title


市議団の実績

 2021年度大阪市一般会計等決算の認定に対する
山中議員の反対討論

山中智子市会議員

2022年11月18日

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2021年度大阪市一般会計等決算の認定に反対の討論を行います。

 2021年度は前年に引き続き新型コロナが文字通り猛威を振るい、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令と延長が繰り返されました。ほとんどの市民が健康、ご商売、生活、子育て、介護、地域活動などなど、悩みや苦しみにぶつかりながら過ごした1年です。こうした市民の苦しみに寄り添い、くらしや命を守るために総力を上げることこそ大阪市の本来の役割にほかなりません。ところが本決算に示されているのは、市民に不幸をもたらす夢洲のカジノ誘致に血道をあげる一方で、市民には実に冷たい大阪市の姿です。とうてい認めることはできません。以下、具体に申し上げます。

 

 第一に、コロナの感染拡大に苦しむ市民にとって、救いの手をさしのべるどころか、余りにも冷たく、現場の声を聞かなかったことです。

 ほぼ一年中、休業や時間短縮などを余儀なくされた飲食店の皆さんをはじめ、失業や収入減、子育てや介護、看護、闘病にかかわる困難などで、多くの市民がほんとうに大変な思いをされました。コロナで亡くなられた方もたくさんおられますし、感染や後遺症による苦しみは言うまでもありません。多くの自治体が、財政が厳しいなかにあっても、営業や生活への支援、文化への支援などを独自に実施するなかで、本市は、国の交付金を活用した給食費の無償化や、買い物応援キャンペーンなどはあったものの、一人でも多くの市民を救うための独自施策はお寒い限りだったと言わざるをえません。

 飲食店への協力金も、市の上乗せは行いましたが、「遅い、不十分、わかりにくい」というお叱りが満ち満ちていたのに、大阪府任せでなかなか改善せず、多くの業者さんが途方に暮れるような事態が繰り返されました。

 教育をめぐっては、密を避けるために行った分散登校により、あらためて少人数学級のメリットが実感され、ほとんどの都道府県・政令市が何らかの形で国基準を超える少人数学級を実施するようになっています。本市でも全学年での実施を望む声が教職員や保護者から上がっていますが、一顧だにしないばかりか、少人数学級が実現できる小規模校の統廃合を、地元の反対を押し切って乱暴に強行いたしました。さらに、現場の実態を無視した「原則オンライン授業」の指示を巡って、勇気をもって「学校現場が混乱した」との声を上げた校長先生を横暴にも処分するなど、現場無視、子ども不在の姿勢は、コロナ禍のもとで、より良い学校生活を送ろうと懸命に頑張っている子どもや保護者、教職員を支え励ます教育行政とはかけ離れたものだったと申し上げたいと思います。

 医療・介護・保育・福祉の現場は、クラスターに恐れおののきながら、出来る限り患者さん・利用者さんのために業務を続けようとまさに悲痛な努力を尽くしつつ、自助努力だけではどうにもならないと、感染対策と事業継続のための支援を強く望んでこられたわけですが、それが十分でない中で、施設によってはクラスターの発生等で事業を縮小、休止せざるを得ないなど、大きな減収を生じているところも少なくありません。施設と利用者を守るために、速やかな財政支援を求めておきます。

 高齢者の生活は、コロナによりそれまで支えとなっていたデイサービスや様々な外出が出来なくなり、一気に認知症が進むなど、本人やご家族にとって心身ともに辛い日々でしたが、本市は、それでなくてもほぼ全国一高い介護保険料を、コロナの最中に2.11%値上げするなど、援助するどころか逆に負担増を押し付けました。2021年度は8月に介護施設入所者の食費の値上げも実施され、何重にも負担が重なる事態となったわけです。あまりにも冷たい仕打ちだと言わなければなりません。

 

 反対理由の第二は、地方自治体としてやるべきことをやらず、やるべきでないことをやっているからです。

 この間、大阪は、コロナで亡くなる方が人口当たりでみると全国一多いという状況が続きました。「コロナ対策は大阪府」などと言わず、府とともに大阪市も自主性をもって、この深刻さの原因について分析し、対策にいかすことが強く求められていました。けれども、大阪市のコロナ対策本部会議はほとんど開かれず、「府任せ」、成り行き任せに終始いたしました。

