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市議団の実績

カジノ・IRを誘致するための「区域整備計画」案等
に対する山中議員の反対討論

山中智子市会議員

2022年3月29日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、議案第61号「令和4年度大阪市港営事業会計予算」および議案第77号「大阪・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業に関する条例案」ないし議案80号「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画の認定の申請の同意について」に反対する討論を行います。

 これらの議案は、大阪府とともに夢洲にカジノを核とする統合型リゾート(IR)を誘致するため、大阪府が国に区域整備計画を申請することへの同意を求めるとともに、夢洲の土壌対策のための債務負担行為を定めようとするものであり、到底、認めるわけにはいきません。以下、理由を申し上げます。

 大阪市は、IRカジノの誘致について「世界中からヒト・モノ・投資を新たに呼び込み、大阪のさらなる成長につなげていく」などと盛んに吹聴してきました。しかし、それがまったくの絵空事であることが、この間の議論を通じてはっきりしたと思います。私たちは、カジノを核とするエンターテイメント施設はアジア諸国をはじめ世界中にあふれ、もはや飽和状態ともいえる状況であって、大阪に誘致したとしても、それを目当てに世界中から観光客が来るはずがない。ラスベガスなどのカジノ大手が大阪に進出するとすれば、それは1千数百万人もの人口を擁する大阪圏、近畿圏の経済力に着目してのことであって、つまりカジノのターゲットは大阪をはじめその周辺の一部の富裕層と、大半はごく普通の一般市民ではないかと、一貫して申し上げてきました。そのことは、今回、MGMと共同し、MGMと同額の2120億円を事業者である大阪IR株式会社に出資するオリックスが、決算説明会において、「今は客は全員日本人だけでどれだけ回るかという前提でプランニングをつくっている」と、要するに、外国人観光客はあてにしていないという趣旨の説明をしていることからも裏付けられたと思います。

 そうして、今回の区域整備計画では、カジノで年間4200億円もの膨大な売り上げが見込まれているように、カジノで利益が上がれば上がるほど、まさにその一方で大阪周辺の一般市民の不幸が積み重ねられるという構図になるわけです。家庭崩壊、失業、自殺など、人の不幸を増やさなければ成り立たないカジノ。これを、自治体が血眼になって誘致する。とても正気の沙汰とは思えません。

 数年前に韓国で行われたカジノの社会的費用計算によれば、依存症患者のカジノ売上への貢献額は4420億円に過ぎないのに対し、依存症患者の借金への支払利息1.7兆円、生産性の低下2.9兆円、失業で失う年収2.1兆円など、カジノがもたらす社会的損失はけた外れの大きさです。

 先日の大阪IR株式会社代表取締役への参考人質疑で、いみじくもMGMのエドワードバウワーズ氏が言われた通り、カジノが立地すればカジノ来場者の2%の人が依存症に陥るといわれています。大阪のIR1,000万人以上の日本人カジノ入場者を見込んでいるわけですから、毎年20万人を超える依存症患者をつくりだすことを、事業者自身が認めているのです。うたい文句である「大阪のさらなる成長」どころか、大阪の経済も社会も深刻な打撃を受けることは論を待ちません。

 そのうえ、見本市会場などの整備を縮小し、段階的に整備を行うことを認めると同時に、夢洲の土壌対策に788億円もの公費支出を約束してまで、事業者を引き留めようとしていることも大問題です。参考人質疑においてオリックスの高橋氏は、公費負担にいたった経過について「撤退と言ったことはないが、公費負担なしで土壌対策をすることは、事業の進捗が困難になると伝えた」と、撤退の可能性をほのめかして公費負担に持ち込んだ、ともとれる発言をいたしました。そして、今後、地盤沈下などの問題が起きた時、同様の表明をする可能性についても否定しなかったわけです。1者しかない事業者の言いなりに、大阪市の負担がいったいどこまで膨らむのか、本市の財政がどこまで食い物になるのか、空恐ろしささえ感じます。

 この215日に締結された基本協定書では、国の認定を受けてから30日目の判断基準日に、「新型コロナウイルス感染症が終息し、かつ国内外の観光需要が新型コロナウイルス感染症による影響を受ける前の水準まで回復していることが見込まれ」なければ、基本協定を解除できるとされているうえに、その判断日の延長も可能なら、その条件が満たされていなくても事業者側が解除しない場合は、実施協定書や定期借地契約書を修正できるとされているなどなど、ともかく1から10まで事業者側に有利なものとなっています。

 ただでさえ、乱立気味で“斜陽産業”などと陰口をたたかれているうえに、コロナ禍でいっそう先行きが不透明な中で、在阪の大企業20社から1060億円もの出資を募るとともに、やたら解除をちらつかせるなど、リスク回避をはかろうとする事業者です。事業開始後、途中で撤退などされるようなことがあれば、地盤改良の費用や北港テクノポート線の採算がどうなるのか、など、市民のこうむる損失ははかりしれないものがあると言わなくてはなりません。

 いずれにしても、主人公である市民の多数は、このIRカジノに反対し続けているわけです。にもかかわらず、IR法が求めている「地域における十分な合意形成」などまったく意に介しない態度ではありませんか。説明会や公聴会を提案直前ぎりぎりに計画したものの、回数・内容ともに不十分であるうえに、コロナ感染拡大を理由に多くを中止しました。説明会でも公聴会でも、パブリックコメントでも、圧倒的に反対の声があるにもかかわらず耳を貸そうともしない。許しがたいカジノありきの姿勢だと言わなくてはなりません。

 なお、一部に、夢洲に「負の遺産」などという筋違いのレッテルを貼り、カジノ誘致が活用のための最良の手段であるかのように言う向きがありますが、事実を捻じ曲げるにも程があると申し上げたいと思います。夢洲は、大水深高規格のコンテナ埠頭の建設をうたい文句に浚渫土砂などの埋め立てを開始した港湾用地です。この後背地は、これに関連した物流倉庫等の用地として活用すべきです。同時に何より、建設残土や廃棄物も受け入れるなど、本市にとって非常に貴重な最終処分場です。できる限り永い将来にわたって最終処分場として受け入れを続けることこそ、最良の活用方法です。

 地方自治体の責務は、住民福祉の向上です。カジノの誘致は、この地方自治体の責務に真っ向から反するものです。将来、自分や家族のギャンブル依存症に苦しむ市民を作り出すようなことを、決してするべきではないと申し上げ反対討論といたします。