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市議団の実績

2023年度大阪市一般会計等予算案への
井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2023年3月15日

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2023年度大阪市一般会計等予算案に反対する討論を行います。

 食料品をはじめ、ガス、電気など、生活に欠くことのできない品目の値上がりは深刻さを増しており、2人以上の世帯で、年間約14万3000円以上もの家計への負担となっているとの試算もあります。市民生活を守る対策は、一刻の猶予もなりません。

 このような時、地方自治体として市民生活を守るために、あらゆる手立てを尽くさなければなりませんが、本予算案に見られるのは際限なく上振れを続けている大型開発に、立ち止まることなく突き進む無謀な姿であり、市民のくらしを守るべき、基礎自治体の責務を果たしているとは到底言えません。

 以下、具体に指摘いたします。

 

 第一は、くらしや営業をめぐり、市民の切実な声に応えるものとなっておらず、物価高騰対策にも無為無策であるからです。

 まず国民健康保険料、介護保険料についてです。

 本市の国保会計は、後期高齢者医療制度が実施された2008年度から、ほぼ毎年単年度黒字を重ね、今日に至るまでの黒字額の合計は、実に479億6千万円にものぼります。

 ところが、都道府県単位化前の2017年度の任意繰り入れは135億円だったにもかかわらず、来年度は58億円にとどめようというのです。

 来年度、国保料の10.3%もの、過去最大の引き上げが強行されれば、維新市政の通算12年間で、25.5%も引き上げられることになります。

 物価高騰で苦しむ市民に追い打ちをかけるように、耐えがたい痛みを押し付けるのではなく、逆に国保料を引き下げ市民生活を支援すべきなのであります。

 介護保険料の高さも異常であり、全国792ある市の中で、本市の介護保険料は一番高額となっており、全国ワーストワンなどという汚名を返上すべく、引き下げの努力をすべきであります。

 次に、物価高騰対策についてです。

 本市独自の切れ目ない物価高騰対策は極めて乏しく、昨年8月から10月にかけて上下水道料金の基本料金は免除されましたが、コロナ禍は3年続き、物価は高騰し続けている状況に鑑みれば、3ヶ月で打ち切るのではなく継続すべきであります。

 また、公衆浴場への固定資産税三分の二の減免制度を、今こそ復活し、公衆衛生事業を行政の責任で支援するべきです。

 保育園などの児童福祉施設や、障がい者施設、介護施設など、いわゆる社会福祉施設への食材費・光熱費等への高騰対策事業について、全政令指定都市の状況を調べたところ、本市以外の19市は全て独自の支援策を講じていましたが、本市のみ社会福祉施設への支援が無く、すみやかに制度構築すべきであります。

 

 第二は、公衆衛生・医療・教育・交通など様々な分野で、公共の役割の大切さが改めて認識されているにも関わらず、さまざまな事業・施設の統廃合や民営化の弊害が浮きぼりになっているからです。

 まず、保健所体制についてです。

 このたびのパンデミックの教訓を踏まえれば、保健所の1箇所体制を見直し、かつての様に全行政区への設置を目指すべきであり、大阪市内の26医師会による大阪市医師会連合会も、本市に対し同様の要望をされています。同時に、公衆衛生医師、保健師をはじめとする専門職の大幅な増員が求められているにも関わらず、本予算案は、大規模感染症などに対し、迅速かつ的確に対応できる体制を目指すものとは到底言えません。

 また、大阪は他都市に比べ、新型コロナウイルスの感染者、死亡者が、なぜ突出して多いのかの真剣な検証と分析を改めて求めておきます。

 新型コロナウイルスの拡大という未曾有の危機を経験するもとで、公的医療の重要性も改めて浮きぼりになりました。

 小児・周産期医療の病床を設置しない、住吉市民病院跡地への新病院計画は、市民との約束を反故にするものであり、住吉市民病院が担ってきた公的医療を、しっかり継承する計画へと見直しを図るとともに、コロナ危機の教訓を踏まえた公的病院としなければならないのであります。

 なお、新病院の計画内容などについて、住民への説明会が一度も開かれていません。広く区民・市民を対象にした、住民説明会のすみやかな開催を強く求めておきます。

 続いて教育についてです。

 まず、生野区の学校統廃合問題についてです。

 何度も申し上げますが、文部科学省は、学校規模の適正化や適正配置の検討について「行政が一方的に進める性格のものでないことは言うまでもありません」という認識を示しており、至極当然のことであります。

 ところが本市では、生野区での大規模な統廃合計画が思うように進まないとみるや、学校統廃合の基準等の条例化を強行しました。全国的にも類を見ない異常な強権ぶりをあらわにしているのであります。

 この条例を適用し、生野区では一挙に8つの小中学校が統廃合されてしまいました。

 生野未来学園に、小学生と中学生のお子さんを通わせているある保護者は、「地域によっては、30分以上通学にかかるようになってしまっている。運動場も狭くなり統廃合のメリットは何も感じられない」と語ります。

 舎利寺小学校前の連合町会の会館で、朝に開いていたこども食堂は、こども達の通学時間が長くなってしまったことで続けられなくなり、こども達、保護者から惜しまれています。

 生野区民の中にシコリを残し、様々な弊害と矛盾を引き起こしている現状をよそに、強引な説明会の開催が広がっているのであり、このような一方的なやり方は直ちに止めるべきです。