 かなめの保健所体制についても、2000年に24保健所から1保健所24保健センターにして以降、20年間にわたって、ただの1人も保健師の増員がされていないことが明らかになりました。この間、社会状況の変化のなかで業務は激増しているのに1人たりとも増えていないことは、減らしたことと同じだと思うのです。ここ2年は、児童虐待対応及びコロナ対応で増員していますが、急には増やせません。20年間増やさなかったツケが、コロナ禍のなかで、市民と現場をどれだけ苦しめたか肝に銘ずるべきです。片やすがる思いで保健所に電話をしてもつながらない、陽性になってもなんの連絡もなくどうしたらいいかわからない。片や命を削るほど働いても、市民の苦しみに応えきれない。どれほどの悲鳴を聞いたかわかりません。今後もパンデミックはありうると言われる時代です。他局からの応援や民間派遣で急場をしのぐしかないなどということを、決して繰り返さないよう、保健師など専門職の抜本的な増員を強く求めます。また、この間のコロナ対応の問題点の分析・検証もないままに、保健所は今後も1か所体制でいくということを早々と意思決定しましたが、きちんとした検証を行い、保健所体制については、コスト論に偏することなく多方面の意見を十分取り入れて、検討し直すべきだと申し上げておきます。

 人員の不足は保健師さんだけではありません。2005年度と2021年度を比較すると、市長部局で13000人近く、4割もの職員が減らされました。年齢構成もいびつなものになり職場の空気が停滞しがち、技術が継承されない、など問題点が指摘されるようになって久しいではありませんか。この間は、コロナ対応の応援に職員を派遣すると本来業務が遂行できず、市民サービスの低下につながりかねないという事態も起こっています。区役所窓口の民間委託にいたっては、大切な仕事なのにわかる職員がいなくなることともに、むしろコスト増となる懸念さえ浮き彫りになっています。

 この十数年、これほどまでに職員を減らし、市民サービスをカットし、あれもこれもと民営化や統廃合を進めてきたことと、90年代の巨大開発の起債の償還が終息しつつあることで、財政状況が一息つき、財政調整基金が2000億円をゆうに超えるほどになっています。コロナ禍で不足が顕在化した職員の増員や、国民健康保険料の値下げなど一人でも多くの人を救うための様々な支援のために、もてる力を十分に発揮することこそが地方自治体の役割です。にもかかわらず、コロナ禍のもとでさえ財政調整基金を積みまして市民のために使うことをとことん惜しむ一方で、IRカジノや万博、そのための夢洲などのインフラ整備には人員を惜しまないとともに、経費の上振れにつぐ上振れを是とするだけでなく、カジノ事業者には青天井の費用負担を約束し、安すぎる賃貸料を設定するなど、どこまでこの開発にのめりこむのか、どれだけ市財政が食い物にされるのか恐ろしくなるほどです。どの世論調査でも市民の過半数が反対しているうえに、コロナ収束の見通しがたたず、外国人観光客のコロナ前の水準回復などあり得ないなか、「世界中からヒト・モノ・投資を新たに呼び込む」という前提が崩れたカジノの誘致に、これ以上、時間を費やし、市民の財産を棄損することは許されません。

 

 第三に、地方自治破壊、民主主義無視の、大阪市の形骸化ともいうべき事態が進められてきたことです。

 大阪市民は二度にわたる住民投票で、大阪市存続を選びました。大阪府と政令市である大阪市が、時代にふさわしい地方分権の大道に立ち戻り、必要な協力は行いながらそれぞれが大阪の発展のために力を尽くすべきです。にもかかわらず、20214月に広域行政一元化条例が施行され、街づくりなどの大阪市の権限を大阪府に差し出したことは、民意も地方自治も踏みにじる暴挙と言わざるを得ませんし、その一環としての大阪市立高校の府への無償譲渡など、到底市民の理解は得られません。

 さらに、副首都推進局や副首都推進本部を設置し続け、大阪の発展のためだと称して、制度いじりを続けようとしていることは、究極の民主主義だと言って実施した住民投票で示された民意をまっこうから否定する、究極の民意無視だと申し上げ、以上、反対討論といたします。