title


市議団の実績

2020年度大阪市一般会計等決算の認定に対する
井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2021年11月19日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2020年度大阪市一般会計等決算の認定に反対する討論を行います。

 長引くコロナ禍のもと、苦境に直面した市民生活と中小企業・個人事業主の経営は、依然厳しい状況にさらされています。このような時こそ、地方自治体本来の役割を発揮し、命とくらし、経営を守ることに総力を挙げるべきであります。

 ところが、本決算に表れているのは、万博を利用したIRカジノ誘致をはじめとする不要不急の大型開発に前のめりになる一方、コロナ危機に立ち向かう基礎自治体としての真剣さには著しく欠ける姿であり、到底認められません。

 以下、具体に指摘します。

 本市は、これまで度重なる失敗を繰り返し、財政を圧迫し続けてきた大型開発を懲りずに進めていますが、特に指摘したいのは、コロナ禍のもと「夢洲万博」は立ち止まって検討すべき問題が山ほどあるという点です。

 第一に、夢洲での開催は、万博が掲げる理念である「SGs(持続可能な開発目標)」および「自然との共生」に逆行し、自然環境にも人体にも有害な影響を与えかねないということです。

 かねてより夢洲開発には、南海トラフ巨大地震や地下粘土層の圧密沈下のリスクが指摘されていましたが、本年行われたボーリング調査で、夢洲の土壌がきわめて軟弱であり、災害にも弱いことが改めて明らかになりました。また、2006年の土壌汚染対策法制定以前に大量に運び込まれた、PCBやダイオキシンなど毒性物質を含む浚渫土砂が埋め立てられているのは周知の事実であり、工事関係者や訪問者の健康にも悪影響を与える危険性が指摘されているのであります。

 第二に、膨れ上がる財政負担をはじめ、事業計画には無理があることです。

 万博会場の建設費用は、計画当初の1.5倍の1850億円に大きく上振れしましたが、これがさらに膨れ上がる可能性もあります。また本市が建設主体となる大阪メトロ中央線延伸は、軟弱地盤への工事のため40億円の追加費用がかさみ、290億円まで膨らんでいます。万博に向けた「インフラ整備計画」は、他にも淀川左岸線2期工事の前倒し、なにわ筋線整備など大型開発が目白押しですが、かつての湾岸開発計画と同様の失敗を繰り返さない保証は全くありません。

 コロナ・パンデミックや地球的な気候変動のなかで、「自然との共生」という万博理念にふさわしい計画にすることや、関連整備計画をはじめとする財政規模も、市民的な合意が必要であるにも関わらず、本決算に表れているのは「大型開発ありき」で、しゃにむに突き進む姿なのであり、到底認められません。

 IRカジノ誘致や万博のための無謀な開発には、湯水のように税金をつぎ込む一方、コロナ危機に向き合う本市の姿勢が根本から問われました。

 私は決算委員会において、コロナ対策関連経費について確認しましたが、2020年度決算については、ほぼ国からの支出金に依存する中身となっており、関連経費に占める本市の支出は、わずか4%に過ぎず、本市独自の制度設計と施策展開が極めて脆弱であることを問い質しました。

 特に私は、コロナ対策の第一線で市民と接する、保健所の体制を問題にしましたが、急激な業務量の増加によって、複数の職員が体調不良で休職し、疫学調査や健康観察、患者への連絡が滞るなど、業務に著しい支障をきたした時期が続きました。

 残業時間が月80時間を超える、いわゆる「過労死ライン」で勤務した保健師は、のべ16人、最長で157時間の職員もいました。今年度は、さらに過酷な労働環境となり、4月から9月までの間のわずか半年間で、のべ54人が「過労死ライン」を超え、最長で172時間の職員もいたのであります。保健所のひっ迫は極めて深刻でした。

 有事の際に役割を発揮すべく、専門職の確保等による保健所の体制強化をはじめ、保健医療行政の充実・強化は、本市の最優先課題であることに論を待ちませんが、その点であまりにも不十分な本決算は決して容認できません。

 ちなみに本市では、保健所は1カ所のみですが、政令市では福岡市が7カ所体制を維持しており、「住民との距離が近く、疫学調査や自宅療養者の健康観察がスムーズにできる」との市担当者のコメントが報道されています。

 その他、保健所を補完すべく、保健所支所を設置して対応する政令市もあり、横浜市で18カ所、名古屋市で16カ所、京都市で14カ所を設置し、日々の保健医療行政にあたっています。本市として、270万市民に対し1カ所を続けていいのか、コロナ禍の経験をふまえ検証する必要があります。

 コロナ危機以前の「成長戦略」を全く見直そうともせず、大型開発にのめり込む姿は異常と言う他なく、苦境にあえぐ市民に寄り添い、市民の命とくらし・営業を守るためにこそ、政令市・大阪市の力をいかんなく発揮すべきであると申し上げ、討論と致します。