 また、本予算案には、2024年度開設予定の、不登校特例校の設置に向けた予算が計上されています。

 本市において、不登校の児童生徒が増加の一途をたどる中での特例校設置の方針ですが、現場からは疑問の声が上がっています。さらに問題は、不登校特例校の設置を機に、天王寺中学校および文の里中学校の両夜間学級を統合しようとしていることです。

 夜間学級の関係者からは、今も両校の存続を求め続けているのであり、統合すべきではありません。

 そもそも、不登校の児童生徒と夜間学級の生徒とでは、教育課題や専門性が全く異なるのであり、3つの夜間学級はそのまま存続し、これまでの歴史と成果を踏まえつつ、教育環境の充実に努めるべきであります。

 加えて、こども達や保護者のSOSにいち早く対応し寄り添い続けるには、正規の教職員を大幅に増やすことが、全市的な喫緊の課題であると申し上げておきます。

 次に、大学統合についてです。

 大阪市立大学、大阪府立大学の両大学もまた、二重行政だと決めつけられ、長年統合議論に振り回されてきました。

 大学統合前の2021年度と、来年度予算案の府・市合わせた大学の運営交付金を比較すると17億円も減額されており、研究費が減らされ続けている中、大学の現場からは、基礎研究の土台がさらに掘り崩されてしまうのではとの懸念の声も聞かれます。

 その一方で、森之宮への新大学キャンパス整備事業や周辺の開発には、莫大な費用を要するのであり、高等教育機関を大規模な開発に利用することに矛盾を感じざるを得ません。

 加えて、大学授業料無償化の実績について、全学生・院生約1万6千人に対し、国制度・府制度ともに、対象者は千人台にとどまっているのであり、所得制限の緩和をすみやかに進め、無償化の名にふさわしい制度へ改善すべきと申し上げておきます。

 続いて、交通政策について申し上げます。

 大阪メトロは、来年度から、バリアフリー料金制度を導入するとして、地下鉄・バスの運賃の値上げを行なうとしています。公営交通を維持する8都市の状況を調べたところ、バリアフリー料金制度を導入する都市は、一つもありませんでした。

 従来バリアフリー化は、それぞれのバリアフリー計画を基に、国と自治体、鉄道事業者が計画的に進めてきた訳ですが、民営化議論の際わが党は、「株式会社化プラン」の資金計画の中に、ホーム柵等の設置のための建設改良費が全く見込まれていないことも厳しく指摘してきました。

 つまり、バリアフリー計画も無いまま民営化に突き進んだ経緯が、利用者への負担増という安易な発想につながっているのです。

 今回のバリアフリー料金制度に関わらず、運賃全般の決定について、株主総会にも諮らず、100%株主である市民の声を聞くこともなく、大阪メトロの判断次第へと変質してしまった点も、民営化の弊害の一つであると指摘しておきます。 

 加えて、大阪メトロは7月から、駅改札窓口への駅員の非常駐化まで進めようとしておりますが、障害者をお持ちの方からも切実な訴えが寄せられており、安全確保に逆行する重大なサービス低下は、絶対に認められないと申し上げておきます。

 

 第三は、上振れ続きの大型開発を、立ち止まることなく推し進めているからです。

 この間、大阪市は夢洲のIR用地の不動産鑑定をめぐって、IRを考慮外としたのは「国内に実績がなく評価上考慮することは適切でない、と鑑定業者から言われた」と説明してきましたが、情報公開で入手した鑑定業者の「確認書」では、大阪市自身が、IR事業による価格上昇を反映しないために、考慮外とするよう指示したことが読み取れます。

 賃料を安くする意図で考慮外としたうえに、虚偽の説明や答弁がくり返されたのだとしたら、市民への損害といい、市政運営の不誠実さといい、言語道断です。

 ここまでしなければカジノ事業者を引き止められないほど将来性のないIR・カジノです。これ以上、誘致にしがみつけば、本市の傷口を広げ財政破綻に導くことは、火を見るより明らかではありませんか。

 きっぱり断念するとともに、夢洲での万博開催は中止するべきであります。

 淀川左岸線2期事業についても、軟弱地盤の工事が行われていた工区において、トンネルの沈下対策として地中に杭を打ったことが原因で、近隣住宅の敷地にひび割れが発生しました。結果本市は、工法変更を余儀なくされ、総事業費は当初の2.5倍、約2900億円にも膨れ上がっています。しかも、近隣に影響が出て中止した工法と、同じ技術検討委員会で採択した別の工法に安易に変更するとしており、安全確保に必要な新たな技術検討を行わないことは重大な問題です。

 また、災害時、トンネル内部へ浸水した場合の対応や、地下水脈への影響も明確にされておらず、安全性が全く担保されていないのです。

 災害対策に逆行し、自然環境に与える負荷も大きいため、本事業は中止するべきであり、淀川左岸線延伸部事業についても、同様に中止すべきと申し上げておきます。

 また、なにわ筋線については、その開業によって大阪―関西空港間で約5分の短縮が図れると言いますが、もうすでに大阪市中心部は過密と言えるほど縦横に鉄道路線が張り巡らされているのであり、この上また新たな地下鉄道の建設を目指すことは、都心中心部への過剰な投資と言う他ありません。わずか5分の短縮のために、総事業費3300億円をつぎ込むことは、あまりにも無謀であると申し上げ、以上、反対討論といたします。