長型IR」を目指すとしている訳ですが、巨大なハコモノ施設で集客し、三密状態でギャンブル漬けにするIR・カジノというビジネスモデルに未来はないことが明確になりつつあります。
このように全く見通しのないIR誘致はキッパリと断念するとともに、夢洲での万博開催は中止するべきです。
その他、なにわ筋線や淀川左岸線など、巨大開発を前のめりで進めれば、かつてのように深刻な財務リスクを再び抱えることは間違いありません。
なにわ筋線を開業することによって、大阪―関西空港間で約5分の短縮が図れると言いますが、もうすでに大阪市の中心部は過密と言えるほど縦横に鉄道路線が張り巡らされているのであり、この上また新たな地下鉄道の建設を目指すことは、都心中心部への過剰な投資と言う他ありません。わずか5分の短縮のために、総事業費3,300億円をつぎ込むことは、あまりにも無謀であると申し上げておきます。
淀川左岸線2期事業は、軟弱地盤や土壌汚染への対応もあり、これもまた事業費が大きく上振れすることとなり、239億円もの巨費が計上されております。もともと将来人口や交通量の減少が予測される中、必要性自体、疑問視されているだけでなく、河川堤防を6qにわたり開削するという事業はハイリスクのため前例がありません。災害対策に逆行し、自然環境に与える負荷も大きいため、本事業は中止するべきです。
以上3点にわたって、本予算案への反対理由を申し上げました。
不要不急の大型開発には惜しみなく予算をつぎ込む一方、新型コロナウイルスへの本市独自の実効性ある対策は、あまりにも不十分であると言わなければなりません。
わが党はくり返し、保健所や医療機関等のひっ迫状況を告発し、体制の強化を求めるとともに、経営危機に直面し苦境に立たされる中小零細企業等の窮状に対しても、支援の強化を強く求めてまいりました。
いまこそ本市は、新型コロナウイルスによる影響で先行きが全く見えない多くの人たちに対し「広域行政にお任せ」ではなく、基礎自治体としての主体性を発揮した支援に徹するとともに、270万市民に寄り添った生活支援にこそ最優先で取り組むべきです。
市民の生命・くらし・営業を守ることに全力を挙げるよう申し上げ、予算案への反対討論といたします。
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